二枚貝の餌と培養珪藻
【二枚貝飼育について】
【飼育水槽】
【給餌方法】
【培養珪藻の付帯効果】
【注意事項と換水】
【飼育での照明】
二枚貝飼育について
タナゴ繁殖用に用いる大型の二枚貝は、一般的に飼育が難しいです。
厳密に言うと、趣味としてのアクアリウム用・観賞用水槽での長期飼育が困難で、多くの場合連れてきてから短くて2週間、長くても2ヶ月以内には死なせてしまう、という場合が多いです。
その主な原因は
「餌不足」
です。
しばしば、水槽内のコケ取りや掃除屋として小型の貝類(淡水シジミ等)をショップで扱っておりますが、あれと同じ感覚では水槽内で飼うことは出来ません。それは、水槽内で発生する餌である藻類や有機堆積物の発生が少なく、大型の貝類はその生命を維持出来ないからです。
そのような点で、専門業者では餌の自然発生が十分に取れるよう屋外イケスや、河川の一部をイケスとして用いる等の工夫を凝らし、二枚貝を維持をしています。
逆に、そのような設備が用意出来るのであれば、二枚貝飼育は容易とも言えます。
室内小型水槽で二枚貝を飼うということ
しかし実際には、上記のような設備を用意するのは趣味でタナゴをを増やしたい と言ったほとんどの場合で現実的ではなく、やはり
観賞用の規格水槽で室内で普通に飼う
ことになります。
私も当然その中の一人で、どうにかして「普通に飼う」という範囲のなかで二枚貝を長く飼えないかと考えた結果、
珪藻培養式の飼育方法
に行き着きました。
ここでで紹介する培養珪藻は
こちら
から入手可能です。
以下、私のところでの二枚貝飼育例になります。
飼育水槽
小型水槽での二枚貝長期飼育トライにおける環境
水槽サイズ:40cm規格水槽(水量約20L)
水温:夏場約22℃~23℃
冬場約10℃~15℃(ヒーター等での加温無し)
生体:川真珠貝 殻長8~9cm 3個 (長期飼育試験のため少数)
底砂:田砂10cm
フィルター:投げ込み式底面フィルター(自作:
作り方
)
換水頻度:1ヶ月に1回、1/3(後述)
照明:蛍光灯10W未満相当(後述)
二枚貝(川真珠貝)の長期飼育試験を行っている試験水槽の様子です。培養珪藻の給餌により、水槽内にも珪藻類が多く生存する環境になっています。この水槽にて少なくとも12ヶ月間 川真珠貝を維持しました。
給餌方法
培養の完了した珪藻液を直接二枚貝を飼育している水槽に投入します。
培養済み珪藻を購入した場合も同じです。
表の投入量の目安に給餌します。
あくまで目安です。二枚貝のサイズ・濾過系の種類・その他の生体の有無等により異なりますので、二枚貝の様子見ながら増減してください。
培養した珪藻類自体は生体に有益なため多く入れても問題ありません。
ただし培養が不十分で培養液中の成分が多量に残っている場合には中毒を起こす可能性がありますので、表の最小投入量の4倍を超える量の投入は避けた方が良いです。
水槽サイズ
最小投入量
調整投入量
45cm(40L以下)以下
50ml/日
二枚貝の数×10ml/日
60cm規格(約60L)
60ml/日
二枚貝の数× 5ml/日
90cm規格(約180L)
120ml/日
二枚貝の数× 4ml/日
120cm規格(約240L)
200ml/日
二枚貝の数× 3ml/日
※二枚貝サイズ10cmを基準として。
給餌の付帯効果
培養キットにより培養した珪藻液には、与え続けることによって水槽内においても
継続的に珪藻類が繁殖する環境
を作る効果があります。
点線の□で囲んだ部分は、プロホースにて濾過砂を掃除した部分で、それ以外の部分は茶色くなっているのが分かります。この茶色い部分全てが珪藻類です。ガラス面にも付着しています。
このような環境が作れると、二枚貝が「餌不足」により死んでしまう確率は非常に少なくなります。
これは培養後の液の中にも少量ながら栄養成分が残っているためです。
給餌の注意事項と換水
上記の通り、珪藻培養キットでは培養後の液に栄養成分が少量ながら残ります。
ここでいう栄養成分とは各種無機化合物を中心とした「肥料成分」であり、必然的に水生生物の毒素として名高い「硝酸塩」を含みます。
したがって、一度の給餌において多量の珪藻濃縮液を水槽に投入すると、硝酸塩に由来する中毒を起こす場合があります。これを避ける点においても、生体の様子を見ながら
「1日少量を毎日」
を基本に給餌を行います。
生体の様子で判断をすることは実際には相当な慣れが必要ですので、実際には
市販のテスター(指示薬)
を使い、硝酸・亜硝酸等の濃度を定期的に測るようにして、数値が危険域に近づいたら換水するようにするのが、簡単かつ確実です。
このうような観点から、
私のところでは約3週間に1度、1/3の部分換水
を行っております。
健康状態の貝は写真のように、ほぼ常に口が開き、給排水を行っています。
殻を閉じ、口が開いていないことが多い・ほとんど口を開いているところを見ない状態では、貝はかなり弱っています。
貝は弱ってから回復させることが難しいため、そうなる前に環境を整えることが重要になります。
二枚貝飼育での照明
珪藻培養の際にも言えることですが、珪藻の繁殖には強い光は必要ありません。逆に高光量下では珪藻類の活動が抑制されるだけではなく、緑藻類等の繁殖が優勢となります。
水槽内で一般的に増えやすい藻類はアオミドロを始めとする糸状藻類や藍藻類等ですが、いずれも大きく二枚貝の餌にはなり得ません。
このため、珪藻類の繁殖を優勢とするために二枚貝飼育水槽では照明を抑え、低光量とする方が良い結果が得られやすくなります。
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