この魔術師に祝福を!   作:混沌の覇王

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お久しぶりです。最近、ドールズフロントラインを始めてはまってました。UMP45かわいい。


この魔術師に幽霊屋敷を!

「「「「悪霊?」」」」

 

ウィズを訪ねてきた男性はこの街で不動産屋を経営している男性だった。男性が所有している空き家に悪霊が住み着き、ギルドに相談して討伐クエストを依頼したが、退治してもすぐに悪霊が住み着きギルドもお手上げ状態になって、ウィズに相談しに来たらしい。

 

「悪霊を、祓っても祓っても、幾らでも新しいのが湧いて住み着いてしまうのですよ。それで、今は物件を売るどころではなく、物件の除霊をするので精一杯でして」

 

男性は疲れた表情でため息をついた。でも、どうしてウィズのところに来たんだろう。

 

「ウィズさんは、店を持つ前は高名な魔法使いでしてね。商店街の者は、困った事があるとウィズさんに頼むのですよ。特に、アンデッド絡みの問題に関してはウィズさんはエキスパートみたいなものでして。それで、こうして相談に来た訳なんです」

 

リッチーはアンデッドの王だからか。ウィズがリッチーだってことは、この街の人は知らないから、あくまで元冒険者で高名な魔法使いってことで通してるのか。

 

「大丈夫ですよ、任せてください。街の悪霊達をどうにかすればいいですね?」

 

「ああ、いえ!全ての建物の悪霊をどうにかして欲しいとう訳ではなくですね・・・・・・。その、例の屋敷をどうにかして欲しいと思いまして・・・・・・」

 

「ああ、あそこですか。なるほど・・・・・・」

 

どうやらウィズには心当たりがあるらしい。

 

「では、任せてください。あの屋敷の中に迷い込んだ、悪霊だけをどうにかしますね?」

 

「あっ、その悪霊の除霊、僕らに任せてくれない?」

 

「「え゛っ!?」」

 

カズマとアクアから嫌そうな声が聞こえてきたが、二人を丸め込めるカードは握ってるから問題ない。それに、ウィズには色々と世話になってるし調度いい機会だ。

 

「私は構いませんが・・・・・・」

 

ウィズは不動産屋の男性の方を見る。男性は僕の事を上から下まで見て、何かを納得したのか頷いた。

 

「私も構いません。お願いしてもよろしいでしょうか?」

 

「はい、お任せください。うちのパーティーには優秀なアークプリーストがいますので」

 

「えーっ!?私は嫌よそんなの!?ウィズが頼まれたんだからウィズにやらせたら良いじゃない!」

 

「シュワシュワ5杯」

 

「任せなさいな!!悪霊の一つや二つ、いいえ、百や二百なんて私にかかれば一瞬よ!!」

 

よし、アクアの買収完了だ。酒をちらつかせたら簡単に釣れるから、アクアは楽でいい。

 

「なあ、俺も一緒に行かないとダメか?」

 

「もちろん。それとも、カズマはウィズにスキルを教えてもらったのに何のお返しもしない不義理な男なのかな?」

 

「うぐっ・・・・・・。・・・・・・一緒についていきます」

 

カズマも丸め込めた。何だかんだでカズマも仲間思いだからね。

 

「それでは、除霊はシュウさん達にお任せさせていただきますね」

 

「うん、任せて。屋敷の場所、教えてもらえますか?」

 

「はい。皆さんに除霊していただきたい屋敷の場所は――――――」

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

「・・・・・・この屋敷か」

 

依頼された屋敷はアクセル郊外にある屋敷。話では屋敷にしては部屋数は多くないらしいけど・・・・・・うん、大きい。何でもとある貴族の別荘だったのが売りに出された先に今回の悪霊騒ぎが起こった。

 

「悪くないわね!ええ、悪くないわ!この私が住むのに相応しいんじゃないかしら!」

 

アクアは興奮したように叫び、めぐみんも心なしか顔が赤い。この屋敷は街では幽霊屋敷として定着して、買手がつかないから、除霊が済んだ暁には、なんと悪評が消えるまでタダでこの屋敷に住んで良いと、不動産屋の男性が言ってくれた。

 

「しかし、本当に除霊ができるのか?聞けば、今この街では祓っても祓ってもすぐにまた霊が来るといっていたのだが」

 

ダクネスがこの中で一番大きな荷物を背負いながら言う。・・・・・・どうでも良いけど、ダクネスって結構筋肉質なのかな?

 

「でもこのお屋敷、長く人が住んでない感じなのですが。悪霊騒ぎがあったのは、ここ最近ですよ?もしかして、今回の街中の悪霊騒ぎが起きる前から問題がある、訳あり物件だったりして・・・・・・」

 

「それなら、あの不動産屋もこの屋敷は売りに出してないと思うよ。それに、幽霊屋敷だって事を隠して売りに出しても、買った人が悪霊の被害にあったら、それこそもっと大騒ぎになって屋敷自体が解体されてた可能性はあるよ」

 

それか、この屋敷には本当に幽霊が住み着いていて、その幽霊は無害だから放置していたか。

 

「ま、まあ何にしても。たとえそんな問題物件だったとしても俺達にはアクアがいる。だろ?大丈夫だよな、対アンデッドのエキスパート」

 

「任せなさいな!・・・・・・ほうほう。見える、見えるわ!この私の霊視によると、この屋敷には貴族が遊び半分で手を出したメイドとの間にできた子供、その貴族の隠し子が幽閉されていたようね!やがて――――――」

 

「長くなりそうだから先に中に入ってようか」

 

そろそろ辺りも暗くなってきたし、少し冷えてきた。アクアもそのうち飽きて入ってくるだろう。

 

「たまに思うんだけどさ、秋ってアクアに結構キツいよな」

 

「そ、そうですね・・・・・・。それだけアクアがシュウを困られしているのか、あれがシュウなりの普通なのかわかりませんが」

 

「う、うむ・・・・・・。だが、シュウもアクアが嫌いな訳では無いのでは無いか?嫌いならすでにこのパーティーから抜けているだろうし」

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

夜も更けて、僕たちは部屋割りで決めた部屋でそれぞれ寛いでる。僕の部屋は二階の中央の部屋でそれなりの広さだ。部屋を出るとすぐそばに階段がある。

 

「これでよしっと・・・・・・」

 

日本で使っていた日用品や着替えを全て整理し終わった僕はベッドに倒れ込んだ。

 

「まさか、僕がこんな大きな屋敷に住むなんて想像すらしなかった」

 

日本だと廃墟同然のビルに住んでいた僕が、こんな大きな屋敷で住んでるって知ったら先生はどう思うだろう。

 

「いや、どうも思わないか」

 

あの人の事だ。僕が屋敷に住んでるって知ったら『そうか、なら私も住まわせろ』とか言うに違いない。

 

「それはそれで悪くないかな・・・・・・」

 

ちょっと疲れたな。それに、宿で泊まるより馬小屋生活の方が長かったからベッドで眠るのは久しぶりだ。

 

「あっ・・・・・・やばっ・・・・・・」

 

気が緩んだのか一気に眠気が押し寄せてきた。抗いがたい感覚が、意識を刈り取っていく。あっー、ダメだ。落ちる。

 

「すぅ・・・・・・」

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

「んんっ・・・・・・」

 

誰かの視線を感じて眼が覚めた。寝落ちする前は灯りがついていたのに、今は消えていた。

 

「人形・・・・・・?」

 

部屋に備え付けられている机の上に金髪にゴスロリ衣装を着た西洋人形三体が僕の方を見ていた。おかしい。寝る前はあんな人形無かった。

 

「悪霊が人形に憑依したって言うの?ホラー映画としてはありがちだよ」

 

ベッド脇に置いておいた干将・莫耶を手に取ってベッドから出る。すると、背後からカタッという音がした。振り向くとベッドの上に机に置いてある西洋人形とは別の人形が四体並んでいた。

 

「増えた・・・・・・?」

 

ガタ、ガタガタガタガタガタガタガタッ!!!!!!

 

「ちょっと待って数多すぎない!?」

 

窓の外には数えるのもバカらしくなる量の人形が張り付いていた。

 

(密閉空間はまずい!)

 

いくら部屋がそれなりに広くても悪霊の大群相手に密閉空間での戦闘は物量に押し潰される。僕が部屋から出て扉を閉めるのと同時に、部屋の窓が破られた音がした。

 

「アクア達と合流した方が良さそうだね」

 

扉に中級魔法の『ロック』という魔法をかける。『ロック』はかけた魔力量で扉を開けにくくする魔法だ。ひとまずは部屋の人形達はどうにかできただろう。

 

「そこかっ!」

 

「危なっ!?」

 

しばらく廊下を歩いていると、廊下の曲がり角からはたきを手にしたダクネスが飛び出して攻撃してきた。反射的にはたきを斬って、ダクネスを壁に押し付けて、首筋に干将を当ててしまった。

 

「あっ、ごめん。反射的にやっちゃった」

 

「わ、分かったから早く離れてくれ!いくら私でも恥ずかしいんだぞ!?」

 

普段はカズマに罵られたら悶えてるのに、壁に押し付けられたぐらいで恥じらうダクネスの羞恥心の基準がいまいちわからない。

 

「ダクネス一人なの?アクアは?」

 

ダクネスから離れる。ダクネスは乱れた寝間着を整えながら話し出した。

 

「アクアなら一人で屋敷の悪霊達を浄化している。私もクルセイダーの端くれ。悪霊程度なら私も浄化できるから別行動していたんだ」

 

「そうなるとカズマとめぐみんの二人か。二人は見た?」

 

「いや、見ていない。めぐみんは大丈夫だろうが、カズマは・・・・・・」

 

今の起きている事に気づかずに寝ているか、めぐみんと一緒にいるのか。まあ、めぐみんと一緒ならたぶん大丈夫だろう。

 

――――――いだぁっ!?

 

下からアクアの声が聞こえた気がした。それも女の子がまかり間違っても出してはいけないタイプの声だ。

 

「今の声は・・・・・・アクアか?」

 

「そうだね。下から聞こえた。行こう」

 

ダクネスと二人で下の階に降りると、全員で掃除用具等の収納スペースに決めた部屋の前でアクアが倒れていた。

 

「カズマ!めぐみん!無事か!?」

 

「あっー、俺達は無事だけど・・・・・・」

 

「そうですね。ただ、アクアが・・・・・・」

 

アクアは額を真っ赤にして気絶している。カズマ達が開けた扉がアクアの額に当たったんだろうね。

 

「アクアは僕が部屋に連れていくから、今日は遅いし解散しよう。後片付けは起きてからすれば良いし」

 

気絶しているアクアを背負う。普段、暴飲暴食をしている姿からは考えてられない程軽かった。・・・・・・腐っても女神の端くれってことか。

 

「それじゃあお休み。また、明日ね」

 

「おう、お休み」

 

「お休みない」

 

「お休み。アクアを頼む」

 

三人に挨拶を済ませてアクアの部屋に向かう。

 

「・・・・・・こうやってしてたら本当、女神みたいなのにね」

 

寝ているアクアを背負い直しながら、独り言を呟く。日本ならアクアやめぐみん、ダクネスは中身はともかくモデルで大成功しそうな気がする。

 

「よっと・・・・・・」

 

アクアの部屋に着いた僕はアクアをベッドに寝かせて掛け布団をかける。

 

「お休み、アクア」

 

寝ているアクアを起こさないように静かに部屋を出た。

 

おやすみ~、シュウ~


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