この魔術師に祝福を!   作:混沌の覇王

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遅くなってすいません。

炎の快男児ナポレオン、カッコいいですね。シグルドさんが倒したドラゴンは白い体に青い目のドラゴンだと思うこの頃。


この魔術師にデュラハンを!最終戦!

デュラハンが僕らのもとに着くより早く、集まっていた冒険者達が各々武器を構えて、デュラハンを遠巻きに取り囲んでいく。

 

「・・・・・・ほーう?俺の一番の狙いはそこにいる連中なのだが・・・・・・。・・・・・・クク、万が一にもこの俺を討ち取ることが出来れば、さぞかし大層な報酬が貰えるだろうな。・・・・・・さあ、一攫千金を夢見る駆け出し冒険者達よ。まとめてかかってくるが良い!」

 

余裕の現れなのか、デュラハンは大剣を肩に担いで、頭を持っている左手で辺りを取り囲んでいる冒険者達を見回す。

 

「おい、どんなに強くても後ろに目は付いちゃいねえ!囲んで同時に襲いかかるぞ!」

 

戦士風の冒険者が回りの冒険者に向かって叫んだ。

 

「おい、相手は魔王軍の幹部だぞ、そんな単純な手で倒せる訳ねーだろ!」

 

佐藤君が戦士風の冒険者や今にも襲い掛からんとする冒険者達を制止しようとする。

 

「時間稼ぎが出来れば十分だ!緊急の放送を聞いて、すぐにこの街の切り札がやって来るさ!あいつが来れば、魔王軍の幹部だろうがてめえは終いだ!おいお前ら、一度にかかれば死角ができる!四方向からやっちまえ!」

 

戦士風の冒険者は戦斧を構えてデュラハンに襲いかかる。他の冒険者達もそれに続いく。デュラハンは自分の頭を空に放り投げ、両手で大剣の柄を握る。――――――あれはまずい。本能が、今のデュラハンの行動に警鐘を鳴らす。

 

「止めろ!行くな・・・・・・」

 

「全員避けろ!!」

 

佐藤君の声と僕の声が同時に上がる。デュラハンは襲ってきた冒険者達の攻撃を全て避け、一刀のもとに斬り捨てた。

 

「えっ?」

 

それは、誰の声だろうか。斬り捨てられた冒険者達の誰かか、それとも、彼らが斬り捨てられたのを見ていた他の冒険者か。

 

「次は誰だ?」

 

空から落ちてきた頭を受け止め、大剣を地面に突き刺したデュラハンが言った。デュラハンの頭が離れている特性を生かしたわけか。頭を上に投げて、鳥瞰的に地上を見て、攻撃を全て避けて反撃したということか。

 

「あ、あんたなんか・・・・・・!あんたなんか、今にミツルギさんが来たら一撃で斬られちゃうんだから!」

 

・・・・・・・・・・えっ?ミツルギって僕が殴り倒して、魔剣を佐藤君にあげた御剣響夜?

 

「おう、少しだけ持ち堪えるぞ!あの魔剣使いの兄ちゃんが来れば、きっと魔王の幹部だって・・・・・・!」

 

「ベルディアとか言ったな?いるんだぜ、この街にも!高レベルで、凄腕の冒険者がよ!」

 

・・・・・・ごめんなさい。たぶん彼は売られた魔剣を捜しにこの街を留守にしてるかも知れません。御剣が街を出ていった理由を間接的に作ったのは僕だし、責任は取ろう。

 

「・・・・・・ほう?次はお前が俺の相手をするのか?」

 

「ああ。呪いをかけられたお礼参りも兼ねて、僕一人で相手をさせてもらうよ」

 

白と黒の夫婦剣を手に、佐藤君達の前に出る。

 

「おい、秋!一人で大丈夫なのかよ!?」

 

「大丈夫大丈夫。こう見えても僕は強いからさ」

 

前を見据えながら、後ろ手に右手を振るう。実際問題、佐藤君やダクネス、他の冒険者達だと斬り捨てられた冒険者と同じ轍を踏みかねない。・・・・・・ダクネスは硬いから問題ない気がするけど。

 

「名を名乗れ、冒険者よ!」

 

デュラハンが大剣を地面から抜き、僕に突き付ける。――――――この名乗りをするのも久しぶりな気がする。

 

「――――――魔術師、蒼崎秋」

 

魔術回路を起動。それと同時に『七天』の能力が発動する。この礼装には幾つかの能力がある。今回使うのは武器強化。僕の魔術で強化した物は魔術が解けると壊れる。それで何度も武器が壊れた。

 

「魔術師?聞いたことがない職業だな。そもそも貴様は盗賊職のはずだ」

 

・・・・・・?どうして僕が盗賊職だと思っているんだろうか、このデュラハンは。だけど好都合だ。今はその勘違いに感謝しよう。

 

「さあ?盗賊かもしれないし、ウィザードかもしれない、ソードマスターかもしれない。もしかしたら、他の職業かもしれないね」

 

「・・・・・・ふん。貴様の職業が何であれ、するべき事には変わりはない」

 

両手の夫婦剣を握り直す。――――――僕とデュラハン。同時に走り出し、大剣と夫婦剣が激突した。

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

「す、すげぇ・・・・・・」

 

秋と魔王軍幹部のデュラハン、ベルディアの戦いを見ている冒険者の誰かが、そう呟いた。もしかしたら、呟いたのは俺かも知れない。

 

「・・・・・・す、凄いですね」

 

「うむ・・・・・・私も長く冒険者をしているが、あれほどの動きが出来る者は早々いないぞ」

 

めぐみんとダクネスの話を聞きながら、目の前の戦いを見る。ベルディアが大剣を振り下ろせば、秋は体を回転させて、右手に握っている黒い短剣をぶつけて大剣をそらす。そして、回転の勢いのまま黒い短剣でベルディアの頭を狙う。ベルディアは頭を軽く上に投げて、秋の攻撃かわす。

 

「素晴らしい!素晴らしいぞ!!よもや駆け出し冒険者が集まる街で、貴様のような強者と出会えるとは!魔王様と邪神に感謝しなければ!!」

 

ベルディアと秋がお互いに距離をとる。ベルディアはよほど強い冒険者と戦えるのが嬉しいのか、大剣を正眼に構えながら笑っている。

 

起動せよ(セット)身体強化・Ⅲ(ブースト・ドライ)

 

俺達がいる場所からは聞こえないが、秋の口が小さく動いた。すると、秋がベルディアに向かって走り出す。

 

「ぬんっ!」

 

ベルディアは大剣を右から左に横に振るおうとする。

 

「――――――――――」

 

秋の口が小さく笑ったのを俺は見た。秋は右手の黒い短剣と左手に持っている短剣をベルディアに向かって投げた。

 

「なにぃっ!?」

 

ベルディアも武器を投げるとは思っていなかったのか、驚きながらも、横に振るおうとした大剣で弾いた。弾かれた短剣は秋の後ろまで飛んでいき、地面に突き刺さった。

 

「エナジー・イグニッション!」

 

秋は右手をベルディアに向けて、魔法を使う。

 

「ぐがあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!?」

 

突然、デュラハンの体から青色の炎が噴き出した。デュラハンは苦しそうに呻きながら、大剣を落とした。

 

「そ、そうか・・・・・・っ!魔法と近接武器が使える職業・・・・・・貴様の職業はルーンナイトだなぁ!?」

 

「ごもっとも。僕の職業はルーンナイト。でも、驚いた。体内から燃やされているのに喋ることが出来るなんて」

 

「クッ、クハッ、クハハハハ!この程度の炎などたいした事ないわ!!俺を倒したければこれ以上の炎を持ってくることだ!!」

 

ベルディアは体内から燃やされながらも、落とした大剣を拾う。秋も短剣を拾って、構えた。何となくだが、この一撃で勝負が決まる気がする。秋とベルディアの戦いを見守っている誰もが固唾を呑み込んだ。

 

「行くぞ、アオザキシュウ!!」

 

「ああ、終わらせよう」

 

ベルディアは頭を空高く投げて、大剣を両手で握る。取り囲んだ冒険者達を一瞬で倒した構えだ。秋が駆ける。

 

「ウオオオオオオオオオッッッッッッ!!」

 

空高く投げられたベルディアの頭が雄叫びを上げる。秋がベルディアの間合いに入る。ベルディアが秋の体を斬りさこうと大剣を横に凪ぎ払う。秋は横から大剣が迫っているのに避けようとしない。誰もが秋が斬り裂かれると思っただろう。

 

「――――――ふっ」

 

俺の視界から秋が消えた。いや、正確にいうなら秋は走りながらしゃがんで剣先をギリギリの所で避けた。

 

「はあっ!!」

 

黒い短剣がベルディアの鎧を斬り裂こうとするが、表面を傷つけるだけだ。秋はそのままベルディアの後ろに出た。

 

「無駄だ!その鎧は希少金属製の鎧!そう易々と斬れると思うな!!」

 

「ああ、それは今ので理解したよ。物質強化・Ⅸ(マテリアルブースト・ノイン)!」

 

秋とベルディアが同時に身を翻す。秋が握っている短剣が巨大な剣になっていた。二人とも頭より高く剣を構えていた。

 

「「――――――――――」」

 

二人同時に剣を振り下ろした。辺りが静かになる。

 

「――――――見事」

 

ベルディアの体が後ろに倒れた。ベルディアの頭も空から落ちてきた。ベルディアの頭と体が黒い塵になって、風に乗って飛んでいった。

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

「流石は魔王軍の幹部と言ったところだね・・・・・・」

 

左肩から流れる血を見て、ベルディアが居た場所に視線を移す。ほぼ同時に振り下ろした剣は、ほんの少しだけ僕の方が速かった。あとは力任せに振り下ろしただけだ。

 

(ただ・・・・・・うん、楽しかった)

 

久しぶりに楽しかった。カエルの討伐とか墓場の幽霊の除霊とかもそれなりに楽しいけど、命をかけた戦いの方が楽しい。手元からパリンッと何かが砕ける音がした。白と黒の夫婦剣、干将・莫耶が砕けて消滅した。

 

(武器のことも真剣に考えた方がいいかな。投影品だから問題ないけど、無限にあるわけじゃないし。宝具なんてもってのほか。『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』が使えたから問題ないかも知れないけど、他も使えるかどうかわからないしもうしばらく様子見だね)

 

「あいたたたっ・・・・・・」

 

強化魔術の効果が切れたからか、斬られたところが痛みだした。アクアに治してもらおう。服も新しいのを買わないとダメかな・・・・・・この服、結構気に入ってたんだけど。

 

「アクアー、回復魔法かけ――――――」

 

「「「「「おおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」」」」」

 

ようやく立て直したアクアに、回復魔法をかけてもらうおうとしたら、他の冒険者達に囲まれて胴上げされた。

 

「すげぇ!すげぇよあんた!!魔王軍の幹部を一人で倒しちまうなんて!!」

 

「ねえねえ!今度、私とクエストに行かない!?たっぷりサービスするから!」

 

「ちょっ、下ろしてくれないかなぁ!?いたっ!?誰かいま肩の傷触った!?痛いんだけど!?」

 

わっしょーい、わっしょーいと人を勝手に胴上げする冒険者たち。ちょくちょく肩の傷に誰かの手が当たるせいで痛い。佐藤君もめぐみんも苦笑いしていて助けてくれる様子はない。アクアはデュラハンに殺された冒険者達を蘇生魔法で蘇生していた。ダクネスはデュラハンに殺された冒険者達のために祈りを捧げていたのに、アクアが冒険者達を復活させたことで、顔を赤くして両手で顔を隠した。

 

(抵抗するのも疲れるし、流れに任せよ)

 

抵抗するのも疲れるので、その場の流れに任せた。

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

デュラハンを倒した翌日。僕と佐藤君はギルドに向かっている。デュラハン討伐に参加した冒険者全員に報奨金が支払われるからだ。アクアは早く報奨金が欲しいからか、先にギルドに走っていった。ギルドの入り口につくと、中から酒の臭いと熱気が漏れ出ている。

 

「あっ!ちょっとカズマにシュウ、遅かったじゃないの!もう既に、皆出来上がってるわよ!」

 

先に報酬を受け取ったアクアは酒を飲んでいて、既にぐでんぐでんに酔っ払っている。他の冒険者達も既に酔っ払っていて、中には千鳥足で歩いている人までいる。

 

「ねえカズマ、シュウ、お金受け取ってきなさいよ!もう、ギルド内の冒険者達の殆どは、魔王の幹部討伐の報奨金貰ったわよ。もちろん私も!でも見ての通り、もう結構飲んじゃったけどね!」

 

アクアがお金が入っている革袋の中を見せてきた。大分飲んだのか革袋の半分ぐらいしか入っていない。

 

(佐藤君。アクアがお金を貸してほしいとか言っても絶対に貸さないでね)

 

(別に良いけど・・・・・・絶対にお前に泣きつくぞ?)

 

(その時はその時さ。それよりお金を貸して、それで味を占めたらアクアのためにならないから絶対に貸さないでね)

 

(お、おう・・・・・・)

 

これもアクアのため。佐藤君にも心を鬼にしてもらおう。あとでめぐみんとダクネスに根回しをしておかないとね。

 

「来たかカズマ、シュウ。ほら、お前達も報酬を受け取ってこい」

 

「待ってましたよカズマ、シュウ。聞いてください、ダクネスが、私にはお酒が早いと、どケチな事を・・・・・・」

 

「いや待て、ケチとは何だ、そうではなく・・・・・・」

 

めぐみんとダクネスがワイワイとやっているのを放っておいて受付の女性の前に立つ。女性は僕と佐藤君を見て笑顔を浮かべた。

 

「お待ちしておりました、サトウカズマさん、アオザキシュウさん!こちらがサトウカズマさんの報酬になります!」

 

佐藤君は女性からアクアと同じぐらいの大きさの革袋を受け取った。

 

「アオザキシュウさんには魔王軍幹部を単独で討伐した功績を称えて、金三億エリスを与えます!」

 

「「「「「さっ!?」」」」」

 

僕らはその金額に絶句し、あれだけ騒いでいた冒険者達が静まり返っていた。そして、一気に冒険者達が騒ぎだして奢れと言ってきた。三億エリス・・・・・・日本円で三億円。こ、これだけあれば溜まりに溜まっている幹也さんに未払いの給料が払える・・・・・・っ!?

 

「集合、全員集合」

 

一度冷静になり、四人を集める。・・・・・・よくよく考えればこの世界のお金を持って帰れるかどうかもわからないし、パーティーメンバーで山分けすることにした。




・ベルディアの最期。

頭でサッカーされたり神聖魔法で成仏するよりかはましだと思う。

・カズマパーティーの借金。

原作通り、洪水が起きなかったので借金無し。ただし借金からは逃げられない。

・魔導書の設定的なもの

神造兵器の使用は不可能。『王の軍勢』や『不死の一万兵団』、『炎門の守護者』といった宝具や『十二の試練』といった宝具も使用不可能。伝承に寄りすぎたのも使用不可能。ただし、『虚栄の庭園』、『王冠:叡智の光』などの一から創らないといけない宝具などは使用可能。


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