ありふれた陰の実力者で世界最強   作:KyaNa

8 / 10
今回貼り付け感が凄まじいです。(結論)別な台詞が思い付かない。

お楽しみ下さい。


役者になるのを進めたくなるよ

 あのクレーター事件から3年ぐらい経った。あの後の僕は取り敢えずアルファを簡易拠点に寝せかせてから後処理を行った。最初は大変かと思ったけど、後処理は案外早く終わってくれた。どうしてかいうと魔物の群れがタイミング良く近くに居たから、そいつらを斬って死体の所に放置しておいたのだ。

 

 すると翌日、朝の掲示板には『魔物の縄張り争いの痕跡か!?』とポスターの一面にあの場所が大きく記載されていたのだ。

 

 魔力痕跡も残らないようにバッチリと消して置いたから、僕たちが疑われる事は一切なかった。うん、我ながら完璧な隠蔽だったと思う。

 

 ま、そんな話はどうでも良いとして僕とアルファは13歲になり、クレア姉さんが15歳なった。13歳になっても特に意味は無いが、15にはそれなりの意味がある。それは冒険者として活動が出来るという点だ。冒険者とは凶悪な魔物が潜む大迷宮に潜り、様々な人達が一攫千金を狙いに集まる異世界ならではのサラリーマン的職業なのである。

 

 それでだ。つい前日に姉さんが冒険者として活動を始めたらしいけど、クエスト初日でパーティごと行方不明になったらしい。それで現在、カゲノー家全員大騒ぎってわけ。

 

「ふむ、クレアが最後に消息を絶ったのは『オルクス大迷宮』の10階層で間違いないな」

 

 ダンディな声で親父が言う。顔は悪くない。

 

「しかし初日のクエストで10階層に挑むとは……強い心掛けだな」

 

 ダンディ親父は窓枠に手を添えて遠くの空を見る。片手にウィスキーとか似合いそうだ。

 

 これで髪さえあれば……。

 

「で?」

 

 凍えるような声がかけられた。

 

 母さんだ。

 

「よく考えれば可笑しいですよね。なぜクレアが初日から10階層まで潜ったのでしょう。賢明なあの子なら危険だと分かっていた筈ですよね?」

 

 冷徹な声で母さんが親父に告げる。

 

「そうですけど…………あっ」

 

 親父が呆気ない声を上げる。

 

「ようやく思い出しましたか」

 

 母さんが親父に追い詰める。

 

「クレアが出立する前に貴方が『クレア。初日は10階層がオススメだ。魔物はかなりの強さだが、お前なら良い経験が詰める。パーティで行けばそこまで苦戦はしないだろう』ってカッコつけながら言ったわよね?」

 

「そ、そんな事もありましたね……」

 

 頬に冷や汗を流しながら親父が答える。

 

 次の瞬間、

 

「このハゲェェェエエエ────!!!」

 

「ひぃ、す、すいません、すいません!!」

 

 ちなみに僕は空気。期待はされてないけど、迷惑も面倒もかけない、そんな生枠のモブ弟としてキープしている。

 

 それにしても姉さん割と良い人だったのに残念だ。『オルクス大迷宮』となれば僕は立ち入れないからどうしようもできない。

 

 僕は神妙な顔で親父と母のじゃれあいを見守って、隙を見て自室に戻り、姉さんの消えた方に手を合わせてからベッドに転がった。

 

 そして

 

「出てきていいよ」

 

「はい」

 

 声と同時にベランダの方から気薄な魔力が高まり、何も無い空間から黒いスライムボディスーツに身を包んだ1人の少女が現れた。

 

「ベータか、報告を頼む」

 

「はい」

 

 アルファと同じハーフエルフの少女。アルファは金髪だったけど、ベータは銀髪だ。

 

 猫みたいな青い瞳に泣きぼくろの彼女は、僕とアルファに続く3人目のシャドウガーデンメンバーだ。ほどほどにって言ったのに、アルファが捨てネコ拾うみたいに連れてくるから今では7人も居る。

 

 ちなみにベータは“空間魔法”というデタラメな固有魔法を持っているらしい。そのおかげで僕の足が楽になったのは言うまでもない。

 

 僕は椅子に深く座りながら足を組み、ベータの報告に耳を傾ける。

 

「アルファ様は現在、クレア様の痕跡を探る為『オルクス大迷宮』へ、イプシロンは民家や周辺の調査を、ガンマは情報の整理を担当しております」

 

「行動早いね、姉さんまだ生きてる?」

 

「おそらく」

 

「助けられる?」

 

「可能ですが……シャドウ様の助力が必要です」

 

 あ、僕のことはシャドウって呼んでもらってる。シャドウガーデンの主だからね、フフフ。

 

「アルファがそう言ったの?」

 

「はい。人質の危険を考えると万全を期すべきだと」

 

「へぇ……」

 

 アルファは正直言ってもう相当強い。そのアルファが助力を請うって事は、なかなかの実力者がいると見ていい。

 

「血が滾るな……」

 

 僕は掌に圧縮した魔力を瞬間的に解放し、大気を震わせる。

 

 特に意味はないが、こういう演出大好き。

 

 ベータも驚いて『さすが……』とか呟いてくれるし。

 

「それで残りの冒険者はどうなっている?」

 

「ッ──失礼しました。お気付きかと思いますが、冒険者に紛れた教団の手の者のようです。おそらく幹部クラスの者が関わっているかと」

 

 なるほど、今回は幹部クラスと来たか。最近はアルファ達がかなり設定を煮詰めてきているからかなり盛り上がるんだ。

 

「なるほど……。それで、教団はなぜ姉さんを?」

 

「クレア様に『解放者の子孫』の疑いをかけていたのかと」

 

「ふん、勘のいい奴らめ……」

 

 こんな感じ。

 

 しかも資料とかも集めてきて『やはりあなたの言葉に間違いはなかった……』とか『数千年前に解放者の生き残りが……』とか『この石碑からはエヒト教団の痕跡が……』とか、いや古代文字とか魔術文字見せつけられても分からないから。

 

 それにアルファもあんまり分かってないんじゃないかな、それっぽいの幾つか並べて、僕が『陰の実力者』を真似るようにエヒト教団の真実に迫っている感が欲しいんだよ、多分きっとそうだと思うよ? 

 

「こちらの資料をご覧下さい。我々が集めた最新の資料の中にクレア様がさらわれたと見られるアジトの痕跡が……」

 

 ベータがそんな感じで膨大な資料を並べはじめたけど、いやわかんないから。半分以上古代文字とか魔術文字だし、わけわからん数字やら紋章やら何やら、いや君たちそれっぽい資料作るのホントに上手いね。その分野ではもう完全に僕は勝てないよ。

 

 僕はベータの説明を聞き流すと、投げナイフを取り出し壁にかかった地図に投げつけた。

 

 カッと。

 

 音を立ててナイフがある一点に突き刺さる。

 

「そこだ」

 

「ここ、ですか? いったい何が……」

 

「そこに姉さんがいる」

 

「ですが、ここには何も……いえ、まさか……!」

 

 ベータは今気づきましたって感じで慌てて資料を漁り出す。

 

 いや、うん、何となく有りそうな場所に適当に投げたんだけどね。

 

 やっぱり演技上手いよねベータ。あれでしょ、僕が指差した所に隠しアジトとかあるんでしょ? 

 

「資料と照らし合わせた結果、 シャドウ様の指摘されたポイントに隠しアジトがあると思われます」

 

 ほら来た。もういっそのこと役者になるのを進めたくなるよ。

 

 

「しかし私たちの調査情報を待たずに、この膨大な資料を一瞬で読み取り、さらに隠されたポイントまで読み解くとは……流石です」

 

「修行が足りんぞ、ベータ」

 

「精進します」

 

 いいね、演技だと分かっていてもグッとくる。ツボを押さえているよベータ君。

 

「至急全メンバーに通達します。決行は今夜で?」

 

「ああ」

 

 そのままベータは一礼し去っていった。目とか輝いていたな、尊敬してます感出てたよ。アカデミー級の演技に乾杯。

 

君は誰が好きかな?

  • アルファ
  • ベータ
  • デルタ
  • ガンマ
  • イプシロン
  • イータ
  • ゼータ

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