‐『日朝関係の視角』のまとめ その2(『太平洋戦争末期の在日朝鮮人』シリーズ)‐
テーマ:近代史
前回の記事
‐『日朝関係の視角』のまとめ その1(歴史と哲学は“複雑な時代”に向き合う「処方箋」)‐
・再読シリーズ① (在日×戦争)
‐シリーズ・在日朝鮮人と戦争 その1(「当時の空気」から 何を学ぶか)‐
‐シリーズ・在日朝鮮人と戦争 その2(逃げられない「監獄列島」)‐
‐シリーズ・在日朝鮮人と戦争 その3(「戦争の狂気」に晒される日本列島)‐
‐シリーズ・在日朝鮮人と戦争 その4(現実化する『本土決戦』と「北海道避難計画」)‐
‐シリーズ・在日朝鮮人と戦争 その5(戦争は絶対に起こしてはならない)‐
‐シリーズ・在日朝鮮人と戦争 その6(仮に「本土決戦」が実行されたら・・・・)‐
‐シリーズ・在日朝鮮人と戦争 最終回(終戦直後にあった虐殺)‐
どうやら、これらの記述は本書の著者である金勉一氏の『体験談』らしい。
1.太平洋戦争末期の在日朝鮮人
これは私の切実な体験に基づいた記録である。
あの戦争が、日本軍部の予定どおりに「本土決戦」となったらしたら、米軍が上陸する際には、多くの朝鮮人は真っ先に突き殺されたであろう。
これを私は見ぬいて、かなりアクセクした。
日本の敗戦後、占領軍の没収した内務省警保局の一五年にわたる『特高月報』が、先年、アメリカより返されて印刷刊行された。その各号には朝鮮人の動向や対策が詳細に記載されている。
それによると、当時の私の密やか想定を遥かに超える“朝鮮処断”の伏線があり、びっくりした。たとえば、アメリカのB29爆撃機に朝鮮人飛行士が乗っている、朝鮮人が日本婦女子を食っている、朝鮮人が各地の鉱山で爆発を起こしている、などとさまざまな流言がもっともらしく信じられたと記している。
あの戦争が半年延びていたら、日本内地はもちろんのことアジア全域で“朝鮮人皆殺し”をあえて行ったであろう。過ぎ去った悪夢の戦争とはいえ、背筋の寒くなる思いである。
ちなみに本編は『現代の眼』の現代評論社賞の第二回受賞作である。
『日朝関係の視角』 金勉一著 ダイヤモンド社 259~260頁より
私たちはこういう「過去の出来事」を“総括する機会”がなかった。
何かといえば、感情的な理由で『へそを曲げたり』して、事あるごとに「反日」「売国」という文言を擦り付け、ある種の「敗北」から遠ざかり、自らの心の安定をはかってきた経緯がある。
「他者黙らせる言葉」としての「反日」が乱用され、反証を返さない空虚な疑似言葉として、各々が真に思考を解放して議論することを避け、前述の言葉に「頼り切っている」人も多いではないのでしょうか。
なにかすると、「反日教育をしているから差別されて当然」だの、「反日国家とは国交を断絶すべきだ」という幼稚で感情的な言葉を発する人をネット上でもちらほら見かけます。
敗戦濃厚のナチスドイツの“戦争目的”が『ユダヤ人の殲滅』に収斂していったように、こと大日本帝国においても「同様の動き」が各地で起きていた史実はあまり知られていない。
それゆえ、「反動」としての『被害者意識』を抱いて、ヘイトスピーチに走ったり、そうした行動とは距離を置いていても、総体としての朝鮮半島に「よろしくない感情」を抱く人々は、おそらくかなりの数を占めるのではないかと、現代日本政治の趨勢をリアルタイムでウォッチしていく上で、より確信へと繋がっていくのです。
・私自身の「リベラル批判」
余談として、拙ブログ先達でいらっしゃる英語ブロガーのMichikoさんは、北東アジアの議論をするとき『中国』と『朝鮮』の人々という言葉を使われます。
これはものすごく「真理」を突いた言葉で、実際の歴史を勉強した人々にとって、まことにしっくりくる表現でもあり、現代のリベラル人士が、とりわけ朝鮮半島の歴史問題において、北朝鮮を除外した「韓国」のみに固執する姿は、逆に『歴史に対する無知さ』を露呈する態度で、「現在の政治情勢」に翻弄された弱者の成れの果てであり、ゆえに朝鮮学校や総連に対する攻撃を“容認する”姿勢へと繋がります。
これは完全に「偽善者」であり、本当のリアルを知らない人たちが、アメリカの“分断工作”に乗せられて、金権主義に満ちた民主制「だけ」に、思考停止した正邪の判断を持ち出し、表面上のイデオロギーに流される浅学者であること。本当はリベラルでもなんでもなく「特定の思考パターン」に嵌った人たちであり、この雄大で悠久なる北東アジアは、そうした事物が流入する「はるか以前」から、立派な『文明の地』として、欧米より優れた文化的生活を人々が営んでいた歴史が存在したことをは、幾多のすぐれた歴史書が証明しています。
‐中国こそ現代の『周王』である 最終回(「北東アジアの民」の一人として)‐
ひるがえって、似非右翼や保守はもとより、頽落したリベラル諸勢力にも『オリエンタリズム(近代主義)』の影響は、ある種の“日本人の限界性”として今もなお強く残存し、彼らの論理で行けば、儒教制度の江戸時代がたちまち『暗黒時代』となってしまう、とんだ“自虐史観”に至ってしまうわけであり、闇雲な欧米賛美や大西洋主義者に苦言を呈したいと思います。
<参考資料>
・『日朝関係の視角』 金勉一著 ダイヤモンド社
<ツイッター>
【歴史学を学ぶ大切さを伝えるブログ(ふーくん)】
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