Project L2D

「JARLのJARDへの統合策」について考察してみました.
なんか,隣の芝生も青くはなかったです.
それすなわち「儲かってない団体二つが並存している」という状況なので,ある意味では「やるべき」という結論になります.
(註.JARDをJARLに取り戻すのではありません.)


■統合の必要性
まず,斜陽なわれらが趣味の現況を,全盛期との比で確認しておきましょう.
以下のとおりです:
項目全盛期現在
JARL会員総数193,945会員
(H5年度末)
66,404会員
(H27.11.7)
34%
局数1,364,316万局
(H6年度末)
435,847局
(H27.12.5)
32%
四アマ取得者170,837名/年
(H3年度)
13,445名/年
(H26年度)
8%
CQ誌140,000部/月
(S55・S56年)
15,991部/月
(H26年)
11%

...こうも落ち込んだ“スモールワールド”に,そもそも,二つもの団体が必要でしょうか?
統合して効率化すべきは効率化すべきでしょうし,
LCM (Life Cycle Management)の意識による,収益源の相互補完もすべきでしょう.



■残すべきはどっち?
JARDです.

●「証明・認証事業」の存在
ちなみにJARDの設立は,まさに華やかなりし頃のH3年でした.
きっかけは,おかみのお考えでした:

  アマチュア機も「技適」にしなさい.「保証認定」ではなくて.
  ついてはそれは,「財団」法人でやるもんだ.

      「人」を集めたのが社団法人なのに対して,「お金」を集めたのが財団法人.

      社団法人では何が問題かというと...
      たとえば,選挙の結果,理事陣が替わって会長が替わって
      「技適やっぱやめる」とか言い始めたら,監督省庁はたまったもんではありません.

...ということで,
「証明・認証事業」を提供する限り,これからも残すべきはJARD――(一般)財団法人のほう――であるべきことが導けます.

    (ただし,「証明・認証事業はexitしてしまってもいいのでは?」の議論はありえます.
     TELECとかにです.
     後述.)


●どちらかというと「無駄」と言わざるを得ないJARLの社員総会の実態
375万円もかけて集めても,モッタイナイだけです.
H27.6開催の結果:
正副議長準備書面提出ほか当日発言東京まで来て座ってただけ
or 欠席
2名18名11名96


●専務理事中心の運営
いまでも実態としては専務理事を中心に運営が回っています.
いまの社員総会も,むかしの総会も,回答の大部分は専務理事からですよね.

そこに,何らかの手段で会員の意見が反映できさえすれば,いいわけです.
必ずしも「理事会」「会長」や「社員総会」という,「いまのJARLの形」にこだわることはありません.


●会員むけのサービスは,社団・財団を問わず可能
「QSLビューロー」と「アンテナ保険」だけやってくれればそれだけで十分――との声も.


●『日本野鳥の会』の例
「公益財団法人」ですが,機能しています(https://www.wbsj.org/).

JQ2GYU/JF1LZQによる説明・提案:
https://47fe7fae046f57e8715e1dd69d9b4eff2fab109c.googledrive.com/host/0B0KjsTm86R9DdW85dEFwWXZHUDg/HAM/JARL/ 【11/2 URLを以下に変更】
http://www.sakurai.or.jp/HAM/JARL/

●会員に訴えられ続けるJARL
裁判「沙汰」という意味では8件(http://motobayashi.net/history/ayumi/saiban.html).
ふつうに考えれば「同じ趣味で仲のいい者同士が集う団体」のはずなのに,この有様.
“人の集まり”である社団法人――という,「人と人とのぶつかり合い」の面からの影響もあるでしょう.


●【補】 見栄えの問題の解消
以下はアリです:
・「統合後のJARD」の団体名を,「(新)JARL」に改称
・団体としての起算は1926年



■収益源の確認
さて,両団体のお金の稼ぎ方として,
・会費収入 のみに頼る JARL
・いろんなお財布がある JARD
とでは,後者に分がありそうに感じます.

まずは,両団体の決算書からそれを確認します.
どこからお金を得ているのか?:

...ん~これじゃあ,どっちもどっちでした.
端的にはこうですね:
・どちらも単一の収入源に大きく依存
 - JARL … 会費
 - JARD … 養成課程講習会

・どちらも赤字
 小さな字で書いてあるとおり,双方とも赤字です.
 そもそも全体が“斜陽”なのですから,
 「どちらか一団体だけはハッピー」という事象は,起こりえないのでしょう.
 ならばまして,統合による救済を急がねばなりません.

・JARD < JARL
 エヴァ(JARD)よりもアダム(JARL)のほうが,さすがにまだ財政規模が大きいです.


●JARDの主力事業は赤字
さらにもまして,JARDの主力事業は,少なくともH26(2014)年度は赤字でした:
項目InOut利益率
養成課程講習会2億6,457万円3億0,365万円▲15%
証明・認証事業335万円545万円▲64%
保証(「その他事業」を参照)101万円256万年▲254%

  : 上で「exitしちゃえば」と書いたのはこのためです.
     全体への貢献度小(ゴミ),かつ,赤字...少なくとも昨年度は.
     そもそも「十数モデル/年」しか持ち込まれないわけですし.
     TELECとかに委ねて,スケールメリットを追求したほうがええんでないかい?

     また各メーカも,「デジ簡」とかも手がけている中で,
     ・アマチュア機はJARD
     ・ほかはTELEC(例)
     とかの振り分けは,じつは やりにくかったりするのでは?

  : 立ち上げ期なのでコストが掛かったのでしょうか?


...で,これらの赤字を,財産――JARLは2億円を拠出しましたよね――の運用益で,できるかぎり埋めているかんじです.

  「それが財団法人のお役目だろ」という話もあるでしょうが.


●競合激化によるJARDの収益悪化もあり得る
くわえて,三領域のすべてで民間企業の参入が認められています.
ですから,いまも・将来も,バラ色ではありえません:
・養成課程講習会 … 「QCQ企画」とか「ラジオ少年」とか,ほかにも低価格なところが数社.
・証明・認証事業 … いまのところは,アマチュア機を手がけているのはJARDだけ.
             しかし,民間企業がやってもいい(TELECでも).
・保証 … 「TSS」あり.



■両団体の経営状況
下図のとおりでした.
いわゆる,オマエモナー(死語?).
クリックで拡大します(117KB):


●JARD
そうはいっても今年度,“赤黒トントン”に持ち込もうとしていますね.
えらい!


●JARL
まず,「信書騒動で +2,700万円」という話がありますので,費用として加算・加筆しました.

会長サンは「会員減なら20年後には存亡の危機」とか悠長なことをおっしゃっていますが,どういう感覚なのでしょうか?
...このままでは10年後には財政危機です...いや,10年もちません.

どう考えても,以下の二択しかありえません:
・策1 仕分けして,事業を減らす
・策2 会費を上げる

それなのに手を打たず,十数年間,赤字の垂れ流しのままです.
改善の意志が見られません.
もしかして――
(1) 故意にこのままの流れで運営してJARLを潰しかけ,
(2) とても判りやすく“やむなし”という状況を作りだし,
(3) JARDへの統合を図ろう
――という,執行側のストーリなのでしょうか?
いわば,判った上での“ハードランディング”によるJARDへの統合をねらおうと?



■思考実験: 起こること
●JARL内の改革議論は凍結(∵不要)
「年齢制限撤廃だ」 とか,
「規模的にもう地方本部 支部制に戻せ」 とか(関連後述),
「もうこんなの――理事候補者否認――いやだから選挙制度を改革しよう」
とかの議論は一気に不要になります.

...JARLはなくなるのですから.


●肝心な話: JARLをJARDにどう統合?
以下,スキームとして可能かどうかは,法令面からも検証が必要です.
おそらくは,「JARDの理事会」and/or「JARDの評議員会」に,「いまのJARLの理事相当」を“アマチュア側の権益代表”として送り込むことになるでしょう(註.すでにいまでも入っています).
そして「アマチュア側代表としてJARDに送り込む人」は選挙――いまの理事選挙に近い――で選ばれることになるでしょう.




■思考実験: すべきこと
●早期にJARDへの統合検討を
・JARL内の改革を,これから何年も掛けてのほほんと悠長に手がけている時間はないのです.
 ∵「もって10年」で財政破綻です.
 直ちに,“ソフトランディング”によるJARDへの統合をめざして,
 舵を切った方がいいのではないでしょうか?

・「統合によるオーバヘッドの削減」は期待できます.
 端的な例では,専務理事が一人ですむのですから.


●赤字の解消はどのみち必要
JARDに統合すれば今のJARLの赤字が補填される――わけではありません.
「JARDはJARD」「JARLはJARL」での黒字化努力は依然必要です.


●会員組織の形――「支部」レイヤの格差解消
一つのアイディアとしては...
・いまの「登録クラブ」 → 「支部」の役割に格上げ
・いまの「支部」 → 必要に応じた,登録クラブ間のゆるい横連携
・いまの「地方本部」 → 統合後のJARDが直接面倒を見る最小単位

  ∵もはや都府県支庁単位で全国普遍的な(ユニバーサルな)会員サービスを
   維持することは,実力として不可能です.
   ・H26年社員選挙での惨状:
    - 支部長いまだに不在 … 宮崎
    - 支部長立候補なし … 千葉・埼玉・宮崎・沖縄・岩手・空知留萌・胆振日高・福井
    - 支部Webなし … 空知留萌・宮崎
    - 立候補者数定員未達 … 関西・中国・東北

   ・同じ会費を徴収しているのにもかかわらず,見返りが支部ごとに不平等なのは,問題.

   ・“支部事業”といっても,実態として“登録クラブ会員の徴用”であること(支部)も.

   ・疲弊した支部を維持することは,必ずしも正義ではない.
    現場の声 (オホーツク支部報 #62 編集後記):
    http://www.jarl.com/okhotsk/shibuhou/shibuhou62.pdf
...これまでJARLが支部問題を財政改革に歪曲化させたのは解せない。今北海道の理事に求められることは、道内に於ける支部のあり方を整理するとともにそれに合わせた地元理事の定数増も見越した真剣な調整能力であろう。8支部を残すことだけを誇りとし、青息吐息の支部をさらに苦しめることになってはいないか。...


●とりあえずはどうしたらいいの?
よくJH3GXFが言っているように,「選挙できちんとした人を選ぶこと」ですかね.
なにはともあれ,黒字化せんといかんのです.