初めまして。私はみなはむという名で絵を描いて展示をしたりイラストの仕事をしたりしています。
私は普段アナログもデジタルもどちらも使って制作しています。
本コラムでは、その経緯とメイキングを簡単に紹介して、何か絵を描く人や見る人に参考になったりならなかったりしたらいいかなと思います。
私は幼い頃から絵を描くのが好きで、理解のある両親に支えられて好きなことを続けられました。美大を出て、現在は絵を描いて生計を立てています。
小学校高学年のときに家にインターネットが開通、流れるようにお絵かき掲示板の文化に触れ、中学生のときにpixivと出会い、誕生日にペンタブを買ってもらいました。私のデジタルイラスト遍歴はここから始まりました。
デジタルでイラストを描いて交流するのに熱を上げていた一方、心のどこかでは「きちんと絵がなんなのか勉強したい」という気持ちがありました。高校ではデザインを学び、美術予備校に通い、大学では日本画を専攻しました。
pixivでみるイラスト的なものと、絵画の二つが私の中には存在しています。大学でどちらかに振り切れるかと思いましたがそうはなりませんでした。
私は普段SNSで絵を共有することがほとんどですが、画面を通じてインターネットで絵を見るとき、それはやはり同じ画面で描かれたデジタルイラストが基本的に伝わりやすいなと思います。
でも、どうしても学びを進める上で体験した物質としての作品の良さ、魅力みたいなものが捨てきれないのでアナログでも絵を描き、貯めたものを展示で発表することを続けています。
今回はそのデジタルとアナログの長所って何だろうと振り返ってみて、絵を1枚づつ制作してみました。
①デジタルイラスト
デジタルの特徴は上でも描きましたが「画面での伝わりやすさ」支持体である画面が発光していること、複製の容易さが大きいかなと個人的に考えています。
今回は印刷物にはしませんが、これらの点を踏まえて絵を考えてみました。
完成した絵です。
画面が発光しているので環境光に左右されずに色の諧調も認識しやすい暗い絵に強いと思い、今回は夜の明かりの絵にしました。
普段私は資料用に気になったものや風景の写真をたくさん撮りためています。
今回もその資料の中から夜の絵にできそうなものを探して、描きたい絵と紐づけて描いてみました。
エスキース帳に大まかにイメージを描きます。いつもこのような感じで、鉛筆でささっと認めます。
こういう状態で描きたい絵がたくさん溜まっています。デジタルで描くかアナログで描くか、画材をどうするかはこういうのを描いてみてから考えることが多いです。
これを元に、画面に入っていきます。
ここ数年デジタルで描く絵はほとんど全てiPad ProとApple Pencilで描いています。ソフトはprocreateを使用しています。
ドライブに資料写真を入れて、画面分割でそれを参照しながら描くことが多いです。
エスキースを参照しつつ大まかに構図をとります。
上から乗算レイヤーで大まかな色のイメージをつけていきます。
この絵をみててもわかるように私は形はしっかりと取らずに色で描きながら決めていくことが多いです。
イメージを崩さないように進めて行けたら一番いいなと思います。
さらに上のレイヤーから人物、木、花を大雑把にレイヤーを分けて描きました。
だいたいいつもこんな大雑把さです。
人物が画面の中でしっくりこないので、周りとの兼ね合いを見つつ着地点を模索します。
こういう部分は、私にとって絵を描く上での辛いところでもあり醍醐味でもあります。
絵を描く時のプロセスは成功率を上げるための願掛けみたいなもので、でも本当に成功するにはその場その場でその絵が何なのかを考えながら、自分と向き合って進めていく必要があります。
それができるときはテンポよく絵が描けるし、できないときはいつまでたってもダメです。しかしなぜか時々忘れてしまうのです…。
最終的にこうなりました。結構変わりましたね…。
ここから上にレイヤーを作り、全体的に描き込んでいきます。
はい、急に完成しました。
私は一枚の絵にあまり時間をかけることがありません。
1つの画面にこだわるというより、テーマをたてそれについて何作かシリーズのように制作するタイプかなと思います。
絵の終盤、今回はこれで完成でいいかなという気になりましたが、気に入らなかったらまた工程の初めから直したり違う構図を試して見たりします。
めんどくさいですが、ささやかなこだわりが積もることで説得力が増すのかなと思います。
思いついても下書きの状態から進まなくて長年放置してからあるときこれ描けそう!と思って完成させられることもあります。
デジタルイラストはこんな感じでいつも描いています。
②アナログイラスト
アナログの作品は、何と言ってもそれ自体が物質であることの迫力があります。
複製には不向きですが、唯一無二の作品と対峙すると感動があります。
私の作風はざわざわしたものに向いているなと思っていて、海や植物をよく描きます。
そういうものを描き重ねるときに、迫力が出て伝わればいいなと思います。今回はそのざわざわ感のあるものを描くことにしました。
ざわざわしたもの…ということで今回は波を描きたいなと思って海の絵にしました。
デジタルの絵と同じ感じでエスキースをしたあと、本番の紙に入ります。
今回はA4サイズのスケッチブックに描きました。
大まかに構図をとっていきます。
だいたい描きたい絵がわかる感じに描き込んだらもう絵の具に入ります。
デジタルと同じで、押さえておきたい部分が下書きでできたら着彩で描いていきます。
アナログでは下書きで曖昧な部分があると着彩で手間取ってしまうので、そういう部分ができるだけこの時点でない方がいいなと思って描くことが多いです。
絵の具に入っていきます。
絵の具は美術予備校時代に作った、透明水彩を詰めたパレットをずっと使っています。
まず絵の中の光を意識して軽く影を塗っていきます。
この絵は夕方の光のイメージだったのでオレンジ味を入れてみました。
水彩絵の具で描き進めるときは、全体的にモヤっとしてメリハリが失われやすいので、絵の中で一番色が暗い部分を意識して優先的に塗ります。(今回だと人物の髪、ズボン、波の影など)
そこから全体の塗りをリードしていくとぐんぐん進みます。デジタルの絵よりもそういった決断力が要るなと個人的に思います。