転調はそれ自体が目的ではなく、曲を演出するための手段です。今回はどのように転調をして行くのかについてまとめました。
目的とする効果によって転調を使いこなす。
転調は闇雲に使えば良いのでは無く、目的とする効果によって転調を使い分けます。転調をすることと、転調を使ってカッコイイ曲を作る技術は似て非なるものです。
■断絶感をコントロールする
転調するキーが変化すると、聴き手の受け取り方も変化します。
「大胆な」「はっきりとした」「あからさまな」転調がフィットする場合や、「自然な」「滑らかな転調」が合う場合があります。
それぞれ楽曲によって求める転調は変わってきます。
■断絶感を出す
・いきなり転調した場合は、強い断絶感があるので、逆にドラマチックで盛り上がる効果を演出できます。
・トップ(一番上の)音は目立つので、前の調に無い音を使うと非常に断絶感が強くなります。
■滑らかな転調にする
・なめらかな転調にしたい場合、例えば遠隔調への転調は基本的にクッションを挟んで転調するまでのステップを挟みます。
・先行調のダイアトニックの音を転入和音で用いると滑らかな転調の準備になります。
・先行調と後続調の切り替わりの部分で共通音を使うコードを使うことで断絶感を和らげることができます。
・トップ(一番上の)音は目立つので、新しい調の音を使う場合はベースに任せたりすることで断絶感を和らげることが出来ます。
断絶感のコントロールのために、多くの転調の実践をしてみましょう。
迂回転調と不確定転調
転調時の断絶感のコントロールとして、調の確定度をコントロールするテクニックがあります。調の確定度とは、明確にその調が何調であるかを決定する要素のことです。
例えばあえてトニックのIを出さないことで調を確定させずにフワフワと不安定にさせることができます。どっちつかずの調の感じが転調する際のクッションとしてよく働きます。後続調のトニックをすぐに登場させない進行は迂回転調といいます。徐々に元のキーにはない#や♭を出していくやり方も迂回転調です。ボイシングやトップノートや後続調の特徴となる音を徐々に出すことでも転調のグラデーションを出すことが出来ます。
一方で、連続したドミナントコードも同様に調を確定させることが出来なくなります。調の中で支配的な力を持つドミナントコードを連続して使う事で、意図的にキーをぼかすことができます。こうしたキーの確定度が低い転調進行を不確定転調といいます。キーが一つに定まらずに次々と転調していきます。
メロディのトップノート次第で断絶感は大きく変わる。
メロディはメロディそのものが調性を持つので、メロディにも調のコントロールする意識が重要です。メロディは曲の主役になり得る要素。楽器では弾けてもボーカルとして、人の声として歌うと歌いにくいといった問題が起こるので、ボーカル曲の転調はより一層慎重に行う必要があります。転調することで歌いにくくならないように、あえて転調後のメロディーを先行調との共通音で構成する場合もあります。
リズム的な転調
アレンジにて、楽器の担当するフレーズやリズムの切り替わりのキメの箇所で転調することがあります。転調した際に、これまで使わなかった楽器を使ったりして曲を構成します。このように、転調はコードネームだけではなく、メロディー、ボイシング、楽曲構成(ブロック)、楽器、アレンジなど音楽全体で考えていく必要があります。
転調の心得
1.転調にどんな効果を求めているのかを明確にする。
2.転調はすれば良いというものではなく、自分がどういう効果を求めているのか設定して、自分が出したい効果を出すにはどのキーへの転調が適切かを明確に意識して使う。楽曲に求めている効果や演出したい雰囲気を検討した上で、一切転調をする必要が無かったりする場合もある。
3.転調はあるキーから別のキーへの切り替えが注目されがち。実際の楽曲で転調をする時には計画性を持って転調する必要がある。
4.「転調したけれど、戻れなくなった。転調したら全体の統一感が失われてしまった。」とならないために、無計画な転調は避ける。それをしないと、帳尻を合わせるために曲の後半に強引な転調を持ってくることになる。