ジェンダー・ギャップ指数世界120位の日本でも、すでに50年前に、ウーマンリブ運動(女性に押し付けられた性役割等からの解放を求める運動)があった。しかしリブ運動ほど、世間から嘲られた運動も、他にない。
1970年代当時の週刊誌等メディアの多くは、リブ運動や運動に参加している女性たちを、「揶揄」し、「からかい」、「笑いもの」にした。「『女・エロス』(当時のリブ系雑誌の雑誌名)に見る猛女史らの性感覚」(『プレイボーイ』、昭和49年2月12日号記事見出し)、「恐ろしやリブカレンダーの中身」(『アサヒ芸能』、昭和50年7月3日号記事見出し)といった具合に。
それから50年。状況は変化したのだろうか? 日本社会では、今日でもSNS等で、「フェミ叩き」があふれている。「フェミニスト」に対し、「怖い」「ヒステリック」「男嫌い」等の言葉が投げかけられると言うのだ。言われている言葉だけからでも、50年前と現在はとてもよく似ていることがわかる。 半世紀たっても、相変わらず女性たちの主張は、「揶揄」や「からかい」にさらされているのだろうか。
リブ運動から10年以上たった1980年代、大学教員だった私は、当時の女子学生たちがリブ運動に対して強い否定的感情をもっていることに気付いた。多くの女子学生たちが、「ウーマンリブって、男をつるし上げるバカみたいな女たちのこと」だと思っていたのだ(幸いにもリブ運動に対する今日の評価はずっと高くなっている)。
私は学生時代にリブ運動にある程度触れていたので、彼女たちのこんな否定的感情が意外だった。「伝わってないのだな、何とかしなければ」と思った。
機会を得て、リブ運動の実像を伝えたいとリブ運動史を文章にまとめ始めたのだが、リブ運動を取り上げている当時のメディア資料を読み進めるうちに、メディアがリブ運動に「揶揄」や「からかい」をあびせかけていることに、気付いた。なぜ女子学生たちがリブ運動を否定的にしか記憶していないのか、やっと分かった気がした。彼女たちは、直接リブ運動に触れたのではなく、「揶揄」にあふれたメディアを通じてリブ運動に触れたのだ。