2021/04/02
14歳の少女が精神病院で体験した「極限の地獄」を読んで、自分が入院で感じたことを書いてみる
3月27日まで精神病院に入院していました。その経験を踏まえて、私の感じた事を事細かに記しておこうと思う。
まずはじめに言っておくべきことは、自分のお子さんを精神病院に入院させることを考えている親御さんは、自分は症状や治療法に関しては門外漢だからといって、絶対に“医者に全てを任せてはいけない”ということです。
何故なら、秘匿性の高い閉鎖病棟でどんな治療が施されているかを部外者は知る術がないのに加え、主治医に権力が集中しているため、人権を無視した横暴が当たり前のようにまかり通ってしまうのです。
私が2か月ほど閉鎖病棟にいる時のことです。主治医の先生に出してほしいと懇願したら、「自分でお金を払うから出してほしいと言った。あとは家族の問題だから私は知りません」と、私が口にしたと告げてきました。こちらが閉鎖病棟に入れられていて、お金を支払うことのできる状況ではないと見越した上で、です。もちろん、そんなことを言った記憶はありませんでした。ケースワーカーの人にも確認して、確信を持ちました。面談の内容を捻じ曲げられたのです。
それからしばらくしてあるきっかけがあり、自分は変わることができました。
きっかけをくれたのは患者さんでした。
運よく話すきっかけをくれた人がいて、運よく繋がるきっかけをくれた人がいて、運よく笑いあえる関係になれました。
そう、運なのです。
もしも彼、または彼女があの時あそこにいてくれなければ、今も閉鎖病棟で死んだような毎日を送っていたのだと思います。
私のいた病院では、入院期間を3か月と仮定されます。1か月ごとに様子を見て、3か月経過したら主治医の判断で入院の継続の是非と、病棟の移動が決められます。今の病棟に適応できるかできないか。それがおそらくは退院できるかどうかの分かれ目です。
看護師さんは生活上の面倒は見てくれますが、仕事なので深く関わる人はいません。主治医の先生に至っては、夜に一度見回りにくるだけです。積極的な治療を試みてくれることなんて、ないのです。
でもきっと、これはまだマシなほうだったなと記事を見て思いました。通用するかどうかもわからない治療を延々繰り返されて、治療費ばかり積み重なっていく。そんなことになって得をするのは、利益がある病院側だけです。
きっかけをもらった日に、病棟の移動を決断しました。ここらへんは、割と迅速だったのはありがたかったです。
私が移動した病棟は、薬などを一切用いず、規則正しい生活と仕事を以て症状を和らげていこうという療法でした(こう書くと、私がなんの療法を受けていたか、お気づきになる人もいるかもしれません)。
ただ症状的にはほとんど改善しているような状態だったので、退院が許される条件がわからないことが常時不安として残りました。
一か月ほどたったある日、主治医の先生に「退院したい」と告げました。患者同士で雑談した際、自分から言い出さなければ、一生退院できる日は来ないと知ったからです。
ここも運でした。病院側からは何一つ説明を受けていなかったため、もしも私が外向的でなく、療法内で人と話さない生活を送っていたのなら、その事実を知るのは何か月もあとになっていたのかもしれません。
主治医の先生は「親との面談を先にしましょう」と答えて、私はそれに従いました。
その後、実際に親を交えての面談が成立するまで10日かかりました。
一回目の面談は、主治医の先生は黙っていて、自分が親に伝えるべきことを伝える時間が設けられました。
伝え終わったあと、主治医の先生は「がっかりだなぁ」と口にしたのを、今でもよく覚えています。
あなたが面会時に言った言葉と、その場で親に伝えた言葉に齟齬がある、ということでした。詳しく聞くと、一人暮らしを始めるまでの期間、家にいさせてもらえるかどうかという、症状でもなんでもない“どうでもいいこと”を、何故か深刻に捉えているようでした。
「私にはもうどうしようもありません」「入院期間は3か月が普通なの。○○さんだってそれぐらいかかった」「入院継続、しませんか?」
先生は症状のことを強く口にできず(改善してるのだから当たり前ですが)、何故か入院を継続させようと、私自身を説得してきました。
結局、その場では決着がつかず、また2週間後に面談しましょうということになりました。
面談開始時に主治医の先生は、自分は忙しいから手短にお願いしますと言い訳しました。
前回では想定されていない質問をされて、しかもそれは自分一人で決めるわけにもいない問題であり、答えに窮しているところを非難されました。なので今回は、相手側の質問内容も想定して、ノートに書きだすという徹底ぶりで望みました。
自分は親と電話で話し合って決めた事も含めて、話すべき事を手短に伝えました。
そしたら主治医の先生は、たった一つのなんでもない欠点を、まるでそれがその人の全てであるかのような言い回しで、事細かに説明しはじめました。退院が近くなって驕りが見える等々、私には身に覚えのないことも、さも見てきたかのように。〆に主治医の先生は言いました。今退院したら、ダメになるかもしれない、と。
すると、自分を医療保護入院制度を用いて強制入院させた母親のほうが、予期不安に侵されてきました。正直、とてつもなく不快でした。これから母親とも向き合っていこうと決めていたのに、この人は入院を継続させるためなら、患者の親子関係すら破壊するつもりなのかと。
1回目と2回目の面談を合わせて、私はようやく悟りました。この人は患者を治療するつもりなんて毛頭ない。ましてや人生が台無しになろうが、どうでもいいんだ。その先にあるお金しかみてないのだと。
そう考えるのには根拠があります。入院費は患者一人につき、一か月で15万円ほどかかります。患者の数は、私の退院時には8人いましたが、一週間前までは6人しかいませんでした。全員の入院費を合わせると、一月当たり90~120万程度の収入です。
次にスタッフの給料を、一人低めに見積もって20万とします。では計算してみましょう。単純な割り算です。
120÷20=6。
療法内のスタッフの勤務形態は責任者1人・日勤スタッフが2~3人・夜勤スタッフが2人です。休日も含めると、とても手がまわりません。
つまりはひどい赤字だったのです。そのツケを支払うために、なんとしても患者に入院を継続させたがったのです。
その他にもいろいろごたごたはありましたが、今は無事退院して、自宅に一時的にでも滞在することができています。
父は説教ばかりですが、仲良くしてくれています。笑ってくれています。それだけで私は十分幸せです。
母も表面上笑ってはいますが、内面には今も何かしらを抱えているのではないかと不安に思ってしまうこともあります。
これは2回目の面談の時に知った話ですが、面談の前に、父はきちんと次の面談で退院させる意向を固めていたそうです。父が、もう退院しても大丈夫だと私を信じてくれたこと。それが、今こうして家で体験談を書くことができている最大の要因でした。
結局、運が全てでした。
自分の症状がよくなったのは、運よくきっかけを与えてくれる人に出会えたから。
自分が退院するきっかけを掴めたのは、運よくその場で退院に関しての話を患者さんが出してくれたから。
自分が退院できたのは、運よく父親が医者を妄信せずに自分の目で見極めようとする強い人だったから。
だから、今、自分はここにいます。
もしも自分の子供や兄弟が深刻な鬱に陥り、無気力などでどうしようもなくなっても、
医療保護入院制度を用いての強制入院は、やめておいた方がいいと思います。
入院している間は、放り込んだ本人は安堵するかもしれません。
ですが、不安は再発します。その不安は消えません。
不安に押しつぶされて、医者の言葉にのせられて、入院の継続を決めてしまえば、もう患者本人にはどうすることもできません。それは本来は大切なはずの親族の意志を無視し、その人の人生を台無しにしてしまう所業でもあります。
不安を消すたった一つの方法は、向き合うことです。向き合い、言葉を重ねて、相手の人となりをもう一度理解していく。その中でのみ、不安を和らげることはできます。
お子さんが深刻な無気力を抱えているなどでお悩みの親御さんがいましたら、精神病院に入院させるということは、そういうことであるのを肝に銘じておいてください。
願わくば、精神医学の進歩により、これまで以上に確固たる効果を持つ療法が生まれること。
あ、ちなみに私が受けた療法ですが、
あれ自体はとても良いものであったと思います。大切なこともたくさん教えてもらいましたし。
ただ入院を無理やりにでも引き延ばそうとする医者の思惑とか、権力集中により当たり前のように蔓延る横暴は、やっぱりいけないなと思うのです。
コメント
No title
2021/04/02 19:50 by URL 編集
No title
払った金額が人によって違うのはもちろん承知しているのですけど、本筋にはあまりかかわりがない話でしたので。
2021/04/02 19:59 by うみうさぎ URL 編集
No title
認知の歪みとは以下のようなものです。
https://twitter.com/877_727/status/836532480672817152?s=20
あなたの視点ではこのブログの記載に嘘は全く無いと思いますが、現実で起こった事とあなたの認知に、何かしらの差異が他にもあるのでは、と考えてしまいました。
2021/04/02 23:16 by URL 編集
No title
認知の歪みとは以下のようなものです。
> https://twitter.com/877_727/status/836532480672817152?s=20
>
> あなたの視点ではこのブログの記載に嘘は全く無いと思いますが、現実で起こった事とあなたの認知に、何かしらの差異が他にもあるのでは、と考えてしまいました。
一つの記事を読んだだけの曖昧な情報をもとに「認知の歪みがある」と断言するあなたの姿勢には、認知の歪みが感じられました。
この記事を読んだ時にあなたがそう感じた事に嘘は全くないと思いますが、あなたが知り得ない他者の思考とあなたの認知に、何かしらの差異が他にもあるのでは、と考えてしまいました。
まぁ認知の歪みという概念自体を否定するつもりはないですが、認知の歪みがあるという認知の歪みが、あるという認知の歪みという構図になってしまったので、とても難しいものですね。
でも、認知の歪みがある事を指摘する事自体に認知の歪みがあるというブーメランを受けずに、認知の歪みを指摘する事はめちゃくちゃ難しいと思います。
なので、ざっくりとしたコスト計算に基づく仮説にから、病院が赤字で入院を維持したいと結論付けた理論に疑義があるなら、その理論を崩す情報や根拠を否定する情報を提示する方が、良いんじゃないかと思います。
2021/04/03 20:31 by mrk URL 編集
承認待ちコメント
2021/05/14 21:06 by 編集