最高裁判所
目指すは「裁判のDX」。裁判所の情報通信インフラを刷新する
日本における司法府の最高機関である最高裁判所。裁判の迅速化に向けて、民事裁判でWeb会議を活用するなど、さまざまなデジタル化を進めています。さらなるデジタル化を進めるため今回、情報通信ネットワーク専門官を募集します。最高裁判所のデジタルトランスフォーメーション(DX)をリードする専門官として働く魅力、ここでしか得られないキャリア価値とは何か。事務総局デジタル推進室の2人にお話を伺いました。
募集期間:2021年5月13日(木)〜 2021年6月9日(水)
本ページの求人は、「プレミアムステージ」をご利用でなくても、ビズリーチ会員であればどなたでも閲覧、応募が可能です。リアルとオンラインを融合させ、より早くより充実した裁判を目指す
事務総局 デジタル推進室 参事官/西岡 慶記(左から2人目) ──はじめに、最高裁判所がデジタル化を通して、実現したい将来像についてお聞かせください。 「裁判」という仕事は今まで、もっぱら「紙」を通じてコミュニケーションを取ってきました。原告や被告は、自分の主張を紙に書き、証拠書類も併せて裁判所に提出する。裁判官はそれを事前に読み込み、原告と被告が出席する法廷において議論をする。議論の結果を裁判所書記官が「調書」という書面にまとめる。今、多くの裁判はこのような流れで進んでいきます。このような営みを重ねていくと、一つの裁判で数千ページから数万ページもの紙の記録が出来上がってしまうことも稀(まれ)ではありません。 しかし情報通信技術が飛躍的に発展し、またコロナ禍においてオンラインでのサービスが広がっていく中で、これからも大量の書類を出し合うような今の裁判の在り方のままでいいとは思えません。もちろん裁判ですから、実際に法廷に来てもらい、厳粛な場で証言などをしてもらう場面は今後もあると思いますし、証拠が紙自体の場合には、裁判官がその現物を見て確認するということも必要でしょう。 今まで積み重ねてきた「リアル」の場でのやりとりと、これから広がっていく「オンライン」でのやりとりの長所をうまく組み合わせていくことで、国民にとっての利便性を高めつつ、より早くより充実した裁判を実現していきたいと考えています。 ──最高裁判所が進める裁判手続のIT化の狙いについて教えてください。またデジタル推進室を設置したそうですが、その設置目的についてもお聞かせください。 もともと裁判手続のIT化は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大より前から、情報通信技術の急速な発展と普及を背景として検討が進められてきました。現在では感染症対策の一つとして、人の接触機会の低減が求められるようになったことを契機に、民事訴訟だけではなく、刑事裁判や家庭裁判所の手続なども含め「今まで以上にスピーディーに検討を進めていく必要がある」という危機意識が、裁判所全体に広く共有されました。 もっとも、この課題に取り組むためには今まで紙を前提としてきた手続をそのままにして単にデータに置き換えれば足りるものではなく、今までの業務の在り方を抜本的に見直す必要があります。最近、社会において、DXの必要性が強く叫ばれていますが、裁判所もその例外ではないと考えています。 また情報通信インフラという点でも、新たなアプリケーションの開発のみならず、各種システムのクラウド移行を見据えつつ、セキュリティを確保しながら大容量の通信に耐え得るネットワークを構築しなければならないという課題にも対応する必要があります。 このような課題に組織を挙げて取り組むために、デジタル化に向けた総合戦略を策定する部署として2021年4月、新たに「デジタル推進室」が設置されることになりました。
裁判所の業務の在り方を見直し、裁判所全体をあるべき姿に先導する
──デジタル推進室の組織体制について教えてください。また現在、どのような取り組みを進め、どういった課題を抱えていますか。 まずはスモールスタートということで、デジタル化の推進を担当する審議官も含め計10名で発足することになりました。一方で裁判所のDXを進めていくためには、システム面だけではなく、業務の在り方を見直していく必要があります。そこで、システム関係の業務担当者はもちろんのこと、実際に裁判を行っている部署や総務・人事・会計といった豊富なバックヤードの経験など、さまざまなバックグラウンドを持った職員が在籍しています。現在は、組織内での「多様性」を高め、多角的な視点から裁判所全体としてどうあるべきなのかについて、検討を始めています。 現在は、業務の在り方の見直しと、システムやネットワークの在り方を同時並行的に検討していくことの難しさを感じています。情報通信技術は、業務を効率よく進めていくための手段という側面もありますが、一方で効果的に情報通信技術を活用していくためには、業務の在り方を簡素化、標準化していくことも欠かせません。難しい課題ではありますが今後、裁判所のデジタル化を進めていくうえでは避けては通れない問題であり、チャレンジするだけの価値のある課題であると考えています。 ──そうした取り組みを進める中で、情報通信ネットワーク専門官を募集する背景を教えてください。 裁判所は全国各地にあり、東京や大阪といった極めて多くの事件を抱える裁判所から、離島などの規模の小さい裁判所まで、その規模はさまざまです。今後、通信量が飛躍的に増大することが確実な中で、規模も職員数も全く異なる多くの拠点をつなぎ、全ての国民に必要な司法サービスを提供するためには、どういったネットワーク構成が最も適しているのかといった課題は、技術的知見のない裁判所職員には企画立案できないものです。 また裁判所には、多種多様な業務があり、さまざまなシステムを使いながら業務処理を行っています。今後は、使いやすさや予算面も考慮しつつ「各種システムをクラウドに移行すべきではないか」といったことを検討していく必要があります。このような検討を進めるに当たって、裁判所の業務内容を知らない外部の事業者に委託しても、各種システムの将来像について的確なビジョンを描くことはできないのではないかと思います。 「情報通信基盤に関する専門性を持ちつつ、裁判所の業務に精通する職員とともにチームを組み、新しい業務を実現するためのグランドデザインを一緒に描いてほしい」という思いで今回、情報通信ネットワーク専門官を募集することにしました。
裁判所のデジタル化を前進させるポジション
──最後に、候補者に対するメッセージをお願いします。 裁判所という組織に飛び込むことは、何となく「ハードルが高い」と感じられるのではないかと思いますが、ぜひ思い切って飛び込んできてもらいたいです。裁判所は伝統的に紙文化に慣れ親しんできたところもあり、皆さんから見ると「まだこんなことをしているのか」と驚かれる部分もあるのではないかと思います。 ただ、だからこそ皆さんの力を求めています。全国のどの地域に住んでいる方も、困ったときには壁を感じることなくアクセスできる、頼りがいのある裁判所にしたい。私としては、皆さんの力を借りて、遅れている裁判所のデジタル化を一気に進めていきたいと考えています。ぜひ、一緒に新しい裁判所をつくりましょう。
情報通信技術の利点を生かし、迅速・的確な裁判を実現させる
事務総局 デジタル推進室 専門官/寺澤 夏子 ──今回募集する、情報通信ネットワーク専門官の具体的な業務内容について教えてください。また、どのような役割を担っていただきたいですか。 裁判所は、今まで職員向けのシステムは多く開発してきましたが、裁判を利用される方々とオンラインでやりとりすることは極めて限られた場面でのみでした。しかし、これからは裁判を利用される国民との間で、オンラインでのドキュメントファイルのやりとりや、Web会議を利用して議論していく機会は飛躍的に多くなると考えています。 また裁判所職員のテレワーク環境も、さらに整備していく必要があるでしょう。そうしますと、裁判所のネットワークも大容量の通信に耐えられるよう大幅に増強しなければなりませんし、これを機に裁判所の各種システムのクラウド移行もスピード感を持って進めていかなければならないと考えています。 裁判所は、日本全国に約460カ所の拠点を持ち、約2万6000人が働く極めて大きな組織です。たとえば、逮捕状請求など24時間365日対応しなければならない業務もあります。そういった環境の中で、どのように情報通信インフラを刷新できるか、どのようなプランを立て、どのように進めていくのかが大きな課題です。そういった課題を解決するため、情報通信ネットワーク専門官には、情報通信インフラの抜本的見直しに向けた中心的な役割を果たしてほしいと考えています。 ──情報通信ネットワーク専門官ならではのやりがいや、社会に与えるインパクトはどういったものでしょうか。 裁判所は大きな組織ですし、業務面を見ても司法権を担う唯一の組織として社会的に大きな役割を果たしており、高い業務継続性が求められます。このように大型でかつ、止めることの難しいシステムを多数有する裁判所において、情報通信技術の利点を存分に生かして迅速・的確な裁判を行うことができるように情報通信インフラを刷新するというプロジェクトは、かなり難度の高いものではないかと思っています。 しかし、それ故に皆さんが今まで身に付けてきた知識や経験を存分に発揮していただけるプロジェクトではないかと思いますし、そこに大きなやりがいも感じていただけるでしょう。このプロジェクトは、「裁判のDX」を成功させるための鍵となります。無事に成功した後には、裁判に関するニュースを見るたびに、自分たちが担当した仕事が社会に大きく貢献しているということを実感していただけるのではないかと思っています。
大規模なプロジェクトを裁判所の内側から立ち上げる
──具体的にどのような経験やスキル、マインドを持つ人物を求めているのでしょうか。 裁判所全体の情報通信インフラを変えていくプロジェクトですので、やはり、それに近いネットワークシステムの刷新や基幹システムのクラウド移行といったご経験をお持ちの方に来ていただければありがたいですね。ただ私としては、そのようなご経験や専門的知見と同じくらい「今までの業務の在り方自体を変えていく」というDXのマインドを共有していただけることが大事であると考え、そういったマインドをお持ちの方にお越しいただけるとありがたいです。 今までも裁判所は、多くの委託事業者の方と作業してきました。ですが、業務のことは業務側で、システムのことは事業者側でという形での「分業」では、結果的にいいものがつくれないこともあったと思っています。今回、職員としてお迎えしたいと思ったのは、そのような業務側とシステム側の分業ではなく、業務を知る私たちの検討のチームの中に入っていただき、システム側からどんどん意見を述べてもらいながら「システム化に適した業務改革」を行いたいと考えたからです。 今回来ていただく方には、裁判や法律に関する知識は一切必要ありません。裁判所の業務については、私たちデジタル推進室のメンバーが説明しますので、その点はご安心ください。それぞれの専門性を生かし、裁判所職員とワンチームで仕事をしていただける方にぜひ来ていただきたいと思っています。 ──最高裁判所の情報通信ネットワーク専門官として働くことで得られるキャリア価値や、成長機会とはどういったものでしょうか。 この大規模なプロジェクトを国家公務員として裁判所の内側で立ち上げるという経験は、裁判所での仕事を終えられた後も、必ず価値ある経験として、今後にもつながっていくのではないかと思います。 また裁判所も国家機関の一つであり、政府が進めているデジタル改革の流れも踏まえ、必要なところは歩調を合わせながらプロジェクトを進めていく必要があると考えています。そうした問題意識から、デジタル推進室は、日常的に内閣官房IT総合戦略室などともコミュニケーションを取りながら、裁判所のデジタル化に向けた検討を進めています。 今回、裁判所の一員としてプロジェクトに関わっていただくことで、政府全体のデジタル化に向けた検討状況を把握することができますし、さまざまなバックグラウンドを持つメンバー同士の交流から得られる刺激も大きいのではないかと思います。 ──ともに働くメンバーや職場環境の魅力、ワークライフバランスの取り組みについて教えてください。 さまざまな経験を持つメンバーが「スモールスタート」や「トライアンドエラー」など、とにかくやってみようという精神で、職員全員がチームとなって仕事を進めています。もちろん、うまくいかないこともありますが、その経験自体が次の仕事の成功に結び付いていくと考え、明るく真面目に前向きに取り組んでいます。 裁判所では、育児や介護などといった事情を抱える職員でも十分に活躍できるよう、ワークライフバランスを図ることができる制度も充実しています。職員全員がそれぞれ有する価値観を尊重し、それぞれの専門性を生かし、チームとしてよりよい提案をしていく。デジタル推進室はそんなチームを目指して、日々チャレンジを重ねています。ぜひデジタル推進室の一員として、ネットワークに関する知識や経験を生かして、ともに大きな課題に立ち向かっていきましょう。
募集職種
- 最高裁のデジタル化推進を牽引するIT領域のジェネラリスト
CTO・CIOシステムコンサルタントセキュリティコンサルタント
東京都
【募集背景】 裁判手続については,ここ数年でIT化に向けた検討が大きく進んでいます。 民事訴訟手続については,既に,ウェブ会議等を活用した運用が始まっており,政府においては,2025年度中にオンラインで訴状等を提出できるようにすることを目指して法改正の検討が進んでいます。また,刑事裁判についても,今年3月,政府により検討会が設置され,刑事手続における捜査・公判のIT化方策の検討が開始されています。さらに,今後,家庭裁判所や民事訴訟手続以外の民事事件の各分野(民事保全,執行,倒産手続等)におけるIT化の検討も加速していくことが見込まれています。 こうした背景事情のもと,裁判手続等のIT化をますます本格的に進め,IT化によって,これまで以上に利用しやすく質の高い裁判手続を実現していくために,最高裁判所は,今年4月に,IT化に向けた全体調整や総合戦略策定の中心的役割を担う「デジタル推進室」を立ち上げました。 今回は,この「デジタル推進室」において,裁判所の情報通信基盤の企画,設計,構築及び運用保守等の役割を担う専門人材を募集します。具体的にお任せするのは以下の業務となります(担当業務は各人の適性,業務の都合に基づき一部変更となる場合もあります。)。 【業務内容】 裁判手続のIT化及びクラウド化に対応する裁判所の情報通信基盤の企画,設計,構築及び運用保守等に係る業務 1)裁判所の新たな情報通信基盤の企画・設計業務 今後,各種裁判手続のIT化が進み,また,裁判所職員のテレワーク環境の整備も課題となる中で,これらのニーズに応えるために,新たな情報通信基盤(各種システム,ネットワーク,端末セキュリティ等)の在り方を検討していただきます。 2)大容量通信を可能にする裁判所全体の新たなネットワークの構築に向けた企画立案・設計業務 今後,通信容量の更なる飛躍的増加が見込まれる中,裁判所全体のネットワーク構成の在るべき姿について検討していただき,現行のネットワーク構成からの移行に向けた計画の立案等を行っていただきます。 3)既存システムのクラウド移行を含むシステムの刷新に向けた企画立案業務 今後,裁判所全体のシステムの最適化に向けては,クラウドの利用を積極的に検討していく必要があります。システムごとの優先順位を付けながら,全体最適化の観点から,クラウド移行を含めた既存システムの刷新に向けた検討を進めていただきます。 日本全国に約460か所の拠点を持ち,約2万6000人が働く極めて大きな組織であり,24時間365日対応を求められる業務もあるなど,IT化に向けた大きな課題がある裁判所において,裁判所の情報通信インフラの抜本的見直しに向け,中心的な役割を果たしてほしいと考えています。 裁判についての知識の有無は問いません。むしろ,ブレスト段階からIT関係の知識経験に基づくアイデアを出していただき,「業務改革(BPR)と通信基盤(ネットワーク)の刷新の同時並行的検討」をしていきたいと考えています。 情報システムの企画,開発等に係る知見と経験を,司法・裁判所の現場のIT化を実現するための情報システムの構築という新しい分野で活かしたいという想いと,柔軟な発想力をお持ちの方にお越しいただきたいと考えています。 【担当部署】 審議官室(デジタル推進室)の情報ネットワーク専門官(課長補佐級) 【利用する主なシステム等】 ◆Microsoft Azure ◆AWS 【選考方法】 ①書類選考(ビズリーチに登録している職務経歴書による) ②口述試験 ア 1次試験(①の合格者に対し,オンラインの方法(ZOOMミーティング)により実施します。) イ 2次試験(②アの合格者に対し,対面の方法により実施します。) ※②のア・イの日程及び詳細は別途ご連絡します。