じゃしんに愛され過ぎて夜しか眠れない   作:ちゅーに菌

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 天音ちゃんの初デュエル回です。登場からなんと20話目もかかっていますが、初投稿です。


獏良天音

 

 

 

 

「しまったな……」

 

『困りましたねぇ』

 

 俺は荷物を纏めつつ自室でそんな呟きを上げていた。

 

 というのもダークネスが来たときと同様にセブンスターズの者が上陸したことを探知したため、デュエルを吹っ掛けに行ったのだが、どういうわけか今度のセブンスターズは、のらりくらりと逃げやがるのである。

 

 1日ほど追い回したが、まるでこちらとデュエルする気がなく、明らかに人間ではない方法で逃げ回るため、こちらも常人には出来ない方法に訴えたところ、今度は本格的に逃げ隠れ始め、闇の力というより種族の力を使っているせいか、俺でも足取りを探すのが難しくなったところでこちら側がタイムアップを迎えた。

 

 要するに数日デュエルアカデミアを留守にするプロデュエリストの仕事が差し迫ってしまったのである。

 

『これは新しいマスターの攻略法ですねぇ……間違いない』

 

 あのカミューラとか言う吸血鬼……まさか、俺のスケジュールを確認してそれを狙っていたんじゃないよな?

 

 まあ、実力が一番高く見える者を最後まで残しておき、弱く見えるものから潰していくというのも考え方としては間違ってはいないと思うが、ここまで徹底していると感心すら覚えてしまいそうなレベルだ。

 

『それで? この七星門の鍵は外での仕事の間、誰に預けるんです?』

 

「私に貸して……」

 

 七星門の鍵を掲げるヴェノミナーガさんがぼやいた直後、俺の背中に回り込んでいた天音ちゃんがそう呟く。

 

 デュエルをしているよりも見ている方が多い、彼女なだけに自分からそのように名乗り出たことは非常に意外であり、目を丸くしているうちに対応が遅れた。

 

「ダメ……?」

 

 しっとりとした目で見つめてくる天音ちゃん。まあ、自分から名乗り出ている以上は拒む理由も特にはない。

 

「いいぞ」

 

「ありがとう……」

 

 七星門の鍵を受け取った天音ちゃんは何を思っているのか、それを見つめている。どうも七星門の鍵やセブンスターズ全体というよりも、今度の対戦相手に対して個人的な興味を示しているように見えるが、俺が聞くような内容でもないな。

 

「ふんっ……」

 

『グギュィ!?』

 

『きゅっとしてドカーン!』

 

 とりあえず、流石に少し腹が立ったので、窓から顔だけ出して覗いていた目の赤いコウモリ――ヴァンパイア・バッツの精霊は闇の力で遠隔攻撃を行い、握り潰しておいた。まあ、体の一部だろうから効果はほぼないと言ってもいい。

 

 全く……なんだってセブンスターズの癖に俺とのデュエルを拒むというのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ナイトメアがデュエルアカデミアを離れた直後、セブンスターズのカミューラはその時を待っていたかのように行動を開始した。

 

 七星門の鍵を守る面々は自身が留守の時にカミューラが動くだろうとナイトメアに知らされていたため、混乱はなかったが、それでも1戦目はクロノス教諭が倒され、2戦目は"幻魔の扉"の発動コストのためにカミューラが丸藤翔を身代わりにしたため、丸藤亮は敗北した。それによって2人は人形に魂を移される。

 

 そして、湖に立つカミューラの城から外に出された残りの面々が怒り、困惑、焦燥など様々な表情を浮かべた。

 

「なんなんだよこれって!? デュエルって楽しい筈のもんだろ!?」

 

 そんな中、遊城十代が叫んだそれは、魂からの慟哭であろう。

 

「なのに……なんで翔が泣かなきゃいけないんだ!? なんでカイザーがあんな目に会わなきゃいけないんだよ!?」

 

 他の者たちも言葉はないが、同じ心持ちなのか、十代に視線を向けながら各々が決意に燃えた瞳を浮かべているように見えた。

 

「俺はこんなデュエルをさせた奴らを許さない……! 絶対勝って……奪われた皆の魂を取り戻して見せる! クソォォォ! 待ってろよカミューラ! 待ってろよセブンスターズ! 今度は俺が相手だ!」

 

 そんな中、彼らの中で、2人の試合から今の今まで一言も言葉を話さなかった少女――獏良天音の拳が強く閉じられ、静かに震えている様子には誰も気づくことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら? 小娘1人で来たの?」

 

 丸藤亮とのデュエルがあってからそう時間が経っていない頃。獏良天音は1人でカミューラの城に向かい、

 

 

「……私1人で十分だわ」

 

「生意気な小娘ね……所詮、ナイトメアの補欠でしょう? まあ、丁度いいわ。あなたを倒せばナイトメアの鍵を奪ったようなものですもの」

 

「ご託は沢山よ。始めましょう……?」

 

「風情がないわね……まあ、いいわ」

 

 無表情で、表情も暗く、煽りのひとつにも言い返さない天音にカミューラは悪態をつきつつデュエルディスクを構えた。

 

『デュエル!』

 

天音

LP4000

 

カミューラ

LP4000

 

 

 

「ドロー……」

 

手札

5→6

 

 そう言いながら天音がカードをドローした直後、カミューラと天音がデュエルをしている広間のギャラリーに十代を始めとした七星門の鍵を持つ面々とオシリスレッドの丸藤翔や前田隼人、オベリスクブルー女子のツァン・ディレなどが次々と現れた。

 

「天音!? 何をしているんだ!? ソイツには闇のアイテムがなきゃダメだ!」

 

「何してるのよ天音!?」

 

 十代を始め、親しい友人であるツァンが声を掛けるが、天音は少し視線を向けただけで、すぐにカードへと目を落としつつ口を開いた。

 

「大丈夫、闇のアイテムよりもずっとスゴいの持ってるから……」

 

『モノ扱いはちょっと酷いんじゃないのー? まあ、可愛い女の子に評価されるだなんてオジさんとしては鼻が高いなぁ!』

 

「うるさい」

 

 突然、天音から響き渡るどこか人を小馬鹿にしたような男性の声にカミューラを含め、周りの面々は驚くが、天音は特に気にせずに一言だけ呟いた後、カードを1枚手札から抜き出すと、そのまま魔法・罠ゾーンに置いた。

 

「私は手札から、"封印(ふういん)黄金櫃(おうごんひつ)"を発動……。デッキから"ネクロフェイス"を除外し、2ターン後のスタンバイフェイズに手札に加える……」

 

ネクロフェイス

星4/闇属性/アンデット族/攻1200/守1800

このカードが召喚に成功した時、ゲームから除外されているカードを全てデッキに戻してシャッフルする。

このカードの攻撃力は、この効果でデッキに戻したカードの枚数×100ポイントアップする。

このカードがゲームから除外された時、 お互いはデッキの上からカードを5枚ゲームから除外する。

 

 一瞬だけ、フィールドに現れ、消えていったモンスターは赤子の玩具の頭部の内部から触手が伸びているという異様な存在であった。

 

「"ネクロフェイス"は除外されたとき、お互いのデッキの上からカードを5枚ゲームから除外する……」

 

「面倒ね」

 

 天音とカミューラは互いにデッキからカードを除外したが、それらのカードを確認した天音は小さく笑みを浮かべる。

 

「うん……私は除外されている悪魔族モンスター3体、"ダーク・ネクロフィア"、"マッド・リローダー"、"グレイブ・スクワーマー"をデッキに戻し、手札から"カース・ネクロフィア"を特殊召喚する……」

 

カース・ネクロフィア

星8/闇属性/悪魔族/攻2800/守2200

このカードは通常召喚できず、カードの効果でのみ特殊召喚できる。 このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):除外されている自分の悪魔族モンスター3体を対象として発動できる。このカードを手札から特殊召喚し、対象のモンスターをデッキに戻す。

(2):モンスターゾーンのこのカードが相手によって破壊され墓地へ送られたターンのエンドフェイズに発動する。 このカードを墓地から特殊召喚する。その後、自分フィールドの魔法・罠カードのカード名の種類の数まで相手フィールドのカードを選んで破壊できる。

 

 そこに現れたのは、青い人形のような女性モンスター――ダーク・ネクロフィアの身体が、青い炎ようのようにも呪詛のようにも見えるモノを静かに纏った異様な何かだった。

 

カース・ネクロフィア

ATK2800

 

「攻撃力2800のモンスターをもう!?」

 

「まあ、あの子、あんまり表ではしないだけで、私よりもデュエルは強いわ。それにちょっと怖いのよね天音のデュエル……」

 

「何……?」

 

 ツァンの呟きにカミューラが反応する。というのも、天音はカミューラはコウモリでデッキを覗き見ようとしたのだが、他とは違い一度もデッキの調整などを行っていなかったため、見ることが出来なかったのだ。

 

 そのため、他に比べれば然程実力はないのではないかと考えていたのだが、どうやらそういうわけではないらしい。

 

「お前、最初から私のコウモリに気づいて?」

 

「……どちらにしてもあなたのためにデッキの中身を変える必要もないわ……」

 

 それだけ言うと、天音はデュエルディスクのフィールド魔法カードゾーンを開け、そこにカードを差し込む。

 

「私は"ダーク・サンクチュアリ"を発動……」

 

「出たわアレ……」

 

 カードを知っている様子のツァンに一瞬、視線が集中した直後、フィールドの景色は一変した。

 

 地は黒ずんだ肉々しい色を帯び、それよりも赤黒く肉々く、生きているような異様な城が天音の背後に(そひわ)え立ち、毒霧のような黒紫色の瘴気を撒き散らす。

 

 そして、空は暗黒と薄い紅に染まり、巨大な目や口が浮かび上がると、時折開閉を繰り返していた。

 

「な、なんだこのフィールド魔法カードは!? いや、どこかで見覚えが……」

 

「いや、待て……確か、バトルシティの本戦で武藤遊戯と戦った獏良了が使っていたフィールド魔法カードではないか?」

 

「お兄ちゃん……?」

 

 万丈目と三沢が上げた声に天音が反応し、ポツリと呟かれた言葉に仲間たちの視線が集まる。

 

「え? お兄ちゃんってどういうことなんだ?」

 

「私は獏良天音、獏良了の実の妹よ……」

 

 その言葉に既に知っているツァン以外の仲間たちは騒然となる。何せ、バトルシティ自体がデュエリストにとっては既に神話のようなものであり、本戦に進んだというだけでも伝説の一端と呼べた。そんな人物の妹とこれまで、普通に接していたのだから驚きも当然と言えるだろう。

 

 しかし、天音は特に気にした様子もなくデュエルに戻る。

 

「カードを2枚セット……更に手札から"命削りの宝札"を発動。自分の手札が5枚になるようにドローし、自分のターンで数えて、5ターン後に全ての手札を墓地に置く……」

 

手札

0→5

 

「カードを3枚セットしてターンエンド……はい、あなたの番よ……」

 

天音

LP4000

手札2

モンスター1

魔法・罠6

 

 

「私のターンドロー!」

 

手札

5→6

 

「あなたのメインフェイズ開始時に、永続罠カード発動……"ウィジャ盤"」

 

「"ウィジャ盤"ですって……?」

 

「相手エンドフェイズにこの効果を発動し、手札・デッキから、"死のメッセージ"カード1枚を"E"、"A"、"T"、"H"の順番で自分の魔法&罠ゾーンに出すわ……。そして、このカードと"死のメッセージ"カード4種類が 自分フィールドに揃った時、自分はデュエルに勝利する……」

 

「うぇっ!? なんだそのカード!?」

 

「その代わり、自分フィールドの"ウィジャ盤"または"死のメッセージ"カードがフィールドから離れた時に 自分フィールドの"ウィジャ盤"及び"死のメッセージ"カードは全て墓地へ送られる。あまりにも完成の難しい特殊勝利カードのうちのひとつだ。十代」

 

「全く、どんなデッキかと思えば、私もナメられたものね。そんなもの完成させるわけないじゃない。それどころかこのターンであなたは終わりよ!」

 

 カミューラは手札から魔法カードを発動し、その絵柄に仲間たちは目を見開く。

 

「手札から"幻魔の扉"発動! 効果は言わなくてもわかるわね? 私、慎み深いから生け贄の役をお前の仲間に譲ってあげる。さあ、誰の魂を生け贄にしようかしら? どうせなら、仲間たち皆の魂を生け贄にしてあげてもいいわね……そうすれば一気に鍵を頂けるわね」

 

「そう……」

 

 しかし、天音から返ってきた酷く素っ気ない反応にカミューラは眉を潜める。

 

「そう、じゃないでしょう? 可愛いげのない小娘ね」

 

「弱くて……つまらない人……私の知ってる強い人は……自分の命しか賭けず、決してデュエルで背中を見せない人よ」

 

「ふんっ、どうでもいいことよ。本当に可愛いげのないガキだわ」

 

「だってこんなの……障害でもなんでもないわ」

 

 そうしている間にも幻魔の扉は出現し、溢れ出した瘴気が仲間たちに届こうとした瞬間――瘴気はそれ以上にドス黒い、突如として出現した半透明の液体のような障壁に阻まれて止まった。

 

「何!?」

 

「…………思った以上に弱い力ね……その闇のアイテム不良品……?」

 

『いやいや、既製品にしても強力な方だよ天音ちゃん。でもそりゃ、あっちは闇のアイテムでも、こっちは邪神が憑いてますからねぇ。アハハハ! 地力が違い過ぎるってもんよ!』

 

 すると天音の影が長く伸びて、壁と天井を伝うようにして、竜と人間を合わせた悪魔のような巨影が浮かび上がる。それは明らかに天音のシルエットではなく、生きている影に思えた。

 

 そして、あまりに異様な光景に各々が目を疑っていると、巨影はカミューラと仲間たちに恭しく頭を下げる動作を行う。

 

『あっ、どうも。お初の人が多いかな? 俺は"邪神イレイザー"。天音ちゃんの精霊さんだよ』

 

「出て来てって頼んでないわ……」

 

『もー、そんな連れないこと言わないでって天音ちゃんさぁ……』

 

 思春期の娘と父親のようなやり取りとする天音とイレイザーを眺め、目を見開いて驚きながら、冷や汗を流しつつ三沢が口を開いた。

 

「邪神……聞いたことがある……ペガサス・J・クロフォードらが最近になって発見した三幻神の対になる闇の三幻神のカードだと……」

 

「か、神のカードだと!? それを俺は今見ているのか!?」

 

『アハハハ! 俺っちも有名人だこと! まっ、こんなデュエルでは出る幕もないだろうからギャラリー程度に思ってくれよ!』

 

 イレイザーは一頻り笑うと、それまでの浮わついた気配から一変し、天井まで伸びていた影も、天音と同じ程度の大きさになり、隣に並び立つように影が並んだ。

 

『しかし、まあ……"幻魔"とは和やかじゃないな。デュエルモンスターズは生徒に夢と希望を与えるためのものという先生の意思をここは尊重しよう。悪神とて神は神。そのカードはデュエルモンスターズの神の一柱として破壊させて貰おう……天音、頼む。勝ってくれ』

 

「わかったわ」

 

 これまでと一変して、物静かで厳格な雰囲気に変わるイレイザー。それに仲間たちが驚く中、天音が口を開く。

 

「一度発動した効果は止められない……"幻魔の扉"はあなたの命をコストに発動ね……」

 

「くっ……でもデュエルに勝てばなんのことはない……このターンで終わらせる! 私は誇り高きバンパイア一族の魂を幻魔に預け発動!」

 

 そうして、幻魔の扉により、カース・ネクロフィアは砕け散り、カミューラのフィールドへと移った。

 

カース・ネクロフィア

ATK2800

 

「そして、"不死(ふし)のワーウルフ"を召喚!」

 

不死(ふし)のワーウルフ

レベル4/闇属性/アンデット族/攻撃力1200/守備力600

このカードが戦闘で破壊された時、デッキから「不死のワーウルフ」1体を自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。この効果で特殊召喚に成功した時、そのカードの攻撃力は500ポイントアップする。

 

 ギラついた目と、ナイフのような爪を持つ人狼が現れた。

 

不死のワーウルフ

ATK1200

 

「終わりよ! 小娘! "カース・ネクロフィア"でダイレクトアタック!」

 

 これが決まり、不死のワーウルフでもダイレクトアタックが通ればカミューラの勝ちとなる。仲間たちに緊張が走った。

 

「相手モンスターの攻撃宣言時にフィールド魔法"ダーク・サンクチュアリ"の効果発動……。コイントスを1回行う。表だった場合、その攻撃を無効にし、その相手モンスターの攻撃力の半分のダメージを相手に与える。結果は"カース・ネクロフィア"が教えてくれるわ……」

 

「なに……!?」

 

 それに従い攻撃しようとしていたカース・ネクロフィアをカミューラが見ると、カース・ネクロフィアは既に足を止めており、薄く目を開いて口許に少しだけ笑みを浮かべていた。

 

 カミューラが背筋に氷を入れられたかのような寒気を覚えた直後、カース・ネクロフィアの腹から、カース・ネクロフィアによく似た青白い亡霊のようなものが、カミューラ目掛けて放たれる。

 

「表ね……邪霊破(スピリット・バーン)

 

「ぐぁぁぁぁ!?」

 

 カース・ネクロフィアの霊魂はカミューラの体を凍てついた杭の如く貫いた。

 

カミューラ

LP4000→2600

 

 見た目とダメージ量以上の被害を及ぼしたようで、カミューラは体を丸めて想像を絶する痛みに耐えている。

 

「スゲー……攻撃した側が大ダメージだぜ……」

 

「だが、大博打だったぞ天音の奴!」

 

「え……? たぶん、それはないだろ。だって――」

 

 万丈目と話している十代が、カース・ネクロフィアを小さく指差した。

 

『フフフッ……』

 

 そこにはカミューラから天音へと向き直った後に、口元に手を当てて小さく笑うカース・ネクロフィアの姿があった。

 

「……精霊だったのか」

 

(仮にそうだとしても"幻魔の扉"を出される前提で、"カース・ネクロフィア"を出していたのなら食わせものなんてレベルじゃないぞ……)

 

 インチキじゃないかと思い浮かんだ万丈目だったが、これまでのカミューラの行動を省みて、いい気味だとしか思えなかったため閉口する。

 

「うふっ……うふふ……うふふふふふ! 良い顔……もっともっと見たいわ……ようこそ、私のオカルトデュエルへ!」

 

 すると悶えるカミューラを見た天音がこれまで見たことがないような黒い笑みを浮かべながらそんなことを言い放ったため、ほとんどの仲間たちは目を点にし、雪乃は身震いを行い、ツァンは苦虫を噛み潰したような表情をしていた。

 

『兄妹ソックリなんだよなぁ……』

 

 そんな中、ポツリと呟かれたイレイザーの言葉は誰にも聞かれることはなかった。

 

「くっ……だが、まだ"不死のワーウルフ"が残っている! "不死のワーウルフ"でダイレクトアタック!」

 

「当然、何度でも"ダーク・サンクチュアリ"は発動するわ……2分の1よ」

 

 そして、不死のワーウルフは天音へと迫り――ダーク・サンクチュアリは発動することなく、その爪を彼女へと突き立てた。

 

「あぁ……!」

 

天音

LP4000→2800

 

「そう何度も成功するものか。これでお前も――」

 

「ああ……痛い……痛いわ……だから生きている……私生きているわ……ふふふ……私、生きているのよ! うふふふ!」

 

 すると天音はこれまでとは打って変わって、体を抱き締めながら1人で呟きつつ次第に叫びへと変わっていった。その様にカミューラも思わず口を紡ぐ。

 

 そんな中、天音は尚も自身の体を抱き締めながら、顔を伏せて言葉を吐く。

 

「私、とっくの昔に死んでいるのよ。それで長い間、地縛霊として墓石から離れられず、未練から成仏することもできずにずっといたわ……そして、憑いている精霊――"邪神イレイザー"に生き返らせて貰ったの……」

 

 天音はイレイザーの方に顔を向けると、イレイザーの影は天音の頭に手を伸ばす。彼女は特に気にしてはいないが、イレイザーの行動はそっと頭を撫でているように見えた。

 

「でも私……それだけじゃ嫌だった……だって生きる実感がないから……あんな眺めることしか出来ない想いなんてもう沢山だった! 寒いのは嫌! 何も感じれないのも嫌! なんでもいい! もっともっと感覚が欲しい! 人の暖かさでも……心臓の鼓動でも……着擦れの音でもなんでもいいわ!」

 

 天音はいつも見ている彼女とは思えないほど大声で叫ぶ。そして、抱き締めている力が強過ぎるのか、彼女自身の体が軋む音が鳴り、異様さが際立つ。

 

「だから……今度は人間よりも強い体で生き返らせて貰ったの……」

 

 そう言って天音は自身の体を抱き締めていた腕を離してカミューラを見据える。

 

 

 そして――カミューラと同じように人間以上に口を大きく開いて見せた。

 

 

「私の体は――ヴァンパイアよカミューラ……。あなたと同じ……」

 

『アハハハ! それぐらい闇の神なら余裕余裕! 俺は天音ちゃんの要望をちゃんと聞く悪魔の鑑さ! 一流の悪魔は契約者の利益になることしかしないんだよーん! …………悪魔が楽しむのは与えられた者のその後の軌跡だからな』

 

 無論、それに一番驚いたのは仲間ではなく、カミューラであった。天音は口を閉じてから再び会話を始める。

 

「体は凄く丈夫……あらゆる感覚が人間以上……色々能力も使える……血の味も美味しくて……とっても気に入った……弱点はあるけど……少し陽射しに弱くなったり、流水に弱かったりする程度で、本当にこの体になってよかったって……ずっと思っていたわ……!」

 

 嬉々として嬉しそうにヴァンパイアになった感想を語り始める天音。それは恍惚とさえ言ってしまえるものだったが、その表情は突然、落胆と失望に変わった。

 

「…………あなたに会うまでは……ね」

 

「――!?」

 

 つまらないモノを見るような冷えた目で吐かれたその言葉にカミューラは目を見開く。

 

「失望したわ……とても……とてもね。私のような偽物と違って、本物の吸血鬼って……誇り高い素晴らしい生き物だと思ってたのよ……? それが、あんなにも姑息で……下らないデュエルをするだなんて思いもしなかったわ……」

 

 天音な指を小さく動かすと、カミューラのコウモリのうち一匹が飛んできて指に止まる。その頭を撫でながら大きく溜め息を吐いた。

 

「人間よりずっとずっと優れているのに……強いのに……能力だって沢山あるのに……どうしてそんなに誇りのない生き方しか出来ないの……?」

 

 それを言われた瞬間、カミューラは視界が真っ赤に染まったと錯覚するほどの怒りを覚えた。

 

「あ、ああ……ああ――!」

 

 そして、これまでの自身の歴史を走馬灯のように思い出し、感情と共に吐き出す。

 

「アンタのような何も知らない小娘に! この私の何がわかる! デュエルに勝つことなど、私にとって何の意味もないのよ……!」

 

 カミューラの独白を天音も、その仲間たちも言葉を発さずに真剣な面持ちで聞いた。

 

「中世ヨーロッパにおいて、ヴァンパイア族は全盛を誇り、我々は誇り高き一族として孤高に生きていた。しかし、人間どもは……我々をモンスターと呼び、その存在すら許さなかった。そして、一族は滅んだ……残ったのは私1人だけよ!」

 

「…………イレイザーそれ知らない」

 

『聞かれなかったからなー』

 

 天音がイレイザーを問い詰めるが、イレイザーはどこ吹く風である。

 

「だから、私がデュエルした相手を人形にするのは、ただの遊びじゃない。この人形の魂を使い、滅びたヴァンパイア一族を復活させ、我々一族の魂を認めず滅ぼした魂に、復讐すること! 一族の運命を背負った私は勝たなければならない!」

 

「そう……それがあなたの誇り……わかったわ。ならもっともっと……私に生きる実感をちょうだい!」

 

 カミューラの――ヴァンパイアの誇りを受けた天音はそう返す。そして、デュエルに戻ったカミューラは手札からカードを発動した。

 

「魔法カード発動、"大嵐"! 全て消え去りなさい!」

 

「私はカウンター罠、"八式対魔法多重結界(はちしきたいまほうたじゅうけっかい)"を発動……。手札から魔法カード1枚……"ドールハンマー"を墓地に送る事で魔法の発動と効果を無効にし、 そのカードを破壊するわ……」

 

「くっ……!?」

 

 当然というべきか、4枚のセットカードの中にはカウンター罠が仕込まれていた。

 

 キラードールが描かれた魔法カードが墓地に置かれると、出て来たマシンが結界を張り、大嵐からカードを守り切った。

 

「……カードを1枚伏せてターンエンドよ」

 

「この瞬間、ウィジャ盤の効果により、"()のメッセージ「(イー)」"を場に出すわ……。でも"ダーク・サンクチュアリ"の効果で、"()のメッセージ「(イー)」"は悪魔族・闇・星1・攻/守0のモンスターとして、モンスターカードゾーンに特殊召喚される……」

 

「なんですって……?」

 

()のメッセージ「(イー)

DEF0

 

 天音のモンスターカードゾーンに2番目のメッセージを持った死霊が現れる。

 

カミューラ

LP2600

手札2

モンスター2

魔法・罠1

 

 

「私のターン……ドロー」

 

手札

1→2

 

「私はフィールドから"強制脱出装置(きょうせいだっしゅつそうち)"を発動……。効果で、モンスター1体を手札に戻す……私は"不死のワーウルフ"を選択」

 

 カミューラの不死のワーウルフは真下から現れた装置に撥ね飛ばされ、手札へと戻った。

 

「"不死のワーウルフ"が……」

 

「あなたの不死デッキは……死ななきゃ何も関係ないわ……。更に永続罠"悪魔(あくま)憑代(よりしろ)"を発動……。効果によって、このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、1ターンに一度だけ、自分はレベル5以上の悪魔族モンスターを召喚する場合に必要なリリースをなくすことができるわ……。"悪魔(あくま)憑代(よりしろ)"を使用し、"フレイム・オーガ"を通常召喚……」

 

フレイム・オーガ

星7/炎属性/悪魔族/攻2400/守1700

このカードは特殊召喚できない。このカードの召喚に成功した時、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

 燃え盛る人間よりも遥かに巨大な人型の悪魔が場に現れる。

 

フレイム・オーガ

ATK2400

 

「なんだ。攻撃力は"カース・ネクロフィア"より下よ?」

 

「"フレイム・オーガ"の効果……。召喚に成功したとき、カードを1枚ドローする……」

 

手札

1→2

 

「更に手札から魔法カード、"強制転移(きょうせいてんい)"を発動……。お互いはそれぞれ自分フィールド上のモンスター1体を選び、そのモンスターのコントロールを入れ替える……。私は"フレイム・オーガ"を選択……あなたは?」

 

「くっ……"カース・ネクロフィア"よ!」

 

 場のフレイム・オーガとカース・ネクロフィアが入れ替わる。そして、すぐにカース・ネクロフィアがフレイム・オーガを見据えた。

 

「じゃあ、バトルよ……。"カース・ネクロフィア"で、"フレイム・オーガ"を攻撃……念眼殺(ねんがんさつ)

 

「ぐぅぅ!?」

 

 カース・ネクロフィアが両目を見開いて、全身に薄く青い輝きを帯びると、フレイム・オーガが突如粉々に爆散し、カミューラまでダメージを与えた。

 

カミューラ

LP2600→2200

 

「私は"埋葬呪文の宝札"を発動……。墓地の"封印(ふういん)黄金櫃(おうごんひつ)"、"命削りの宝札"、"ドールハンマー"を除外して、カードを2枚ドロー……。更に"強欲な壺"を発動してカードを2枚ドロー……」

 

手札

1→3

 

「カードを2枚セットしてターンエンドよ……」

 

天音

LP2800

手札1

モンスター2

墓地6

 

 

「私のターンドロー!」

 

手札

2→3

 

「私はフィールド魔法、"不死の王国―ヘルヴァニア"を発動!」

 

「リバースカード発動……"サイクロン"。"不死の王国―ヘルヴァニア"を破壊するわ」

 

「ぐっ……なら"天使の施し"を発動。デッキから3枚ドローし、2枚捨てる! "強欲な壺"で2枚ドロー!」

 

手札

2→3

 

「そして、手札から魔法カード、"生者(せいじゃ)(しょ)禁断(きんだん)呪術(じゅじゅつ)-"を発動! 私の墓地の"ヴァンパイア・ロード"を特殊召喚し、お前の墓地の"フレイム・オーガ"を除外よ! 来なさい"ヴァンパイア・ロード"!」

 

ヴァンパイア・ロード

星5/闇属性/アンデット族/攻2000/守1500

このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、 カードの種類(モンスター・魔法・罠)を宣言する。相手は宣言された種類のカード1枚をデッキから墓地へ送る。また、このカードが相手のカードの効果によって破壊され墓地へ送られた場合、次の自分のスタンバイフェイズ時にこのカードを墓地から特殊召喚する。

 

ヴァンパイア・ロード

ATK2000

 

「そして、"ヴァンパイア・ロード"をゲームから除外し、"ヴァンパイアジェネシス"を特殊召喚!」

 

ヴァンパイアジェネシス

星8/闇属性/アンデット族/攻3000/守2100

このカードは通常召喚できない。自分フィールド上に存在する「ヴァンパイア・ロード」1体を ゲームから除外した場合のみ特殊召喚する事ができる。

1ターンに1度、手札からアンデット族モンスター1体を墓地に捨てる事で、捨てたアンデット族モンスターよりレベルの低いアンデット族モンスター1体を自分の墓地から選択して特殊召喚する。

 

 マントのような翼を持つ筋骨隆々で巨大なヴァンパイアがフィールドに現れた。

 

ヴァンパイアジェネシス

ATK3000

 

「バトルよ! "ヴァンパイアジェネシス"で"()のメッセージ「(イー)」"を攻撃!」

 

 しかし、カミューラの言葉にヴァンパイアジェネシスは動かなかった。

 

「ヴァンパイアジェネシス!? 何故攻撃しない!?」

 

「……ううん。できないのよ。死のメッセージのモンスターは、"ウィジャ盤"以外の効果を受け付けず、攻撃対象に選択できないわ……」

 

「くっ……なら"カース・ネクロフィア"を攻撃する! ヘルビシャス・ブラッド!」

 

 ダーク・サンクチュアリの効果が発動したが、結果は裏を示していた。

 

「んぁぁッ……!」

 

 ヴァンパイアジェネシスから放たれた黒紫色の旋風により、カース・ネクロフィアは戦闘破壊され、その余波が天音を襲う。

 

 カース・ネクロフィアは砕かれた人形のように粉々に砕け散り、赤黒い地に散乱する。

 

「もっと……もっと強く……うふふふ!」

 

天音

LP2800→2600

 

 天音はヘルビシャス・ブラッドの余波により、体に刻まれた切り傷の傷口に指を入れ、自身で広げていた。

 

「くっ、コイツ……闇のデュエルをなんだと思っているの……ターンエンドよ」

 

 傷口から天音が指を抜くと、ヴァンパイアとしての再生能力が発揮され、即座に跡形もなく傷跡は消滅した。そして、笑い声を上げながら言葉を吐く。

 

「うふ……ふふふ……うふふふ! さて……殺されたら……仕返ししなきゃね?」

 

 そう言うと、天音のフィールドに散乱していたカース・ネクロフィアの破片が一ヶ所に集まる。そして、一際巨大で憎悪に歪んだ表情をした女性の悪霊が破片の真上に現れ、破片へと吸い込まれると、そこには壊される前と全く同じ姿のカース・ネクロフィアの姿があった。

 

カース・ネクロフィア

ATK2800

 

「"カース・ネクロフィア"の効果……。モンスターゾーンのこのカードが相手によって破壊され墓地へ送られたターンのエンドフェイズに発動する……。このカードを墓地から特殊召喚するわ……」

 

 しかし、それだけではないとばかりに、カース・ネクロフィアの体を包んでいた青黒い呪いの炎が揺らぐ。

 

「その後、自分フィールドの魔法・罠カードのカード名の種類の数まで相手フィールドのカードを選んで破壊できるのよ……。モンスターカードの死のメッセージは魔法・罠にカウントされないから、私のフィールドにある魔法・罠カードは"ダーク・サンクチュアリ"と、"悪魔(あくま)憑代(よりしろ)"……2枚まで破壊できるわ……」

 

「な……に……?」

 

「私は伏せカード1枚を破壊……。人を呪わば穴二つよ」

 

 カース・ネクロフィアから溢れ出た青黒い怨念は亡者の形をした念弾となり、カミューラの伏せカード――"(あやかし)かしの紅月(レッドムーン)"を破壊した。

 

「これがカース……呪いよ……うふふ。そして、"ウィジャ盤"の効果で"()のメッセージ「(エー)」"をデッキから特殊召喚……。ああ、でも"ウィジャ盤"……いらなかったわね……」

 

()のメッセージ「(エー)

DEF0

 

 そして、天音にターンが移った。

 

カミューラ

LP2600

手札1

モンスター1

魔法・罠0

 

 

「ドロー……この瞬間、除外していたネクロフェイスが手札に加わるわ……」

 

手札

1→2→3

 

「誇りね……。私からしたら……デュエルを無意味だなんていうあなたはやっぱり、狡くて弱いヴァンパイアよ。どうして、私が"ヴァンパイアジェネシス"を破壊しなかったかわかるかしら……?」

 

「………………」

 

 カミューラは答えず、唇を噛み締めるばかりだった。これだけのカードが盤面にあり、破壊できる状況でしなかったため、勝ち筋は他にもあることなど嫌でも理解できたから。

 

「餌にちょうどいいからよ……"()のメッセージ「(イー)」"と、"()のメッセージ「(エー)」"を生け贄に――"ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア"を召喚するわ……」

 

ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア

星7/闇属性/アンデット族/攻2000/守2000

(1):このカードが召喚に成功した時、または自分フィールドに「ヴァンパイア」モンスターが召喚された時に、 このカードより攻撃力が高い相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを装備カード扱いとしてこのカードに装備する。この効果は1ターンに1度しか使用できない。

(2):このカードの攻撃力は、このカードの効果で装備したモンスターの元々の攻撃力分アップする。

(3):このカードの効果で装備カードを装備したこのカードが墓地へ送られた場合に発動する。このカードを墓地から特殊召喚する。

 

 2つの死のメッセージが合わさり、ウィジャ盤が消えると、青白い霊魂の中からやや赤みを帯びた肌色をした銀髪のヴァンパイアの女性が現れる。

 

 その女性は前面をざっくりと開け、他は肌が一切出ない扇情的な服装をし、どちらかと言えば翼竜のような一対の翼を持っていた。

 

ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア

ATK2000

 

「"連撃の帝王"は、使うまでもなかったわね……」

 

 天音は伏せているカードの1枚を見つつ、そう呟き、ヴァンプ・オブ・ヴァンパイアのモンスター効果が起動した。

 

「な……ヴァンパイアジェネシス!?」

 

 ヴァンプ・オブ・ヴァンパイアが妖艶な笑みを浮かべて手招きをすると、ヴァンパイアジェネシスは誘われるようにヴァンプ・オブ・ヴァンパイアの前まで来る。

 

 そして、ヴァンプ・オブ・ヴァンパイアはふわりと飛び上がると、ヴァンパイアジェネシスの首筋に乗り、ゆっくりと腰を下ろしながらヴァンパイアジェネシスの頭に寄り掛かった。

 

 その状態で少し、ヴァンプ・オブ・ヴァンパイアが何かを囁くと、ヴァンパイアジェネシスはヴァンプ・オブ・ヴァンパイアを肩に乗せたまま、天音のフィールドへと向かい、カミューラと対峙した。

 

「"ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア"が召喚に成功した時、または自分フィールドに"ヴァンパイア"モンスターが召喚された時に、 このカードより攻撃力が高い相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる……。そのモンスターを装備カード扱いとしてこのカードに装備する……。そして、"ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア"の攻撃力は、このカードの効果で装備したモンスターの元々の攻撃力分アップするわ……」

 

「そ、そんな……」

 

ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア

ATK2000→5000

 

「"ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア"で、あなたに直接攻撃……」

 

 ヴァンパイアジェネシスの首筋に座るヴァンプ・オブ・ヴァンパイアが、ヴァンパイアジェネシスの耳に舌を這わせてから、何かを囁く。するとヴァンパイアジェネシスは少し表情を緩めてから、その闇のような翼を広げた。

 

「や、止めなさい……こ、こんな……嘘よ……」

 

「さよなら……ヘルビシャス・ブラッド」

 

 カミューラの場にいた時よりも、遥かに強化されたヴァンパイアジェネシスのヘルビシャス・ブラッドにより、カミューラは全身を貫かれ、デュエルに決着がついた。

 

カミューラ

LP2200→0

 

 

 

「つ、強い……リックと同レベルのタクティクスだ……」

 

「いや、それどころか最後の煽り方がアイツにソックリだ……」

 

「すげー! 今度デュエルして貰わな――」

 

 そんな感想を仲間たちが話していると、幻魔の扉が発動し、カミューラの魂を奪おうと、大きく開いた。

 

 デュエルでのダメージが大き過ぎたためか、カミューラは全く体が動かせないようで、地に伏したまま、目だけでその光景を眺めている。

 

 そして、幻魔の扉からアクションが起こるより前に――天音が動いた。

 

「イレイザー、"幻魔の扉"を破壊して……今すぐ」

 

『えっ? 敗者が吸い込まれてからの――』

 

「やって」

 

『はいよっと……神使いが荒いマスターなことだ』

 

 カミューラの魂が吸い込まれる直前、イレイザーの影が再び伸び、今度は尻尾の影が空中を一直線に駆け抜け、顕現している幻魔の扉の中央部分に突き刺さった。

 

『滅びろ』

 

 一言、イレイザーがそう呟いた瞬間、幻魔の扉は尻尾の影に吸い込まれ、内側に沈んでいくように奇妙に歪むと、最後は跡形もなく消え去ってしまった。

 

 そして、それと連動するかのようにカミューラのデュエルディスクから幻魔の扉のカードが弾き出されると、何故か真っ黒に黒ずんでおり、すぐに裏表すらわからないほど黒く染まると、崩れ去るように消えた。

 

『あっ、十代クン。これ餞別と抜け駆けの迷惑料代わりにあげるよ』

 

「お、おう! ありがとなイレイザー!」

 

 そして、伸ばした尻尾を戻す途中で、カミューラの闇のアイテムを取り去り、十代へと投げ渡した。神からすれば、その程度の無用なものなのであろう。

 

 するとすぐに人形にされていた丸藤亮とクロノスが元の姿に戻ると共に、カミューラの城自体が音を立てて崩れ去り始めた。

 

「皆は彼を連れて早く行って……」

 

「でも、天音とカミューラは!?」

 

 負傷している丸藤亮を指差しながら天音がそう言うと、十代は2人を心配した様子でそう言った。それに天音は少しだけ微笑みを浮かべる。

 

「ヴァンパイア2人と、邪神1匹を心配している暇があったら早く逃げて……」

 

『一柱! 一柱だからねオジさん!?』

 

 そんなやり取りを見た仲間たちは一様に笑みを浮かべ、天音を信じることにし、城を後にして行った。

 

 そして、崩れる城の中で天音はカミューラの前に降り立つ。

 

「………………なによ? 敗者に言葉なんかないわ。もう、直に死ぬしね」

 

「そう……」

 

 それだけ呟くと、天音は見た目以上の筋力があるらしく、カミューラを軽そうな様子で抱き抱える。そして、背中からヴァンプ・オブ・ヴァンパイアのモノに似た一対の翼を広げた。

 

「話を聞いているのかしら……? 本当に可愛いげのない子ね」

 

「一度、助けた人に死なれるのは寝覚めが悪い……」

 

 天音は地を軽く蹴って数m飛翔すると、カミューラを抱き抱えたまま、空を飛んだ。天井や柱が崩れ落ちる中を、器用に避けつつ天音は飛び、ヴァンパイア一族のカミューラでさえ、舌を巻く程の飛行技術だった。

 

 ヴァンパイアになった少女。

 

 そんな奇妙な存在に完膚なきまで打ちのめされたせいか、命まで助けられたせいか、思い描いていたものとは似ても似つかなくとも独りではなくなったとかんじたためかは、本人にさえよくはわからないが、カミューラは自嘲気味に笑うと小さく呟く。

 

「あなたの言うこと、少しだけ考えたわ。そうね、姑息な手段は人間の常套手段だったわ……そんな下劣な方法でヴァンパイア一族を生き返らせても……皆から却って怒られてしまう。"誇りはないのか"ってね」

 

「そう……」

 

 これまでと同じ抑揚で同じ返しだが、カミューラは不思議と可愛いげがないとは思わなかった。

 

「ヴァンパイアになった理由は他にもあるわ……」

 

 今度は天音から呟いたが、その内容が少し恥ずかしいのか、天音は少しだけ顔を赤くしている。

 

「ヴァンパイアって、映画とかだといつも悪役でしょう……? でも、どれを見ても強くてカッコいいんだもの……憧れちゃったわ……」

 

「ウフフフ……馬鹿ねあなた。そんな理由でヴァンパイアになるなんて」

 

「でも便利そうだから魔女も捨て難かった……」

 

「魔女……魔女はダメよ!? アイツらは人間を盾にして魔女狩りから逃れたり、誇りもなにもありはしない奴らなんだから!」

 

「そうなんだ……」

 

 そうして、本物のヴァンパイアと、新米のヴァンパイアはしばらく他愛もない会話をしながら城から脱出した。

 

 

 

 これでセブンスターズは後、5人。そして、七星門の鍵は後、5本。セブンスターズと七星門の守り手との戦いは拮抗しており、この先どのようなことが待っているのかは、誰にもわからないのであった。

 

 

 

 

 ちなみに――。

 

 

 

 

「なあ、天音ってなんで自分からはデュエルしないんだ?」

 

 後日、十代が天音をデュエルに誘ったところ、普通に了解されたため、思わずそう呟いたところ、天音は難しい顔をしつつこう返した。

 

 

「だって……ソリッド・ビジョンって全然痛くないから、あんまり燃えないのよ……。それなら見ているだけでも楽しいから、誘われないと自分からはあまり……。ああ! 闇のデュエルがしたいっていうのならいつでも相手になるわ……ふふ……うふふ……うふふふ!」

 

 

 そんなとんでもない切り返しをされ、ナチュラル過ぎる闇の住人っプリに十代らは困惑しつつも天音らしい等と考えるのであった。

 

 

 

 

 




 なんてこった。作者の小説のヴァンプ・オブ・ヴァンパイアは両刀で異種も落として寝取れるとんでもねぇチャンネーになっちまった。

 ヴァンプ・オブ・ヴァンパイアにこんなことされてぇなぁ、俺もなぁ(※"このカードより攻撃力が高い"相手フィールドのモンスター1体を対象として発動)



~QAコーナー~

Q:なんでリックくんは天音ちゃんをひっぺがさないの?

A:リックくん「あんなの言われたら引っ付くなって言えない……」


Q:天音ちゃんのデッキってなに? ウィジャ盤?

A:バクラデッキ(迫真)


Q:カミューラと天音ちゃん日射し大丈夫なん?

A:TFだとカミューラさんは、日射しが照りつける浜辺や港で普通にデュエルしてたりするから大丈夫じゃないですかね(適当)


Q:途中でコストになってたドールハンマーってなに?

A:作者がGX史上、5本の指に入ると思うチートカードの1枚。
効果はこんなん↓

ドールハンマー
通常魔法
自分フィールド上のモンスター1体と相手フィールド上のモンスター1体を選択して発動する。選択した自分フィールド上のモンスターを破壊し、デッキからカードを2枚ドローする。その後、選択した相手フィールド上のモンスターの表示形式を変更する。

さらりとGX80話に当時したスーパー爆アドカード。自モンスターの万能自壊、デッキからの2ドロー、相手の表示形式の変更を1度にこなす凄まじいアドの詰め込みっプリ。その上、破壊はコストではないため、無効にすると破壊されなくなる相手への地味な嫌がらせも完備。一応、相手がいなければ発動は出来ないが、作中だと盤面にいた"バーストレディ"に選択を行っていないため、相手フィールド上にモンスターがいなくとも発動出来る可能性がある。
どれぐらい強いかと言えば80話の中で、相手が使用したのを見た十代が、わざわざ相手の墓地から引っ張り出して自分で使用したくなっちゃったぐらいは強い。十代も一目で垂涎になり、思わずパクったに違いない。俺もそうする。

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