テレビ離れが進む本当の理由、ここでしか言えない女性局員激論120分

報ステ炎上動画1

テレビ朝日・報道ステーションのCM。炎上後、すぐに取り下げられたが……。

出典:YouTube

直近ではテレビ朝日の報道ステーションのCM動画炎上など、テレビは女性社員の登用や働き方だけでなく、ジェンダー意識も時代とずれているのでは、と感じる“事件”が起きている。

実際、テレビ局で働いている女性社員は、どう感じているのか。在京テレビ局の報道や情報番組などで働く女性社員5人に集まってもらい、ジャーナリストでBusiness Insider Japanエグゼクティブ・アドバイザーの浜田敬子が率直にその実態を聞いた。

Aさん:40代。情報番組や報道などを担当。

Bさん:30代。入社以来、主に情報番組を担当。

Cさん:50代。主にニュース番組、特集番組などを担当。

Dさん:40代。主に技術を担当。

Eさん:40代。報道現場が長く、情報番組なども担当。

報ステCM炎上問題、テレビ内で議論はあったのか

浜田:最初に報ステのCM問題ですが、みなさんや周りはどう受け止めていましたか?

報道ステーションCM問題:報道ステーションの番組CMで、若い女性に「どっかの政治家が、『ジェンダー平等』って掲げている時点で、時代遅れ」と発言させるなど、ジェンダーに関する無理解が指摘され炎上。テレビ朝日はすぐにCMを削除し謝罪した。

Aさん:当日ニュースをチェックするためにTwitterを見ていたら、ものすごい勢いで炎上していたので、CMを実際に見ました。これはただ事ではなくなるな、とすぐに思いました。私自身もあのCMには怒りを覚えたので、周囲でその感情を共有したいと思って、いろんな人に「見ましたか?」と聞いて回ったのですが、女性も含め何人もに、「何が悪いのか、分からない」と言われてしまい……そんな会話を立て続けにしてしまったので、「私やっぱりこの会社ではマイノリティーなんだ」と自覚しました

Bさん:炎上したCMについて、男性陣に「どこが悪かったと思います?」と聞いてみました。「森問題は分かるけど、、今回はどこが悪いのか分からないから教えて」と控え目に聞いてくる人から、「何やっても文句言う奴いるよね」みたいな人まで。隠れていた男性の本音に気付くきっかけになりました

テレビ朝日

テレビ朝日の早河会長は定例会見で、「深く反省して再発防止を徹底する」と語った。

Shutterstock.com/Teddy Leung

Dさん:うちの局の番組ではソフトに「ダメだよね」と報じていたので、ひとまず安心したのですが……社内の仲のいい女性のアナウンサーとこの話をしていた場にいた男性のプロデューサーに聞いてみたら、「本当に何が悪いのか、分からないんです……」と。2人で「あのね……」と説明をしました。

浜田:テレビでは他局の事故、不祥事は報じにくい、批判しにくいのでしょうか?

Bさん:「お前のところはどうなんだ」って言われた時に、返す言葉がないというようなことはあるかもしれません。

Eさん:いくつかの番組では取り上げていましたが、賛否両論という構成でした。コメンテーターも制作者側に考えが近い人が多いので、「何が悪いのか分からない」という声も流していました。

他の業種の会社の人と話したり、普通に生活したりして、「社会はこういうモードだよね」と思って企画を考えても、会社に入った瞬間に(周りの空気に)「あ、違ったー!」と思ってネタ選びから構築し直す、それを繰り返しているイメージです。特にジェンダー問題に関しては。

Aさん:テレビ朝日が出した「想いが伝わらなかった」との謝罪文を見ても、何を伝えようとしたのかがいまだに分からないです。あの後、論点を整理した記事がいろいろ出たのに、どの局でも重く受け止められていないという話を聞いて、これはテレビ局に共通した課題だと感じます。

「炎上した」事実を受け止めて、なぜ炎上したのかを学ばなければ、同じことがまたどこかの局で絶対に起きます。むしろあのCMの炎上で、さらにジェンダー問題は面倒臭いとなって、ニュースや番組で扱うこともどんどんタブーになっていくことを心配しています。

なぜテレビでジェンダーの話題を扱わないのか

テレビ局内

ジェンダー問題への関心が低い社員が多いテレビ業界では、企画としてジェンダーを取り上げることは難しい。

Getty Images/ Grafissimo

浜田:皆さんの話を聞いて、肝心のテレビ業界で重く受け止められていないということに驚きました。 2月の森発言の際には、各局ともニュースでも情報番組でもかなり時間を割いていたので、テレビもジェンダーの話題を取り上げるようになったという印象だったのですが。

Aさん:森発言は、視聴率をすごく取ったんです。視聴率が高くなければやらなかったと思います。私も森発言がこれだけ見られるのなら、フェーズは変わったと思ったんですが。

Eさん:うちの会社は報ステ問題だけでなく、森問題もどっちも分からない人が多いです。報ステは男性の願望が漏れちゃっただけ。「もうこれくらいでジェンダーの問題は手打ちにしてよ」感。「私たちは平等だもん」っていう言葉を借りて、おっさんの願望が乗っかっちゃっただけだと思っています。

森さんは、感想が漏れちゃっただけ。感想と願望という点で根っこは一緒で、どっちも本音。なぜそう思ったかというと、森さんの問題が出た時、「これは大ニュースだ!やばい!」って私が言った時に、社内で誰もついてこなかったんです。

浜田:そうなんですね。その後ジェンダーギャップ120位の問題はどの程度報じましたか?

Eさん:短くしかやっていません。

Aさん:昨年の121位の時には、私が「やらないんですか?」と提案したら、「それってなんですか?」と聞き返されたので、説明しました。今回も順位は分からないけど、準備をしておいたほうがいいのでは?と声をかけたのですが、男性デスクから「ジェンダーギャップってなんですか?」と言われて。「嘘でしょ……」と思いながら、説明をしました。

本当によくあるやり取りです。ジェンダーの話題は、以前よりは取り上げるようになりましたが、「取り上げよう」と言い出すのは限られた女性社員のみ。それが続くと、言い出しにくくなってしまう。だからこそ、切実に女性が増えて欲しいです

Bさん「ジェンダーとか不平等なんて、視聴者が嫌がるし難しいから、言わないでくれ」と男性から言われることもあります。だから言葉や表現には目をつぶっても、まずは女性の問題を世に出すことを優先していると現場からは聞きます。あとよく言われるのが、「ジェンダーは視聴率取れない」っていうことですね。男性でも女性でも「数字がついてくるならやるけど」っていうタイプの人もいます。

Cさん:人権問題を報じる難しさは数字がついてこないということ。編成担当からは、「女、子どもは数字が取れない」「マイノリティーはもっと取れない」と言われて続けてきました。一番苦しい人ってテレビを見る隙間や余裕もないんですよね。

最近やっとTwitterなどで一番声をあげにくかった方があげられるようになり反響も大きくなってきたので、ここで踏ん張らないとなと内部では話しています。視聴者の「この番組良かった!」という声を、自ら働きかけて認識してどうデータ化するかは、戦略的にやらないといけないなと思います

Aさん:いま各局ともSDGsの企画に力を入れてますよね? SDGsの5番目のゴールはジェンダー平等なんですが、なぜかジェンダーの視点だけ抜け落ちるんです。SDGsやれっていうからジェンダー企画を出しても、「そういうのじゃないから」って。

マジョリティー街道歩んだ男性社員は変われない

men

家庭環境などに比較的恵まれた状態で、社会的な地位と収入面を求めて入社した男性は相当いる。マイノリティーに一度もなったことのない層だ。

GettyImages

浜田:それでも海外の動きも含めて、社会の変化を見れば、当然メディアも変わらざるを得ないと思うんです。新聞社にも同様の構造はあったけど、この数年女性記者や若い男性記者が声を上げ始め、少しずつジェンダー関連の記事が増え、扱いも大きくなってきています。テレビの経営層、意思決定層たちはなぜ変われないのでしょう。

Eさん:マジョリティー街道を歩んだ人たちを変えるのは、相当難しいと感じています。家庭環境などに比較的恵まれた状態で成功体験を積んだ上で、社会的な地位と収入面を求めてテレビ局に入社した男性が相当いる。マイノリティーになった経験が一度もない人の意識を変えるのは本当に難しいです。

Cさん:テレビ局の上層部や経営層は比較的学歴もあって成功体験もあるので、社会的強者の視点で物事を考えがちだと思います。ようやくマイノリティーやジェンダーの人たちのことを考えようと言い始めたんですけど、そこのギャップがまだ埋まってない。

私の職場でも、基礎的な知識から学ぶ勉強会や研修は頻繁にやっていますが、意思決定者のほとんどは男性なので、女性たちはみんな孤軍奮闘で頑張って声を上げて、なんとか突き破って、という感じです。

日本のマスコミって世界的に見ると特殊で、国内マーケットだけで十分成り立ってきたので、一般企業のようにグローバル化の波にさらされずに成長してきた。過去の成功体験から抜け出せない岩盤層と言われる人たちが、まだ上層部に残っています。そこが変わると、メディア全体が急激に変わる可能性もあるかなと思います。

Dさんおじさんたちは「男女差別がない」と思ってるんです、本気で。「うちは能力があるなら、上にあげてるから」って。確かに女性の役職者もゼロではないので。

民放全体を見ても制度的にヤバいものは無くなっています。次の課題は、やはり局長以上にどれだけ女性を増やせるか。今年2月に民放労連が新聞労連や出版労連と一緒に女性役員の数を発表しましたが、在京の局での女性役員の数はゼロか1制作局の局長の女性の数も見事にゼロで、この数字はインパクトがありました。森発言直後だったこともあり、大きく注目されたのですが、このニュースを取り上げたのは新聞とテレ東とAbemaのネットニュースだけでした。

Aさん:ただ深刻なのは、私の肌感として同世代(40代)は岩盤層と一緒の価値観です。2030代の男性たちで、ちょっと変わってきているかなくらい……。

B:某局のインターネット担当の男性と話した際に、「社内でのジェンダーに関する雰囲気はどうですか?」と聞いたら、「うちはフラットになんでも話せる感じだよ」と言われましたが。

Eさん:でも、中途半端な理解なんですよね。そういう人って。「俺って育休とかも取るイケダンだよ」って人は増えてます。でも、イケダンが言っている男女平等を真に受けていいものなのか。

Aさん:一方女性だからと言って、みんな女性差別を感じていたり、ジェンダーの問題に関心があるわけでもないです。「私たちおじさんと同化してよかったじゃん」と言われたこともあるし、男女差別は存在しないとはっきり言われたこともあります。

Dさん:飲み会断れない系ですね。もう一方が、「私もうバリバリしないからいいわ」っていう女性たち。偉くなる道とか大変だし、望んでいないしっていう人も一定数いて、私、今でもそんなに仕事してて偉いね!と言われることもあります。

外には厳しいが、自浄作用が働かない内部

NHK

報ステCM問題があった日、NHKでも番組公式Twitterでの炎上が発生した。

撮影:今村拓馬

浜田:お話を聞いていると、テレビを中から変革をするのは難しいと感じますが、何が突破口になると思いますか?

Eさん:岩盤層を動かすのは経営的な危機感しかないと思います。

浜田:逆にいうと、テレビはまだそこまでの危機感はないということですか? コロナで広告収入が激減していて、どの局、どの番組も制作費を厳しくカットしていると聞きますが。

Eさん:大変なことになっていて、制作費もめちゃくちゃ削ってます。人件費にも手を出してる状況です。

Dさん:でもどこか思ったほどじゃないみたいなムードも感じます。収入は減ったけど、制作費も減ったから、利益は大丈夫だったじゃんみたいな雰囲気。それって縮小ってことじゃないですか?っていう感じなんですけど。

Eさん:社員のリストラに手をつけるくらいの頃に、ようやく気がつくんだと思います。今はあまりにも多い社外スタッフのリストラで止まっているので、まだおじさんたちのサンクチュアリ感が崩せないのかなと思います。

Bさん:偉い人たちは、あと10年逃げ切れば自分たちは安泰だと思っているんです。

浜田:経営への危機感以外にきっかけになるとしたら、視聴者からの声ですか?

Cさん:報ステの炎上があった日、NHKの番組でも炎上がありましたよね。Eテレの番組のTwitterで、障がい者差別と女性差別を比較するような発言があって批判が殺到し、NHKは速やかに謝罪のツイートも出しましたが、報ステのことがなかったらもっと大きく叩かれたと思います。

そういう意味でも視聴者からの声は重要ですよね。もともとメディアは、外に対して謝罪するという文化が弱いです。言論機関として、正しいことを正確に伝えている、という意識があるからだと思いますが、根本的な思想や価値観が間違っていたことを、内部ですらオープンに語り合う文化がない

メディアで自浄作用が機能しないのは、起きた事象をオープンにして、再発防止につなげる仕組みが弱いからだと思います。外のことは批判するのに、自分たちの内部で起きていることには甘く、組織として穏便に済ませてしまう部分があるように思います。

財務省事務次官事件(テレビ朝日の女性記者に対するセクハラ事件)の時も、「うちの局はないよね」で終わりました。セクハラなどが社内であっても、以前は「みなさん気をつけましょう」という一般的な注意喚起だけ。具体的な事象を知らないと、自分たちがやっていることがハラスメントに当てはまるかどうかも分からない。

だから「ないよね」になる。背後にあるのは、(社内でハラスメントなどがあった時に)「当事者がかわいそうだ」「当事者の人生を守らなければ」という意識。仲間を守るという論理で間違いが共有されないんです。人間関係と起きている事象は、切り離して考えるべきで、どうシステムとして再発防止につなげるのかが重要です。恒常的な仕組みをメディア全体で作っていかなければ。

Eさん:テレビ局の場合、番組を作るスタッフは制作会社の方々がマジョリティーなんですよね。そこもアップデートしていかないと。制作会社の人たちも参加できる研修会などもありますが、なかなか参加してもらえません。

Dさん:先日日テレで起きたアイヌへの差別問題発言(日本テレビの情報番組『スッキリ』で出演者が、アイヌ民族に対する差別的表現があったとして、放送倫理・番組向上機構(BPO)の審議入りとなった)も、うちのADとか気づかない自信があるって言っていて、基本的な知識不足も感じます。

Cさん:番組制作の現場にプロフェッショナルが減ってしまったことも大きい。かつてはこの分野のプロという先輩がいて、若手はその人たちから基礎を学んで独り立ちする流れがあったんです。それが人員やコスト削減などの流れの中で、継承が難しくなって。

社会との意識差が「テレビ離れ」を加速する

若者、スマホ

YouTubeでの動画配信やNetflixの台頭など、動画コンテンツの形態は多様化している。テレビを若者に見てもらうためには、どうしたら良いのだろうか。

撮影:今村拓馬

Cさん:私はメディア内部の意識と社会のメディアに対する見方のギャップを、ずっと痛感してきました。

例えば働き方に関する報道でも、以前は「お前たちの足元がブラックなのに、何言ってるんだ」っていう声がすごく来ました。それで危機感を持って、自分たちの足元を変えながら発信しようという流れになり、ようやく少し変わってきたところです。

報ステのCMを見た時にも、同じような印象を受けたんです。「自分たちも変わってないのに、あんなこと言うなよ」っていう声が聞こえてきました。そのギャップに、視聴者は怒りとか失望を感じているんだろうと思います。このギャップにメディアがどう気づくか。特に全く気づけていない上の人たちがどう気づくかが重要だと思います。

浜田:今どの局も若い世代の視聴者をどう獲得するか、躍起になっていますよね。社会との意識差があると、特に若い世代に見てもらうことはますます難しくなると思います。

Aさん:テレビが出しているものは、おじさんフィルターを通しているので、そこを是正すれば道があるんじゃないかと思っています。そのためにもおじさんフィルターを通していることを自覚してもらうことが大事かと。若い世代の感覚とずれていることを、自覚していないので。

Eさん:私、テレビってN=1理論がずっと続いていると思うんです。つまり「俺の嫁がりんごダイエットが良いって言ってるから、りんごダイエットがウケる」っていう理論。全ての女性が、あなたの妻なのかみたいな。その対象が妻からADに変わっただけ。AD2〜3人に聞いたものが若者にウケるに違いないって思い込んでいる。N値が一定程度大きいデータを分析するとかないんです。

Dさん:あれだけ視聴率と言いながら、数字に頼らない。全然科学的じゃなくて、感覚的にやっているんです。俺がいいと思うものを作れば、世間が後からついてくるんだって思っている人はまだ多いので。

コロナはテレビの働き方を変えたのか

テレビ局で働く女性

NHK記者の過労死事件などもあり、テレビ業界の労働環境は以前から指摘され続けている。

Getty Images/waltkowalski

浜田:テレビでは長時間労働問題も早くから指摘されていますが、その労働環境の問題も女性の働きにくさにつながり、先ほどの「マイノリティーへの視点」が欠けやすい背景としてありますよね。

Cさん:新聞とテレビで違うのが、テレビは場所に縛られる仕事だということです。それ故に、24時間働けるパワーがないと生き残れない文化が根強くあります。最近までそれに乗っかれない子育て中の女性や、介護をしている人、病気をした人は、どんどん振り落とされてきました。

働き方改革とジェンダー意識はセットで考えなければいけない。仕組みを変えないと、ジェンダー平等意識も醸成されないから両輪です。今は自宅でも試写や打ち合わせができるようになったんですが、最初はずっと逆風でした。子育て中や介護中の女性たちから、まずリモートワークを始めさせてもらって、実績を作って少しずつ職場全体に広がってきた感じです。

浜田:それはでもコロナで活きましたよね?

Cさん:すごく活きました。あの時にやっていなければ、あの時の女性たちの頑張りがなければ、今回コロナ禍で自宅でスムーズに仕事はできなかったと思います、

Dさん:コロナでバラエティはすごく変わっています。編集上がりの確認もリモートになって。でも報道ではできていないんです。

Eさん:うちはかなりリモートになりました。社員だけじゃなく、制作会社の人たちも含めて。最初はface to faceじゃないと伝わらないって騒いでいた人もいたんですが、第二波、第三波とコロナが続いたので、みんな受け入れるようになりました。

浜田:その働き方はコロナ後も定着すると思いますか。

Aさん:うちはもう戻り始めてます。システムの問題もありますが、基本プロデューサーは「俺が出てこないと、番組は回らない!」って思っているし、リモートが大嫌いな人も来ちゃうし。「リモート分かんねえ!」ってパソコン閉じちゃうような人もいるし。

女性が発信し、変革する日まで「あと少し」

働く女性

テレビ局で働く女性たちも日々、中から変革を起こそうと奮闘している(写真はイメージです)。

Getty Images/d3sign

浜田:最後に。みなさんご自身のキャリアのことを。これまでに女性だから壁を感じたり、差別を感じたりしたことはありましたか。

Bさん:私自身、競争心もないタイプなので、出産前までは女だから、と感じることはありませんでした。でも、やはり出産して復職してからはモヤモヤすることはあります。会社の制度は整っていて、子どもが熱を出せば帰れます。一方で、例えば同期入社の男性がどんどん重要な仕事を任されていたり、会社の空気的に男性が育休を取ることは前提にない感があっても、誰もそこに疑問は持たない。

なんか違うんじゃないかなっていう気持ちを抱え続けてきました。森発言がきっかけで自分のモヤモヤしている感覚を、社内の女性同士で話すようにはなりましたが、まだその段階です

Eさん:私も出産前まで仕事上で男女差を感じたことはなく、若い時もいろんな経験をさせてもらいました。ただ、産んで戻ってからのネガティブパワーワードに衝撃を受けました。会社の人事も管理職から新人研修まで、いろんな階層でジェンダーや働き方に関する研修をやってはいるんですが……。

Aさん:私も今は恵まれている職場だとは思います。一緒に働いている男性上司も理解はあるので。ただ、みんながそうではなく、ここの担当を外れたら、今のように働けるとは限らないと思います。

今直面している問題は、自分より年次が上の人たちに指示しないといけない難しさです。反発されることも多く、男性の上司に相談しても、ピンと来てくれないんですよね。「頑張れよ!」で終わり。

Cさん:私は皆さんより少し上の世代で、職場に女性は私1人という状況が続いてきました。少しずつ女性の後輩たちは増えてきましたが、報道内容や経営方針を決める意思決定層にほとんど女性がいなかった。ようやく今、働き方改革などに各社が取り組むようになて、女性も増えてきた。その女性たちが発言して、変革できるまであと少しというところまできたかなと思います

私が残りの時間でやりたいことは、新しいリーダーを育てること。組織を変えていくためには数が増えるだけではダメで、意思決定の場にも女性や多様な人材が当たり前にいることが必要ですが、リーダーになるには相当にトレーニングや経験値を積まないといけない部分もあります。女性のリーダーが増えるよう取り組んでいきたいと思っています。

(文・浜田敬子、取材協力・戸田彩香)

有料会員にご登録いただくことで制限なく記事をご覧いただけます。

お得なプランをみる
※ いつでもマイページから解約可能です。
ログインして続きを読む
  • Twitter
  • …

Popular

あわせて読みたい

新着記事

抽選で5名様にAmazonギフト券¥1,000プレゼント
読者アンケートにご協力お願いします
回答する