2021/05/12
 吉見俊哉先生が、欧州や日本の大学の歴史を踏まえつつ、日本の大学が直面する課題と大学の未来について書いています。教育や研究に携わる教員、それを支える職員、大学に関心がある産業人、高等教育や科学技術の政策に従事する行政官などが読んだらよいと思います。いくぶん教養教育の記述が厚いと思ったのですが、吉見先生は東京大学教養学部卒業のためかもしれません。 少子高齢化とコロナ禍によるオンライン授業の実施の中で、大学の淘汰は進んでいくことを示されています。また、大学改革の背景は、産業界の不満と新自由主義の影響があることを指摘しています。そして日本の大学が疲弊してしまった直接的要因は、大綱化、大学院重点化、国立大学法人化であるが、これらは強圧的な力が外部から入ってきたのではなく、大学内部の構造から生じたものだとしています。 教員も学生も大学の構成員ですが、大学への貢献を求められているわけでも、貢献度が評価されているわけではないという趣旨のことを書かれています。そういう観点からは、民間企業とは全く異なる組織であることを理解しなければならないと思いました。大学を改革するとしたら、職員の力が重要であるという指摘はポイントをついていると思います。 また、大学の教員たちを理念型として、学内政治志向と学外評価志向とに分類しているのは、大学経営をする観点からは興味深いところです。この分類は、実は企業や省庁においても使えようにも思います。それから、大学教員が保有するべき最も究極的な資本は、実は資金でもポストでもない(学長選考過程においては、資金やポストが注目されるようですが)、自由な時間である、は重要な指摘です。昨今、研究時間が減少しているという現象はこれに連なるものだと思いました。なお、帯に「何が大学を殺すのか?」というフレーズがあるのですが、これは毎日新聞の「何が科学を殺すのか?」だけでなく、苅谷剛彦先生と吉見先生との対談本「大学はもう死んでいる?」を想起させるものでしょう。
2021/05/11
「外部の人間に宮崎大学の内部の実情がわかるはずがない」とか、「内部の事情を知らない外部の人に宮崎大学の運営を任せてよいのか」というご指摘が出回っているようです。...
2021/05/10
 私が学長になったら、現在の宮崎大学医学部付属病院から宮崎大学付属病院にするのではないか、との情報があるそうです。宮崎大学付属病院にすると病院からの収益を全学的に使えるようになるが、その分医学部での使用が減るということのようです。私はそのようなことを考えていませんので、びっくりです。ブログのネタはつきません。...
2021/05/09
 2021年3月26日第6期科学技術・イノベーション基本計画が閣議決定されました。この新しい基本計画においては、基本計画期間中の5年間で政府として研究開発投資30兆円、官民合わせたそれを120兆円とされています。研究開発に大きな予算が投じられることになります。...
2021/05/08
 ホームページにおいて、宮崎大学は危機的状況なのですか、という質問とその答えが掲載されています。ここではもう少し詳しく説明したいと思います。...
2021/05/07
 先日、旧知の外資の製薬企業の日本法人の方と意見交換をしました。それなりの長いつきあいなので、ざっくばらんに議論ができます。「日本には良いシーズがあると思う。だからこそ、本社の研究開発のグローバルヘッドが来日して有力大学医学部と議論をするのだ。」と言っていました。しかし、「ただ、日本の大学の先生たちは、国からの研究費が厳しいためか、企業を金づるのように見ていると感じる。共同で研究して新しいことをしようというより先に、いくら出してくれるのか、という感じになっている。」とも言っていました。  そういえば、ある製薬企業の海外の研究所にいる若い研究者が、日本では大学病院はお客さんでもあるので、大学病院の研究者と意見交換をする際にはMRが同席して、フラットな学問上の意見交換ができない、でもこの国ではフラットな意見交換ができると言っていたことを思い出しました。  大学の先生方に聞くと、企業は安全性と有効性を示す治験第2相(フェーズ2)までのデータを見せてほしいと言うなど大学の実情を理解しないという不満を述べていました。こうした両者の隔たりを近づけることが重要です。  ただし、業界によって事情は異なるようです。先日、計測機器メーカーの経営陣にお会いした際には、研究に貢献することが会社の方針であるとのことで、積極的に大学と共同で新しい計測機器を開発していました。もちろん、赤字にはなっていません。世界最先端の技術を保持し、世界で一社あるいは二社しか作れないような計測機器を製作されています。  ちなみに、先ほど出てきた製薬企業方は日本の中で行ったことがない都道府県は少ないが、宮崎県はその一つだそうです。私が宮崎大学学長になったら、彼には是非来学してもらい、宮崎大学医学部のすばらしいシーズをみてもらいたいと思います。
2021/05/06
  少し前のことですが、日本でトップクラスのがんの研究所の幹部と話をしていたところ、某大学の神経科学に関する優れた研究をしている教授と私が大学の教養学部の同級生ではないかということを指摘されました。なお、その教授のことはよく知っていて、時折意見交換をする仲ですが、同じ年に大学に入っただけで、知り合ったのは学生時代の40年以上前ではなく、10数年前のことです。どうしてそんなことを知っているかと聞いたら、ある有力な教授が話していたので、日本中の研究者が知っているよ、と言われました。この意味するところは、日頃の言動には注意せよということであったということでしょう。 この表現は誇張しすぎですが、アカデミアには大学を越えて、自然発生的なつながりがいろいろと存在するようです。こうしたつながり(ネットワーク)は、最新の海外及び日本の研究動向から私のような役人のどうでもよいような情報まで飛び交うようです。このようなネットワークは、アカデミア(学界)だけでなく、産業界にも官界にもあると思います。 私が例に挙げたネットワークは、数多存在するであろうアカデミアにおける人と人とのつながりの一つでしょう。また、現医学部長や元医学部長、医学部出身の研究担当理事や学長がつながりもあるようで、今回の宮崎大学の学長選考も話題になっています。この連休中にある大学の医学部教授から電話があり、宮崎大学の関係者が、このようなつながりの中にあるのだろうかと言っていました。 他の分野、例えば、がん研究、バイオリソース、感染症、電子カルテなどについても、いろいろとつながりがあるようで、宮崎大学の研究者のお名前もあがっていました。また、第1回のブログから推察されるとおり、生命倫理、あるいは科学と社会の分野では私もいろいろなつながりの中にあり、宮崎大学の研究者のお名前があがっていました。外から見ても宮崎大学にはいろいろな強みがあるということがわかります。 世界中で様々な研究が、多様な方法で行われています。一人、一研究室、一大学で研究を実施するよりも、他大学の教員、他分野の研究者と協力した方が研究を進めていくというのが現在及びこれからの流れのようです。また、大学の経営においても、他大学や他業種とつながっている方がよりよい経営を実践できるように思います。既に、私が学長になったら協力関係を築きたいという複数の声をいただいています。
2021/05/05
 オンラインの会議の際に、「民間企業の長所を大学経営に取り入れますが、教育と研究を担う大学は、「学問の府」として社会的に共有される資産であることが大前提です。」と書いているがどのような意味なのかという質問を受けました。...
2021/05/04
 学長選考に関するオンライン会議を何度も経験しました。その際、学部長たちやシニアの教授たちとは別に30代から40代と思われる若手教員だけが参加するオンライン会議も開催されました。その方が若手が本音を言いやすいという理由のようです。...
2021/05/03
 このブログでは、何回か理事や副学長について触れました。シニアの教授の「あがりポスト」ではありませんし、人望があって、全体を見渡せる方が望ましいということを書いてきました。理事や副学長の候補名簿に自分の名前が載っていないと心配している先生がいらっしゃるという情報も寄せられました。どういう名簿なのか、見てみたいですね。...