インフィニット・ストラトス ~迷い込んだイレギュラー~ 作:S-MIST
ようやく次のお話しが出来ましたので投稿です。
そして今回、また物語りが動きます。
どのように動くのかは、本文へどうぞ!!
更識家。
対暗部用暗部として名高いこの家は、その性質上、裏社会だけでなく政財界とも強い繋がりがあった。
そんな家の正月ともなれば、身内だけでひっそりと祝う、などという事は無い。
祭り事は政と言うように、各方面との関係を維持・強化するための大切な行事であった。
ここは日本の某所、某ホテル。表向きは市民グループの、フランクな立食形式の新年会だ。だが実質的には、更識主催の新年会である。そこで楯無は当主の務めとして、多種多様な参加者から新年の挨拶を受けていた。
「当主様、今年もよしなに―――」
「相変わらずお美しい。今年も宜しくお願い致します」
「楯無様が当主である限り、更識は安泰ですな」
「我ら一同、変わらぬ忠誠を―――」
昨年までと変わらない光景だ。多くの有力者が更識家当主、更識楯無の元に訪れては挨拶をしていく。
否、同じでは無かった。訪れる者のグレードが、昨年までとは明らかに違う。
(それはそうよね………)
楯無は、傍らに立つ男をチラリを見た。
彼が更識家の新年会に招待されたという話は、昨年末から流れていた。それを快諾したという話も。
政財界の有力者が、こんな話を聞いて飛びつかないはずがない。
何せ極めてコンタクトの取り辛い相手が、
まして昨年末、イギリスで同級生と共にパーティに出席した事が確認されている。
コネクション作りで後れを取るまいと、今までは代理人を派遣するなどして、更識とは一定の距離を置いていた有力者達が、次々と新年会へ参加する事となった。
そして目的とされた晶は、己の役割を良く理解していた。
(俺はあくまで有力者をおびき寄せる撒き餌。後は楯無が上手くやってくれる)
この考えのもと、彼は決して出しゃばるような真似はしなかった。
むしろ交渉事が苦手という、それなりに知られている弱点をあえて見せる事で有力者をおびき寄せ、近寄ってきたところを楯無が、“人たらし”とまで言われるカリスマ性と話術で絡めとっていく。
お互いの役割をしっかりと認識したこのコンビプレーは、如何に晶と良い関係を築いているのかを、暗黙の内に周囲に知らしめていた。これだけでも、今後の更識の活動を大きく助けるだろう。
(本当、助かるわ)
彼女は三重の意味で、そう思っていた。
1つはコネクションという意味で、1つは更識の活動という意味で、そして最後の1つが簪だ。
昨年までは楯無が当主として活動している間、妹に下衆な輩が言い寄っていないか気が気ではなかったのだが、今年は違う。
むしろ――――――。
(簪ちゃん、ちょっとくっ付き過ぎじゃないかしら)
姉が当主として働いている傍らで、妹は晶にベッタリだった。束博士に遠慮して腕を組んでこそいないが、その距離感は、リップサービスというには近過ぎる(尤も、簪も全く同じ事を思っている辺り、やはり姉妹であった)。
そしてこの光景を見た参加者達は、実に様々な視線を向けていた。
(クソッ、なんて羨ましい!!)
(更識姉妹は、あの男の手中か………)
(俺が狙っていたのに)
(チッ、どうせあんな事やこんな事してるんだろうな)
(姉妹は上手くあの男をたらし込んだようだな。いや、たらし込まれたのか?)
だがこの場にいるような者達が、嫉妬と羨望の視線を向けるだけ、というはずもない。
今後3人とどのように付き合っていけば、最も己の利益となるか、という事をも考えていた。
(彼はそれなり以上に更識を………と言うよりは、楯無を尊重しているな。なら彼と同じようにするのが無難か。自分の尊重している相手が尊重されて、悪い感情を持つ者もいないだろう)
(姉妹の様子からすると、彼の方を持ち上げても問題無さそうだな。むしろその方が、姉妹への受けは良いかもしれん)
全く異なる考えに至った者達が、3人の周囲に集まり始める。そんな中で、晶は口を開いた。
楯無がどれほど特別扱いされているかを知らしめる、とびっきりのプレゼントを贈るために。
「そう言えば、お前に言おうと思っていた事があったんだ」
「あら、何かしら?」
そして彼は、サラリとその内容を口にした。
「アンサラーは、今年中に
この瞬間、会場内が静まり返った。
何せ束博士が公表しているデータによれば、アンサラーの発電能力は、人口1億人規模の生活インフラを支えられるほどだ。
そして太陽光発電を行うアンサラーに、
これにより生み出される強力な価格競争力は、既存の電力企業では絶対に太刀打ちできない、圧倒的なアドバンテージだった。
なお束と晶以外は知る由も無いことだが、公表されているアンサラーの発電能力は、試運転レベルのものである。馬鹿正直にフルスペックを、他人に教えてやる必要など何処にも無いのだ。
閑話休題。
そして電力供給先の第1号に日本が選ばれ、電力供給計画が楯無に任された。これがどれほどの意味を持つか、この場にいる者達は即座に理解した。
晶が欧州に行った時に少々騒がれた小娘共がいたようだが、それとはレベルが違う。
現代文明の生命線とも言える電力で、圧倒的なアドバンテージを与えた。この事実は、更識楯無が篠ノ之束と強固な関係を築いていると、周囲に改めて認識させるのに十分なものだった。
「勿論、受けさせてもらうわ」
「良かった。断られたらどうしようかと思っていたんだ」
「本気で言っているの?」
「お前は奥ゆかしいからな」
「あら、ありがとう」
加えて、晶との気軽なやりとりだ。
そして参加者達は、今一度思い出す。
世界最高の頭脳と世界最強の単体戦力が、敵対者にどのような対処をしてきたかを。
ここで
つまり2人はこう言っているのだ。
―――
ここまで理解した瞬間、この場にいる者達の心は決まった。
更識に付くなら、今を置いて他に無い。アンサラーが
そして
ならば行うべき事は――――――。
「
近くにいた有力者の1人が、声を掛けてきた。
楯無は水色の振袖姿で、艶やかな微笑み―――当主の仮面―――を浮かべながら先を促す。
「あら、改まってどうしたのですか?」
「いえ。世界の電力事情や環境汚染を考えるに、日本は率先してクリーンエネルギーの活用を進めていくべきだと思うのですよ」
「そうですね。何かお考えでもあるのですか?」
「アンサラーというクリーンエネルギーがあるのなら、既存の電力企業が抱えている原子炉などは、順次閉鎖していくべきだと思うのですよ。アレは一度事故を起こしてしまうと、深刻な環境汚染を引き起こしますからね」
「大胆なご意見ですね。反対される方が、多そうです」
「所詮既得権益にしがみ付く者達でしょう。国民には受け入れられると思いますよ」
「なるほど。では、火力発電所は?」
「多少二酸化炭素は出ますが、技術的には安定していますので、非常時の予備電源として残しておいても良いかと。技術者育成の役にも立つでしょう」
「技術者育成という意味では、原子炉も同じでは?」
「核技術があるに越した事はありません。ですが先進国の中で率先して、原発廃絶に動いたという評価を諸外国から得られるなら、手放す価値もあるでしょう」
「今働いている方々の首を、切る事になってしまいますよ」
すると有力者は、ニヤリと笑みを浮かべた。
「経営陣の方々は、今まで随分美味しい思いをしているでしょうから、そろそろ年金暮らしをして頂きましょう。ですが技術者に罪はありませんので、1つ未来への投資をして頂きたいのです」
「それは?」
「宇宙で使える核融合炉の研究を」
それをこの有力者は、日本の技術者の総力を結集して技術蓄積を行い、宇宙という未知の空間でも安定して使える、使いやすい核融合炉を作ろうと提案しているのだ。
「なるほど、ね」
楯無は数舜考えた。
この提案は理に適っている。
既存の電力会社を潰せば、路頭に迷う人間が大量に発生してしまう。だがこの提案なら、少なくとも技術者を路頭に迷わせる事はなくなる。
また宇宙で使える核融合炉という提案も良い。
地球圏ならアンサラーによる電力供給が可能だが、それ以上遠くなると、どうしたって強力な発電設備が必要になってくる。来たるべき宇宙進出時代に備えて、技術蓄積をしておくのは決して悪い事ではない。
欠点と言えば莫大な研究費用だが、アンサラーによる電力供給が成れば、確実にそれ以上の収入が見込める。
楯無は最後にチラリと晶を見て、彼が肯いているのを確認した。
「とても興味深い提案ですね。後日、もしかしたらもう一度お話しを伺うかもしれません」
「では、その時を楽しみしています」
この場での話はこれだけだった。
だが楯無の前向きな態度と晶の肯きを見た周囲の面々は、この新年会の後、それぞれ独自に行動を起こし始めた。
1つ1つは小さな行動だったかもしれない。だが多くの人間が動いた結果、最終的には日本政府が動き、驚くべき発表が世界に向けて行われた。
発表された内容は幾つかあったが、中でも大きなものは3つあった。
1つは、アンサラーの稼働に伴い原発を順次閉鎖していくこと。1つは、豊富な電力を背景とした経済特区の設立を行うこと。1つは、来たるべき宇宙進出時代を見据えた、宇宙でも使える核融合炉の開発を目指すという、巨大プロジェクトの立ち上げだ。
この日本らしからぬ大胆は発表は、普通なら発表される前に潰されていただろう。
しかし、アンサラーの開発者は篠ノ之束。ISという超兵器を単独で世に送り出した事に加え、既に発電衛星を実用化している本物の天才だ。反対意見もあるにはあったが、
薙原晶と知り合い、世に関わるようになり、偉大な発明品を世に送り出し続けた結果が、今ここに花開こうとしていたのだった――――――。
◇
日本政府の発表は、“表向き”世界にとても好意的に受け入れられた。
何せ原発は常に、放射能汚染という危険性が付き纏う。火力発電所は、地球温暖化の原因の1つである二酸化炭素を排出する。それらを段階的にとはいえ閉鎖していき、クリーンエネルギーへの大転換だ。
予備電源として、また技術研究・保存用に一部は残される予定であるが、歴史に残る素晴らしい方針転換だろう。
だが何事にも、負の側面というのは存在する。
今回の場合で言えば、その1つに日本の発電用燃料の輸入量減少、というのがあった。
アンサラーという新たな発電システムが動き出せば、態々輸入しなくても豊富な電力が手に入るのだから、成り行きとしては当然と言える。
しかし燃料の輸出元にとっては、悪夢のような話だった。
何故なら日本の化石燃料輸入額は、年間約20兆円にも上る(相場により変動するが、過去最高額は約28兆円)。
これだけの取引量が段階的にとは言え絞られていくとなれば、大幅な収入減少は避けられない。輸出企業の経営を直撃する大赤字だ。それを回避する為には、どうにかして新たな取引先を見つける必要があった。だが国が消費する程の燃料を売り捌くなど、並大抵の事ではない。
仮に今ある取引先に取引量の増加を持ちかけても、下手をすれば足元を見られて、安く買い叩かれるだけだろう。
―――そうして困っている時に、差し伸べられる手があった。
それを、どれだけの人間が断れるだろうか?
相手が民間企業で、書類上綺麗で、信用出来そうな交渉人が相手で、安いとはいえ適正な価格の範囲内で買い取ってくれる相手だ。真っ当な商売人なら、売って当然だろう。むしろ売らない方がどうかしている。
例えその相手の背後に、“死の商人”の臭いを感じ取っていたとしても、収入が無ければ餓えてしまう。生活を守る為には、仕方のないことなのだ。
そうして輸出元は、日本に代わる取引相手を見つける事ができた。
支払いがしっかりしている、取引相手としては優良な部類だ。
だから輸出元は目を瞑る。
安い燃料が世界中の
機甲戦力の投入が、戦火の拡大という負のスパイラルを生み出していることに。
生み出された負のスパイラルが、世界各地の火種を煽っていることに。
煽られた火種が燃え広がり、飛び火し始めていることに。
飛び火により不安定化した政情が、経済戦争という歯車を回し始めていることに。
人の命をチップとして莫大な資本が動く、パワーゲームが本格的に動き始めていることに――――――。
◇
こうして経済戦争が動き出すと、裏社会で暗躍していた亡国機業も、その活動を活発化させ始めていた。
複数のペーパーカンパニーを巧みに使い分け、各地の戦場に資金や武器を供給していく。勿論、戦っている両方にだ。どちらか一方が勝ち過ぎないように。
だが亡国機業の狙いは、経済戦争を長引かせる事では無かった。
無論最終的には長引いてもらった方が良いのだが、現時点における目的としては、事態を泥沼化させて抑止力たるISを引っ張り出し、撃破又は捕縛する事にあった。
そうすれば抑止力という枷が無くなり、争いは激化の一途を辿るだろう。
またISという数の限られた抑止力が減っていけば、代わりの抑止力として、巨大兵器が売れていく事は想像に難くない。
亡国機業としては、そんな未来予想図を描いていた。
そして亡国機業幹部会では、不安定な世界情勢を更に混沌とさせるため、ある計画が進行していた。
「――――――以上が、オペレーション“
最高幹部12人―――いずれもワンオフチューニングが施されたIS専用機持ち―――全員が、一堂に会したその席で説明された計画は、悪魔の計画と呼ぶに相応しいものだった。成功すれば今後100年、地球圏に平和は訪れないだろう。
「いやしかし、我々の手でこの計画を実行に移せるとはね」
「全く。束博士様々だな」
とある幹部2人が口を開いた。
本来であれば亡国機業の手によって、現在のような世界情勢になるはずだった。
だが束博士が世に送り出したパワードスーツは歩兵の戦力を飛躍的に増強させ、新型輸送ヘリは物資の大量輸送を可能にした。つまりどんな場所にでも、強力な戦力の展開が可能になり、世界中の至る所で戦闘行為が可能になった。
これのお陰で、元々存在していた火種が煽りやすくなった。
加えて、アンサラーの稼働予告だ。
これによって日本が消費するはずだった燃料―――約20兆円分―――が、安く市場に流れた。燃料を大量に消費する機甲戦力が動かしやすくなったのだ。そして
皮肉な事に、本来亡国機業が行うはずだった計画の一部を、篠ノ之束博士が世に送り出した発明品が、肩代わりしてしまったのだ。
しかし現状では、まだ弱い。
経済戦争の歯車は回り始めたが、ISという抑止力がある限り、適度なレベルで抑えられてしまう。
だからその抑止力を取り除きつつ、世界を後戻りできないところまで推し進める。
その為の一手として亡国機業は――――――。
「先進各国の戦力をすり減らす。もしくは動けないようにする、か」
再び別の幹部が口を開いた。
正規軍のISを引っ張り出し、撃破又は捕縛する。確かに抑止力を奪うには有効な手段だ。だが本当の意味で抑止力を奪うのなら、もう1つ奪う必要のあるモノがあった。それは、先進各国が保有する軍事力だ。
例えば米国。一時に比べて影響力を減じたとは言え、その軍事力は未だに質・量ともに世界最高。加えて世界で最も実戦経験を積んでいる軍隊の1つだ。
そんなモノが背後に控えていれば、どうしても心理的ブレーキが働いてしまう。いざとなれば米軍が出て来てしまう、と。
欧州や露もそうだ。
先進各国が保有する強大な軍事力は、未だに抑止力として機能している。
しかし、その軍事力が機能しなくなればどうなるだろうか?
そうなれば
富める者は更に富み、貧しき者は更に貧しく。富の二極化は、混沌とした世界を形作っていく。
ここで、更に別の幹部が口を開いた。
「すり減らし方は各々の自由だが、1つだけ共有しておきたい事がある」
「それは?」
「アンサラーに手を出すか否か」
瞬間、会議室が静まり返る。
だが、結論が出るのは早かった。
「否ね。確かにアレを手中に収める事が出来れば、世界の覇権を握れるかもしれない。けど――――――」
とある幹部が手元のパネルを操作すると、幹部全員の前に空間ウインドウが展開された。
表示されているのは、いずれも戦闘の痕跡だ。
「アンサラーにドイツの“黒ウサギ”が絡んでいるのは、皆知っていると思う。だがそれ以外に、姿を見せていない奴がいる」
「見たところ襲撃部隊が全滅した後の様子だけど、それだけで否というのはどうなのかしら?」
「分からないなら、ISの視覚フィルターを通してみると良いわ」
幹部達は言われるがままに、ISの視覚フィルターを起動。
すると各々のISが映像を分析し、とある恐ろしい事実が浮かび上がってきた。
「――――――これって!?」
幹部達の表情が驚愕に染まる。
12機のISが例外無く、同じ分析結果を叩き出した。
「NEXT級の、超高出力エネルギー兵器」
「そう。ちなみに襲撃した同時刻に、彼がIS学園で授業を受けていた事は確認済みよ」
亡国機業が知る由も無い事だが、アンサラーの開発において、束は一切自重しなかった。
パーツ輸送の護衛戦力に、IBISや
だが余りにも五月蠅ければ、“
「なるほど。なら無理に手を出す必要も無いわね。それにアンサラーが豊富な電力を供給している限り、安くなった燃料が市場に流れて、PMCが動き易くなる」
「加えて言えば、アンサラーの存在は富を二極化させるわ。こちらとしては、その方が都合が良いものね」
「それに束博士の目標は宇宙。目的が脅かされない限り、こちらに干渉してくる事もないでしょう」
こうして亡国機業の方針が決まり、各々が退席していく中、残ったとある幹部が口を開いた。
「そう言えばスコール。貴女、最近随分静かじゃない?」
「そうかしら?」
スコール・ミューゼル。亡国機業最高幹部の1人。
腰まである豊かな金髪と真紅の瞳。綺麗というよりは豪華と形容すべき美しい容姿。女性らしい起伏に富んだボディライン。それを強調するかのように、身を包むのは瞳と同じ色のVネックラインドレス。大きく開かれた胸元と背中に、男ならば自然と視線が吸い寄せられてしまうだろう。
そんな美しい女性だが、彼女の本質はソレでは無かった。
幾つものIS強奪を成功させ、またつい先日も、オペレーション“
組織への貢献度で言えば、間違いなく幹部の中でも上位に入る傑物だ。
「そうよ。確かに貢献度では問題ないけど、何ていうのかしら? 以前のような無茶が見られなくなったって言うのかしら」
「貴女ね。なに当たり前の事を言っているのよ。私の活動領域に日本が含まれている事は知っているでしょう。あの束博士と更識が根を張る領域よ。慎重にもなるわ」
「それもそうね。ところで、美味しい話があるんだけど1つ噛まない?」
「あら、悪巧みのお誘い?」
尋ねながら、スコールは思考を巡らす。
目の前の相手は、幹部会の中では比較的中立寄りの人間だ。無論この場にいるくらいだから、それ相応の腹黒さは持っている。だが組織利益を優先させる事も多いため、組織内で調整役を担う事が多かった。
一時的に手を組む相手としては、悪くないだろう。
「ええ。とっても悪いこと」
「どんな?」
「それはね――――――」
直後、接触通信で悪巧みの内容が送られてくる。
「――――――これは!?」
スコールはISによって高速化された思考により、瞬時に理解した。
何とも心躍る計画ではないか。
「どう?」
「乗ったわ」
「なら、宜しくね」
「ええ」
こうしてスコール・ミューゼルは、とある幹部と一時的に手を組む事にした。
内容自体は、特に難しいものではない。
亡国機業が関わる計画としては、比較的平穏・平和な部類であるとすら言えるだろう。
だが現在の世界情勢でコレを行えば、さぞかし面白い事になる。そんな確信がスコールにはあった。
(多分、コレを切っ掛けに世界が動く。“
そんな事を思いながら、彼女は帰路についたのだった――――――。
第111話に続く
難産でしたが、ついにアンサラーの稼働予告まで来ました。
そして経済戦争の下地が出来上がり、亡国機業も動き出しました。
これで主人公勢が2年生になった時、世界情勢は大分面白い事になっていると思います。
PS
余り関係無いですが、サブタイトルが中々しっくりこないので、もしかしたら後で変えるかもしれません。