少女は傷つき、血だらけで倒れていた。そんな彼女にキザな貴族、ギーシュは笑いながら唾を吐きかける。周囲の生徒達も、教師も、大笑いしながらワインのボトルや皿に乗った食べ物を投げつける。事の発端は数分前に遡る、シエスタがケーキを配っている途中、ギーシュが落とした小瓶を拾って届けようとした。その結果、ギーシュは二股がばれてフラれてしまった。その腹いせにギーシュはシエスタを痛めつける。
「やっちまえ、そんな意気地のないヘボメイド!」
この世界は魔法が全て。魔法が使えない平民は無力。それ故、他のメイドや料理長は何も出来ず、ただ拳を震わせるだけ。
「弱い上にプライドもない。喧嘩の一つも買えない。しかし頭の中は夢いっぱい。まるで虫けらだ!!」
「『「『「『「アハハッハハハハハハハハハハハ!!!!」』」』」』」
「いいか?平民は貴族にはどうやっても勝てない!平民が夢を見る時代はないんだよ!」
「『「『「『「アハハッハハハハハハハハハハハ!!!!」』」』」』」
生徒たちだけでなく、教師も一緒になって笑いだす。こうなると貴族という言うよりも、まるでチンピラだ。
「・・・・・う・・・・・う・・・・・・」
シェスタの目から涙が溢れる。どうして自分はこんなに弱いんだろう、自分はなんて無力なんだろう。
「随分、躾のなっていないメイドじゃないか。平民なだけある。まったく親の顔が見てみたい、そして聞いてみたいよ。どんな躾をしたんだい。と」
「!?」
その言葉にシエスタは殺意の篭った目でギーシュを睨む。
「ん?何だい、その目は?」
「あ・・・・・・いえ・・・・その・・・・・」
「君は貴族に対しての礼儀がなっていないようだね? 流石、平民だ!」
ガッ
そう言いながらギーシュはシエスタの頭を蹴り上げる。
「『「『「『「アハハッハハハハハハハハハハハ!!!!」』」』」』」
シエスタは洗濯場で体育座りをしていた。その表情はまるで魂の抜けた抜け殻のようだ。
「随分、面白い格好をしてるね。」
「!?」
「アハハハハ、ここのクックベリーパイはやっぱり最高だ。」
突然声をかけられ、シエスタは我に返る。そこにはをあぐらをかきながら、クックベリーパイを食べているジャイアンがいた。
「あなたは、今朝の・・・・・」
そう言いながら少女は険しい顔で少年を見つめる。
「何を悔しがってるんだ?さっきの戦いはお前の勝ちだぜ。」
「えっ?」
少年の言葉にシエスタは目を見開く。
ニヤリ
「あいつらの言ってる事は全てクソだ!!平民が夢を見る時代はないだって!?おい!?ハハハハハハハッハハ!!!」
「・・・・・・・・・・。」
「人の夢は終わらない!そうだろう!?」
ジャイアンは決心し、高々に宣言した。この世界でこれからやるべきことを。