『書籍化するためになろうに魂を売ってあえての駄文や流行テンプレや長文タイトルを書いている』と言われた書籍化作家の心の声
タイトルのまんまです。
客観的データなんて無いし、自分以外のひとたちの総意見とかでもないです。
最近ちまたでよく聞くこの言葉……。
「書籍化作家は、書籍化のためになろうに魂を売ってあえての駄文や流行テンプレや長文タイトルを書いている」
客観的にそう見えているらしい、その状況的には一応あてはまる書籍化作家のわたし。それについての回答をお伝えしたいなと思いまして。
わかりやすいように、架空の質問者を置いてのQ&A式で書いてみます。実際に直接言われた・聞かれたものがほとんどです。繰り返し書かれているのはうんざりするほど耳にしたんだなと思ってください(笑)
以下の回答はあくまでわたし個人のことで、世の作家さんみんなコレじゃないですよってのを前提として。
のんびり適当にご笑覧くださいませ。
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Q1――創作、楽しいですか?
「はい!!」
Q2――今書いている(書籍化した)作品は、あなたの嗜好が何パーセント入ってますか?
「100%。いや、99%かな」
Q3――売れるためとか読者のためとかは一切考えてなかったって事ですか?
「いいえ。むしろがっつり研究しましたし、今も常に考えながら執筆してます」
Q4――矛盾してません?
「してません。なぜなら、研究の結果書いているものと自分の好きなものが完全一致しているからです」
Q5――そんなことありえます?
「実際ありえてます。そもそも読者=人間で、読者受けを狙う=たくさんの人間が好むように書く、てことですよね。そのたくさんの人間のなかに作者というわたし自身が含まれていても不思議はないでしょう、確率として」
Q6――偶然、流行と自分の趣味が一致したって事ですか?
「まあそうですね。偶然ではなく必然だと思いますが」
Q7――詳しく。
「『流行』とか『王道』とか『テンプレ』だとかって、一言でいうけども実は色々とありますよね。たとえば勇者が剣をもって魔王を倒しに行くのはゲームの王道、地味な少女があるキッカケで誰もがうらやむ生活を手に入れるのは少女向け童話の王道。この中でもさらに細分化された『あるある』があります。『異世界転生』のなかにも主人公最強・チームプレイ無双・ほのぼのハーレム・錬金ものづくり・村おこし・モンスターハント・お菓子作り・はずれスキル下剋上……古今東西、この世に出ているエンタメ作品の数だけ『売れ筋』があり、選びたい放題。そこから自分が好きなものを選んだので、好きなのは必然です」
Q8――自分だけの創作とか、オリジナルを書きたいという気持ちは無いと言うことですか?
「うーん……なんともいえないですね。Q7の作業はあくまでもガワというか、自分的にはジャンルを選んだだけっていう感覚なんです。たとえタイトルやあらすじがそっくりでも、具体的な中身をどう書くかで全く別の話になる。お話の展開もキャラクターも自分でどうしようこうしようって悩みながら書いてるので、ふつうにオリジナル創作以外のなんでもないかなと」
Q9――しかしパッと見は他作品とマルカブリする可能性もありますよね?いいんですか?
「それは別にいいかな。オンリーワンになりたいという願望はないですし。そもそも『個性』って、『誰ともカブらないスーパーレアなもの』ではなく『自分自身を出したもの』だと考えてます。わたしがわたしの心のままに書いたならば、結果的に凡百なものであっても、これがわたしの個性なのだと胸を張れます」
Q10――それではプロ作家としてやっていけないですよ!
「そう? そうかなあ。実体験としてはそうじゃないような気がしてるけど、そうかもしれないですね。まあそれならそれで……わたしに才能が無かったんだなっていうだけですねえ……」
Q11――なんとかしなきゃって思いませんか?
「あんまり。いまんとこは。いつかの未来にもしなんとかしたくなったらします」
Q12――なんとしてもプロとしてやっていく気が無いって事ですか?
「あると思われてたほうが不思議です(笑)しかし諦めてるわけじゃなくて、Q10で首を傾げた通り、このスタンスでやってるプロもいる……あるいはプロこそがこのくらいのフワッと感だったりするんじゃないかなー、とも思ってます。しかし『今は』でいうなら無いですね」
Q13――プロの気概もなく受け狙いでも無いのに流行作品を書いたってことですか??
「そうですね。さっきも言ったけど、流行=好きな人がいっぱいいる、なのだから、そのたくさんのひとりにわたしが入ってて何がそんなに不思議なんですかね?」
Q14――しかし恋愛物は初めて書いたんですよね?あなたの読書歴や過去作品の傾向からすると、もっと別の嗜好かと思われますが?
「いいえ、ジャンル不問の乱読家です。執筆も、なろうに載せていないモノを挙げると……魔法でモンスターを狩りまくるラノベ、異世界転移、ファンタジー戦記、男性向けエロマンガ、TS、成人向けBL、スプラッタホラー、サイコサスペンス、ミステリー、ちびまるこちゃんみたいなリアル友人モデルの日常マンガ、学生恋愛、親子ホームドラマ、人身売買ジャーナル、100年前の貧しい中国の農村で日本人の中年脳外科医がウェルニッケ脳症の手術をする話などなど……。確かに『女性向け恋愛きらきら貴族モノのシンデレラストーリー』は初めてですが、124色カラーペンに新色1本加えたくらいのもんです。アレルギー反応は出ませんでしたね」
Q15――内容については分かりました。では文章の書き方とかタイトルとかは、なろうに寄せたとキッパリ明言されてますよね。それについては?
「Q14と同じく。文体はもともと作品によって変えてきましたし、掲載媒体によってフォーマットが変わるのは当たり前なので、特に抵抗もありませんでした」
Q16――本当に?
「本当ですよ」
Q17――そんなことありえます?
「しつこいな、なんやねん(笑)ほんとですって。というかそもそもわたし、『読者を喜ばせる』とか『他人読みやすいように書く』とか自体が楽しいんですよ。そういう嗜好の創作者なんです」
Q18――えっ?自分が書きたいものが無いってことですか?
「なんでそうなる。うーんなんだろうなあ、たぶんコレが一番、理解できないってひととワカルってひととで分かれる要因だと思いますが……『苦労する』ことが、楽しいんですよ」
Q19――はい??
「聞き返されてもそのまんまで、言い替えようがないんですけども。自分が好きなものをやる、よりも、自分が今までやったことないことをやるのが好きなんです。色んなジャンルや難しい題材に手を出しまくってるのもそれです。それは『自分が今までやったことないこと』であって、『まだ誰も、他人がやってないこと』とは無関係です。後者は興味もない」
Q20――でもテンプレって、手垢が付きまくってますよね?
「『わたしは』まだ書いたことがなかったですから。
小説家になろうは、新しいサイトです。ランキングはマンネリとは言われますが、わたしから見れば十分ハイスピードで代替わりしているし、まだまだ初見のジャンル、見たこと無かった手法の作品ばかりです。中にはマジで『なんでこんなものが受けてるんだ?』ということはありますが、そのナンデ?を考えるのが楽しいです。
自分が書いたことのないものを書いてみたい。難しいよ~って頭を抱えたい。ランキングという、行ったことがないところへ行ってみたい。出版社の人間と会ってみたい。書籍化作業ってものをやってみたい。自分の本が書店に並ぶのを見てみたい。
これは『将来の展望』などではなくただの好奇心。ゲテモノ料理を取り寄せてみるのと同じ程度の心理です。無痛分娩を選べたのに陣痛がどんだけ痛いか体験してみたいからと断ったし(笑)、人生丸ごとこんなかんじなのです」
Q21――その心理なら、わざわざ流行ジャンルを書かずとも、流行ってなくてまだ書いたことないジャンルも選べましたよね?
「そうですが、わざわざ流行ってない中から選ばなくても、流行もののなかにまだ書いたこと無いジャンルがあったので」
Q22――それって、あわよくば人気をとって書籍化を狙ってたってことですよね?
「そうですよ。(正確に言うと今作で本気で目標にしてたのは1万ポイント程度でしたが)先に言ったとおりそれもやってみたかったので。……これなにか悪いんですかね?」
Q23――読者への奉仕精神とか自分の趣味だとか商業狙いだったとか、言ってること変わってるじゃないですか?
「変わっていません。どれもすべて同時にあった、ということです。わたしのなかで相反することなく、ひとつの作品にみっつともを込めることが出来ました。これは運が良かったとも思います」
Q24――今作品ではたまたまってことです?
「はい(断言)!! 次回作でそううまくいく気は全然してないです。自分が楽しく書くというのだけはできると思いますが」
Q25――……Q2で、99%と言われました。残りの1%は嫌々書いたってことですよね。それは何ですか?
「毎日更新や書き溜め。これは本当になろうでポイントを取るためだけにやった作業。ただただつらい……」
Q26――主人公は?ご自身とは真逆のようなキャラですよね。
「好きです。作者の投影もなんなら共感もしてないけど、だからこそ可愛いです」
Q27――ヒーローは?ご自身の好みではないと明言されてますよね。
「好きです。おもしろおかしくて(笑)いや、わたしとはリアルで付き合ってもたぶん上手くいかないけど、主人公にはピッタリだと思います」
Q28――サブキャラいっぱいいますけど本当に全員好きなんですか?
「全員好きです。リアルにいたら嫌なやつほど書くの楽しい傾向にあります」
Q29――楽しくも無いけど読者のために書いたシーンってありますよね?
「読者のためだけど、『これ書いたら読者さんが喜ぶぞ』てのはわたし自身がそれを楽しいシーンだと思ったってことだし、その執筆はとても楽しいです」
Q30――推敲とか校正とか誤字脱字修正とかまで楽しいんですか?本当に?
「はい、校正作業は面白いですね。面倒だけど。難しいクイズを解き続けてるような感覚……あ、クイズ嫌いな人だとわかんないか……パズルゲーム感覚?」
Q31――本当に嫌なことないんですか?
「クッソしつけえww ありません、じゃなくて……辛い作業とか面倒ごととか頭抱えるほど難しいとかスランプとか、それもふくめて楽しいと思ってます。わたしがマゾなわけじゃなく、多くの人にとってスポーツやゲームで同じ感覚じゃないでしょうか」
Q32――本当に本当になんにもないんですか??
「どうしても何か言わせたいんだなっ!? ……まあ、できればなろうに改善して欲しい、出版社にも改善してほしいことはありますね」
Q33――なんですかそれ是非聞かせてください!!
「誤字報告きたとき、そのまま本文に飛べないので大きな文脈は確認できないこと。とても面倒。
作者名のところに当たり前に名前を入れたらマイページにリンク飛べなくなるという謎の罠。新人作家さんがみんなこの罠にかかってて可哀想。
感想欄を「良い点・気になる点・一言」の三つとも開くか全部閉じるかの仕様。良い点だけ開けるとかの選択ができたらいいな。
画像添付の手順の簡略化。別サイトに貼って~とかめんどくせえ! まあサーバー負担的にしょうがないんだろうけども。
それから出版社さん、打ち合わせはメールより電話がいいな……気付かず何日も放置しちゃうから。それとファンレターの転送はもうちょっと頻繁に……」
Q34――執筆の苦労とほとんど関係ないじゃないですか?
「そうですね」
Q35――……。……執筆、楽しいですか?
「はい!!」
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こんなかんじでやってます。おしまい。