フューチャーカード・バディファイトの原作者としての仕事と、別れについて。
- 2015.09.19 Saturday
- 23:38
JUGEMテーマ:フューチャーカード バディファイト
今回は、僕が復活して以降、最も多く寄せられた質問について、お答え致しましょう。
■Q・「バディファイト原作者・バディファイトの生みの親」って何?バディファイトを作ったの?
A
僕はバディファイトを「考えた人」であって、「作った人」とは厳密には違うんですね。
「作った」のは、ゲームではブシロードさんですし、アニメではアニメスタッフの方々、漫画は田村先生と、コロコロ担当者様。他にも沢山の人達が、「バディファイトを作っている人達」です。
僕はバディファイトの原作を考えました。そういう意味で、「バディファイトを考え、生み出した人」です。
◯各登場人物の原案、設定。
◯登場モンスターの原案、設定。
◯アニメ、漫画の世界観設定。
◯一年目の大まかなストーリー。
◯一年目のファイトシーンの棋譜原案。
◯ルミナイズ口上、必殺技や各キャラクターキメ台詞などの、オリジナル設定。
◯ゲームルール原案。
◯第8弾辺りまでの、カード原案。カード能力や種族、デザイン原案など。
◯二年目の新キャラクター原案と、角王、百鬼などの原案。
などを中心に作成しました。(改めて見ると、色々やってるなぁ!)
更に、20数話までは、脚本にも関わらせて頂き、第一話から一年目終盤までは、ファイトシーンのキャラクターの会話や決め台詞、技名などを提案させて頂きました。
この間、ベテランの脚本家の先生方からは、大いに学ばせていただきました。
■Q・なぜ原作から退いたの?
マンガや小説の原作が存在する作品と違い、バディファイトは「オリジナルコンテンツ」です。
まだ「バディファイト」が映像として仕上がっていない段階では、バディファイトが具体的にどんな作品なのか?という確固たるビジョンは、原作者である僕の頭の中にしか、ありませんでした。
つまり約3~4年前は、龍炎寺タスクを始めとするキャラクター達も、僕の頭の中にしか住んでおらず(ご存じの方も多いと思いますが、企画当初はタスクが主人公だったのです。)、詳細なオリジナル設定……
「使用するデッキに必ず名前を付ける事」
や、
「カードをルミナイズして闘うファイトビジュアル」
「対ズィーガー戦や対煉獄騎士などの、カードのシステムと合致させたドラマチックな棋譜」
といった、キャラクターと使用カードをマッチさせた棋譜ドラマや必殺技のビジュアル等も、最初は全て、僕の脳内イメージに過ぎなかったのです。
これを関係者の皆様一人ひとりに伝え、イメージの統一されたものを作り上げていく、という作業は、とても大変なものでした。
これを支えて下さったのが、設定を纏めていらっしゃる金子様です。一部「僕が設定を盛りすぎたかな?」と感じる部分もありましたが(何しろ、ファイター一人一人に、通常の設定にプラスして、バディモンスターと、ルミナイズ口上と、デッキと、戦術と、デッキ名と、コアガジェットなどが必要なのですから!)、金子様のお陰で、皆様にイメージを共有して頂くことが出来ました。
何より、直接映像をお作りになる、池田監督のイメージ把握力は、神がかっていました。
池田監督とは、苗字が同じ、世代が同じ、実は出身地もほぼ同じという事で(親戚ではない)、恐らく、子供の頃から見てきたものがほとんど同じであったためか、センスがバッチリ合いました。(「合わせて頂けた」のが大きいかも!?)
例えば、僕が設定の1を説明すると、10まで先回りして理解して頂ける程でした。
僕「包蔵禍心 闇狐のイントネーションは……」
監督「包↓蔵↓禍↑心→ 闇狐、でしょ?」
僕「それな。」
また、「監督と僕とのイメージの共有」も完璧で、面白いエピソードとしては、龍炎寺タスクの声優(斎藤壮馬さん)が決まった時のエピソード。
何十人もの候補者の声を聞いて、それでもなかなかイメージピッタリの声優さんが見つからなかったある日。
監督「池田さん、タスクが『見つかり』ましたよ!」
僕「どれどれ…(聞く)…おおっ!タスク!ここに『居た』のかっ!」
と、一発で決定。
この話の、どこが面白いかお分かりでしょうか。
何十人のサンプルボイスを聞かせて頂いても、僕も監督も「これだ!」という声がなかった。
なのに、斉藤さんの声に当たった途端、僕も監督も、相談も無くノータイムで、
「探していたのはこの声だ!」
と思えた。『ここに居た』と、絶対に居るはずだと探していた俺と、『見つかった』と断言した監督。それほどの、イメージの共有だったのです。
サイコダイバー(他人の精神に潜り込む超能力者)か、池田監督は。(笑)
お陰でバディファイトは、僕が考えたのか、僕が考える前に池田監督が作りこんだのか、分からなくなってしまう程の、渾然一体ぷりで、アニメの第一話、第二話が出来上がった時は、
「うん。僕が見たくて、脳内に描いていたバディファイトは、これだ。」
と、全くの違和感なく感動できるものでした。
その後もアニメを見ていて、
「あれ?確かにこのシーンは俺もこんなコマ割り、ビジュアルを想像してたけど、そこまで詳しく監督に説明していたかな……?」
と不思議に思う事も多々あり、正直、どこまで読まれているのか想像もできず、ビビるくらいでした。
もっとも、より正確に言えば、アニメのフィルムには、僕の想像を遥かに上回る部分が数多く有ったと言うべきでしょう。
戦闘シーンを立体的に見せるため、バトルフィールドに高低差を付けたのは監督のアイディアですし、様々な口上を入れるための時間を創りだしたのも監督。
ディストーション・パニッシャーでの時間が止まる演出も、口上を述べさせると同時に、カードの効果をよりわかりやすく、より衝撃的に見せた、池田監督の見事な演出です。(というか、演出面は全てアニメスタッフが凄い!)
何より、各キャラクターを活かすべく監督が采配した声優様のキャスティングは、全て僕のイメージを超えるものばかりでした。
さて。
ここまでフィルムが形作られ、実際にゲームを手にとってプレイできる様になり、関係者全員が、
「なるほど、バディファイトとはこういう作品か。こういうゲームか。」
「龍炎寺タスクとは、未門牙王とは、こういう人物か。」
と個々人で認識できるようになった時、僕は薄らぼんやりと思いました。
「ああ、僕の仕事はもう、終わったな。」と。
ゼロから1を……バディファイトとは、こういうものだ!という「原作」を生み出しはしましたが、それを皆さんの力で形にして頂いた以上、あとはもう、僕がいなくても、バディファイトの概念は出来上がっているわけですから、今後は皆様達で、より良い物を作って頂けるはずだとも考えました。
もう、僕が居なくても、バディファイトは作れるのです。
実際、各方面で必要になってくる情報や設定の整理を、全て僕のチェックを通さなければならないとなれば、それは僕一人で整理できる物理的限界を超えています。
僕のところで、作業を止めてしまう訳にはいきません。それに、あとは僕がいなくても大きな問題はないとなれば、そこに居続けることは、僕らしくないとも感じました。
もちろん僕は、バディファイトを愛しています。自分が創りだしたものですから。でも、僕がいないほうが、バディファイトが自由に成長できるとなれば、身を引くのが良いであろう、とも考えました。
無論、心残りはありました。特に、キャラクター達のケレン味のある台詞や会話劇を作るのは、とても楽しい作業でしたし、新しいカードを考えるのも最高の仕事でした。
しかし、結局のところ僕は、原作者として未熟であり、バディファイトという、皆の力で大きく羽ばたこうとしているコンテンツを作り続ける一員としては、力不足だと判断しました。
ですから、むしろ僕よりもハッキリと、
「子供向けとして、正しいバディファイト像」
を持っている、コロコロコミック様に原作を引き継いで頂ける事は、最高のバトンタッチだと、僕自身が思っています。
(多くの方に同意して頂けると思いますが、漫画家・田村先生と担当様のつくり上げた漫画版バディファイトは、これ以上ないほどの傑作少年漫画ではありませんか!)
アニメに関しても、脚本の先生方が、バディファイトのキャラクターを深く理解し、とても大切に扱って下さっていますし、池田監督がいらっしゃる限り、全体として大切なところは、必ず守られ続けるだろう、と確信しています。
僕が離れたのは、そういった理由からです。丁度契約の更新のタイミングでしたので、キリが良いとも思いました。
今まで自分が関係したことのない業界の方々と仕事ができて、学ぶことが多く、素晴らしい体験だったと思います。
ありがとうございました。
■最後に。
僕はバディファイトの登場人物、モンスター、キャラクター達を全て愛しています。
彼等について語りだすと、三日三晩語り続けても足りないぐらいでしょう。
もはや原作でも公式でもありませんが、ついつい、彼等の物語を色々考えて遊んでしまいます。
“原作者”というと、お硬いイメージを持つ方もいらっしゃると思いますが、生みの親だろうと何だろうと、キャラクター達を愛している、という意味では、ぶっちゃけ他のバディファイトのファンの方々と何一つ変わりません。
ファンの皆様が作品を楽しんで下さるように、僕にもいちファンとして楽しむ目線があります。
その作品を愛しているという意味で、作者もファンも、同じ仲間だと思っています。
僕もアニメ、漫画を見続けつつ、「個人の趣味」として「彼等の物語」を考えたりしながら、バディファイトを楽しみたいと思っています。
漫画、アニメ、カードゲーム共々、今後ともバディファイトを宜しくお願いいたします。
池っち店長ツイッター(たまにバディファイトについても呟きます。)
https://twitter.com/ikettitencho
-
0
- バディファイト
- comments(4)
- -
バディファイトは、池っち店長・・・じゃなかった、池っち社長が考えられたんですね。初めてバディファイトを観た時に「おおっ!こんなにカッコいいカードゲームがあったんだ!プレイヤー自身も、装備カードで戦闘に参加できるなんて新しい!」と思ってました。それは、バディファイトのデッキを、手にした時に確信に変わりました。『オレの本当に、遊びたいカードゲームって、コレだ。』って。今迄、遊戯王やガンダムウォーなどもプレイしていましたが、こんなに心を動かされたカードゲームは『デュエルマスターズ』以来だと思っています。池っち社長、バディファイトから卒業なさるのは寂しくもありますが、それでも、バディファイトは大好きです。
乱文散文、失礼しました。
本当にお疲れ様でした!