東日本大震災の現場で救助活動をした消防隊員の9割が、悲惨な現場で活動した当時、眠れなくなったり、絶望感や無力感を感じたりする「惨事ストレス」の症状を経験していたことが名城大学などの調査でわかった。過酷な現場だったことが浮き彫りになる結果で職場での対策が求められる。
調査は岩手、宮城、福島の3県をのぞく全国各地から緊急消防援助隊として5月下旬までに派遣された約2万8千人の消防隊員のうち800人を対象に実施。有効回答率は66.9%だった。
活動時の精神的状態として「被災者や遺族に強く同情した」(42%)が最も多く、「もっと役に立てないのかと自責の念にかられた」が40%。ほかにも、複数回答で津波や余震への不安や不眠、絶望を感じたり、涙が止まらなくなったりするなどの症状を訴えた隊員も1~3割いた。こうした症状が全くなかった隊員は、1割にとどまった。
日常生活にも影響がある心的外傷後ストレス障害(PTSD)の可能性が高い隊員も5%いた。派遣時期や回数にかかわらず、「死傷者がいるところで長時間作業した」「強い臭気がした」「余震がひどかった」など、活動した現場が過酷だった人ほど症状が重かったという。
調査をした名城大学の畑中美穂助教は「これだけ多くの隊員に症状が出ているので、派遣から戻った後に、休暇を取らせる、派遣された職員同士で話し合う機会を作るなど、何らかのケアをすることが必要だ」と話している。(月舘彩子)