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2021年2月17日(水)
“攻めの検査”はどうあるべきか 自治体のPCR検査戦略

“攻めの検査”はどうあるべきか
自治体のPCR検査戦略

新型コロナの感染拡大を防ぐため、あらためて注目される「PCR検査」。発症した人だけでなく、症状のない“無症状”の人も含め、幅広く検査を行うことで、感染の拡大を防ごうという取り組みが始まっている。去年10月からPCR検査を希望する高齢者施設の職員や出入り業者などを対象に、症状の有無にかかわらず検査を始めた世田谷区。宿泊業者を中心に広く検査を実施する観光地・栃木県那須塩原市。そして2月中旬から一部地域の住民を対象に実施を計画する広島。各自治体の最新の取り組みを取材し、変異ウイルスの感染も拡大してきたなかで、どういう戦略をとるべきなのか、専門家とともに掘り下げる。

※放送から1週間は「見逃し配信」がご覧になれます。こちらから ⇒https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/WV5PLY8R43/

出演者

  • 髙山義浩さん (沖縄県立中部病院 感染症内科副部長)
  • 宮田裕章さん (慶應義塾大学 医学部教授)
  • 武田真一 (キャスター)

ルポ・自治体のPCR検査戦略

92万人が暮らす東京・世田谷区。無症状の感染者を見つけるため、去年(2020年)10月から区独自のPCR検査を実施しています。

世田谷区が動き始めたのは、1回目の緊急事態宣言が明けた直後の5月末。保坂展人区長は、次の第2波を懸念してある人物のもとを訪ねていました。全国の研究者と共に新型コロナウイルスの対策プロジェクトを立ち上げていた、東京大学の児玉龍彦名誉教授です。

世田谷区 保坂展人区長
「第1波は一応少しおさまってきて、ただこの様子だと、いつ何どきまた同じことになりかねない。仕事とか経済、さまざまなところでもうギリギリまで来ている状態ですよね。」

東京大学 先端科学技術研究センター 児玉龍彦名誉教授
「もっと先手で社会システムとして防ぐ、何か問題ありそうなところを集中的にPCR検査をやっていくとか。老人の施設、デイケア、デイホーム。」

児玉さんがまず提案したのは、介護施設などに絞って重点的にPCR検査を実施する案でした。高齢者が多い介護施設では、ひとたび感染が広がると多くの命が危険にさらされかねません。そこで施設の職員などにPCR検査を行うことで、無症状の人を探し出し感染拡大を未然に防ごうというのです。

児玉龍彦名誉教授
「このウイルスの一番難しいのは、発症する人でも発症前からウイルスをまいていますし、そういう人がいると、わっと感染が広まってしまう。そういう人を見つけて隔離して感染を防がないと、感染の広がりが防げない。」

7月下旬。経済の回復を目指して、各地でGoToトラベルがスタート。国内での人の移動が活発になりました。

しかし、すぐに第2波が到来。8月に入ると、世田谷区の新規感染者はそれまでで最多の1日65人に上り、東京都全体の4分の1を占めました。

(去年8月 世田谷区長会見)
保坂展人区長
「区内の高齢者施設や子ども施設などでも、集団感染が確認されるなど年代を問わず感染が広がっており、大変危機感を持っているところです。」

保坂区長は、準備を進めてきた無症状の人へのPCR検査実施に向け、動き出しました。10月から介護施設で働く人などを対象に、2万3,000件のPCR検査を行うことになったのです。

まずは、『定期検査』。希望する区内の施設を、順番に調べていきます。

陽性者が発見された施設などに対しては、3か月間、月に1度『随時検査』を行っていきます。

そして保健所の業務ひっ迫を軽減するため、このPCR検査は民間業者に委託することにしました。

検査を始めてひと月後、成果が表れました。

(去年11月 世田谷区長会見)
保坂展人区長
「世田谷区内の特別養護老人ホームを対象とした定期検査において、無症状ではございますけれども陽性が判明をいたしました。」

陽性者が見つかった特別養護老人ホームでは、職員13人、利用者2人に陽性反応が出ました。いずれも無症状でした。すぐに15人を自宅待機にするなどして、隔離。それ以上、感染の広がりは確認されませんでした。

特別養護老人ホーム 博水の郷 田中美佐施設長
「私ども『症状がないから大丈夫』という変な自信がありましたので、それではいけないということを教えていただいた。重症者が、発症者がいなかったことに感謝しつつ、本当に見つけていただいてよかったとつくづく思って、今は本当に感謝しております。」

感染防止のため、PCR検査の拡大を考えていた世田谷区。アドバイザーの東京大学・児玉さんと共に、新たな検査法の導入も検討していました。

東京大学 先端科学技術研究センター 田中十志也特任教授
「3月末までに、合計6,000例くらいのプール方式での検査を実証研究したいと考えています。」

検討していたのは、プール方式。一度に処理できるPCR検査の数を、大幅に増やすことができる方法です。

従来の方法では、一人一人の検体を個別にPCR検査していました。

最新の装置を使ったプール方式では、複数の検体を機械で混ぜ、1つにして検査します。陰性だった場合は、そこで検査終了。陽性が出た場合は個別にPCR検査を行い、誰が陽性なのかを調べます。複数の検体を一度に調べることができるため、感染が大きく広がっていない段階ではスピードはおよそ2倍。費用も半額ほどで行えるといいます。

1月、プール方式を本格的に導入しようとしていたところ、第3波が到来。2度目の緊急事態宣言が出されました。積極的にPCR検査を行ってきた世田谷区でも、感染が拡大。ついに、1日300人を超える事態になりました。

新宿や渋谷などの繁華街に近い、世田谷区。区内だけで対策を行っても、感染を抑えるのは難しいと保坂区長は考えています。

保坂展人区長
「『世田谷区民がどこで感染したんですか』という調査をすると6割が不明ですが、わかっている中での例えば飲食店などでは区内というのは本当に少ない。やはり都心部で、あるいは会社でとか、そういったケースが多かったので。区同士が連携していく、これも大事だと思います。」

自治体による、対象を絞ったPCR検査。
その効果と課題をスタジオで議論します。

“攻めの検査”とは? 自治体のPCR検査戦略

武田:先週、東京都は都内の高齢者施設で働くすべての職員に対し、来月末(3月末)までに集中的なPCR検査を実施すると発表しました。また国も、栃木県をはじめ緊急事態宣言が明けた都府県の繁華街などで、無症状者に対して無料でPCR検査を行う方針を示しています。
宮田さん、きょう(2月17日)からワクチンの先行接種が始まりましたが、ここに来て国や自治体がPCR検査に力を入れている。これはどうご覧になりますか。

ゲスト宮田裕章さん (慶應義塾大学 教授)

宮田さん:世界中のデータを見ても、ワクチンの効果というのは大いに期待できます。ただ、短期的にこのワクチン接種だけで感染拡大を抑え込めるかというと、かなり難しいです。先行で昨年末から接種を始めたイギリスでも、ことし(2021年)いっぱいかかって見通しが立てられるかどうか。こういった状況ですので当面は感染予防だったり、あるいは検疫によってウイルスの侵入を防ぐ。つまり検査を活用して、対策を行っていくということが不可欠です。

武田:ほかの対策も組み合わせなきゃいけない。その1つがPCR検査ということなんですね。そしてもう一方、感染症がご専門の医師で厚生労働省の参与としてアドバイザーも務めてらっしゃる、髙山さん。ワクチン接種が行われる中でのPCR検査のあり方、どう捉えてらっしゃいますか。

ゲスト髙山義浩さん (沖縄県立中部病院 感染症内科)

髙山さん:これからワクチン接種が始まりますので、そのスケジュールを守っていくためにも地域の流行を抑え込んでいく必要があります。また、地域で流行が続いている状態でワクチン接種を進めると、ワクチンが効きにくい耐性のウイルスが生き残りやすいという懸念もあります。ですから、今まで以上に感染を抑え込んでいくことが必要な状況です。集団に対してPCR検査を行っていく動きが出てきていますが、抑え込んでいくための手段として貴重なものだと思っています。

武田:PCR検査をどう活用していくかということですが、宮田さん、高齢者の施設などに絞って行うという世田谷区の取り組み、どうご覧になりましたか。

宮田さん:高齢者施設は、ひとたびクラスターが発生してしまうと重症化しやすい方が非常に多く、世界中でも多くの人が高齢者施設で亡くなっています。なので高齢者施設に的を絞るというのは、とても適切だと思います。ただ一方で世田谷のように往来が多く、東京都あるいは首都圏という枠組みの中で考えていかないといけないときは、そういったものも含めてどういう戦略で検査を行っていくかも考えなくてはいけません。

武田:髙山さんはどうご覧になりましたか。

髙山さん:宮田先生のおっしゃるとおり高齢者施設というのは集団感染が起こりやすいところなので、とりわけ対策は徹底すべき場所です。その意味で、世田谷区はうまく狙いを定めているなと思います。ただ、世田谷区が10月から検査を始めたということですが、まだ施設全体を一巡できていないということですので、この頻度では感染を封じ込めていくのは難しいのではないかと思います。もしPCR検査を用いて封じ込めまで狙っていくのであれば、1週間に1度は検査を行っていきたいところですね。

武田:1週間に1度は必要?

髙山さん:グラフをご覧いただきたいのですが、PCR検査が新型コロナに感染した人をどれくらいの頻度で見つけることができるか、ということを表したものです。時間と共に感度というのは変わっていくのですが、最も感度が高いときでも8割ぐらいしかないのです。つまり、2割は見逃す可能性があるということです。これが検査の限界です。ですから、検査結果が陰性であっても、感染対策をおろそかにすることはできません。そして、もう一つ注目していただきたいのですが、赤色の部分ですね。赤色が濃いほど、周囲に移しやすい期間ということになるのです。

髙山さん:ご覧のとおり、濃いところが発症前にありますよね。この期間が特に感染力が強いというのが、新型コロナの特徴です。もし症状があるのであれば受診してくださいとおすすめすることで気づくことができるのですが、この無症状の方々というのは自分が感染していることに気づかないまま周囲に広げていきます。ここをターゲットに見つけていきたいのであれば、月に1回程度では効果が上がりません。やはり、1週間に1度は検査をしておきたいところです。

武田:1週間に1度というのは、なかなか難しいのではないかと思いますが。

宮田さん:例えば神奈川県では、まず2週間に1度という頻度で高齢者施設に対するPCR検査を行ったりしています。(※)
(※ 神奈川県での取り組みは今月から始まる予定です)

武田:どうなんでしょうか、髙山さん。

髙山さん:検査体制に限りがあって難しいということであれば、漫然と月に1回やるというよりは、より対象集団を絞り込んだほうがいいかもしれません。世田谷区の取り組みのようにまとめて検査ができるプール方式であるとか、あるいは人手を省ける自動化システムというものを開発していくとか。そうしたことを検討すべきだと思います。

武田:自治体による、無症状者へのPCR検査。その動きが各地に広がる一方で、現場ではさまざまな課題も出てきているようです。

PCR検査戦略 見えてきた課題は?

栃木県の温泉町・那須塩原市。去年10月から旅館組合などに加盟する75の旅館の従業員を対象に、PCR検査を実施しています。感染対策が万全であることをアピールし、町のにぎわいを取り戻そうというのです。検査費用の一部は、宿泊客が支払う入湯税を最大200円引き上げることで確保しました。

当初、市は月に600人が検査を受けることを想定。ところが、検査件数が思うように伸びていません。

「これ提出ね。」

「恵山荘さん、こちら検体2人分ですね。」

検査開始から4か月たったにもかかわらず、のべ205人にとどまっています。

那須高原市 商工観光課 石川敦史係長
「一番最前線にいられる宿泊事業者の方が定期的に検査を受けていただくことが、安心な観光のPRにつながると考えてスタートしたわけですね。当初の見込みからすると、まだまだ数は少ないのが実情ではあります。」

なぜ検査は広がらないのか。市内のある旅館を訪ねました。

記者
「きょうはお着物ではないんですね?」

旅館のおかみ 君島理恵さん
「緊急事態宣言が出ていて、お客様が大変少ないので。」

旅館のおかみ、君島理恵さんです。検査は月に1度あり、君島さんはこれまで4回の検査を受けてすべて陰性でした。

君島理恵さん
「結果が出るまでは、1%でも(陽性の)確率がありますよね。どうしても不安になります。」

従業員は、君島さんを含め12人。そのうち検査を受けたのは、2人です。全員の検査に踏み切れないのは、陽性者が出た場合、市が旅館名を公表するため。旅館経営に影響が出かねないといいます。

君島理恵さん
「そこ(旅館名の公表)は、かなり不安に思います。公表だけは外していただければと、切に願っています。」

この日、君島さんは検査を受けることについて、従業員に意見を聞いてみました。

従業員
「やはり、陽性になったときの不安はあります。」

従業員
「私も同じで、正直不安はあります。でも検査をして大丈夫だという自信にもつながってきますので、ここは検査を受けたいなと正直思います。」

君島理恵さん
「みんなで受けようかという気持ちもあったんですけど、やはり嫌だっていう方(従業員)もいますし、強制はできませんので。難しいね。」

今のところ、那須塩原市の旅館関係者に陽性は出ていません。しかし、もし陽性が出た場合には、風評被害によって地域全体に影響が出ると懸念する声もあります。

塩原温泉旅館協同組合 田中三郎理事長
「塩原温泉全体の宿泊者が少なくなって、この近隣の温泉場に行ってしまうとか、他県の温泉場に行ってしまうとか、長い目で見ればそういうのが危惧されるのが一番の問題ですね。」

さらに、数十万人を対象とした大規模なPCR検査を計画しながら、実施を保留した自治体もあります。一時、感染が急拡大した広島県。先月(1月)中旬に打ち出したのが…。

広島県 湯崎英彦知事
「中区、東区、南区、西区のすべての住民と就業者を対象として、集中的にPCR検査を実施することで感染者を早期に発見して、感染拡大を未然に防ごうと。」

広島市中心部にある4つの区の住民と、働く人たち73万人を対象とした国内最大のPCR検査の計画。10億円の予算を計上しました。県は、およそ4割の人が検査を受けると見込み、そのうち最大3,900人の無症状の感染者を発見できると試算。

営業の自粛などによる経済的なダメージを、抑えるねらいもありました。

今月(2月)中旬の実施に向け、準備は急ピッチで進められました。1日8,000件の検査が必要になることから、県外の検査会社にも協力を依頼しました。

広島県の担当者
「伝票と容器が、セットになっていないといけない。ひとつの検査会社では、この数ははけないので。協力してもらおうと思う。」

しかしこの数十万人規模の検査について、専門家からは異論が相次ぎました。

県の専門員会議のメンバーの1人、広島大学の坂口教授です。

広島大学大学院(ウイルス学) 坂口剛正教授
「ひとことで言うと、コストパフォーマンスが悪い。」

都市封鎖ができない日本では、一度きりの大規模検査を実施しても効果は限られるといいます。さらに巨額の予算を投入して検査を実施しても、確認できる陽性者の数は県の試算の半分にも満たないと指摘します。

広島大学大学院(ウイルス学) 坂口剛正教授
「コスト(10億円)がかかるわけですね。それに対して得られるものが何かと考えたときに、今ちょうど感染者も減りつつある時期に、あまり効果が得られないのではないか。PCR検査は、対象者をうまく絞ると強力な方法だと思います。ですけどリスクがない人に、一斉にやるものではないかなと。」

県議会でも、効果を疑問視する声が上がりました。

「多額の予算と人員を投入するに、見合った効果があるのか。」

「大規模に実施することで、無用な混乱を招くのではないか。」

懐疑的な見方が強まる中、検査実施が迫った今月10日。

湯崎英彦知事
「集中検査自体は一旦保留をして、試行的に部分的に行う。」

県は、大規模な検査をすぐには実施しないと方針を転換。新規感染者数が大きく減ったことを理由に挙げました。その代わり、規模を数十分の一に縮小した試みの検査を実施。感染が再拡大した際に、大規模検査をスムーズに行うためだとしています。

湯崎英彦知事
「いわゆる変異株の問題だとか、人の流れが再度活発になってくると、再び感染拡大がありうる。そのときに集中実施が、ひとつの大きな武器になる。」

課題が浮き彫りになった、大規模検査。スタジオで掘り下げます。

PCR検査をどう活用するか

武田:広島県は、大規模なPCR検査の実施は見直したわけですが、宮田さんはこの判断をどうご覧になりますか。

宮田さん:有限な資源をどこに割りふるかということを考えたときに、適切な判断だったと思います。重要なのは、検査だけを拡大しても感染は必ずしも抑えられないということです。
つまりどういったタイミング、感染拡大なのか収束なのか。あるいは誰を、どういったエリアを、そしてどういう頻度で検査を行うのか。こういった戦略と組み合わせて検査を行うことで、初めて有効であると。
例えば今のフェーズで考えると、感染が収束してくるところで経路を抑え込んでいく。特に変異株のような感染拡大すると全体のリスクになるようなところに、無症候者も含めて検査を行っていく。こういった戦略であれば、1つ有効に機能する可能性があるのかなと考えています。

武田:戦略、特にタイミングが大事だということですが、髙山さん、PCR検査をうまく活用して感染を抑える。どういう方法があるんでしょうか。

髙山さん:宮田先生がおっしゃるように、PCR検査だけで封じ込めていくことはできません。やはり感染対策とか、あるいは活動自粛などと組み合わせていくことが必要です。
例えば、どんなに大規模にPCR検査をやっても希望者のみですし、発見される感染者というのは一部に過ぎません。例えば大きな流行が起きている中で陽性者だけを隔離していっても、ほかにもいるわけですからおさまらないのです。
ですから今回の緊急事態宣言のように、まずは全体で活動を自粛いただいて流行を収めていくということが必要です。そして、流行がおさまってきたときこそ流行の残り火を疑われるところ、疫学調査で分かっていると思いますので、そこにターゲットを絞って検査をすることでより早期に封じ込めていくことができます。すでに広島県では、こうした取り組みを始めているというふうに聞いています。
そして流行が収束している間も、例えば沖縄県では歓楽街など、ゲートウェイが疑われるところをターゲットにして集団検査を繰り返し実施してきました。そうしたことで、流行の端緒を捉えることもできます。

武田:一方で、旅館で働く人たちのように検査結果によって、何か不利益を被るんじゃないかという不安を持つ人もいると思います。そういう人たちにどう協力を求めていけばいいのか。この点についてはどうでしょうか。

髙山さん:日本は民主国家ですから、検査を強制することはできません。感染症というのは住民に対して対策を強制したりとか、あるいは罰則を設けたりすると大体において潜伏しながら広がってしまうのです。これは昔からの教訓です。差別とか罰則、あるいは経済的な不利益、こうしたものが待っていると知っていながら住民は検査を受けてくれるでしょうか。
例えば那須塩原では事業者名を公表するのをやめるとか、あるいは休業補償を見直すとか、検査を受ける人たちを守る取り組みも集団検査にはセットであるべきだと思います。
また、集合制限がかかると事業が継続できなくなるリスクもあります。世田谷区では施設相互にサポートしあって、もし陽性者が出てもそこは支援していこうという体制がとられてると聞いています。
感染者を確認すればよいということだけではなく、その影響と結果を踏まえて、きめ細やかな対策が求められていると思います。

武田:そして今気になっているのが、変異ウイルスの感染の広がりです。きのう(2月16日)時点の感染者数、累積で151人になります。関東甲信越を中心に近畿、そして鹿児島県でも感染が確認されています。

宮田さん、こうした新たなリスクも出ている中で、PCR検査をどう活用して、どう感染を防いでいけばいいのでしょうか。

宮田さん:変異ウイルスが登場するまでは、欧米の多くの国や日本はある一定レベルの感染を許容するという戦略をとっていたのです。このとき日本では、高齢者や重症化しやすい人たちを中心に検査を行ってきたという状況だったのです。
ただこの一定レベルを許容するような状況だと、例えば変異ウイルスはイギリス株では1.7倍の感染力を持っているので、イギリスは一気に制御不能になってしまったのです。イギリスの変異株がいわゆる伝播(ぱ)した、これはスペインでも同じような現象が起こっていて、フェーズが今変わったというふうに言われています。
つまり何が必要かというと、もう少し低いレベルで感染を抑えるといった対策が必要になるのです。先ほど髙山先生がおっしゃったように、もう少し感染の割合を下げて経路を塞いでいく。まさにこの攻めの検査というものを有効に活用しながら、この状況をコントロールしていく。こういった対策が、まさにこれから求められていくようになってきているのかなと考えています。

2021年2月16日(火)
プラスチックごみ リサイクルをどう進める?

プラスチックごみ
リサイクルをどう進める?

コロナ禍の巣ごもり需要などで増える「プラスチックごみ」。そのリサイクルが危機的状況に陥っている。処理施設の倉庫はプラスチックが山積みになる一方、リサイクルが滞る事態に。さらに1月から有害廃棄物の海外輸出規制が強化され、産廃プラスチックも行き場をなくしつつある。コロナ禍をきっかけに露呈した脆弱な日本のリサイクルシステム。その解決に向けて、企業や消費者にいまどんな取り組みが求められているのか考える。

※放送から1週間は「見逃し配信」がご覧になれます。こちらから ⇒https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/WV5PLY8R43/

出演者

  • 浅利美鈴さん (京都大学大学院 准教授)
  • 武田真一 (キャスター) 、 合原明子 (アナウンサー)

求められる資源循環の実現

世界で深刻な環境汚染を引き起こしている、プラスチックごみ。自然や生態系への影響が問題視されてきました。

持続可能な社会をつくるためプラスチックをごみにせず、資源として循環させることが喫緊の課題です。

小泉環境相
「プラスチック資源の回収・リサイクルを拡大、高度化をする。」

国は近く、プラスチックのリサイクルを推し進めるための新たな法案を国会に提出する方針です。

消費者が出すプラスチックごみをリサイクル業者が回収し、新たなプラスチック製品をメーカーが作り出す。そうした資源循環を拡大するのが狙いです。

しかし今、コロナ禍がその循環を困難にしていることが、取材を通して見えてきました。

コロナ禍でなぜ?滞るリサイクル

東京や千葉などの自治体から家庭ごみを受け入れ、リサイクルしている企業です。運ばれてくるプラスチックは、多い日で30トン余り。1年前に比べ、1割以上増えているといいます。

エム・エム・プラスチック 森村努社長
「生活が、そのままここに現れるごみ。おでん、これは納豆。」

倉庫には、コロナ禍の巣ごもり需要などで増えたと見られるプラスチックごみが山積みになっていました。

森村努社長
「第2回の緊急事態宣言でて、やっぱり1月になったらぎゅっと増えまして。2月も今、増える見込み。やっぱりそこは顕著にあらわれています。」

分別などの作業時間を増やして対応してきましたが、処理が追いつかず、敷地が埋め尽くされるほどプラスチックがたまることもありました。

リサイクルを進めるうえで、大きな課題があります。加工して作る製品が売れないのです。

家庭ごみはレジ袋や食品の包装トレーなど、さまざまな種類のプラスチックが含まれています。そのため、色合いが単調で強度にも課題があり、再生して作ることができる製品は限られています。

この企業が主に作っているのが、商品を運ぶときに使うパレット。物流会社などに販売してきました。

しかし今、コロナ禍で企業の経済活動が停滞。工場の稼働などが減る中で、パレットの販売は不調です。

森村努社長
「5割から7割減ですか。減っている原因はコロナ。」

この日も、取引先の物流会社から注文を減らしたいと連絡がありました。半年前に比べ、パレットの販売量は会社全体で2割以下にまで減少しました。同業者も多くが売り上げの減少に直面。収入が不安定なことで、今後の経営への不安が広がっているといいます。

プラスチックごみが増える一方で、加工した製品が売れず滞るリサイクル。
コロナ禍が、資源循環社会を実現することの難しさを突きつけています。

森村努社長
「結果的にリサイクルしたくてもできない。われわれも心配してますし、このままいったらどうなるのだろうと、いつも感じている部分です。」

リサイクルに課題 企業から出るプラごみも…

武田:家庭から出るプラスチックごみのリサイクルがうまく回っていないことが見えてきましたが、実は企業から出るごみのリサイクルも課題に直面しているのです。

合原:まず、そもそも日本で1年間に排出されるプラスチックごみは、およそ850万トンです。そのうちおよそ半分を占めるのが、家庭などから出る一般廃棄物のプラスチックごみです。さきほど紹介したように、コロナ禍で急増する一方で、リサイクルが進まない現状があります。
そして残りの半分438万トンは、工場やオフィスから出る産業廃棄物のプラスチックです。さまざまな種類のプラスチックが混ざってしまう家庭ごみと違い、大量に同じ種類のプラスチックを集めることができることなどから再利用しやすいのが特徴です。ボールペンやハンガーなどの日用品から自動車部品まで、さまざまな製品にリサイクルされています。

武田:ところが、この産廃プラスチックのリサイクルも思うように進んでいない実態がわかってきました。

コロナ禍で“リサイクル離れ”が

企業から出る産廃プラスチックを扱うリサイクル業者は、コロナ禍の今、大きな壁にぶつかっています。

エコ・ジャパン・システム 森光生社長
「(工場で)製品から取った端材、産廃です。」

メーカーの工場から出る、資材などを受け入れてきた業者です。汚れたプラスチックを、特殊な技術で洗浄。リサイクルした再生プラスチックを販売してきました。ところが…。

森光生社長
「お得意さんの出荷の台数の資料です。数量は減っています。」

月に100トン以上出荷していた取引先への販売量は、39トンにまで激減したといいます。きっかけは、コロナ禍で経済が停滞したことなどによる『原油安』。

去年(2020年)1バレル60ドルほどだった価格は、一時20ドル以下に急落。

それとともに、石油から作られる新品のプラスチック素材・バージン材の価格も下落しました。

当時、バージン材の価格は1キロあたり2割近く値下がりしました。その結果、割安となったバージン材を利用するメーカーが増え、再生プラスチックが売れにくくなっているといいます。

森光生社長
「使えないものを使えるようにする努力をいっぱいやってきたんですけど、使うほうの立場からしたら、バージン(材の価格)が下がれば移行したいのがごく普通じゃないかな。もうかなりしんどいというか、苦しい。」

リサイクル業者で作る業界団体のもとには、同じ問題に直面しているという声が全国から相次いでいます。

九州のリサイクル業者
「どうしても新材(バージン材)との比較で、価格を下げてほしいという圧力は皆さんあったと思う。」

全日本プラスチックリサイクル工業会 石塚勝一会長
「私が聞いている範囲でも、リサイクル材(再生プラスチック)から新材(バージン材)に置き換わったということを聞いている。あるところは(再生プラスチックの)値下げをしたから、なんとか残ったと。」

原油安によるリサイクル離れは、経済情勢が変化するたびに起きているといいます。

2008年のリーマンショック。そして、アメリカでシェールオイルの生産が拡大した局面などで、原油価格が下落。経済活動の低迷も重なり、そのたびに再生プラスチックの使用量も落ち込んだといいます。

石塚勝一会長
「どうしても材料としてお客様も見ているので。価格以外で価値を見いださないと、リサイクル材に対してはですね。これからもこういうことが起こってくるのが予想されます。」

輸出規制で国内循環を目指すも…

産廃プラスチックは国内だけでなく、海外に輸出されリサイクルされるものがあります。おととしの1年間で原料として再利用されるものの、およそ43%・79万トンが海外に輸出されました。

しかし、油や泥で汚れるなどしたプラスチックが環境汚染を引き起こしているとして、国際社会で問題視されてきました。

そのため、有害廃棄物の輸出入を規制する条約が、日本などの提案によって改正。リサイクルに適さないプラスチックが、先月(1月)から新たに規制の対象になりました。

日本政府が目指しているのが、輸出していたものを国内で循環させること。

しかし現場の企業を取材すると、一筋縄ではいかない現実が見えてきました。

メーカーなどから産廃プラスチックを買い取り、タイなど5か国に輸出してきた企業です。産廃プラスチックの中には規制の対象になるものもあり、その輸出はできなくなっています。

アプライズ 平良尚子社長
「色的にもホワイトがあったり、透明があったり、混ぜてしまったりもある。(輸出は)単一材料(素材)でないと、だめとも言われている。」

この会社は今後、本格的に国内リサイクルにかじを切っていく方針です。リサイクル工場の新設に向け、用地の取得を進めていますが、設備や人材の確保に時間や費用がかかり容易ではないといいます。

平良尚子社長
「扱っている量が多いから、もの(再生プラスチック)つくる(施設)が全然足りない状態です。今後どんなふうになっていくのか、不安。」

国内で再生プラスチックの循環が思うように進まない中、規制をかいくぐり、輸出を続ける企業の存在も明らかになりました。

この男性が働く企業は、ブローカーを介してプラスチックをマレーシアなどに輸出しているといいます。

大阪港から送るコンテナは、月におよそ40個。その中に、汚れたプラスチックを紛れ込ませているといいます。

リサイクル業者 社員
「止められたら止められたときで、それまではずっと出し続けると聞いています。」

不正な輸出から手を引き、国内リサイクルに転換すべきだと会社に訴えたという、この男性。しかし、経営者はリサイクルで利益を出すのは難しいと拒否したといいます。

リサイクル業者 社員
「ちゃんと(国内)リサイクルすると、なかなかもうけが少ない。ただ違法なこと、海外輸出するほうが楽でもうかる。(輸出を規制する)バーゼル法(条約)が変わることは知っています。ただ、それだから変えるということは考えていない。環境意識というのは、全くないと思います。」

こうした問題に、国はどう対応するのか。輸出の監視を強化するとともに、国内のリサイクルシステムそのものも改善していくとしています。

環境省 廃棄物規制課 山王静香課長補佐
「税関での水際の対策は、強化していこうと考えています。日本国内でプラスチックの処理のキャパシティ(容量)をどうやって増やしていくか、今後も議論を行っていきたいと考えています。」

資源循環へ ライバル企業がタッグ

プラスチック資源の循環実現を目指す、新たな取り組みも始まっています。日用品メーカーの、花王です。目指しているのは、シャンプーなどの詰め替え容器に大量に使っているプラスチックのリサイクル。

詰め替え容器を自社で回収して100%リサイクルし、同じ詰め替え容器に再利用する新たな循環の仕組みです。

しかし、使用済みの詰め替え容器を再利用するには、ある課題がありました。

「きれいに伸ばそうとすると、こんなになってしまう。容器にならない。」

今の容器は、商品ごとに粒子の大きさが違う、さまざまな種類のプラスチックやインクが使われています。そのため、再利用しても強い力が加わると穴が空いてしまいました。

そこで大きな粒子を細かくする、独自の技術を開発。ばらつきを少なくすることで、破れにくい素材を作ろうとしているのです。

すでに試作品は完成し、再来年(2023年)の実用化を目指しています。

花王 長谷部佳宏社長
「このまま消費財メーカーが物を作って大きくなっていくと、ごみの量がおそらくこのたかだか10年で飛躍的に大きくなって、日本がごみだらけになる可能性がある。使ったあとのことまで考える消費財メーカーが、これからは生き残っていくというか、生き残らざるを得なくなってくる。」

さらに、業界全体で詰め替え容器の再利用を進めようと、ライバル企業と手を組む決断もしました。

「花王・ライオン、ミーティング始めさせていただきます。」

「ライオンの容器包装技術研究所の佐藤と申します。」

業界大手・ライオンの社員と行っている、月に一度の会議。

「花王の岩坪です。まずパウチ(詰め替え容器)の仕様を、いろいろと一緒に検討することになるだろうということで。」

これまで互いに秘密だった詰め替え容器の素材の情報などを共有し、規格の統一も検討することにしています。

さらに使い終わった容器を集める、回収ボックスをスーパーなどに共同で設置。製品の開発から回収、再生まで業界全体でプラスチックを循環させるのが目標です。

長谷部佳宏社長
「一企業では、世の中を大きく変えられない。大きなトレンドを作っていくという意味では、頼りになるのは一番のライバル企業なんですよ。そういう意味で、この活動は2社から始まって大連合にしたい。」

何をすべき?新たな動きが次々と

武田:プラスチックごみを減らすために、何ができるのか。技術革新の最前線。そして、私のかばんの中にも問題解決のヒントがあるかもしれません。詳しく考えていきます。京都大学大学院の准教授でプラスチックごみの問題に詳しい、浅利さん。私もコロナでマイボトルではなく、ペットボトルを使うことが多くなりました。企業もなかなかプラスチックのリサイクルには苦労しているようですが、難しい状況をよくする鍵は2つあるということですね。

ゲスト浅利美鈴さん (京都大学大学院 地球環境学堂 准教授)

浅利さん:はい、そうですね。1つは、業界の『本気度』。それと『見える化』かなと思っています。
まず業界の『本気度』ですが、先ほどの花王さん・ライオンさんは典型だと思いますが、競合他社が一緒になって業界を変えていこうという動きになっていると思います。

これは日本の高い技術力に加えて、回収システムという社会システムの変革まで伴ったチャレンジで、大いに評価されるべきだと思います。
こういった事がいかに増えていくかというのが鍵だろうと思いますし、追い風としては最近『ESG投資』。聞いたことがある方も多いかと思いますが、環境や社会課題を意識し、配慮した投資をしていくという投資家が世界中、日本中にふえています。実際に日本の中でも、循環分野でのESG投資のあり方の具体的な基準が議論されていますが、その中ではかなり具体的にプラスチックに関する取り組み指標というものも検討されているそうです。
企業は今後の生き残りを考えれるのであれば、かなり真剣に危機感を持って取り組んでいただく必要があるのかなと思います。

合原:その企業の先進的な取り組みですが、ペットボトルのリサイクルでも始まっています。
大手の飲料メーカー各社は近年、自社でペットボトルを回収し、再びペットボトルにして消費者に製品として販売する技術開発を進めてきました。

大手飲料メーカーのキリン。今取り組んでいるのが、ペットボトルを半永久的にリサイクルする技術開発です。これまでペットボトルを再利用しようとすると、溶かす際に僅かに不純物が混ざり少し黒ずんでしまいました。そのためリサイクルできるのは、3~4回が限界だったのです。

そこで会社は、化学分解をして不純物を取り除く技術を使って、何度リサイクルしても透明なペットボトルを生産することを目指しているといいます。

開発担当者
「通常使っていただいているものと変わらないような、透明度を持った製品にしようと思っています。ほぼ半永久的にリサイクルできる。」

合原:こうした企業の取り組みを、国も後押ししようとしています。
『プラスチック資源循環促進法案』を取りまとめようとしているのです。製品の生産段階からリサイクルしやすいデザインで製品を作るように促しまして、環境に配慮した製品を認証する新たな制度も作る方針です。その上でリサイクルのための企業の技術開発や、設備投資の支援を検討しています。

武田:浅利さん、こうした新しい法律で企業は変わっていけるのでしょうか。

浅利さん:この後押しは、非常に大きいと思います。先ほど見ていただいた大企業の取り組みはもちろんですが、プラスチックというのは非常にすそ野が大きい分野ですので、中小企業でも思い切って設備投資技術開発に取り組める大きなチャンスになるのではないかと思います。

武田:グラフをご覧いただきたいのですが、廃プラスチックの輸出量が日本は第2位です。この状況も改善できそうでしょうか。

浅利さん:これまで国外循環、グローバルな中での循環に頼ってきた側面があったと思います。しかし今いろんな逆風がある中、そういう意味では国内循環に切りかえる、いろんな意味での大きなチャンス・機会が来ているのではないかなと思っています。

私たちができること かばんの中身をチェック

武田:そして私たち消費者ができることとして、かばんの中身に注目です。

合原:大切なのは一人一人の意識改革ということで、浅利さんがそのきっかけにしようと学生たちと行ってきたことがあります。
自分のかばんの中にどれぐらいプラスチックがあるのか、見直すことということです。私と武田さんも、かばんの中身を確認してみました。左側が私で、右側が武田さんです。

武田:僕がちょっと多いですね。

合原:こうして見ますと、充電器ですとかハンドクリームの容器。そして今、欠かせませんよね、消毒ジェルのボトルです。さらにはマスクの包装…。

武田:個包装になっているんですね。

合原:そうですね。ウエットティッシュも、実は合成繊維でプラスチックなどになっています。さらには、コンタクトのケース。さまざまありました。

武田:僕、イヤホンを3本持っててですね、スマホ用、パソコン用、予備。多いように見えるかもしれませんが、一応理由があるんですよ。なかなか減らせないのですが、どうすればいいでしょうか。

浅利さん:もちろん無理に減らせというわけではなくて、このようにいろんな形でいろんなプラスチックが使われているのだと。プラスチック問題は誰かが何かやってくれるではなくて『見える化』することによって、わがことにしていただくというのが重要じゃないかなと思います。
実際、学生さんの中には2割3割と、これをきっかけに減らしてみたという子もいますので、みんなでスタートする一つのきっかけにしていただけたらうれしいです。

武田:ついついカードとかも増えてしまうのですが、いざというときに使うのではと思って持ち歩いてしまうんです。こういった、どんどん要らないものを見極めるということは大事ですよね。

浅利さん:かばんの中を見せ合って、少ない人はどういう知恵を絞っているのかを知るのも楽しいのではないかなと思います。

武田:リサイクルだけではなくて、リデュース・減らす、そしてリユース・もう一回使うという。そういうことも組み合わせながら、私たちにできることもありそうですね。

浅利さん:代替品を探す楽しみもあると思いますし、それによって生活の楽しみが増えたり、クオリティーが上がるという方向も見いだしていただけたらなと思います。

武田:今コロナ禍でなかなか難しいと思いますが、コロナ禍を乗り越えつつ日本が真の循環型社会に変わっていくために何が必要でしょうか。

浅利さん:本当に大変な環境にいらっしゃる方がたくさんいると思いますが、今『グレート・リセット』というキーワードが聞かれるようになっているかと思います。コロナ禍を乗り越えつつ、この機会に大きな変革を起こしていこうではないかと。
求められるとすると、私は大量生産、大量消費、大量廃棄からの変革ではないかなと思っています。コロナ禍でやはりどうしても使い続けなければいけないもの、衛生的なものであったり、生活を支えてくれるものは当然ありますので、すべてがすべてそうではなくて、恐らくずっと大切に使ってしっかり循環させることができるものも大いにあるのではないかと思っています。そういった方向への変革を、それぞれができたらなと思います。
実際レジ袋を有料化し、7割の方がマイバッグとか風呂敷とかに替えられていますので、これは非常に大きな変革だと思っています。
この機を逃さずに、これを1つでも多くの品目に、そして1人でも多くの人に広げていく。そういう『グレート・リセット』が今、求められているのではないかなと思います。

武田:ありがとうございました。合原キャスターですが、実は産休に入るため、きょう(2月16日)で最後です。

合原:2年間リポーターとして、さまざまなテーマの取材を担当させていただきました。少しでも皆さんの発見につながる、何か心に響く何かを届けられたなら幸いです。そして取材にご協力いただいた皆さん、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。また、どこかの時間でお会いできる日を楽しみにしています。ありがとうございました。