自衛隊駐屯地の公式Twitterが「まとめサイト」を拡散? アカウントは削除、政治的内容やミスリードも

    今年4月ごろから「まとめサイト」などを含む様々な記事をたびたびリツイートするようになっていた。駐屯地のアカウントは5月2日までに削除された。

    陸上自衛隊真駒内駐屯地(札幌市)の公式Twitterアカウントが、「まとめサイト」などのツイートを複数回にわたりリツイートしていたことが、わかった。

    政治的な内容の記事も複数確認できることから、ネット上で多くの批判を集めた。隊員の政治的行為は、自衛隊法や「服務の宣誓」などで厳しく制限されている。

    その後、駐屯地のアカウントは5月2日までに削除された。陸上自衛隊北部方面総幹部広報室はBuzzFeed Newsの取材に対し、「調査中のため、一時的に運営を中断した」としている。いったい、何が起きたのか。

    問題になったアカウントは、5月1日時点で6600人以上のフォロワーがおり、プロフィール欄には、「駐屯地の行事や活動、催し物を発信し、自衛隊関係のニュースをRTしていきたいと思います」と記されていた。

    2020年4月から運用がはじまったが、今年4月ごろから「まとめサイト」などを含む様々な記事をたびたびリツイートするようになっていた。

    なかには安倍晋三前首相の動向に関するものや野党に批判的なもの、自衛隊の今後のあり方に関わるものなど、政治的ともみられる記事も、複数確認できた。

    たとえば、以下のような見出しと内容の記事だ。なお、いずれのサイトも、過去に陰謀論や誤情報、さらにはミスリードな情報などを発信していたことが、BuzzFeed Newsの過去のファクトチェックから明らかになっている。


    【国難】「ポスト菅」再々登板を…安倍前首相に期待広がる、体調回復・活動盛ん(ツイッター速報)=まとめサイト。安倍前首相が発信に積極的になっていることや、「ポスト菅として再々登板してほしい」という党内の声を報じた読売新聞の記事を引用。その反応をまとめているが、内容は安倍氏に対して批判的だ。

    【八重山日報】尖閣問題、強盗と異ならない中国の論理 県民の民意は石垣島への自衛隊配備である(ツイッター速報)=まとめサイト。引用されている地元紙「八重山日報」の社説では、尖閣諸島への中国の挑発に関して「八重山の住民から見れば、中国の行為は強盗とことならない」として、石垣島への陸自配備を急ぐよう求めている。

    立憲民主党、自衛隊協力の大規模ワクチン接種会場の新設に反対(ツイッター速報)=まとめサイト。記事では立憲民主党・福山幹事長の発言に言及し、「ワクチン接種の妨害」「こいつら狂ってるな」「ゴミ政党」などというコメントをまとめている。しかし実際、福山幹事長は新設に「反対」とは述べておらず、そもそもがミスリードな記事である。

    米国は本当に尖閣を守れるのか 懸念されるシナリオと日本がすべき事(大紀元 エポックタイムズ・ジャパン)=中国の気功集団「法輪功」系のメディア。日米共同声明に関する元米海兵隊大佐の論考を載せている。「自衛隊の脆弱性の現実を知れば、国民は驚き、政治家たちを非難する」などと記し、防衛費の増強などに「期待」を寄せている。


    このほか、駐屯地アカウントがユーザーから「これ、公式アカウントですよね?大丈夫ですか?」「あまり個人的な見解は避けた方がよいかと」と指摘されていたことも確認できた。

    ツイートは削除されており内容が確認できないが、福島第一原子力発電所の処理水をめぐる韓国政府の反応をまとめた「ツイッター速報」の記事に対するリプライへの指摘だった。

    「中の人」は誰なのか

    なお、駐屯地のアカウントが、たびたびリツイートしていた個人アカウントが「中の人」か、関係者のものだったのではないかとの指摘があがっている。

    この個人アカウントのプロフィールには、以下のように記されていた。

    「札幌市にあります陸上自衛隊真駒内駐屯地のランドマーク、サイロ隊舎。私はそこに住む妖精です。ツイートが気に入ったら私でなく駐屯地をフォローお願いします」

    さらに、駐屯地内部の桜の様子などをたびたびアップ(写真上)し、これを駐屯地アカウントがリツイートしていたほか、駐屯地アカウントへの反応に「公式アカウントとしてはお返事出来ないので、個人としてお礼申し上げます」などと応じていたこともあった。

    駐屯地アカウントの削除と前後して、このアカウントも、やはり削除されている。

    なおこの個人アカウントでは、「ワクチン拒否」「バイデン不正」などといった陰謀論を発信していたほか、著名人に対し「在日仲間?」などと差別的な言動を取るようなツイートもあった。

    個人アカウントから桜の様子がアップされていたエリアについて、駐屯地の広報担当者は「あくまで一般論」としつつ、「業務や面会でない限り通常は入れないエリア」と回答。

    「そのエリアの様子をTwitterで頻繁にアップできるということは、隊関係者である可能性が高くなるのか」というBuzzFeed Newsの質問に対して、「そう考えられます」と回答した。

    総監部の見解は

    自衛隊に対しては、「シビリアンコントロール」(文民統制)の観点から、政治的中立性に関して、極めて厳しいルールが敷かれている。

    自衛隊法では、「政治的行為の制限」という項目があり、政治的目的のために「選挙権の行使を除くほか、政令で定める政治的行為をしてはならない」とされている。

    この具体的な内容については、

    自衛隊法施行令

    で定められている。

    たとえば「特定の内閣を支持し、又はこれに反対すること」「政治の方向に影響を与える意図で特定の政策を主張し、又はこれに反対すること」を目的に行動することや、「政治的目的のために官職、職権その他公私の影響力を利用すること」などが禁じられている。

    このほか、入隊時に署名をする「服務の宣誓」にも、「政治的活動に関与せず」と明記されている。

    一連の問題について、同駐屯地広報部の担当者は「その件に関しましては、総監部で一元的に取り扱っている」と回答。

    一方、陸上自衛隊北部方面総幹部広報室の担当者は駐屯地のアカウントが削除された理由について、「関係者に事実関係を調査中であり、混乱防止のために一時的にアカウントの運営を中断しています」と回答。

    問題そのものだけではなく、上述の個人アカウントの存在についても把握していたが、BuzzFeed Newsの質問については、「事実に基づき厳正に対応していく準備をしており、お答えできる状況にはありません」と述べた。回答があり次第、追記する。


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