@chablis777
シャブリ

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(シズ)これからは自分のために生きますのや。
生きてええのや。
(千代)ご寮人さん…。
千代ちゃんは そのあと舟を降りて大阪駅へと向かいました。
行く当てもなく汽車に乗った千代ちゃんが降り立ったのは…京都どす。
(鐘の音)
♪「オレンジのクレヨンで描いた太陽だけじゃ」
♪「まだ何か足りない気がした」
♪「涙色したブルー こぼれて ひろがって」
♪「ほら いつも通りの空」
♪「これは夢じゃない(夢みたい)」
♪「傷つけば痛い(嘘じゃない)」
♪「どんな今日も愛したいのにな」
♪「笑顔をあきらめたくないよ」
♪「転んでも ただでは起きない」
♪「そう 強くなれる」
♪「かさぶたが消えたなら」
♪「聞いてくれるといいな」
♪「泣き笑いのエピソードを」
♪~
今すぐ働きたい言われてもなあ。
どこのどなたさんとも分からん娘をそない簡単に雇てくれるとこなかなかあらへんわ。どないな仕事でも よろしおます。
うち 住むとこも持ち合わせもあんまり あれへんのだす。
早いとこ仕事せなうち 生きていかれしまへん。
まあ…。
それだす! お願いします!
まだ 何も言うてまへんがな。
これは 旅立ちだす。
♪~
すんまへん。 ここ行きたいんだすけどどっちだすやろか。
これな…。
・(猫の鳴き声)
ここやんなあ…。
・(猫の鳴き声)
いった!
(洋子)いや 堪忍。
どちらさん?
えっと…ここで働かしてもらお思て来ました。
また新入りか。 監督~。
・(宮元)は~い。 はい はいはいはい。
あっ! さっき口入れ屋さんから知らせあったわ。
寒いから入って。おおきに。 ごめんやす。
今のが うっとこの一番人気の洋子ちゃんや。
本物の女優さんやで。
このお店女優さんが働いてはんのだすか?
そや。 看板見たやろ。はい。
ほんでや…僕が 監督の宮元です。
・(猫の鳴き声)
監督?
知らんのかいな? 活動写真を撮る人や。
うちは 店長さんに用があんのだすけど。
(平田)この人は ただの活動好きの店長。周りに監督て呼ばして喜んどうだけや。
あいつは 助監督の平田。
ボーイの平田です。 フフッ。
はあ…。さあ そしたら自己紹介をしてもらおかな~。いくで~。
はい 本番! いきます!よ~い はい!
(宮元)はい! はい!はい! はい! はい! はい!いや… 本番や 本番や。えっ えっ えっ…。
いくで。 はい!
あっ えっ… 竹井千代と申します。
数えで18になりました。道頓堀の岡安いう芝居茶屋で9つの時から奉公してましたけど年季明けて京都へ来たんだす。
京都には 鶴亀やら日キネやら撮影所が ぎょうさんあるからそういう子が よう来んにゃ。
何ちゅうてもやで うちの店にはほんまもんの女優さんがいてるし。
(宮元)撮影所の人間もぎょうさん来んねんな~。
うまいこといったらえっ… 名前 何やった?
千代だす。千代ちゃんも 一躍 スターさんや!
なあ うち えらい店やろ。
フハハハハハハハハハ!フハハハハハハハハハ!
フハハハハハハハハハ!
ハハハハハハ… あの 何の話だす?
あっ… あんた 女優志望ちゃうの?
うちが? からかわんといておくれやす。(宮元)何や…。
うっとこに来る あんたぐらいの子はもう 大概 みんな そやからな。
ここやったら すぐに住み込みで働かしてもらえるて聞いたんで。
ええけどな… うち 給金ないで。えっ?
お客さんから貰えるご祝儀チップだけが自分の稼ぎや。
お客さんに気に入られな全く金にならんで。
あとな そこから2割 手数料としてうっとこが貰います。
お茶子と おんなじだすわ!
じゃあ 早速 今日から店出るか?はい! …やのうて へえ。
…やのうて はい! お願いします!
(宮元)部屋 上や。 ああ 相部屋やで。
おおきに。
(宮元)あっ しもた!肝心なこと忘れてた!
はい そこまで!
・(猫の鳴き声)
<この子も また えらい可愛らしなあ>
あ… 今日からお世話になります千代いいます。
ああ そんながけ。
私 真理いうがやちゃ。
私も ここに来てえまだ ひとつきながやけど分からんことあったら 何でも聞かれ。
おおきに。 真理さんは どこの人?
真理でいいがに。生まれは富山ながやけど家出してもう何年も帰っとらんがいちゃ。
家出?
うちも似たようなもんや! よろしゅう。
仲ようしよまいけ。うん。
こないして 千代ちゃんは 女給としてキネマの2階に住み込みで働くことになりました。
うちの人がな またな…。
♪~
よっしゃ 衣装の貸し賃はツケとくで~。
えっ?チップ稼いで 払てや。
えっ うち…。あっ さっきのライスカレー代。 おお。
え~!当然やん。
(真理)あの端におんがが 純子ちゃん。
あんなに楽しそうに笑っとうがやけどお病気の旦那さんに代わってえ家族養うために 働いとんがやと。
そうかと思えばあ あっちの京子さんはとにかく お客から 金をでかいと巻き上げることしか考えとらんが。
昔 男に ひどい捨てられ方したとかで男に復讐するためにこの仕事しとんがやと。
それで あの人があ 監督も言うとったここの一番人気の洋子さんやちゃ。女優気取っとんがやけどお昔 少しだけ活動写真に出とった大部屋女優ながいと。 それを いまだに得意気になっとんがいちゃ。
私も女優志望なが。 負けられんちゃあ。
当時のカフェーはいわばキャバレーの元祖でこういうお店があちこちに増えていました。
千代ちゃん?
どうしたがけ?
・(犬の遠ぼえ)
♪~
真理ちゃん 千代ちゃん。洋子さんと代わって。
(真理)私がけ?初めてのお客さん来たんやけど何かな 東京の活動写真作っとう会社の社長さんらしいねん。
洋子さん そっちつきたい言うとんねん。(真理)えっ 私も そっちがいいがに。
ほな 誰が染谷の若旦那の相手すんねん。いきなり千代ちゃん一人は無理やろ。面倒見たって。(真理)しかたないね。
行こまいけ 千代ちゃん。
<これも生きるためや やるしかあれへん>
よっしゃ!どっからでも かかってきい!
いくそったね~。
あっ 来ました。うっとこの一番人気 洋子ちゃんです。
黒木です。(宮元)ごゆっくり。
黒木社長は これまで どないな写真お作りになってきはったん?
う~ん 「野狐小平次」とか「渦巻く疾風」とか… ハハッ。
(染谷)よう見たら 洋子ちゃんより真理ちゃんの方が可愛らしなあ。
そんなこと言っとってもお結局いっつも 洋子さんご指名ながいぜぇ。
真理ちゃんのこともちゃ~んと考えてるでぇ。
君は 女優もしているそうだね。どうして この店に?
演技には いろんな経験が必要ですやろ。勉強熱心だね。
ちなみに 代表作は何?
黒木社長と これから作る作品です。
そう来たか。
ほれ ご祝儀や。あっちゃ うれしいわ。 気の毒な。
あの…。
あっちゃ この子は新入りの千代ちゃんいうが。
千代だす。 よろしゅうお頼申します。
♪~
そこ 虫食うてんで。
ほんまや。
なあ 真理ちゃん このあと どや。ごはん食べ行こか。
やあ それ よろしおますなあ。あんたちゃう 真理ちゃんに言うてんねや。
行きたいがやけどお洋子さんに怒られんがいちゃ。
おいしいもん いっぱい食べさしたんで。無理やちゃ。
腹いっぱい食べてええんやで。(真理)できんが。
何や お前! 女給のくせに客の言うこと聞かれへんのか!
堪忍してください。
わしを誰や思てんのや。
100年続く呉服屋の若旦那やでぇ!
若旦那さん 落ち着いてくださいね。落ち着いて まあまあ まあまあ…。
この店は 女給になんちゅう しつけしてんのや。
落ち着いて…。店長呼べ 店長!
まあまあ まあまあ…。店長~!
店長 呼ばれてます。
いへんて言えよ! 大体 僕は監督や。
店長! 店長 どこや~!出てこ~い 店長~!
おい そんなもん どないする気や。暴力は あかん。
(染谷)わしと一緒に行くんか行かへんのかどっちや。そう言ったかて…。
バカ旦那!何や!
旦那さんだいぶ酔うてはんのと違いますか?
何言うてんのや。わし まだ ちょっとしか飲んでへんわ。
ほら 酔うてはります。
これ みんな空にしたん覚えてはれへんのだすか?
わし これ飲んだんか? みな?
もう ええお時間なってまっせ。
11時? もう こんな時間かいな!
はよお帰りにならな ご寮人さん気ぃもみはんのと違いますか?
あかん!
助かったわぁ。 気の毒な 千代ちゃん。
お茶子の時も あないな旦那さんがよういててな。
ほんで 大概ご寮人さんに 頭 上がれへんさかいこっそり時計の針進めといたら皆 慌てて帰るよって。
そうながけえ。
なかなか…やるやないか。おおきに。
さすが ほげたが達者な千代ちゃんは京都へ来ても健在ですわ。
皆さん お騒がせしてすんまへんでした。
この子ら まだ日ぃ浅いもんやさかい大目に見たってください。
すんまへんだした。
いいねえ…。君 出てみないか?え…?
私が これから作る活動写真にだよ。
へえ すんまへん。
ええっ!
ええ~っ!?


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