コーヒー焦げくさい・ブラシに抜け毛ビッシリ…療養後も後遺症、受診予約が殺到
2021年05月05日 07時16分 読売新聞
2021年05月05日 07時16分 読売新聞
2021年05月05日 05時01分 読売新聞
新型コロナウイルスの感染者で、療養が終わった後も後遺症に悩む人は多く、東京都内の専門外来には受診予約が殺到している。変異ウイルスの拡大前まで重症化リスクは低いとされてきた若年層からの訴えが目立っているという。対応する医師らは「若いからといって油断はできない」と、感染対策の徹底を訴えている。(大舘匠、山田佳代)
■■治療で退職
「良くはなっているが、まだ全快ではない。無理せず、体を疲れさせないで」
新型コロナの「後遺症外来」を設けている東京都渋谷区のヒラハタクリニック。3月中旬、院長の平畑光一さん(43)が、都内に住む40歳代の女性患者を診察した。
女性は昨年11月にコロナに感染。持病があり、10日間入院して治療を受けたが、退院後も体のだるさや後頭部の鈍痛はおさまらなかった。味覚や嗅覚も戻らず、コーヒーや好物の焼き肉も焦げ臭く感じるだけ。年末にはブラシに抜け毛がびっしり付くようになり、平畑さんのクリニックに駆け込んだ。漢方薬などの服薬治療で症状は徐々に軽くなったが、倦怠(けんたい)感は残る。
治療に専念するため2月には会社を辞めており、今後の生活資金も心配だ。女性は「このつらさは経験しなければわからない。後遺症に悩む患者にも行政の支援が欲しい」と訴える。
■■患者1日60人
内科専門のクリニックを運営する平畑さんは、患者から後遺症について相談されることが増えたため、昨年10月に後遺症外来を開設。現在、後遺症を訴える患者はオンライン診療を含めると1日に60人を超える。最近では変異ウイルスに感染した患者も訪れるようになったといい、平畑さんは「休み返上でも診察が追いつかない」と話す。
4月下旬までに平畑さんの後遺症外来を受診した約1500人のうち、20~40歳代は74%を占める。患者の自覚症状(複数回答)は「倦怠感」(93%)が最も多く、「気分の落ち込み」(87%)や「思考力の低下」(83%)、「頭痛」(81%)も目立つ。「嗅覚障害」も51%、「脱毛」も50%が訴えている。
後遺症は、就業にも影響を及ぼしている。平畑さんが調べた後遺症外来の患者約1500人のうち、仕事を持つ862人の4割にあたる343人は、療養を終えた後も一定期間の休職を余儀なくされた。解雇や退職、廃業に至った人も34人いた。