平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)フィギュアスケート男子で66年ぶりの2連覇を達成した羽生結弦(23=ANA)の国民栄誉賞表彰式が2日、官邸で行われ、羽生が着用したはかまを製作した「仙台平」職人の人間国宝甲田綏郎(よしお)氏(89)は「日本男子の第1礼装で晴れの場に出ていただきたかった。若い方なのにスマートに着こなしていて素晴らしい」と喜んだ。

 「仙台平」は、日本男子にとって憧れの最高級はかま地だ。絹独特の光沢とハリに加え、柔らかさがあり、動きやすいのが特徴。江戸時代初期伊達4代藩主伊達綱村時代に始まり、現在の甲田氏まで13代約300年にわたり引き継がれてきた。

 伊達藩の歴代藩主や、能・歌舞伎役者、歴代の日本相撲協会理事らが愛用してきただけあり、着心地は抜群。川端康成がノーベル文学賞の授賞式の際に着用するなど、その織り地には風格も漂う。この日、夏用のはかまを付けた羽生は「非常に素晴らしい。自分は、はかまとか詳しくないんですけど、身につけていて本当に快適」と話した。

 受賞が決まった6月上旬、甲田氏の方から仙台市を通じて羽生への提供を打診した。「復興の象徴だし、仙台市民として着てほしい」。完成までの30工程は本来なら半年かかるが、短期間で急ピッチで仕上げた。会心の出来だったようで、他の社員には「羽生くんに似合うものが作れてうれしい」と漏らしていたという。

 甲田氏は「羽生さんの個性が魅力的。華麗なスケーターを続けてほしい」と願う。若いころから織物一筋の生き方は、スケートに人生をかける羽生の姿にも重なる。この日、国民栄誉賞受賞の様子を見届けると、その後は夜まで織物製作に没頭した。