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秋津島逃避行・下

全体公開
2020-04-27 17:50:34

逃避行・上の続き。
逃避行・上→https://privatter.net/p/5657980

北川「新学期最初の出席を取るぞー。有栖川」
有栖川「はい」
北川「音無」
音無(りんこ)「はい!」
北川「敷島。…敷島?居ないのか?」
霜暮「来てないです」
北川「連絡も特になかったが…前年度は発熱があった以外は休まなかった敷島が無断欠席か…霜暮」
霜暮「はい」

北川「ということがあったんだ」
九十九「あら、そちらも?」
北川「という事はそっちもか」
九十九「えぇ、秋風ちゃんが来てないのよ」
北川「なんか急に問題なさげに思えてきた件」
九十九「いや、あの二人がセットだから気持ちはわからなくも無いけど…一応気に掛けた方がいいかも知れないわね」
北川「そうだな」

九十九「という話をしてから早二か月…」
北川「あの二人は未だに来ず…」
神崎「二か月も無断欠席ですか…御家族や警察等は」
九十九「捜索願は始業式の次の日には両家から出されているけど、音沙汰無しね」
北川「このままでは留年どころか、退学もあり得る」
神崎「退学、ですか」
北川「あぁ、あと一か月で行方不明者捜索の期限の更新がなされる。そこで『積極的な捜索は不要』と判断されれば」
九十九「積極的な捜索は行われなくなるわ…そうなれば発見できる可能性は限りなく低くなる」
北川「そして、学校側もまず見つからないであろう生徒をいつまでも在籍させておく余裕は無い。第一、敷島に至っては次に留年すればそのまま退学となってしまう」
神崎「そういう事ですか…どうにか出来ないのでしょうか」
北川「……」
九十九「……警察による捜査が打ち切られたら、私たちも探すわ。ありがたいことに、捜索にやる気を出してくれている子も多いし」
北川「逆に言えば、それくらいしか出来ないというのもある。私たちにも普段の生活というものが、ある」
神崎「…儘ならないものですね」
北川「あぁ、全くだ」



敷島「どりゃあああああああ(ザクッッッ」
猪「ブモォォォォ…(ドサッ」
秋風「お疲れ様です敷島さん!」
敷島「お疲れー。猪はそれなりに久しぶりだなー」
秋風「前に食べたの二週間前でしたっけ」
敷島「確かそれくらいだなー。さて、持って帰って解体するか」
秋風「はーい!…もうここに来て二か月くらいですか」
敷島「もうそんなになるのか。…帰りたいか?」
秋風「まさか。あぁでも、もっと色んな所に行ってみたいですね。なにせ逃避行ですし?」
敷島「さいでっか。んじゃまぁ、そろそろ別のところに移動しますかね。…こいつを食ってから」
秋風「わぁい。…どこに行くんです?」
敷島「それはその時のお楽しみ」
秋風「アッハイ」

敷島「さて、準備はいいか?当分ここには戻ってこないが」
秋風「準備も何も、ここに来た時もロクに物無かったじゃないですか」
敷島「せやな。魔導書様様だよ全く…んじゃ、行くか。しっかりしがみつけよー」
秋風「またアレですか…」
敷島「お?んじゃあ短距離転移繰り返して行くか?転移とは名ばかりの高速移動だからめっちゃ身体に負担掛かるし、転移と転移の間少しだけ落ちるけど」
秋風「すみませんでした天彗龍方式でお願いします」
敷島「分かれば宜しい。んじゃ、行くか。しっかりしがみつけよー」
秋風「またアレですか…」
敷島「無限ループって、怖くね?いいからテイクオフだ!(ギューン」
秋風「ひゃあああああぁぁぁぁぁ…」



秋風「…結構飛びましたけど、まだ着かないんです?いや、今『もうすぐ着く』なんて言われても困りますけど」
敷島「もうすぐ着くぞ」
秋風「困るって言ったじゃないですか…ここ太平洋のど真ん中なんですけど。さすが魔王」
敷島「ど真ん中じゃなくて少し南東の方だがそれは置いといて、座標的にはここだ。あと誰が魔王だ」
秋風「思いっきり何もありませんが」
敷島「そりゃ空中から見ても何も無いだろうな、しっかり捕まってろよ」
秋風「えっちょ嘘ですよね敷島さんさすがに海中では生きられませんから勘弁してくだs」
敷島「夢見るままに待ち居たり!(ドボーン」

秋風「ッ…………ッ……?…………あれ?冷たくない…息も出来る…?」
敷島「魔導書を舐めるな」
秋風「釈然としないです…?何か動いたような…アレは…」
敷島「煌黒龍、アルバトリオン…話には聞いていたが、本当に深海にまで居るとはな」
秋風「明らかに深海にいるような姿形ではありませんが」
敷島「それは俺も気になるな。…あの連中について何か不思議に思っても多分無駄だが」
秋風「そんな理不尽の権化みたいな」
敷島「割と理不尽の権化だぞ。遠くですれ違っただけで良かったな?」
秋風「なにそれ怖いです」
敷島「さて、そろそろ目的地だ」
秋風「…海底都市?まさか、ルルイエ…」
敷島「そ。南緯47度9分、西経126度43分。海底都市ルルイエ。ここをまた暫くの拠点にするぞ」



そうして、俺たちは世界中を廻った。

秋風「一日中星が見えるなんて、ロマンチックですねー」
敷島「その分寒いし、バレたらあちこちから怒られるけどな。お、南十字座」
南極大陸、南緯90度(南極点)付近。

秋風「なんでこんな火山帯に、食用に適した生物が居るんですか…」
敷島「バーチャルだから?」
アメリカ合衆国アラスカ州、ブセビドフ山。

秋風「月の兎ってホントに居たんですね…え、食べるんですか?アレを?」
敷島「俺たちは帝釈天だった?」
月、静かの海。

世界を廻って八か月弱。年が去り、また新しい年が来る頃に。

飛狐「ようやく…ようやく見つけましたよ、お二方…」
秋風&敷島「…………」

逃避行は、終わりを告げた。


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