剝き出しの本能(https://privatter.net/p/6057233)の後日談。若干のCP要素注意。
「静止目標に対する命中率100%、うち
V高専C棟地下、射撃訓練場。そこに拳銃の練習をする偽姓果名と、それを指導する鉄城大和が居た。
果名は肩を上下させ、その手に持つ
「はぁ…はぁ…パイセン意外とスパルタですね…」
「まぁ本人の命掛かってたしなぁ。とはいえ、銃の扱い方を聞きに来るとは思ってなかったが」
「いつまでもおんぶにだっこでは居られないんです!」
先日吸血鬼に襲われて、大和に命を助けられた果名は、助けられるが儘では居られないと一念発起。
銃の扱い方を習いに、C(ombatant)棟・総合戦闘訓練棟の門戸を叩いたのである。多少の下心を携えて。
だが―――
(……ガチの時のパイセンってあんなに迫力あるんだなぁ…)
銃を構える姿勢の指導の時、後ろから抱き着かれて調整させられた果名は、大和の迫力に飲まれて、心臓停止するどころでは無かったのである。多少、心臓の鼓動が速くなりはしたが。
閑話休題。
「そうかそうか。とりあえず今日はこれくらいにするか。次からは片手で撃つ練習になるぞ」
「ほんとですか!?やったー!」
「しっかし、最終目標が二丁拳銃で能力まで使うってそれ休めるのか?」
「スケジューリングは雨下さんや九十九先生も考えてくれているので大丈夫です!」
「そうか、ならいいが」
二丁拳銃に加えて、光をある程度捻じ曲げられる能力の制御の練習と、その活用法の模索を行う果名の協力者は多い。皆先日の事件には肝を冷やしたのである。
「それじゃあ、またねー大和パイセン!」
「おう、またなー」
別れの挨拶をして訓練場を後にする。明日もこんな日常が続けばいいな。そう願いながら。
「はぁ…」
嘆息。V高専A棟・学生寮の一階の談話室のソファに座る少女、雨下青猫は一つ、溜息を零した。
彼女の脳内を占めているのは、諦念と、後悔である。
(命の危険を感じたから、戦い方を身に着ける。それは別に悪いことでは無いです。むしろ学校側も推奨している。それでも、果名さんにはこちら側に来てほしくはありませんでしたが…)
あんな思いをさせてしまった、自分たちの責任か。そう思いながら、傍らに立て掛けてあった刀に目を向ける。
彼女の身の丈よりも大きな刀は、鞘に収まっていながら、常人が尻込みするような存在感と、退魔師が恐れる程の邪気を放っていた。
―――『妖刀・村雨』。血を浴びれば浴びるほど、獲物を喰らえば喰らうほど、斬撃の威力を増す、ありきたりな妖刀である。もっとも――
(…コレも、元々は妖刀どころか由緒ある宝刀の筈なんですけれどねぇ…)
最初から妖刀だったわけではない。先日の事件の後に、いつの間にか変化していたのである。
(私の思いに反応しているとでも言うのでしょうか)
ならば、この妖刀は、自分の心の鏡とでも言うべきか。
刀身を鞘から抜いて、眺めながら考える。
(嗚呼、不愉快です)
刀身を鞘に納め、立ち上がる。さて、また暫くの予定でも考えましょうか。そう思いながら。