R45 ALL THAT 補足 (文&画 柳田光司)
「R45オールザットらじヲ」を担当しています「柳田光司」です。
「柳田?!? 誰やねん?」というクレームを少しでも解消するため
「長~い 長~い自己紹介」をさせていただくことになりました。
第60回「あぁ、冬休みソング」(2018年12月21日 OA)
師走です。
慌ただしいですね。
先日、吉本新喜劇の「池乃めだか」師匠とお会いしました。
ラジオブースの中。ボソッと言われました。
「自慢話とか、景気のいい話は(他人にとって)面白いものではない」
…だから、極力避けるべきであると。さすです。
半世紀以上、きびしい芸界を生き抜いてこられた師匠からの教え。
生きていくために欠かせない「真理」です。
ごもっともです。
これまでの人生を振り返ったとき「ラッキーだった!助かったな!」と思うことは…
「80年代バブル」にいっさい巻き込まれなかったこと。
自分の背丈以上の浮かれた世界を知らないまま“あの時代を通過できたこと”ですね。
20歳、21歳の冬。
ちょうどこの時期「銀行のカレンダー」を配るバイトをしていました。
同じバンドをやっていた『M君』のお父さん(当時、銀行員)からの紹介でした。
実家の近く。同じ校区内にあった『S銀行・N支店』
当時、まだまだ景気が良かったのでしょうね。
S銀行って書かれた1枚刷りのカレンダー。
映画のポスターと同じサイズで左縦に1月~6月、右縦に7月~12月。
真ん中に名画が描かれたカレンダーがもれなく無料配布されていました。
「経費削減!」のご時世。
…今では、まったく考えられない”おとぎ話”ですね。
まずは、ふたりで「S銀行 N支店」へ。
当時、私が乗っていた安物の赤い軽自動車(ダイハツ・ミラ)で。
約束の時間に遅れずに。雇い主が忙しいであることを察知するやいなや
…行員さんの控室?に平積みされている5000枚近くあるカレンダーと対面。
誰もが“その量”に圧倒されるでしょう。
第一の肉体労働は、カレンダーを実家の一室に運び込むこと。
そこから、カレンダーを一枚、一枚手作業で丸めながら…
筒状になったビニール袋に入れていくんです。
それを、30、40、50…になったタイミングをみて…壁側に並べていくんです。
天井につくか、つかないかの高さまでドンドン積み上げていきます。地道な作業です。
冬です。
石油ストーブです。和室です。
八畳間の部屋に、超巨大に膨れ上がった蜂の巣が完成。
引火すれば、翌日の朝刊の一面を飾る大惨事です。
でも、このアルバイトは…ここからが本番。
丸く梱包したカレンダーを一件、一件、配布しなければなりません。
1枚あたりの単価「19円」
5000枚配って、ふたりで「9万5000円」
それを、きっちり折半。手元に4万少し入れば…滞納している家賃も払えます。
これまで、数えきれないぐらいの業種をバイトしてきました。
でも、ここまで信頼されて…「自分たちのペースで仕事を任された」のは初めてでした。
もちろん、それが『M君の父親からの紹介』だという事を差し引いても嬉しかった。
雇い主様と約束したことは、
「納期厳守」「ていねい」「確実」の三つ。
一方的に指示され…やらされることが大嫌いでした。
その分、ここまで信用されれば…とことん楽しみながらやろうと決めました。
空いている時間をさがし、自主的にガンガン攻めていきました。
「M君」とは違う日雇いアルバイトによく行きましたが…
このカレンダー配りはかなり思い出深い。
(少しくさい言葉ですが)
共にすごした師走の労働経験が「私」と「彼」の原点かもしれません。
事実、M君は某K銀行に入行。
あの時、原付バイクでカレンダーを配りまくっていたように
外回りの営業をしたのでしょうね。
サボらず、自分でノルマを決めながら楽しんでいたのでしょうね。
M君は、異例の速さで実績を積みあげていきました。
長い下宿生活。「母親」とは、久々の対面でした。
カレンダーの紙のにおいが充満した和室で
住宅地図のコピーと格闘しているバカ息子に対して、母親は終始、呆れ顔。
複雑な表情をしていたことを憶えています。
そうかと思えば、差し入れの「おにぎり」と「コーヒー」を持ってきては…
「カレンダー配り終えるまで、この部屋でタバコを吸うたらあかんで!」と厳重注意。
間髪入れずに「なんでか?わかるか?」と関西のオバちゃんらしいテンポでぐいぐい入ってくるんです。正直、邪魔くさい展開でした。外はまだ明るいし、天気もなんとか晴れていました。
かまっている余裕などありません。
1包でも配らないと約束した納期に間に合わない。
これでは、いつまで経っても埒があきません。
「んなもん、わかってるわ!カレンダーに火がついて、火事になるからやろ!」
「ちがう。カレンダーにタバコのにおいがつくからや!
仕事は、絶えず 相手の気持ちになって進めていかなあかん!」
「わかって(い)るとは思うけれど…
光司(私)この仕事は、M君のお父さんからの紹介や。
まちがっても、1枚でもカレンダーを入れなかったとか…届いてないとか…
配っている時、愛想が悪かったとか… わけのわからん場所に 置きっぱなしになっていたとか…一本でも苦情が入ったら失格。しっかり最後までやらなあかんで。」
「光司(私)よう聞きや。これは大切なことやから、よう聞かなあかんで。
他人さんは(親か家族と違って)お前をずっーと温かく見てへん(ない)もんや。
残念な話やけど… 他人さんは、一瞬でお前(私)を判断しゃはる(する)ねん。
こいつ真面目やなぁ!とか、アホやとか、態度悪い奴やなぁ…とか、
この子、いつも不機嫌そうに 邪魔くさそうに仕事する奴なぁ…って、
一瞬で判断しゃはる(する)から怖いやで」
「でもな、(他人から)信用してもらうには…2年、3年もかかるんや。わかるか?
という事は、ぜったいに手を抜いたらアカンのや」
「で、ずっーと気になってる事なんやけど…
軽自動車にカレンダーを山ほど積むのもええけど…
たまには、彼女のひとりでも乗せてデートしたりしてるんか?」
「先に言うとくで!
お母ちゃん、ブサイクな女は絶対にあかんで!
たぬきみたいな丸顔のオンナは、男を騙すから…気をつけなあかんで!」
…いちいち、やかましい母親。
あきらかに、きつねには程遠い顔していた母親からの苦言。
とにかく”女ほどややこしい生きものはいない”が口ぐせでした(笑)
…半世紀ほど生きていればわかります。
あの時、母親が息子に伝えたかった本気のメッセージ。
今、痛いほどよくわかります。
8畳間いっぱいにひろがる カレンダーの香り。
軽自動車いっぱいに積み込まれた銀行のカレンダー。
あらかじめ ふたりで 予定していた場所に車を駐車し分担作業。
M君は原付バイクで遠くの家から。
私はカレンダーを台車に積み替え、手前の家から一件、一件攻めていく。
その時、ふと気づくんです。
「まじめ」がいつしか「自信」に代わり「声」になり「振る舞い」に進化していくと。
約束の納期より、1週間ほど早く仕事を無事完了させ…S銀行へ報告。
あのとき、茶封筒でもらった報酬の喜び。
まったく知らない大人から、信頼され、仕事をさせてもらった恩義は
この先、絶対に忘れてはいけないと思った”場所”と”風景”は色あせてはいません。
このとき、明確な「友だちの定義」ができました。
私の場合は、以下の3条件を満たしていること。
「真面目に働く人」
「ズルをしない人」
「雰囲気をみて喋れる人、聞ける人」
結局、このカレンダー配りのバイトは(支店長が変わるまで)2年に渡りお世話になりました。
――――あぁ、なにもかも懐かしい。
こんな私が「あぁ、冬休みソング」で推薦したのは
≪桑田佳祐 & His Friends≫の『クリスマスだからじゃない』
なぜ?私がこの曲を推薦したのか?気になる方は、
ラジコのタイムフリー(1週間無料サービス)でも番組をお聞きください!
私「柳田光司」宛の 応援メール、ハガキ、郵便なんでも結構です。
一行メッセージでもかまいません。必ず目を通させていただきます。
こちら「R45 ALL THAT 補足」も読んで下さいね~!
添付した「色鉛筆画」は、今もときどき夢に出てくる「妖怪カレンダー」WW
次回の『R45 ALL THAT “らじヲ”supported by Joshin』は、
12月28日(金曜日)夜9時から。
次回のバトルテーマは「2008年敗者復活ソング」
来週も お付き合いのほど よろしくお願いいたします
谷口「わー、わー、言うてます!」
柳田「お時間です!」
2人「さようなら!」 …(つづく)