昨日会社の同期のMくんと会ってきた。
色々と買い物をしたら疲れたのでカフェに入り、Mくんはアイスコーヒーを注文した。Yは紅茶を注文し、一息ついている。
Mくんは前日にオンラインで会社の人と飲み会をしていたらしい。
共通の趣味でもない限り、だいたいそういった場での会話は仕事か健康か人間関係の話になる。
Mくんは最近彼女に振られたので、やはりそのことがいじられるらしい。
やはり男子間で振られた話をすると「それなら遊んどけよ」と言われマッチングアプリを勧められたりするそうだ。
「マッチングアプリとか似合わないからやめときなよ」とYは言った。
「出会ったその日に〜とか、ナンパとかで性行為できたとしても気持ち良くないでしょ。
快楽ホルモンのドーパミンより愛情ホルモンのセロトニンの方が持続性があるって言うし、セロトニンはマッサージとかハグでも十分出るって言うし…」
Mくんにマッチングアプリをやって欲しくなくて始めた会話が、着地点を失った。
「マッチングアプリするくらいなら私とお茶してよ」と言えば良いものを、Yは言えなかった。
「はぁー、結婚してぇ…」Mくんは深いため息をついた。
「そういえば、少し意地悪な質問だけど…なんでMくんは結婚したいの?」
好きな人がいて、その人とずっと一緒にいたい、と言うのならわかるが、「とにかく結婚したい」というのは理屈がよくわからない。
いつもテキパキしているMくんが珍しく考え込んでいた。
Mくんは「うーん」と手を後ろに伸ばして言った。
「いやなんかさあ、信頼関係って、いいじゃん。信頼できる人と一生一緒にいたいんだよね」
それこそプロジェクトみたいに目的と期間が決められたものの方がいいような気がするけど」
たしかMくんに彼女がいた頃「30くらいで結婚したい」と言っていた。
当時はこのふわ〜っとした発言に(SDGsの目標か?あるいは脱炭素計画か?)と心の中で突っ込んだ。
「兄が結婚して子供もいるんだけど、それが良くできた夫婦って感じで羨ましいと言うか…
兄もお嫁さんもお互いに信頼し合ってていいな〜って思うんだよね。
あと子供も欲しくてさ、なんか夢だけ広がっちゃって。
『子供とキャッチボールしたいな』とか『自転車の練習に付き合いたいな』とか…」
「そりゃあもう」
虚しくなってきたので、この会話はやめにした。
今のMくんの話は「東京大学に行きたいです!でも入試科目もどうやって出願するのかも知りません!」と言っているようなものだ。
夢だけしっかりしていて、プロセスがすっぱ抜けている。
カフェを出ると18:00を過ぎていた。
あまりお腹は空いていないけど、なんとなく名残惜しいと言うか、帰るのが勿体無いような気持ちだった。
「とりあえず駅まで歩きながら、次なにするか決めよう」とMくんが言ってくれた。
しばらく歩いていると、信号を待ちになり、Mくんがぼそりと言った。
「俺、お母さんから『モテるように育てた』って言われたんだけどな〜」。
なぜか悔しそうである。
Yのことを「可愛い」と褒めてくれて、女の子として接してもらえるのは純粋に嬉しい。
Mくんは国家試験にも合格していて努力家な上、冗談を言って場を和ませたりもできる。
文章にすればMくんのいいところをたくさん挙げられるのに、瞬発力がいつだって足りない。
窓外を見て「これを言ってあげればよかったなぁ」といくつものシーンを思い浮かべている。
ひとまずは、乙女ゲーをたくさんやって「ちょっといい感じの同期」への接し方を学ぼうと思った。
めちゃくちゃ相性悪そう