@chablis777
シャブリ

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(千代)うちは役者しかでけへん人間だす。
もう二度と辞めるようなまねはいたしまへん。
一生 芝居 気張らしてもらいます。
どうぞ よろしゅうお頼申します!
ラジオドラマ「お父さんはお人好し」最初の顔合わせの日がやって来ました。
(酒井)アタ五郎と チヨ子の家族藤森家の皆さんにご挨拶をしていただきます。長女の京子役の…。
中村律子です。
(拍手)(当郎)うん 頼むで。
次女 乙子役の…。根岸恵子と申します。
長男 米太郎役の…。坂本浩二です。
(酒井)次男 清二役の…。高森久作です。
三女 熱子役の…。永井美子です。
(酒井)四女 豊子役の…。水野和子です。
三男 沼吉役の大月正雄君。
僕の役 浜三です。えっ…。
沼吉は僕です。
僕は 三男 浜三役の大月正雄です。
ほんで 僕が 四男 沼吉役の松村和也です。
その間にいる 五女の静子の島田祥子です。よろしくお願い申し上げます。
<あかん 覚えられへん…>
千代ちゃん いきなり 子だくさんやなあ。
多すぎるわ。
♪「オレンジのクレヨンで描いた太陽だけじゃ」
♪「まだ何か足りない気がした」
♪「涙色したブルー こぼれて ひろがって」
♪「ほら いつも通りの空」
♪「これは夢じゃない(夢みたい)」
♪「傷つけば痛い(嘘じゃない)」
♪「どんな今日も愛したいのにな」
♪「笑顔をあきらめたくないよ」
♪「転んでも ただでは起きない」
♪「そう 強くなれる」
♪「かさぶたが消えたなら」
♪「聞いてくれるといいな」
♪「泣き笑いのエピソードを」
♪~
(木村)え~ ご両家のご婚儀も無事 滞りなく執り行われ…。
早速 台本の読み合わせが始まりました。
この「お父さんはお人好し」どないな物語なんかちょっとご紹介いたします。
舞台は 大阪の とある町。
そこで果物屋を営む藤森アタ五郎とその女房 チヨ子そして 12人の子供たち。
更には その孫までが一つ屋根の下で巻き起こす喜怒哀楽のホームドラマでございます。
その記念すべき第1話目は次男 清二君の結婚式のお話です。
それでは 現場へお戻しいたしますよ。キュー!
(木村)何しろ ご人数が多ございまして失礼ですが 藤森さんあなたからご家族をご紹介くださいませんか?
あっ はい。 まず 私が当主の藤森アタ五郎でござります。
どうぞ よろしゅうお願い申し上げます。
ほんで 私の横におりますのが家内のチヨ子でござります。清二の母のチヨ子でございます。
子供を12人も産んだ張本人でござります。いらんこと言いなはんな。
(笑い声)
(当郎)え~ 続きまして子供らの紹介でござりますがまず 初めに名前の由来からご説明さしてもらいます。
お父さん そないなことどないでもよろしがな。
ええことあれへんがな。ちゃんと言うといた方が覚えてもらいやすいやろが。せやかてなお父さんも こないな場所で…。
黙って!(笑い声)
長女は京子といいます。この京子と申しますのは私が京都におります時に生まれたものでして京子と名付けたのでござります。
次女の乙子ができました時に…。
ちょうど あんさん その時に この人が東京へ行く用事がございまして汽車の時刻表を見ておりましてな。(当郎)そうですねん。
京都で京子やよってちょっと向こうにしたれと思いまして。
京都の向こうは大津やいうので。それで 大津。
大津子やと おかしいんで甲乙の「乙」の字にして 乙子。
…と まあ こないな具合に藤森家の子供たちの名前はみんな 東海道線の駅名から取られたもんなんやそうで。
京都の京子ちゃん大津の乙子ちゃんに加えて長男の米太郎君は米原次男の清二君は清洲双子の熱子ちゃんと豊子ちゃんは熱田と豊橋やな。
三男 浜三君は浜松五女 静子ちゃんは静岡沼津の沼吉 横浜の横之助品川の品子 新橋の新子で終点です。
はあ~ こりゃ しんどいわ。
我ながらよう 東海道線の名前にしたこっちゃ。
短い支線の名前やったら乗り換えせなあかんとこでした。
(笑い声)
(富岡)はい ほな 一旦 休憩しましょ。
長澤先生 当郎さん 竹井さんこれから よろしくお願いします。
足引っ張らんよう 頑張ります。
こちらこそ。 え~…。
長男 米太郎役の坂本浩二です。
次男 清二役の高森久作です。
お願いします。お願いします。
お父ちゃん お母ちゃん。 新子です。
それや。今 新子ちゃんが言うたみたいにこれから みんな役の名前で呼んだら どないやろか。
その方が覚えやすいしほんまの家族みたいだすやろ。
ああ… ほんまや。 なあ。それ よろしいですねえ。
ちょうど 今 僕も同じこと思てたんや。
(笑い声)調子ええなあ もう お父さんは。
(当郎)ほんまやで。 ほんまにやで。
(小声で)中村さん… あっ やない京子姉ちゃんこのドラマがうまいこといけへんかったら所属してる映画会社クビになるかも分かれへんそうで。
ほんで あないに必死なんやな。
よっしゃ。 うちも 京子見習うてもっと ちゃんと セリフ入れとかな。
ちなみに この当時のラジオドラマは生放送が当たり前でした。
お母ちゃんセリフ覚えんかて よろしんですよ。
台本見ながら本番やれますさかい。
ああ そうなんやけどなあ…。
台本読むのと お芝居するのとでは何や ちょっと違う気がしますのや。
(長澤)竹井さんの言いはるとおりや。連続ラジオドラマは毎週 新しい話を放送していかないかん。
まあ 毎回 セリフを完璧に覚えるのは難しいかも分かれへん。
せやけど 1から10まで脚本に頼ってたらええ芝居はでけませんよ。文字を追ってたらでけへん 間や呼吸。そないな息遣いを 音でしか伝えることがでけへんラジオドラマやからこそ大事にしてもらいたい。
藤森家は ほんまにおる家族なんやてそない思わせるぐらいの芝居で日本の家庭を あったこうしてほしい。
どっからでも おいで。
(春子)長男。米太郎。
五女。静子。
次女。乙子。
…の息子は?息子は…。
あ~ あかんなあ。 昔やったらこんなん すぐ覚えられたのに。
惜しかったなあ。(栗子)えらいこっちゃなあ 大勢おって。
ほんまだすわ。 もう どないしよ。
嘘言い。 いっこもえらいことには見えへんで。
むしろ 楽しそうや。
そうだすな。
なかなか覚えられへんのも 何や楽しい。
フフッ…。
(千兵衛)花車当郎やないですか。
(熊田)そやのうて その下。
(千兵衛)あっ…。(香里)千代…。
(寛治)千代さんが このラジオドラマ出るいうことですか?
(熊田)そうみたいやな。
(天晴)よかった~。まだ 役者 続けてたんやな。
(万歳)続けてたどころやあれへん。これ全国放送ですやん。すごいわ 千代さん。
(宗助)わて 喜ぶで。 喜んでまうで。ええか? ええな?
千代や~!千代がラジオドラマて すごいことやで!
(みつえ)うち行ってくるわ。(シズ)どないする気だす?
放送局行って 千代の居所 聞いてくる。(シズ)やめとき。
うちらが行って 思い出したないことまで思い出さしてしまうかも分かれへん。
きっと 千代は 1年以上かかってやっと またお芝居やる気になりましたんや。今は まだ そっとしといたげなはれ。
だんない。 会えるようになったら向こうから じき 帰ってきますて。
せやな。
その時は またおいしい うどん 食べさしたげるわ。
(シズ)うん。
(万歳)台本 書き直すて今からですか?
本番まで そない 日ありませんよ。
(徳利)俺は 十分 おもろい思うで。今までどおり 笑えるし泣けるし…。(一平)今までどおりのことやっててもいっぺん離れてしもたお客さんは戻ってきてはくれはれへん。
何かが足れへんのや…。
もっと 見た人の心をわしづかみするような何かが…。
何十年後もお客さんに見てもらえるような本物の喜劇を作りたい。
♪~
大丈夫や大丈夫や。おはようございます。
いよいよ 「お父さんはお人好し」の最初の放送の日がやってまいりました。
あ~ もう あかん。 ちょっと くれ。
(一郎)それ 僕のや。
僕かて喉渇いてんのに 返して!
ちょっ… 何やってんの。危ないから やめて。あっ…!
ぬれたあ~!
(新子と一郎の泣き声)
(2人)ちょっと静かにしてくれへん!
横之助 一郎… 新子に謝り。
ほな お父さんが謝るから よう見とき。
えっ? 何で僕が。
お手本 見せたげとくなはれ。
ええっ? どういう展開やねん…。
しゃあないなあ。
堪忍。声が小さい。
堪忍!おおきに。
ほな みんなも一緒に。
よ~い はい!
(一同)堪忍!
もっぺん 大きい声で。
みんな 手もつけてな。
よ~い はい!
(一同)堪忍!
(桜庭)どないしました!?(当郎)だんない。
本番前の発声練習や。(笑い声)
どない?ちょっとは 気も ほぐれましたやろ。
あっ 言われてみたら…。
えっ 嘘やん。嘘かも。
(笑い声)
そろそろ スタジオの方 お願いします。
ほな 行こか!行きまひょ。
(当郎)よ~い はい!(一同)堪忍!
お父さん もう それは よろしい。
京子姉ちゃん このドラマがうまいこといけへんかったら所属してる映画会社クビになるかも分かれへんそうで。
京子。
あんた 顔色悪いで。
ゆうべも 遅うまで台本読んでたんと違いますのか?
うち 鈍臭いから ちゃんとやらなみんなの足引っ張ってしまう思て…。
あったこうて落ち着くやろ。
こないするとな 血の巡りも ようなって顔色明るくなりますのや。
女優なんやさかいちょっとでも きれいにして 笑てなな。
おおきに… お母ちゃん。
フフフフ…。
お願いします。
(桜庭)間もなく本番です。
(時計の秒針の音)


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