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教員の犯罪検挙率「わいせつ行為」がなぜ高いのか?

ぱくたそ

少し前ですが、文科省が「わいせつ行為などで教員免許を失効したことを確認できる期間の延長(40年)」を発表しました。

わいせつ教員「原則免職」 全都道府県教委が規定整備 文科省、処分の徹底要求(日本経済新聞)

これは教員からしても当然の措置であり、特に子供に対するわいせつ行為は厳罰に値すると考えます。筆者自身も管理職時代には、生徒に対するセクハラが疑われる事案で、教師を厳しく指導したことが何度かありました。

ただ教員がわいせつ行為に及ぶ理由について、予防策の面からもきちんと認識しておく必要はあります。

まず、教員のわいせつ行為検挙率について、

で見てみます。項目・数字が多く見づらいので、筆者が調べた職業別人口(総務省統計等による概数)をもとに簡潔にまとめてみます。

総務省の労働力調査によれば、2018年(平成30年)の平均就業者数は6664万人であり、教員総数は正規141万人、非正規を加えて194.5万人になります。

先ほどの「罪種別 犯行時の職業別 検挙人員」の表から人口10万人当たりの発生率を計算しますと、教員の主な犯罪検挙率{( )内は非正規を加えたもの}は、

刑法犯総数:40.6人(29.4) 凶悪犯:0.6人(0.5) 窃盗犯:12.8人(9.3) 

知能犯:1.8人(1.3) 風俗犯(わいせつのみ):4.1人(3.0)

比較のため弁護士(約4万人)の犯罪検挙率も同様に計算してみると、

刑法犯総数:100人 凶悪犯:0人 窃盗犯:15人

知能犯:20人 風俗犯(わいせつのみ):2.5人

そして無職を含む全国民(刑法犯にならない年少者や超高齢者を除き1億人とする)では

刑法犯総数:206人 凶悪犯:4.2人 窃盗犯:102人

知能犯:12.3人 風俗犯(わいせつのみ):5.0人

となり、教員の犯罪検挙率は平均値どころか弁護士と比べてもかなり低いが、わいせつ行為だけは目立って高いことがわかります(弁護士に知能犯[詐欺横領等]が多いのも納得)。

ただ無職者の犯罪率が高いため、全就業者の平均犯罪率はこれより低くなるはずですが、計算が大変なので別のサイトの集計データをリンクします(参照:世界を見える化するサイト「ミエルカ」)。

ぱくたそ

教員はわいせつ行為だけが全職業平均値よりも高いのですが、保安従事者(警察官、自衛官、消防士)や管理的職業ほどではなく、突出して高いわけではありません。それでもなぜわいせつ行為だけ高いのでしょうか?

筆者の経験則・推論になりますが、行為対象となる人間が接触可能な距離にいる人数と接触時間の長さが影響していると考えます。

教員は学校勤務一日で概ね100人以上の児童生徒と至近距離で接しますし、中には授業、朝、帰りのSHR(ショートホームルーム)、清掃、給食、部活動など、合計3時間以上接する子供がいても不思議ではありません。

一方事務職は、女性の比率が高くパソコンと向き合っている時間が長くなりますから、おのずと「行為の対象となる人間が接触可能な距離にいる人数や時間」は少なく、わいせつ検挙率が低くなるはずです。

この仮説を裏付けるデータは簡単には得られないでしょうが、もし多くの職業や職務で、接触人数×接触時間とわいせつ事犯検挙率が比例すれば、「教師になる人間にわいせつ犯が多い」のではなく、「教師の職務・環境がわいせつのリスクを高める」ことになります。

さらに教員自身も部外者も肝に銘じておくべきことに、「人間同士の直接の関わりに絶対はない!」があります。

教師のわいせつ行為に限らず、私たちは芸能人や政治家のスキャンダル(わいせつ、不倫、セクハラ等)のニュースを見て、「なぜあんな馬鹿なことをしたの? 子供でもやってはいけないとわかるのに!」と何度もつぶやいたことがあるはずです。

しかし恋愛などで時に理性を失い、感情のコントロールができなくなるのは人間の性です。ですから不祥事の後、いくら研修会や講習を行っても理屈・理性では解決しません。

このように誰にもリスクはありますが、教員は多感な子供たちと極めて長い時間を過ごしていますから、不測の事態に感情のコントロールを失うリスクは相当大きいでしょう。

さて教員がわいせつ行為に及んでしまうケースは以下の4つがあります。

  1. 教師が自分の性的欲求を抑えられなくなる
  2. ハニートラップまがいに生徒が意図的に教師を貶める
  3. 教師が熱心に面倒を見過ぎたあまり恋愛感情を抑えられなくなる
  4. 八方美人な生徒の何気ない言動で教師に魔が差してしまう

1は同情の余地なしで厳罰に処すべきです。2はめったにありませんが、現代ではSNS、メール、写真投稿など細心の注意が必要です。某高校では男性教師が女子生徒と校内で何気なくとったツーショットが「2人はデキてる!」というタイトル付きで広く拡散しました。

またまじめな教員は3、4に陥りやすく、実際次のようなやり取りがあったのです。

  • 課題の提出期限を守らない女子生徒に授業後注意したら、「先生ごめんね~」と猫なで声を出し手首をぎゅっと握られた(他に、教師に後ろから抱き着く、既婚の教師への「彼氏になって!」発言など)
  • 担任はクラスの女子生徒の悩み事を何度か聞くうちメアドと電話番号を教えた。ある時帰宅途中の女子生徒が元カレに絡まれた時、電話で助けを求められた担任は一人で現場に駆け付け彼女を連れ去ったが、翌日元カレが学校に乗り込み「既婚の教師が女子生徒とできている!」と因縁をつけられた。

筆者は長い教師人生から、生真面目で責任感のある熱心な先生ほど特に3に陥る危険があると感じます。教師に限らずこれからの時代は息抜きや遊びができ、多少のいい加減さを兼ね備えていた方がよいかもしれません。

さらに教師のセクハラ事件が起こるたびに危惧するのは、マスコミが特殊な事象を一般化して過熱報道することで世論の教師バッシングが高まり、それに挑発された政府・国会が「教員はわいせつ行為をする奴が多いから職務・倫理規定を改定する!」などと、全教員を一律に制約・管理してしまうことです。

具体例として、

  1. 教員の校内でのスマホ使用制限(実際に某市教委で行われた)
  2. 事故防止以外で子供に触れたら懲戒
  3. 研究室等での1対1の面談禁止

−−のような過剰な予防策が進めば、教員のモチベーションは上がらず子供たちも悪影響を受けます。

特に文科省には極一部のわいせつ教員を厳罰化することと、教員全体への対応とを明確に切りはなし、ぜひ大多数のまともな教員がやる気をもって教育にまい進できる環境作りをしていただきたい。