低評価レビューしたら店から「逆キャンセル」 投稿の自動削除狙い?
「ショッピングサイトでせっけんを購入し、その商品について厳しいレビュー(評価)を書き込んだ後、店側から発注キャンセルを受けた」。西日本新聞「あなたの特命取材班」に投稿が寄せられた。商品がキャンセルされると、投稿内容は一定期間を経て自動的に削除される仕組み。女性は「良い評価だけを残すためでは」と疑念を抱く。店側は「作為」を否定するが、乱用されれば商品レビューの信用に関わりかねない。
関西で暮らす女性は1月中旬、「楽天市場」でせっけんを購入した。「自然豊かな場所で丁寧に作っている」などの説明を読み、購入を決めたという。
せっけんは3個入り。2個を使い終えた2月中旬、最大評価で五つの星を付けるレビューに、星二つの評価を投稿した。
「とても期待しましたが、結果残念でした。(中略)これまでお世話になっている店舗と比べて値段的なメリットもないのでリピートはしないと思います。本当に残念」
投稿から約7時間後、今度は店側から受注を取りやめる「逆キャンセル」のメールが女性に届いた。さらにもう1通。「お客様の意に沿えないようでしたのでキャンセル処理させていただきました。お送りした商品はご返品不要ですので、そのままお使いいただくか、ご面倒ですがお捨ていただけますでしょうか。なお、お返事は不要です」。料金も返ってきた。
一般的には、欠品や配送遅延などが生じる場合、店側からやむを得ずキャンセルすることはあるという。今回は事情が違う。「いったん購入した商品を店からキャンセルするのは異常だと思う」と女性。店側は取材班に対し「投稿内容があまりにひどかったので、許せない気持ちになった。悪いレビューを消すためのキャンセルではない。楽天側にも(投稿内容を)通報した」と反論している。
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商品レビューの健全性を高めようと、楽天も工夫している。2018年、購入実績がある商品や店舗に対してのみ、投稿ができるようシステムを改修。購入者からの一方的なコメントにならないよう、店側が公開で返信できる機能も導入した。店側に対する規制もあり、「レビューの削除強要」「高評価の投稿を促す行為」などについては、「レビューの公平性や信頼性を損なう行為として禁止している」(担当者)。
店側への誹謗(ひぼう)中傷など「レビュー利用規約」に反する記載があった場合は、楽天の判断で「非表示」とする方針。今回の投稿内容が誹謗中傷と判断される可能性は低いとみられるが、店側はそう受け止めた。異例の対応ともいえる逆キャンセルが適切かどうかについて楽天は「各店舗が判断するものだ」との見解を示す。
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ITジャーナリストの三上洋さんに聞いた。「購入者の投稿に対し、店舗側も返信できる仕組みがあるなら、たとえ厳しい意見であっても、まずは冷静に丁寧に返信することが必要だった」と店側を戒める。その上で、「別の購入者もそのやりとりを見て、逆に信頼を寄せるのではないか。中小企業でも、レビューに適切に対応できる担当者を設ける方法が有効だ」と提案する。
逆キャンセルの乱用は適切なレビューの維持を妨げ、消費者の不利益につながる可能性がある。楽天によると、同社では専門チームがキャンセル率が高い店舗をモニタリングし、改善を指導しているという。三上さんも「サイト運営者側が逆キャンセルを把握し、意図的な対応を監視することが重要だ」とさらなる対策を求めている。 (竹次稔)