Another Trainer   作:りんごうさぎ

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EXTRA

 ここはカントーの玄関口、クチバシティ。俺は船に乗るためにここに来た。

 

「次の便は明日ですね。予約なさいますか?」

「じゃあそれでお願いします」

 

 船にはすぐ乗れそうだが今日はヒマだな。どうしようか。

 

「なんで船なの? ヒリューがいるのに」

「普通の船旅もしてみたいでしょ? ヒリューに乗るのってやっぱしんどいし」

「ギアナのときは1週間乗ってなかった?」

「あの時はおかしかったからな」

 

 今思い返せば正気の沙汰ではない。たまにはのんびり船に乗ってもいいじゃん。着くまでゆっくり昼寝でもしていたい。

 

「レイン、今ヒマなんだよね? いきなりなんだけどごほーびほしーの。みゅーにもごほーび!」

「ホントにいきなりだな。でもそうか、お前達頑張ったもんな。なんかおいしいものでも食べに行く?」

「みゅみゅ! グレン達も一緒ね」

 

 急遽打ち上げをすることになった。丁度ヒマだし、みゅー達は本当によく頑張ったもんな。しっかりねぎらってあげよう。ウルトラだかメガだかよくわからん外国っぽいお店に入ると、席に着くなりみゅーが暴挙に出た。

 

「じゃ、メニューの上から順番に全部ね。お腹減ったから早くして」

「え、全部……ですか!?」

「ちょい待てちょい待て! 上から持って来いしたいだけだろ! そんなに食べれないでしょ! 無茶苦茶するな!」

「えー、仕方ないなぁ。じゃあスパーキングギガボルトデラックスと、アルティメットドラゴンバーンのフルコースとあとは……」

「くっ……高いのから順番に……ぜ、全部よりはマシか」

 

 注文が来てからも好き放題だった。

 

「レイン、みゅーバトルで疲れてるから食べさせて」

「えっ!? もうしょーがないなぁ」

「ガウガー」

「ダーッ」

「ん!? まさかお前らも!?」

「ゲゲ!」

「こら! 飲み物混ぜるな! ……俺を実験台にする気か?!」

「グルルル」

「そこの肉食獣、お客は餌じゃないからな。お肉追加していいから自重してね」

 

 お前ら好き勝手し過ぎだ。アカサビさんを見習え!……でも今日ぐらいはいいか。

 

「デザートはウルトラオレンパフェZとメガ盛りオレンアイスね」

「鬼!!」

 

 慈悲の心が欠片もないな。

 

 一通り腹を満たしてくつろいでいると妙な噂が聞こえた。

 

「船乗りが相次いで失踪……」

「荷物も紛失……」

 

 なんだ今の? まぁどうでもいいか。

 

「レインどうしたの?」

「いや別に」

「お会計です」

「……!? け、ケタ……」

 

 代金はパソコンから引っ張り出すはめになった。

 

 とりあえず1日パーッと盛り上がった後、翌日船に乗った。

 

 でもラッキーだな。なんでか知らないが前日に来て予約が取れたし、けっこうおっきな船だし。なんか意外と客が少ないが、そのせいか?

 

「チケットを拝見します。……お客さん、くれぐれも荷物などはしっかり自己管理してなくさないようにしてください。なぜか荷物が一時的になくなる事件がいくつも起きてますので」

「そうなんですか。わかりました」

 

 俺は部屋に引きこもるつもりだし盗まれる心配はないだろう。

 

 自分の部屋についた俺はボールをおいてベッドで横になろうとした。

 

「待って。モンスターボールは持っておいた方がいいの。良くないことが起きるかもしれない。レイン不用心」

 

 みゅーの警告……エスパーの言うことだし従っておくのが無難か。

 

「そう? カギはかけるけど……まぁそうだな。一応持っておくか。じゃ、おやすみ」

「みゅ!? レイン寝るの!? 船内を探検しようよっ! レイン、起きて!」

「いいじゃんたまにはぐーたらしてもさぁ。いきたきゃ1人でいってきていいよ」

「みゅぅぅぅ!! レインと一緒がいい! 遊んで遊んで!!」

 

 みゅー、最近落ち着いてきたかと思ったがやっぱり遊びたい盛りには変わらないんだな。でも相手するのは面倒くさい。

 

「あーもう仕方ないなぁ。じゃんけんぽん!」

「みゅっ! あっ、負けちゃった……」

「じゃ、そういうことで。起こすなよ、俺、起こされるとイライラするから。言ったからな」

「あー!? もうっ! レインずるい!」

 

 惰眠をむさぼっているとけたたましい音と共に船室のドアが蹴破られた。

 

「んあ?」

「この船は我々ロケット団が乗っ取った! おとなしくポケモンを全て渡せ」

「てめぇ……言ったよな?」

「は?」

「中途半端に起こされると気分よく目が覚めねぇからイラつくんだよ! くたばれ! イナズマほうでん!」

「うぎゃぎゃ!?」

 

 ロケット団の下っ端らしき奴らをまとめて倒した。なにがどうなってこんなことになった?

 

「レインやっと起きたのね」

「みゅー!? お前起きてたならこいつら止めろよ!」

「だって起きてほしかったんだもーん」

 

 レインが悪いんだよ、とでも言いたげな表情。ちょっと怒ってる気がする。

 

「……悪かったよ。で、どういう状況?」

「最近船乗りと荷物が姿を消したのはロケット団が団員とすり替えていたのね。船乗りに化けた団員が手引きして荷物に紛れたロケット団がいっぱい乗り込んでる。どうする?」

 

 荷物に紛れてって……そんなことできるのか? 40人の盗賊さんかな?

 

「決まってるだろ? 安眠のために全員ぶっ倒す」

「ダメ」

「はぁ? なんで?」

「全員倒したらみゅーと船内巡りね」

「……わかったよ。その代わり手伝えよ?」

「わかったの。みゅふふ」

 

 さて、敵はどこだ? サーチ!

 

 ポケモンの反応は甲板か。ドククラゲがいっぱい。さっさと始末するか。

 

 現場に向かうとそこでは乗客が数名、人質になっていた。どうも何人かのトレーナーがロケット団に立ち向かったようだが、バトルを挑んだものの人質を盾にされ身動きとれずにいる。

 

 俺はイナズマの特攻を上げてから現場に突入した。すぐにロケット団に見つかり命令された。

 

「まだトレーナーがいたか。お前、この人質が見えるな? 動くとどうなうげっ!!」

「お前ふざっ!?」

 

 近くにいた敵が突然吹っ飛び海に投げ出される。船は止まってるみたいだし後で回収すればいい。少々寒いが頭を冷やすにはもってこいだろう。ここにいられるとジャマだ。

 

「こうなりゃ1人みせしめだ! 人質はいくらでもいる!」

「マズイ! きみ、むちゃはよせ!」

 

 団員の1人がヤケを起こすが当然それぐらいはわかってる。1番最初に手は打っておいた。

 

「人質ならもう安全だけど、それでも攻撃はよした方がいい?」

「えっ!?」

「ドククラゲが寝てる!?」

「ゲッゲッゲッ」

 

 当然ユーレイは先行させてある。ドククラゲはもれなく催眠の餌食だ。

 

「みゅみゅっと」

 

 仕上げはみゅーが人質をこっちに移動させて終わり。今、敵と味方で完全に二分された。これで心置きなく攻撃できる。

 

「ほうでん」

「シャァァ!」

「うぎゃぎゃ!?」

 

 ロケット団は一網打尽。これで終わり……いや、まだいるな。

 

「みゅー」

「わかってる」

 

 物陰に隠れていたロケット団を摘まみだして気絶させ、船を動かす操舵室みたいな場所を占拠している輩も排除した。これで一件落着かな。

 

「きみ……ちょっといいかね? もしかしてきみは……」

「あ、船長さんですか?」

「いかにもそうだが……」

 

 やっぱりか。なんか見た目が“いあいぎり”とかしそうな出で立ちだもんな。

 

「ちょっと船内を見て回ってもいいですか? この子が探検したいってうるさくて。ついでに異常がないか調べときますから」

「あ、あぁお願いするよ」

 

 これで心置きなく探検できる。最初は船を冒険なんて子供過ぎると思っていたけど、まんざら興味がないわけじゃないからな。できたら沈みかけの船とかの方が面白そうだけど、それはホウエンのお楽しみってところかな。

 

「ねぇ、厨房とかみたい!」

「なんでだよ!? 普通エンジンのとことか、もっとメカニックな場所じゃないのか? なんか秘密の部屋とか通路とか、そういうのでもいい」

「えー。だって厨房ならオレンのみとか落ちてそう」

「落ちてるもん拾うな!」

 

 ホウエンまであとどれぐらいだろうな……

 

 少なくとも、みゅーと一緒なら退屈はしないだろう。

 

 ◆

 

「よかったじゃない! グリーンおめでとー」

「何がおめでとーだ! お前が断ったから俺が押し付けられたんだろうが!」

「あれ、そうだっけ?」

 

 マスターズリーグが無事終わってしばらく、大会の熱は冷め、いつもの日常が戻ったある日。今日はグリーンのジムリーダー就任のお祝いでグリーンの家に来ていた。

 

「全くお前らときたら……レッドは強いポケモンを探してどっかいっちまうし、レインもふらっといなくなって、お前はちゃらんぽらんだもんな。やっぱ俺がやるしかねぇか」

「わたしはしっかり者ですよーだ。あんたが選ばれたのはお似合いだからでしょ? グリーンのグリーンバッジ……ぷふーっ!」

 

 ダメッ、何回聞いてもウケるんですけど! 自分でグリーンバッジ渡すのってどんな気分なの? ねぇどんな気分?

 

「笑うな!! それを言うならお前だってブルーのブルーバッジになるじゃねぇか! ハナダジムやれ!」

「ヤーよ。ジムリーダーとかするヒマないし、ハナダジムって最近カスミさんに変わったところじゃない」

「あっ! やっぱてめぇ仕事がイヤで拒否ったのか! ズリーぞ!」

 

 あっ、この流れはマズイわね。適当に誤魔化しましょう。

 

「何を言ってるのかわかんないわねぇ。そもそも、わたしはチャンピオンになるからあんたにジムリーダーの肩書きを譲ったまでだけど? あんたもジムリーダーの方が箔がついていいと思うでしょ?」

「言ったな!? そりゃオレがお前に勝てねぇって言いたいんだよなぁ?! いいぜ、その喧嘩買ってやらぁっ! 今すぐ表に出ろ! オレと勝負しやがれ!」

「ハッ! 望むところよ! ボコボコにしてやるわ!」

 

 バンッと机を叩き本気で表に出るつもりで席を立った。でもそこで見事に止められてしまった。

 

「はい、そこまでね。グリーンやめなさい」

「げっ! ねえちゃん!」

「ナナミさんっ!」

「ごめんね、ホントはブルーちゃんが来てくれて嬉しいんだけど、照れ屋だからついなまいき言うのよ、この子」

 

 さすがおねーさん、グリーンのことよくわかってるわね。生意気なところって実は照れ隠しみたいなもんなのよね。

 

「大丈夫、わかってます。長い付き合いですから」

「そうだったわね。うふふ」

「ちがっ! ねえちゃん! どこをどう見たら今の流れでそうなるんだよ!? オレが喧嘩売られたの見てただろ?!」

「口答えしない!」

「そりゃねーぜ……」

 

 ふふっ。余計なことは口に出して言わないけど、やっぱグリーンって身内からの扱いが厳しいわよね。どんまい!

 

「それよりブルーちゃんこれ見た? 今朝の一面」

「えっ? ふむふむどれどれ……あっ! シショー!」

「レインか!? あいつまだ生きてたのか! いでっ!?」

 

 グリーンにゲンコツを落として新聞に目を通すとシショーが何か事件を解決したことが書かれていた。やっぱり悪事は見過ごせない性格なのよね、シショーって。あっという間に解決かぁ。やっぱこうでなくっちゃ! 

 

「チャンピオンがさっさとカントーの外へ出て行くなんて珍しいと思って持ってきたのよ」

「しかも速攻でバレて記事にされてるしな。これじゃ世間に対して大っぴらにチャンピオンの仕事をする気がねぇって宣言したようなもんだぜ。この有り様じゃ下手すると信用問題に関わるんじゃねーの? もしかしてブルーがだらしないのもレインのせいがはっ!?」

「シショーを悪く言うな! なんにも知らないクセに! この頭パッパラパー!」

 

 シショーは夢のためにカントーを出たのよ! ポケモンマスターになるっていうとんでもない目標に向かって自分の道を進んでいるんだから、それをグリーンなんかにとやかく言う資格なんてない!

 

 もしカントーでシショーのことを悪く言う奴がいたらわたしがみんな張っ倒してやる!

 

「え、エルボーは反則だろ……」

「完全に入ったみたいね。グリーン、反省しなさい」

「おぉう……」

 

 記事の日付的にもうシショーはホウエンに着いたのかな。だったらわたしもこうしちゃいられない!

 

「よーし! やる気出てきた! ありがとナナミさん! わたしちょっと出かけるわ!」

「いってらっしゃい」

「たくよぉ、なんでお前は頭より先に体が動くんだろうな。特にレインのことになると見境がねぇ」

 

 それはあんたも同じでしょーが! いっつも人のこと置きざりにして先へ先へいってたのは誰? でもね、今度はわたしが先に走ってやる! もう誰も追いつけないぐらい全力で走ってやるんだから! 

 

「グリーン、あんた足踏みしてたら置いていくわよ。あんたも来年には強くなってなさいよ」

「ブルー……へっ、お前なんかに先を越されてたまるかっての」

 

 グリーンの家を飛び出し、自宅に戻って旅の準備をしていると誰かがうちを訪ねてきた。誰だろう?

 

 ピン……ポーーン

 

 いつもとはインターホンの音の感じが違う気がする。珍しいお客さんかな?

 

「はーい、今でまーす」

 

 ガチャリ、と。

 

「こんにちはブルーちゃん。マスターズリーグ以来ね。元気にしてたかしら?」

「あーーっ!! おねーちゃんっ!?」

 

 カンナさんだ! どうしてわたしの家まで?!

 

「ずっとおねーちゃんって呼んでくれるの? 嬉しいわね。ここに来たのはあなたをトレーニングに誘いに来たの。来年に向けてわたしと一緒にどうかしら?」

 

 ついつい、おねーちゃんって言っちゃった。でも喜んでそうだから甘えさせてもらおうかな。しかも一緒にトレーニングのお誘い! なんかいきなりすごいことになってきた!

 

「いいの!? でもわたしなんかいてもジャマになっちゃうんじゃ……」

「私に勝っておいて何を言ってるのよ。あなたの都合が悪くなければ私は歓迎よ。それに言ったでしょ? あなたの夢、応援させてもらうってね」

「あっ……よーし! じゃあ一緒にしましょう! そうと決まったらさっそくバリバリ特訓ね! 燃えてきたわ!」

「……ブルーちゃん、張り切るのはいいけどやり過ぎはかえって毒なのよ?」

「え、そうなの?」

「もちろん人によりペースは違うけど……そういうことも含め、色んな人と一緒にトレーニングするのはいいことよ。たくさん違った考え方を学べるから」

「そっか。もしかして……」

 

 シショーがわたしを置いていった理由、なんとなくわかった気がする。こうやって自分自身で色んなことを学ぶ機会をくれたのね。カンナさんのいいところ、しっかり勉強させてもらおう。

 

「それじゃ、行きましょうか。準備はいい?」

「準備は丁度今できたところだけど、どこへ行くの?」

「とってもいいところよ。ラプラス使いのあなたなら気に入ると思うわ。目的地はいてだきの洞窟……わたしの故郷よ」

 




今回の繋ぎで本当にカントーラスト
次から新章です
ブルーの方はまだ中途半端な幕切れですが、続くかどうかは未定です

ちなみに今回を11話にして最終回にしなかったのは前回の区切りがいいからです
ちょうど対になってますよね
でもホウエン編に組み込むには舞台がカントーなので特別編ということでエクストラにしました

※ちょっとした諸注意
ここからはリーグ編と同様に終わりまで書き上げてない状態です
当時も似たことを書きましたが、話の流れとか内容を書き直す……かもしれないのでそこだけは本当に許してください

結果的にカントーでは上手く収まって大々的な書き直しはなしで大丈夫でしたが、終わりまで書き上げてない状態だとすごい不安なんですよね()

あと、個人的にカントー編は出来過ぎ感(自分の限界迎えてる感)があるのでホウエンでクオリティが下がらないかも不安は不安なんです
いや、もちろんちゃんと伸びしろというか、発展の余地は残してあるので大丈夫だとは思いますけどね!

ほなら先最後まで書けばええやん、という話ですが、全部書き終えてからホウエンスタートにすると誰の記憶にも残ってない状態になりそうなので1話ずつ進めます
とりあえず手を動かせばなんとかなるやろう的な思考も込みです()

一応書いておきますが、だから悪いところには目を瞑ってくれということではないです
むしろ直していきたいので、そういうのは遠慮なく教えてもらえると参考になるので助かります
直すべきところがあるとか展開が良くないときに、リセットして書き直すのを許してねということです

書き直しはなければないで結構なことなんですけどね
あとから書き直せるっていう保険がないと伸び伸び進めていけないんですよ
自分の気持ちの問題です

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