アプリの認知を高める施策/購入とリピートを増やす施策
豊浦氏はアプリの認知を高める施策について、3つの視点で捉えている。1つはインターナルマーケティングだ。最初はゼロからのスタートだが、ダウンロード数が増えていくに連れて社内から「Coke ONを使って何かやりたい」という声が挙がるようになる。それを機にアプリの規模はさらに拡大し、東京2020のプロモーションのように会社にとって重要な役割も担えるようになるのだ。
2つ目の視点は、エクスターナルアライアンス、すなわち外部との連携だ。アプリの規模が大きくなるに連れてさまざまなパートナーから声がかかるようになった。こうした取り組みも認知を広げるのに一役買った。
3つ目の視点はオーガニックPRだ。2020年はキャッシュレス決済を提供する各社と連携し、積極的にプロモーションを実施した結果、昨年同期比で3倍のメディア露出増を達成できたという。「地道なPR活動をしているうちに、大きく開花することもある」と豊浦氏は振り返る。
認知を広げたら、次は実際にアプリを使用してもらうための施策が重要になる。Coke ONはアプリの起動率を上げることを目的に、2018年「Coke ONウォーク」というウォーキング機能を追加した。ユーザーは、設定した週間目標歩数を達成するとスタンプを獲得できるという仕掛けは想定以上の大反響を呼び、現在の参加者は800万人にまで増加している。「これは嬉しい誤算でした」と豊浦氏は驚きを隠さない。
コロナ禍でCoke ONには何ができるのか?
そして現在、コロナ禍のなかで何ができるのかを豊浦氏は模索している。
「ウィズコロナ時代のマネジメントは社会貢献が肝要です。コカ・コーラのビジョンは『世界中をうるおし、さわやかさを提供すること。前向きな変化をもたらすこと』。このビジョンに沿った社会貢献ができないかと考えました」
そこで実施したのが「おうちでリフレッシュ プログラム」だ。外出自粛を求める緊急事態宣言の期間中、自宅でもできる簡単なエクササイズ動画の発信と共に、1000歩分動いたら抽選でドリンクチケットなどをプレゼントするという企画である。109万人のユーザーが参加し、SNSでも大きな反響を呼んだ。
そのほかにも東京2020に関連して、金銭的に困っているアスリートを応援する寄付キャンペーンを実施。こちらにも100万を超えるユーザーが参加したという。
ボトムファネルをどう支えるか?
ファネルの最後は、「購入」と「リピート」である。Coke ONユーザーには日本コカ・コーラの飲料のヘビーユーザーが多く、しっかりとナーチャリングできている。この成功を支えているのが、Coke ONの持つ特性だと豊浦氏は分析する。
まず挙げられるのは、ゲーミフィケーション要素だ。単にドリンクがお得に買えるというだけでなく、ゲームをすればポイントが貯まるといった「感情に訴えかける楽しさ」を提供していることがリピートにつながっている。
そしてフリクションレスであること。決済各社と連携しており、キャッシュレスでドリンクを購入できる。この快適さが購入のハードルを下げている。
もちろん、Coke ONから収集された購買データはマーケティングにも生かされている。例えば、AIを活用した未来予測型CRMモデルの作成や、天候データと組み合わせたマーケティング施策の立案などは、自社内で膨大なデータを保有しているからこそできる取り組みだ。
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豊浦氏は、Coke ON事業に6年携わったことでさまざまな学びを得たと語る。
「Coke ONはDXの良い例だと思います。しかし、私はDXをやっているという意識はありません。ビジネスをどう伸ばすのかを愚直に考えた結果なのです。DXを目的にしてしまうと迷走してしまいます」
どの分野においても言えることだが、デジタルの活用はあくまでも手段であり、目的ではない。マーケティングの成功に近道はなく、デジタル活用を含め、より良い施策を模索しながら挑戦を続けていくことが必要となる。Coke ONが大きな影響力を持つアプリとして成長を遂げたのは、そうした努力が地道に積み重ねられた成果なのだ。
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