2B 2021/04/21版 

2回 怖いもの2 補足資料

怪獣、聖獣大きいモノと小さいモノ 

巨人と人形のイメージの狭間


小さいモノ、かわいいもの、人の形、人形


  1-コティングリーの妖精写真(1907年)

  2-メアリー・ノートンのファンタジー小説『床下の小人たち』(1952

  3-こびとづかん



<人形との出会い>


 生まれ落ちたばかりの人間は、ユング流にいえばウロボロス的世界の中で生きている。


「分断された身体」(ラカン)が徐々に自己像へと集約してゆくのと平行して、幼児はカオスから少しずつ抜け出してゆくが、しばらくの間、ウロボロスは幼児のすぐそばにいて、出来たての幼児の自我を脅かす。


それはむろん目には見えない。だが、見えないものほど恐ろしいものはない。(スティーヴン・キングをはじめ、ホラー作家たちがしきりに奇怪な物を生み出そうとするのは、なんとか恐怖に形をあたえ、飼い慣らしたいがために他ならない)。


そこで幼児はたとえば「お化け」を発明する。怪獣や妖怪しかりである。お化けは恐怖の対象であると同時に友達になりうる(そうでなければ幼児のお化け好きは説明できないし、幼児は恐怖の対象をなんとか友達として抱き込もうとするのだ。

 次いで子供は「想像上の友達」を発明=発見する。それは(大人の)目に見えないこともある。 つまり文字通り幼児の想像世界の中にだけいて、子供と交歓することもある。


> コティングリーの妖精写真


 想像上の友達は子供の空想世界内だけに存在することもあるが、たいていは現実の対象に投影される。石とかビー玉に投影され、それが子どもの宝物になることもある。


 想像上の友達のチャンピオンはなんといっても人形である。

 だから幼児の想像世界では人形は「生きて」いる。


>小人幻想

 ところで、人形は小さい。それは子どもの視点が大人よりずっと低く、子どもの目はもっぱら小さい物に引きつけられるからだ。


 想像上の友達は自己の分身、もう一人の自分でもある。

女の子はよく自分がママになって、人形に自分の役をやらせ、ちょうどママに叱られたときと同じ言葉で、人形を叱る。

別役実がどこかで書いていた。


幼い娘を広い野原に連れ出し、「広いだろう」といって青空を示し、ふと下を見たら、娘はしゃがんで蟻を見つめていたという。だが、小さなものへの関心は幼児だけのものではない。


人形愛は小人幻想と表裏一体といえる。


 ここでいう小人幻想とは、自分が小人になったことを夢想することであり、自分がこびとの主人(保護者)になる夢である。


> 同化作用 画面の中のこびとAKB48


「親指小僧」「一寸法師」の類の昔話が広く世界中に伝わることは周知の通り。アンデルセンにも「親指姫」がある。

 小人に変身した瞬間、日常の世界は「不思議の国」に変わる。戸棚は高層ビルとなり、恐竜のような巨大怪獣に変身した猫やゴキブリから逃げまどわなくてはならず、さらには自分の涙で溺れるはめになる。

「ジャックと豆の木」みたいに巨人が登場する話も同じ幻想に由来すると考えていいだろう。


ゴジラやキングコングに追い回されるというのも同類だ。

 小さくなったのも自分なら、小さくなった自分をはるか上方から見下ろすのも自分だ。


その二つの自分はつねに入れ替わりうる。つまり、小人幻想は巨人幻想の裏返しである。


ガリバーは小人国にも巨人国にも行く。アリスもまた小人になったり巨人になったりする。

 

 怪獣映画を観るとき、子どもたちはビルの谷間を逃げまどいながら、同時に怪獣になってビルを片っ端から壊していくのだ。


 さらに彼らは、銀幕の中でビルを破壊する怪獣と、自分の手の中にあるゴム製の怪獣とが同じものであることをよく知っている。


<人の形> 怪獣は人型か動物の形をしている。

 当たり前の話だが、人形は人間の形をしている、つまり外見は人間だ。ならば、皮を一枚ひん剥いてみなければ、それが人間か人形かを識別することはできない。

 人間は、ピュグマリオンから始まってマダム・タッソーの蝋人形館にいたるまで、人間そっくりの人形をつくることに情熱を燃やしてきた。


現在のマネキン人形の製作者たちもそうした情熱につき動かされてきたことだろう。功なり名を遂げ、自分の胸像を飾りたくなる人は珍しくないが、自分そっくりの蝋人形をひそかに部屋に飾っている人もいる。
 

 だが、早晩、外見だけでは飽き足らなくなる。先に述べたように、人形を動かしたくなる。ピュグマリオンの場合には、神が石像を人間にしてくれた。


だが神が死んでしまった後は、人間がそれをやるほかない。


「子供と人形 ~人形愛」舞踊評論家、鈴木晶 外典・人形愛序説 (is 56号 1992)より



・参考になる項目


ピグマリオンの伝説 >バーナードショー「コッペリア」 >マイフェア・レディ

ホフマン物語、砂男

パペット (パペット:かわいいもの) ~ヤン・シュワンクマイエル

ワヤン・クリ

文楽~能・歌舞伎


~ かわいい  愛おしい


フィギア 人形  綾波レイ ハツネミク ETC

きゃりーぱみゅぱみゅ、ゆめむねむ、 Etc


美術における人形イコンのキャラクター


FLAVIA DA RIN

ハニワ

ヘンリー・ダーガー

中原純一

内藤ルネ

ならよしとも


プロポーション(3等親キャラ、目の大きさ:キメラ的だ)

 

ウクライナのバービー人形とアニメメイク

AKB-48(スクリーンの中に人形がてんこ盛りのショーケース)


チャッピー(グルービジョン)やアバター化して描かれるパーソナリティー

 

サンリオ ~キティちゃん


増田セバスチャン


アントロポモルフィズム(擬人主義)-Anthropomorphism


見得を切る 静止する美学 ~人形になる行為


アニミズム


細密描写としての伊藤若冲


美人画の系譜 ~明治から平成へ


ホモンクルス 脳内のこびと ~身体の感覚をマッピングした身体の図


サンダーバード


入れ子構造のマトリョーシカ ラマシーン 


キールムティカ(聖獣表象)と円谷デザインにおけるアニミズム、ドラゴン、龍 ゴジラ、 鬼瓦


エイリアンと蛇(ナーガ)、蛇と生命「龍」を巡るイマジネーション、

〜蛇と生命と産みの女紳 >後日講義で説明