Another Trainer   作:りんごうさぎ

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7.毒を盛ったら自滅 空へ逃げれば無抵抗 

 時は流れ2回戦。勝てばどんどん先へ進んでいく。ブルー達はみんな勝ちあがって次へコマを進めた。俺だけ置いて行かれるわけにはいかない。

 

 リングへ上がると見慣れた顔が立っていた。ニビジム、ジムリーダータケシ。依頼関連では何度も共闘して窮地を救われたこともあったが今度は敵同士。戦うとなると厄介なことこの上ない。

 

「とうとうここまで来たな、レイン君」

「正直あんたとは当たりたくなかったよ。いわタイプはやりづらい」

「おや、戦う前から弱気とは君らしくもないな。ここにきて怖気づいたか?」

「そんなんじゃない。苦手ではあるが、それでも負けるつもりはない。攻略法が全くないわけでもないからな」

「お手並み拝見だな」

 

 互いにボールを構える。審判のフラッグが上がった!

 

「……はじめ!」

 

 互いに最初の1体が出てくる。俺はユーレイ。相手のポケモンは……ハガネールか。いきなりいわタイプがないけど先鋒にはうってつけのポケモンだな。

 

 ユーレイ Lv52 @きあいのタスキ

 

 技 1シャドーボール

   210まんボルト

   3きあいだま

   4さいみんじゅつ

   5まもる

   6みがわり

   7あやしいひかり

   8みちづれ

   9ゆめくい

  10ちょうはつ

  11のろい

  12いたみわけ

 

『最初のポケモンはゲンガーとハガネール! どちらも強力なポケモンだ! まず先手を取るのはどちらだ!?』

 

 んなもん素早さで圧倒的に勝るユーレイに決まってるだろ?

 

「ステルスロック!」

「10!」

 

 ほぼ同時の指示。しかしユーレイの“ちょうはつ”が先に決まった。タケシ相手には“ステルスロック”を使うことより使わせないことが重要。いわ系には効果が薄い。

 

「かみくだく!」

「いらっしゃいませ。4」

 

 接近する敵には逆らわずに“さいみんじゅつ”を狙うのが定石。不一致抜群程度なら素で耐えられるので万一攻撃を受けても保険が利く。最悪タスキもある。

 

「潜れ!」

「6」

 

 今の“さいみんじゅつ”によく反応したな。接近しながらの体勢から避け切られるとは思わなかった。どうもこっちの動きが読まれていた感じがする。俺のことをよく研究しているのかもしれない。

 

 とりあえずサーチを使って位置を確認。ユーレイは“みがわり”を使って万全の状態だ。さて、いつ出てくる?

 

「出てこい! ヘビーボンバー!」

「上へ逃げろ」

 

 なるほどね。たしか“ヘビーボンバー”は鋼タイプの技。こいつをメンツに入れたのは“ステルスロック”のためだけじゃない。俺が選んだタイプのフィールドを利用することまで織り込み済みか。

 

 その上この技は体重差があるほど威力が増す。ゲンガーは進化前に比べれば格段に重いとはいえハガネールとは比ぶべくもない。“ヘビーボンバー”は凄まじい威力と化す。

 

 当然まともに受けるわけにはいかない。いったんリーチから外れるために上空へ逃がした。こっちは遠距離攻撃ができるので不利にはならないはずだ。

 

「ストーンエッジ」

「3、撃ち落とせ!」

 

 一直線に進んできた石の礫は全て撃ち落とし、ハガネールまでこっちの攻撃が届いた。大したダメージではないが威力で勝っていた事実は大きい。これを続ければ相手はジリ貧になる。

 

 やはり“きあいだま”が有効のようだ。これで相手は安易に“ストーンエッジ”は使えなくなったはず。どう反撃する?

 

「もう一度だ! やるぞハガネール」

「……3!」

 

 何の策もなく同じことをするとは思えないがこっちは“みがわり”がある。それで保険は十分。ひとまずここも“きあいだま”だな。

 

「ゲェェ!」

「やはりひと癖あるな」

『ハガネールのストーンエッジは見事なコントロールで軌道を曲げてゲンガーに直撃した! しかし“きあいだま”もしっかり当たっており双方痛み分けとなったぞ』

 

 まぁそんなところだとは思ったが攻撃を曲げるのはもはや当たり前のようだな。どう動くかの読みも必要になるか。お互いにあと1発で戦闘不能ってところ……攻撃を受ける余裕はないな。

 

「もう一度だ!」

「動かないで6」

 

 これでどうだ? 曲がれば逸れていくはず。

 

「ゲェェ!」

 

 当てられた。“みがわり”なのでやられはしないが……。

 

「自動追尾と見るべきか。命中80ってのは何だったんだろうな」

 

 さて、どうする? ユーレイは遥か上空にいる。“さいみんじゅつ”は届かない可能性が高い。他の補助技も同様。……“きあいだま”で相打ち狙いしかないか。

 

「3」

「ストーンエッジ」

 

 タケシもハナっから相打ち覚悟か。ハガネールでユーレイを倒すのが狙いってわけね。

 

「ゲンガー、ハガネール、戦闘不能!」

『ダブルノックアウト! 両者戦闘不能だ!』

 

 やられたな。最初から上空へ追い立てるのが作戦だったのだろう。思えば最初の“かみくだく”から全て布石だったのか。

 

 最初安直に接近戦を仕掛けたようにみせ、止むを得ず地中へ逃げたように思わせる。その後地中からの攻撃で自然に上空へ逃げるように仕向けた。これでこちらのすり抜けが封じられ空中丸裸。そうなれば抜群のコントロールの“ストーンエッジ”の的になる。あの攻撃を躱しながら下へ降りるのは厳しい。

 

 厄介なのはなまじ距離があるせいで中距離技の“さいみんじゅつ”や“あやしいひかり”が使えないこと。“きあいだま”で倒せると判断した俺のミスか。いや、相手の“ストーンエッジ”が予想を上回っていた。

 

「両者ボールを構えて」

 

 同時ノックアウトだとまた一斉に投げるのか。さて、次はどうするか……。やはりまだ“ちょうはつ”が必要だな。いわタイプ使いなら“ステルスロック”要員は複数いるだろう。考えをまとめてボールを投げた。

 

 アカサビ Lv55 @メタルコート

  

 技 1バレットパンチ

   2でんこうせっか

   3むしくい

   4つるぎのまい

   5まもる

   6みがわり

   7とんぼがえり

   8つばめがえし

   9バトンタッチ

  10かわらわり

  11ちょうはつ

 

『出ました! ゴローニャとハッサムです! さぁここから仕切り直しだ!』

「そいつはたしか……ロックブラスト!」

「大きく右へ」

 

 とりあえず何発出てくるか見ておくか。1,2……。

 

『今日のゴローニャは絶好調だ! 5連続のロックブラスト! ハッサム何とか避けきった!』

 

 最悪だな。強引に受けて能力アップはきついか。特性“がんじょう”を考慮すれば3発攻撃を受けることになる。幸い“ロックブラスト”が曲がってくることはなさそうだ。連続技であることが関係するのかもな。真っ直ぐなら回避しやすい。

 

「まるくなる!」

「ん? 1!」

 

 “まるくなる”? トチ狂ったか? 先制技の“バレットパンチ”が先に決まりダメージは半分ちょい。さすがに防御は素でも堅いな。

 

「ころがる!」

「そういうこと……。アカサビ、大きく左へ」

 

 躱したがギリギリだ。やっぱり曲がってくるな。余裕を持たせて良かった。

 

 ゴローニャは高速で動きながら正確にアカサビのいる場所に狙いをつけている。よくあの速さで敵の位置を把握できるな。

 

 “まるくなる”後の“ころがる”は全て威力2倍。防御を上げながら当たるたびに加速する“ころがる”を最初から威力2倍で打ちだす。下手に攻撃しても弾かれそうだ。ある意味BS振りを活かした戦術か。

 

「逃がすなゴローニャ!」

「少し左、大きく後ろ、今度は右へ飛び込んで!」

 

 全方位から来る攻撃をなんとか躱している状況。1発でも受ければそこから避けきれなくなる。ミスは許されない。

 

「サム!?」

『あっと! ハッサム後ろはリングの壁だ! これでは動けない!』

「よし、追い詰めた! やれゴローニャ!」

 

 罠にかかったのはそっちだ!

 

「飛べ!」

「何!?」

『ハッサム飛んだ!? ゴローニャは勢い余って壁と激突した!』

「重力を乗せて全力のバレットパンチだ!」

 

 ドゴォォォン!!

 

 アカサビはジャンプで緊急回避。さらにめり込んで動けなかったゴローニャが吹き飛ぶ程の一撃を放った。そのまま相手は気絶。乱数が1.0を超えたな。

 

「ゴローニャ戦闘不能!」

「ならこいつだ!」

「キーキー」

『これは珍しいポケモンだ! 化石ポケモンのオムスター! いわタイプながら、はがねタイプを弱点にもちません!』

 

 なるほどね。相性がマシなオムスターをさっき出さずに今ってことは先に出したゴローニャは“ステルスロック”要員か。とするとアカサビの“ちょうはつ”を警戒されていたことになる。よく研究してやがる。

 

 だが逆に言えばこいつは“ステルスロック”を使ってこない可能性が高いわけだ。“バレットパンチ”が抜群で通らない奴は相手にしたくないしさっさと交代するか。

 

「オムスターッ!」

「7!」

 

 タケシが掛け声をするとオムスターは天に祈りを捧げた。なんだこの動き? 辺りが暗くなり気づけば上空に雨雲が発生している。もしかしなくても“あまごい”か。文字通りの雨乞いだな。すぐに“あめ”が降り出した。

 

 やってくれる。今の掛け声はおそらく“ちょうはつ”対策。あらかじめ示し合わせていたな。エフェクトで判断すると“ちょうはつ”はどうしても間に合わない。技がわからないのは敵にして改めて厄介だと感じた。

 

 特性は“すいすい”で間違いないだろう。この特性は天候が“あめ”の時、素早さを2倍にする。たしかに強力な効果だが、“あめ”はいわタイプにはマッチしないだろ?

 

『ハッサム攻撃後に素早く控えに戻った! すぐさまサンダースが登場。みずタイプにはうってつけのでんきタイプだ!』

 

 アカサビは“とんぼがえり”で戻ってくる。普通に交換しなかったのは正解だったな。ここからはイナズマの独壇場だ。

 

 イナズマ Lv53 @とけないこおり

 

 技 110まんボルト

   2めざめるパワー

   3あくび

   4バトンタッチ

   5まもる 

   6みがわり

   7こうそくいどう

   8チャージビーム

   9かみなり

  10あまごい 

 

「いくら速かろうが今のオムスターには勝てない! つのドリル!」

「おっそろしいことするなぁ。9」

「躱せ!」

 

 それは無理な相談だ。イナズマの選んだ技は“かみなり”。天候が“あめ”のとき必ず命中する。オムスターが一撃必殺を覚えるのは初耳だったが結局脅威にはならない。

 

「オムスター戦闘不能!」

『まるで敵に吸い込まれるような攻撃! オムスターにこうかはばつぐんだ!』

「みずタイプは出せない……サイドン!」

「ギャオギャーオ!」

 

 普通のサイドンか。そういやドサイドンは通信交換だから野生を捕まえるしかないんだったな。こりゃラッキー。

 

「じしん!」

「ヒリュー!」

 

 プテラ Lv.53 @かたいいし

 

 個 029-031-020-022-024-031

 実 189-133-091-072-097-211

 努 196-004-056-000-000-252

 

 技 1ストーンエッジ

   2つばめがえし

   3じしん

   4おいうち

   5まもる

   6みがわり

   7ほえる

   8ちょうはつ

   9どくどく

  10こうそくいどう

  11ステルスロック

 

 じめんタイプの技は扱いが難しい。技名を言う関係上効果がないタイプを持つ攻撃は無効にされやすい。特にじめんタイプは“ふゆう”や“ふうせん”などでも無効にされるのが辛いところ。まぁわかっていても使わないわけにもいかないのだろうが……。

 

「ロックブラスト!」

「少し右へ、そのまま9」

 

 ヒリューをただの“ステルスロック”要員と思うことなかれ。恐るべき戦術を見せてやる。

 

 ヒリューは元々攻撃力が高く本人も攻めっ気が強い。だが俺はここに来て努力値の変更と共に育成方針を大きく変更した。それに伴い攻撃技も4つに絞った。いわひこうじめんの組み合わせだけでかなりの広範囲を等倍以上でカバーできている。抜群範囲を気にするなら三色キバなどもほしいが最低限の火力しか期待していない。あくまでメインは補助技だ。

 

「どく状態か。がんせきふうじで捕まえろ!」

「上空へ、10」

『あぁー!! プテラは遥か上空へ! これではお互い攻撃が届かないぞ!?』

「くっ……ハナから戦う気はないというわけか。ならこっちもプテラだ!」

 

 勝ち目なしと見て交代したか。お利口だがそれはもちろん想定済み。

 

「そうこないとな。少し降りてこい! 上から1」

 

 速さにものを言わせて毒を盛り、その後はひたすら回避。相手に対空手段がなければ上空で“こうそくいどう”を使い放題。あっても“ちょうはつ”で攻撃を強制し、素早さの能力上昇には“こうそくいどう”で対抗、必中技は威力が低いのでヒリューの攻撃力の高さを活かしてこっちも攻撃を当てて相殺。あるいは“みがわり”でやり過ごす。

 

 隙のない技構成。困るのは飛べるポケモンの連続技だがそんなやついやしない。少なくとも実践レベルには到達しない。これはこれまで温存していたが、いわタイプ相手じゃそうもいってられないからな。

 

『プテラ同士の壮絶な空中戦が始まった! しかしあらかじめ上空に陣取っていたレイン選手が圧倒的に有利だ! その上飛行速度にも大きな差がありそうだ! これは一方的な展開になりつつあるぞっ』

「こうも速いと簡単に上は取れないか」

「あーあーずいぶん高いところまでいっちゃって……これじゃもう声は届かないな。たまには好きに暴れさせてやるか」

 

 これまで先発で補助の役回りばかりだったからな。暴れたりなかったんだろう。少しは見逃してやるか。負けないだろうし。

 

『上空からプテラが落ちてきたぞ! どっちだ!?』

「……ぷ、プテラ戦闘不能!」

 

 どっちの、とは言わないんだな。審判に分かれという方が酷だろうがよくみれば大きさの違いに気づくはずなんだが。タケシはやはりわかっているようだし。

 

「負けたか」

「ヒリュー、戻ってこーい!」

 

 さて、あとは手負いのサイドンと未知のポケモン一体。オムスターと“あまごい”を踏まえると“すいすい”持ちのカブトプスがいると読んでいたんだがどうかな?

 

「いけっ、カブトプス!」

「9」

 

 やっぱりだな。天候は空中戦の間にとっくに元に戻っている。なすすべもなくカブトプスはどく状態となった。当然ヒリューは空へ向かう。

 

「……審判、降参するよ。これ以上はポケモンを苦しめるだけだ」

「わかりました。タケシ選手が負けを認めたので、勝者レイン選手!」

『ここで決着か!? レイン選手、またしても途中降参により勝負を決めた! 相手に絶望を与える恐ろしいトレーナーだ!』

 

 ヒリューが本気を出せばこんなものだろうな。対策がないと詰む戦術は本当に怖い。

 

 同じことはイナズマでもできるが“あくび”と“どくどく”がミスマッチなことに加え飛べないのを踏まえてヒリューの役割になった。この戦術も以後マークされるだろう。今後飛行能力のあるポケモンが相手に増えるだろうな。

 




ヒリューの努力値が半端な振り方でしたね
理由を簡潔に言うと能力が高くなるように効率よく振り分けたからです
「HP」と「防御と特防の和」が近いほど指数が高くなります
理屈が知りたい場合は一応プロローグの準備に記してあります

理想配分とかは最善を尽くすべき内容なのでどうしても避けられません
でもバトルの本筋には全然絡まないので気にならなければスルーで全く問題ないです
ただ単に作者が気になってしまう人間というだけです

大空フライアウェイはいつぞやの毒盛って“でんこうせっか”連打云々の応用です
悪用って怖いですね
アイデア自体は子供みたいなしょーもない感じですが、案外隙のない初見殺しです
特定の技かポケモンがいないと即詰みですよね
先発でも“みがわり”4つで4体倒せますし、かくとう統一パなどでひこうタイプを炙り出した後最後にプテラを召喚して詰みに持ち込むのも恐ろしいですよね

やっぱり考えるほど毒でんこうせっかをしない理由がわからないですね
サートシくん、ピカチュウに“どくどく”を覚えさせよう
攻撃せずに勝てるぞ(マジキチスマイル)

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