プラスチック製おもちゃの加飾いろいろ:おもちゃの設計とプラスチック(5)
(執筆:おりも みか/製造業ライター)
前回の記事では、おもちゃの外観について説明しました。おもちゃにとって美しさは重要です。そのため、プラスチックにさまざまな加飾を行います。
おもちゃにはどんな加飾がある?
おもちゃの加飾にはさまざまな種類があります。どんな加飾を施すのかは、対象年齢やおもちゃの特性、キャラクターの有無、そしてコストなどを考慮した上で決められます。
塗装
最も一般的な加飾は塗装です。塗装の種類としては、一面を全て同じ色に塗装する丸吹き、塗りたい部分だけに穴を開けたマスキング治具を用いたマスク塗装などがあります。
塗装は1工程で1色しかできないため、多色を用いたいときはその分工程数が増えます。また治具の位置決めや、色のはみ出しなどを防ぐための見切り線と呼ばれる浅い溝を成型品につけるなどの工夫が必要な場合もあります。設計段階で塗装工程について考慮しなければ、余計なコストがかかってしまいます。
国内の塗装コストはとても上がっており、塗装が必要なおもちゃについては海外工場での生産がメインとなっています。しかし塗装工場は環境負荷が高いため、海外でも工場の新設が難しくなっている地域もあります。
おもちゃはロット数が少ないこともあり、職人さんが手吹きによって吹き付け塗装していることが多いです。そのため作業員の健康負荷も大きく、職人さんが集まりにくくなっています。
塗装は一般的な加飾ですが、技術力とコストが見合った工場を探すのはとても難しく、今後見込まれるコスト増にどのように対応するかという懸念があります。
印刷
印刷にもシルクスクリーンや水転写、ホットスタンプなどいろいろな種類があります。印刷の利点は版さえ作ってしまえば、複雑な図案も少ない工程でできることです。
おもちゃではタンポ(パッド)印刷も一般的です。これは印刷したい図案で作成した凹面プレートにインクを置き、シリコン製のパッドにインクを付着させ、パーツに押し付けることで印刷する方法です。シリコンパッドは柔らかいため多少の凹凸や曲面にも印刷することができます。
また近年では、プラスチック製おもちゃの印刷にインクジェットプリンタが使用されるようになっています。インクジェット印刷の場合はデジタルデータなので少ないロットでも対応しやすいというメリットがあります。また、パーツを治具に嵌めてしまえば、後は機械任せなので、塗装ほど作業員の熟練を要しません。
インクジェット印刷はこれからの加飾として期待される一方、問題点もあります。インクジェット印刷は塗装に比べて粒子が荒いため細かいデザインの再現が難しく、またインクがマットなため、塗装のようなラメやメタリックなどが再現できないなど、仕上がりの美しさとしては現状では塗装の方が有利です。
ですが技術革新が顕著な分野なので、今後の進化が期待されます。
メッキ
メッキを施す理由としては、プラスチック部品を「金属のように見せる」「キラキラに見せる」ためです。メッキははがれやすいため、小さな子ども向けのおもちゃでは用いられません。しかしフィギュアや変身アイテムなど年齢層が高めのおもちゃではメッキを用いることがあります。メッキにも様々な種類がありますが、おもちゃによく用いられるのは真空蒸着です。蒸着を施した上にクリアカラーを塗装することでさまざまな色を再現します。
おもちゃではメッキの塗膜強度(はがれやすさ)にも一定の基準があるため、塗装と同様コストと技術力の見合った工場を探すことは難しい問題です。
シール
シールのメリットとしては複雑なデザインや小さなロゴなど、上記の加飾では難しいものに比較的安価で対応できることです。また、シールを貼るという行為そのものを「遊び」の要素とすることもできます。しかし、シールを貼る工程は意外と難しく、さらに見た目はどうしても「シールっぽさ」があるため、どこにでも使用できるわけではありません。
加飾をどうするかは、おもちゃの完成度を左右する
おもちゃの加飾にもいろいろ種類がありますが、どういった加飾を選ぶかは、おもちゃの完成度、コスト、遊びを決める上でとても重要な要素です。新しい技術もどんどん進化していますし、逆に今はあまり使われていない技術が適している場合もある、とても奥の深い世界なのです。(次回へ続く)
おりも みか 新卒入社した玩具製造メーカーにて品質・生産技術担当として日本国内・中国工場での新規ライン立ち上げを経験。玩具、アミューズメント機器、医療機器、健康雑貨など主にプラスチック製品の開発・製造に携わる。結婚を機に退職し、現在は育児の傍ら製造業ライターとして活動中。
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