おもちゃ開発のジレンマ!強度とデザイン:おもちゃの設計とプラスチック(3)
(執筆:おりも みか/製造業ライター)
安全なだけではだめ
前回の記事では、おもちゃの安全基準であるST基準について紹介しました。
おもちゃは「安全であること」が絶対条件ですが、安全なだけでは「売れる」商品にはなりません。いくら大人が「これは安全だ」「これは教育にいい」と考えておもちゃを買い与えても、子どもが自ら選び取り楽しく遊べなければ、それは良い商品とは言えません。
良い商品とはどんなおもちゃか
テレビのヒーローやヒロインが持つ武器やアイテムのおもちゃが発売され、実際に手に取ってみたらアニメとは全く異なる形状であったらどうでしょう。
・外観に影響を及ぼすほどに設けられた補強リブ
・角部に大きくRを付けられたために丸くもっさりとしたシルエットに
・肉厚すぎて、子どもが持つには重すぎる
・ゲートを目につきやすい場所に設けたため、消費者には傷に見えてしまう
おもちゃの強度を高めるためとは言え、このような「ダサい」商品が子どもに選ばれるでしょうか。子どもの目はシビアです。「かっこよく」、「かわいい」商品でなければ売れません。たとえそれが「安全のため」であっても、子どもにはそんなことは関係ないのです。
開発現場のジレンマ
おもちゃの開発時には、しばしばこのような議論が起ります。つまり「安全のためにデザインを犠牲にするのか」ということです。
アニメの世界では「オリハルコン」や「ガンダリウム合金」といった材料で作られていますが、それらはもちろん実在しないので、おもちゃメーカーはプラスチックを主とした材料で作らねばなりません。
おもちゃの開発段階の強度試験で破損個所が出てしまった際、「設計の見直しを行うのか」「材料を変更すれば解決できるのか」ということは必ず検討されます。ときには材料のグレードやメーカーを変えて何種類もサンプルを作り、検証することもあります。
設計変更をして金型修正を行うとお金も時間もかかってしまいますし、上記の通り過度の修正はデザインに影響を及ぼしてしまう可能性があるので、例えば材料を変更するだけで解決できるのであれば、その方が開発者にはありがたいのです。
キャラクターのついていないおもちゃでも同様で、強度を優先させた設計は野暮ったいシルエットになりがちです。作っている側が、「これはちょっとダサいな」と思った商品は、やはり売り上げがイマイチだったりするのです。
求められる材料とは
現在は少子化で子どもは少なくなっており、一方でコンテンツはどんどん増え続けています。
今や「クラスのみんなが持っているおもちゃ」は存在せず、子どもたちはたくさんの商品の中からいくらでも好きなものを選ぶことができます。子どもたちにとってより魅力的なおもちゃを開発しなければ、メーカーは生き抜くことはできません。
設計者が頭を悩ます強度問題をクリアできる材料の提案がタイムリーに行われれば、それは開発者にとって大きな助けになることでしょう。
では次回は、強度以外にどのような課題があるのかについてご説明します。
(次回へ続く)
おりも みか 新卒入社した玩具製造メーカーにて品質・生産技術担当として日本国内・中国工場での新規ライン立ち上げを経験。玩具、アミューズメント機器、医療機器、健康雑貨など主にプラスチック製品の開発・製造に携わる。結婚を機に退職し、現在は育児の傍ら製造業ライターとして活動中。
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