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障がい者の移動の権利を守るために−伊是名夏子常任幹事のJR乗車拒否問題についての見解−

2021年4月26日 
社会民主党全国連合幹事長 服部良一

はじめに

 4月1日、先天性骨形成不全症の障がいを持ち電動車いすで生活する伊是名夏子(社民党常任幹事)さんがJR東日本小田原駅で、熱海駅を経由して伊東線来宮駅に向かいたい旨を駅員につげたところ、駅は無人駅で階段しかないため案内ができないと事実上の乗車拒否にあいました。JRとの話し合いの結果、駅員が来宮駅まで来て降車することが出来ましたが、そのいきさつを個人ブログへ投稿したところ、この投稿に対する様々なご意見を伊是名さん本人だけでなく、社民党へも頂きました。この間マスコミでも大きく報道され、励ましの電話やメールがある一方で、事実関係への誤解にもとづく抗議や、さらには障がい者の人権を無視するような許しがたい内容のものも散見され、社民党として事の重大さに鑑み事実関係の説明と見解を明らかに致します。

⒈事実経過について

 4月1日、予定乗車時刻の30分前にJR小田原駅に到着した伊是名夏子さんと子ども(小学生と幼稚園児)、ヘルパー、友人の合計5名が、駅員に熱海駅を経由して来宮駅に行きたい旨を告げたところ、15分後に再度来るように言われました。言われた通りに再度行くと、「来宮駅は階段しかないのでご案内できません。熱海駅まででいいですか」と告げられました。
 熱海駅から来宮駅までは1.6キロあり、かつ車いすが乗るタクシーの予約には1か月かかることもしばしばあります。アクセスができない事実上の乗車拒否と受け止めるしかありませんでした。レストランやホテルの予約も終え焦る気持ちを抑えながら、駅員とのやり取りは1時間続き、不安を抱えながら、仕方なく熱海駅に向かいます。熱海駅では対応が一転、駅長以下4人の駅員が待ち受け、同行し来宮駅で車いすを階段で降ろして頂きました。翌日も帰路の際も、事前連絡をすることで駅員のサポートが受けられましたが「今回だけ特別」と言われ、さらに交渉を重ね、今後のための事前連絡の電話番号を案内していただきました。

⒉「障害者基本法」が規定する「合理的配慮」が十分だったか

 障害者基本法は2011年改正で新設された第4条1項で障がい者に対する差別を禁止し、2項で「社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによって前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がなされなければならない。」と定めています。
これを根拠に事業者に対しては障害者差別解消法(2016年施行。以下、解消法)第8条において、「合理的配慮」の実施が努力義務化されています。事業者がこの努力義務を果たすには国及び地方公共団体によるバリアフリー化を含むインクルーシブの推進が不可欠です。解消法3条は国及び地方公共団体に対して「障害を理由とする差別の解消の推進に関して必要な施策を策定し、及びこれを実施しなければならない」ことを定めています。また健常者には求めない場所や時間の制限などを障がい者に要求することを禁じています。鉄道の利用に関わる「合理的配慮」については、認定NPO法人DPI(DISABLE PEOPLE’S INTERNATIONAL)日本会議とJR6社並びに大手民間鉄道会社16社との交渉の中で「事前連絡の期限は設けていない」こと、「駅が無人であることのみをもって駅の利用を制約する取扱は行っていない」ことが各事業者の方針であることが確認されています。しかし当初事業者の方針とは異なる対応がなされ、個別駅員の対応の違いもありました。これは「合理的配慮」の努力義務履行を現場の駅員任せにし、履行に必要な施設整備や人員配置といった事業者としての取り組みが不十分であるが故に発生した事態です。 

⒊公共交通の役割とは何かー移動の権利を確立しよう!

 日本国有鉄道(国鉄)からJRへと分割民営化されて以後、経営合理化のための人員削減は加速し、無人駅が増え2019年度では48%、20年3月現在で4564駅となっています。地方によっては公共交通の役割が大きく後退しています。「合理的配慮」の努力義務履行が現場の駅員任せになっているのもその一例です。
 今回問題になった来宮駅も2015年3月8日にJR伊東線の熱海―伊東駅間の4駅が無人化されたうちのひとつでした。当時住民側からは「エレベーター設置」の要望も出されましたが、いまだ実現していません。合理化を優先する一方で、乗客の利便性は後回しにされている現状があります。
 加えて、この問題は障がい者だけの問題ではありません。公共交通機関はすべての人にとって不可欠なインフラであり、とりわけ高齢者社会を迎え、かつ広範な過疎地域が広がっている今日、役所や病院・介護施設などに通う公共交通の役割はますます重要になっています。2011年成立した交通基本法では「移動の権利」が国会で議論になりましたが、同法には「高齢者、障害者等の円滑な移動のための施策」として「構造及び設備の改善の推進その他必要な施策」を義務つけ、国や地方公共団体、交通事業者、住民の連携と協働をうたっています。バリアフリー化については関係者が一体となって実現に向け取り組んで行かなければならない喫緊の課題なのです。

⒋個人への人格攻撃は許しません!

 最後に、この度の伊是名さんの投稿に対する多くのご意見のなかに本人への人格攻撃並びに障がい者への差別、デマが紛れ込んでおります。社民党はこのような誹謗中傷・差別については断じて許すわけにはいきません。
今回寄せられた意見の中で、「駅員の過重労働になっていてかわいいそう」など駅員に同情するものも多く見られました。労働者の労働環境が厳しい状況なのは当然理解しますし、本来障がい者と駅員である労働者は対立する性格のものではありません。労働者と障がい者それぞれの立場から事業者に対して施設・設備のバリアフリー化や「合理的配慮」の水準向上のための人員増を求めて共闘することこそが重要だと考えます。これは、労働者にとっては労働環境の改善、障がい者にとってはバリアフリーの前進として結実させていくべき課題です。
 伊是名さんは現場で対応してくれた駅員には感謝しています。しかしJR東日本横浜支社は「乗車拒否とは認識していない」とし「すぐに人員を確保できなかった」、「事前に連絡が欲しい」旨を弁明しています。伊是名さん本人は事前にJR東日本のウエブサイトで駅情報を調べたが、無人駅であることや、事前連絡が必要だということがわからなかったといいます。また小田原駅の駅員の対応が「ご案内できない」の一点張りで、代替手段を考える合理的配慮の姿勢をJRに感じられなかったことも、改善を求めたい点です。
今回の件に関して出回っている情報の中には、伊是名さんが「計画的にJRを非難するためにやった」など事実とは異なるものがあります。JRの労働環境や法律にのっとった対応ができなかったことに問題があるにも関わらず、伊是名さんの行動や人格を攻撃する誹謗中傷がおこり、それは一カ月近くたった今でもやみません。これはJRが対応の過ちを認めず、伊是名さんに謝罪をしていないため、伊是名さんがあたかも「加害者」のように扱われてしまったことも一因だといえるでしょう。JRには今回の対応への見解と伊是名さんへの正式な謝罪を求め、今後の改善につなげていただきたいと考えます。
障がい者を含むすべての人の移動の自由は権利です。公共交通機関を利用する際に、丁寧に事前連絡をしたり、乗車許可を得ることも、移動の直接的な提供に関わった人々に感謝を強要されることもありません。車イスユーザーをはじめとする障がい者が移動する場合にのみ、これらが必要となることが当たり前であるならば、それは障がい者差別に他なりません。

⒌将来への対応が必要です

 JR側は「事前の連絡」を希望しつつ、「条件ではなく、協力を求め」たいとし、今後事前連絡がなくても介助ができる態勢の検討も進めるとしています。国もガイドライン作成を検討しているといいます。繰り返し今回の様なことが起きないように国・自治体・交通事業者と障がい者団体や市民も一緒になって改善に努めていこうではありませんか。
社民党は障がい者差別を含むあらゆる差別に明確に反対し、障がい者を含む誰もが等しく自由に利用できる公共交通機関、そしてバリアフリーが徹底されたインクルーシブな社会を皆様とともに創り上げていく決意です。
 
                                以上

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【談話】衆参3補欠選挙・再選挙の結果について

2021年4月25日
社会民主党全国連合
選挙対策委員長 服部 良一

⒈本日、衆参3選挙の投開票が行われた。社民党は、参議院長野補欠選挙で立民公認・新人の羽田次郎氏、参議院広島再選挙で諸派・新人の宮口はるこ氏、衆議院北海道2区補欠選挙で立民公認・元職の松木けんこう氏を野党と市民の統一候補として推薦し闘った。
菅政権下で初の国政選挙、衆院選の前哨戦として注目され、政治とカネ、コロナ感染対策と仕事や暮らし、総務省の接待問題など菅政権への評価を巡って論戦が行われた。結果は、立民、国民、共産、社民と市民連合が結束した野党統一候補が、北海道をはじめ、自民公認と激突した長野と河井元法相が中心となった大規模買収事件が発生した広島で、政治とカネ、一連のコロナ対策など菅・自公政権に対する不信や批判、新しい政治を求める有権者の支持を集め全勝した。候補者を支持して頂いた有権者の皆さん、コロナ禍で選挙運動をになった政党、市民団体の方々のご奮闘に心から敬意を表する。

⒉参院広島再選挙は、19年に自民公認で当選後、公選法の買収で有罪が確定した河井案里氏の当選無効に伴うもので、夫の河井元法相の公判が続く中で6名が立候補した。「結集ひろしま」から出馬した宮口氏は、「変える勇気。その先へ」を掲げ、障がいをもつ子供の母親として「多様性のある、コロナを抑えて命も経済も救う社会、市民感覚に一番近い政治」をアピールした。「金権政治にノー、正直な政治、女性の社会進出推進、核兵器のない世界」などを訴えて野党をふくめ幅広く支持を集め、買収事件の逆風と政権運営への危機感の中で企業・団体回りなど厚い保守地盤での組織戦や公明の地方議員を投入するなどで形勢逆転をねらった自民党・西田英範候補を打ちやぶった。参院長野補選は、19年に野党統一候補として当選した羽田雄一郎氏が昨年末にコロナに感染、急逝したことに伴うもので、実弟の羽田候補と自民公認で公明推薦の元衆院議員の小松裕候補とのほぼ一騎打ちとなった。羽田氏は、「明日への責任 新しい時代の挑戦」を掲げ、兄雄一郎の意思を継ぐ、「子どもたちの未来、新型コロナの早期発見と感染防止、生活者や事業者への救済」などを訴えて野党支持層を中心に無党派層からも支持を集め勝利した。衆院北海道2区補選は、農相在任中に鶏卵業者から500万円を受領し、収賄罪で在宅起訴された吉川貴盛議員の辞職によるもので、自民が敗北を恐れて擁立を見送り、6人が立候補した。元職の松木候補は、衆院4期の高い知名度をいかして終始リードし、新人で維新公認の山崎泉候補や無所属候補らに差をつけ勝利した。

⒊社民党は、現地の道県連合が選挙運動の一翼を担い奮闘、福島党首は3選挙区に入って支持を訴え、全国から知人・友人への電話かけも呼びかけた。今回の野党共闘では足並みが乱れた面もあったが次期衆院選で菅政権退陣と政権交代を実現するため野党共闘をさらに強めるとともに、党の再生と議席増をかけて衆院選挙態勢の構築に全力をあげていく。

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【談話】3度目の緊急事態宣言発出について

2021年4月23日
社会民主党幹事長 服部良一

⒈本日、政府は4月25日から5月11日までの17日間、東京、大阪、京都、兵庫の4都府県について3度目となる緊急事態宣言を発出することを決定した。この他、宮城、沖縄、埼玉、千葉、神奈川、愛知の6県ではまん延防止等重点措置が実施され、愛媛県も追加されることとなった。2回目の緊急事態宣言解除の際に感染症の専門家や社民党をはじめとする野党が警鐘を鳴らしていたリバンドは明らかに発生し、大阪、京都、兵庫については解除から1ヶ月半強、東京については1ヶ月弱で再び緊急事態宣言を発出せざるを得なくなった。とりわけ大阪では深刻な医療崩壊が発生している。自宅での療養を余儀なくされた方々の急死も相次ぎ、影響は一般診療にまで及んでいる。病床数を削減し公立・公的病院の統廃合など医療体制を崩壊させてきた新自由主義政策や社会的検査を怠ってきた菅政権の新型コロナウイルス対策こそが日本に暮らす人々の精神的・経済的負担を長期化、深刻化させていることはもはや明らかである。

⒉過去2回の経験やまん延防止等重点措置の実施自治体や独自の緊急事態宣言を発出する自治体が増加していることを踏まえ、この度の緊急事態宣言は4都府県に留まらず広範囲に発出されるべきである。また、ゼロコロナを達成するという目的に照らせば、新規感染者数が減少し、リバウンドの可能性が極めて低いあるいはないことが確認できた時に解除が可能となるのであり、政府が予定している17日間は感染を抑え込むにはあまりに短すぎる。

⒊もともとの社会保障の手薄さに加え新型コロナ対応としての補償・給付の不十分さと度重なる緊急事態宣言によって経済的に困窮し、精神的に疲弊する人々が激増している。西村経済再生担当大臣は本日の参議院議院運営委員会で「強い要請をお願いしている」と述べたが、緊急事態宣言下の強い措置とは要請ベースでも、ましてや取締りベースでもなく、中小を中心とする事業者や労働者に対する休業補償、経済的困窮を防止するための給付、そして最後のセーフティネットである生活保護制度など社会保障の強化・実施徹底でなければならない。

⒋3度目の緊急事態宣言を最後の緊急事態宣言にしなくてはならない。社民党は医療従事者・医療機関への最大限の支援提供のために最大限の取り組みを行う。同時に経済的困窮状態にある人々を主たる対象とした給付、事業者と労働者に対する休業補償の水準向上に努める。非正規労働者に対するテレワーク差別やシフト制であるが故に休業補償がなされない問題に対しては国会審議はもとより幅広い労働運動と連帯しながら解決をはかる。自治体単位では大型連休中にも福祉事務所を開けておくことや、電話での連絡・相談が可能な体制をとることを要請し、緊急事態宣言下において誰ひとり取り残されることがないように全力をあげる決意である。

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トリチウム汚染水海洋放出決定に抗議する緊急アピール

2021年4月13日 
社会民主党福島県連合代表  狩野光昭

13日、政府は関係閣僚会議でトリチウム汚染水海洋放出を決定した。

福島県内の7割を占める市町村議会で反対又は慎重に対応する意見書が採択されている。福島県内の団体が集めた反対署名は44万筆をこえている。また、2018年8月に政府と東電は、県漁連等に対して、関係者の理解なしにはいかなる処分もしないと文書回答をしているにもかかわらず、その約束を反故するものである。

福島第一原発のタンクに保管されているトリチウム汚染水の7割が処分に必要な告示濃度を満たしていないのが現状である。また、2018年に東京電力はトリチウム以外にもストロンチウムやヨウ素等の放射性物質が残存していることを発表している。約1000基あるタンク内の汚染水放出期間は、約40年かかると東京電力は認めている。海水で薄めて放出するといっているが、トリチウム等の放出総量は変わらない。

福島第一原発以降も東京電力の不祥事やトラブルが相次いでいる。最近では2月の福島県沖地震で3号機に設置していた地震計2機が故障していたこと公表していなかったこと。福島第一原発敷地内で内容不明のコンテナ約4000基が敷地内で発見されたこと。また、柏崎刈羽原発での核物質防護不備などがあげられる。隠ぺい体質の改善がみられないことで県民の不信感は払拭されていない。

福島県の沿岸漁業は原発事故以降、2012年から始まった試験操業が3月に終了し、4月から本格操業にむけた移行期間であった。このような時期に、汚染水を海洋放出することは風評被害を政府がつくっているといわざるを得ない。

漁業関係者は損害賠償の問題ではない。生業を守り、後継者に漁業を引き渡したい、これ以上、豊かな海を汚してもらいたくないと訴えている。政府や東京電力はこの声に応えるべきある。風評被害は漁業に止まらず、福島県内のすべての産業に影響を及ぼすものである。

私たちは、トリチウムを含む汚染水の海洋放出に断固反対する。郷土を取り戻す懸命なる県民の努力に水をかけ、「故意による二次的加害」である「トリチウム汚染水」海洋放出は許せません。陸上保管や分離処分での汚染水の減衰対策を行うことを強く求める。

以上

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2021年4月12日
経済産業大臣 梶山弘志 様

社会民主党党首 福島みずほ

東京電力福島第一原発で発生した汚染水を、海に流す方針を政府が固めたと報じられている。13日にも関係閣僚会議を開いて決定するとのことである。

現在、タンクで保管されている処理汚染水には、トリチウムのみならず、セシウム134、セシウム 137、ストロンチウム 90、ヨウ素 129 などの放射性物質が残留している。東京電力は「二次処理する」としているが、その詳細も分かっていない。

海に流す以外の代替案として、専門家から「大型タンクによる長期安定保管」や「モルタル固化処分」といった提案がなされているが、十分検討されたとはいえず、現段階での海洋放出の決定はあまりにも拙速といわなくてはならない。

福島県では 59 市町村のうち 41 市町村議会が、海洋放出へ反対か慎重とする意見書や決議を可決している。福島県内の団体が集めた反対署名は 42 万人を超え、風評被害を懸念する水産業者も強く反対している。さらに、諸外国からも強い懸念の声があがっている。これらの声を無視して、海洋放出の方針を決定することは許されない。

放射性物質は集中管理をするのが原則であり、安易に拡散させることは許されない。政府は、海洋放出以外の代替案について真摯な議論を行ったうえで、幅広い世代、立場の市民の声にも耳を傾け、開かれた議論を行なったうえで判断するべきである。

以上、要請する。