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(笑い声)お酒と きつねな。
ほんで きつねはな…。(シズ)できるだけ やわらこうだすな。
さすがやなあ。
いつも おおきに。みつえちゃん ビール。
(みつえ)は~い。 お父ちゃん 頼むわ。(宗助)おお 任しとき。
千代ちゃんが道頓堀から いてへんようなって1年の月日が過ぎました。
(みつえ)はい 親子丼だす。 お待っとおさん。
ごちそうさん。毎度おおきに。
おっ ええ月や。
こら 明日も晴れやな。
ほな。
お気を付けて。
♪「オレンジのクレヨンで描いた太陽だけじゃ」
♪「まだ何か足りない気がした」
♪「涙色したブルー こぼれて ひろがって」
♪「ほら いつも通りの空」
♪「これは夢じゃない(夢みたい)」
♪「傷つけば痛い(嘘じゃない)」
♪「どんな今日も愛したいのにな」
♪「笑顔をあきらめたくないよ」
♪「転んでも ただでは起きない」
♪「そう 強くなれる」
♪「かさぶたが消えたなら」
♪「聞いてくれるといいな」
♪「泣き笑いのエピソードを」
♪~
(熊田)どや? 来月の芝居は。
(天晴)まあ 悪いことはおまへんな。
(一平)客足は悪いまんまですわ。
事件の噂は劇団に暗い影を落としていました。
そらそうと 新平は大きなったやろ?もう なんぞ しゃべったか?
(万歳)何言うてはりますねまだ半年やのにしゃべれるはずありませんやん。
ハハハハ そらそやな。何言うてますねん。
すまん すまん。ほな 今日は これで。
明日の稽古は 11時からや。よっしゃ。
(寛治)お疲れさんです。お疲れさんでした。
(寛治)熊田さん。
あれから 千代さんのこと何か分かりましたか?
どっかで芝居続けてたら分かりそうなもんなんやけどな。
ほんまに辞めてしもたんやろか… 役者。
♪~
・(新平の泣き声)
(灯子)新平… 新平 ほらお母ちゃん ここにいてますで。
よしよし。ああ どないしたんや?
だんない だんない。
すんませんお仕事の手ぇ止めさしてしもて。
ええのや。
これでええ…。
(新平の泣き声)
そのころ…NHK大阪の一室であるラジオドラマの企画が動き始めようとしておりました。
(酒井)面白いですわ。ありがとうございます。いやあ 何と言うてもこのお父ちゃんとお母ちゃんの掛け合いが よろしいわ。そこは こだわったとこや。
箕輪悦子やったらそれぐらいせんとな。
箕輪悦子さんいうのは戦前から 映画やラジオで大人気のベテラン女優さんです。
(四ノ宮)彼女の出演は 問題ないんでしょうね?
(桜庭)えっ?ああ… それは もちろん。
「長澤先生の作品やったら是非に」と言うてはりますし。
編成も箕輪悦子さんやったら文句なしですわな。
もちろん。
(当郎)いや 遅なってしもてほんま すんません。
お待ちしておりました。さあさあ どうぞ。
(富岡)当郎さん 先週のラジオ漫談腹抱えて笑わしてもらいました。
ハハ そら おおきに。
先生 台本読ましてもらいました。
いや~ やりがいありますなあ。
皆さん この人のこと覚えてはりますか?
防空壕の中で 千代ちゃんと丁々発止のやり取りを見せた漫才師の花車当郎さんです。
(千代)そういう あんたは 次郎… 次郎やな。
いや 誰や 次郎て。次郎は 昔 飼うてた ヒキガエルだす。
(笑い声)ヒキガエル!
当郎さん 今では映画 舞台 ラジオに引っ張りだこの喜劇役者として活躍してはります。
よかった~。 当郎君にそない言うてもろて ほっとしましたわ。
箕輪悦子との掛け合い 今から楽しみや。箕輪悦子?
当郎さんとの夫婦役をね彼女にお願いしようて ねえ 酒井さん。
ああ その件やったら改めて当郎さんには きちんと…。
箕輪悦子か…。
役とはいえ あんな べっぴんさんと夫婦になれるやなんて羨ましい。
僕は反対ですわ。
相手役は 別の人がええてお願いしてましたんやけどな。
(富岡)えっ?酒井さん どういうことですか?
うん まあ そうなんやけどな…。
誰ですか? 別の人いうのは。
喜劇女優の 竹井千代さんです。
竹井 千代…?
聞いたことないなあ。
確か 鶴亀新喜劇の女優さんやったな。
座長の天海天海の元奥さんやろ。
長澤先生 ご存じなんですか?
うん 1年ぐらい前にごたごたがあって 別れたはずや。
ほんで 劇団も辞めてしもたて聞いたけど。
そ… そう… そうなんですわ。 おい 桜庭。
はい。 酒井さんに言われてその竹井千代さんについて調べたんですがどこ行ったか誰も分かれへんそうで。
どういうこっちゃいな?
つまり… 行方不明です。
(富岡)行方不明?(酒井)まあ そういうことなんで当郎さん ここは 箕輪悦子さんで…。
(当郎)捜してんか。(酒井)えっ?
まだ引退したてことやあれへんのやろ。捜してくれへんやろか 竹井千代さんを。
当郎さんは 彼女とは どういう…。
一度だけほんのちょっと会うたことがあるだけや。
(富岡)それだけですか?
確かに 箕輪悦子はええ役者やと思います。知名度かて 間違いのう上や。
せやけど… それが あかんのですわ。
箕輪悦子は 何て言うか この…女優すぎますのや。
先生の書きはった この「お父さんはお人好し」に出てくる人らはみんな もっと普通や。僕も含めて身近な どこにでもいてるような人がやるべきなんや。
竹井千代という役者にはそういう親しみやすさを感じた。
初めて会うたのに 何て言うか この昔っから気心知れた仲のようなそれでいて 油断したらこっちがのまれてしまうような すごみもあった。
僕は 彼女のことずっと気になってるんですわ。
あない…あないに楽しい時間は 久々やった。
長々と しゃべってしまいましたけどな言いたいことは一つ僕は 竹井千代とやりたいんですわ。
いやあ やっぱり ここは箕輪さんの方が…。
君の考えは よう分かった。
せやけど 私も妥協するつもりはない。
戦争で失われてしもた家族の団らんを取り戻したい。
そないな思いをこの作品に込めたつもりや。
一人でも多くの人に聴いてもらいたい。
そのためやったら ちょっとでも知名度の高い役者を選ぶのは当然やろ。
あ… ほな 今日のところは え~っと…。
(富岡)どないします?
(酒井)そら 当郎さんに折れてもらうしかあれへん。竹井千代は行方不明なんやから。
よかったですなあ 行方不明で。(酒井)ほんまや。
あの 酒井さん。(酒井)桜庭ちゃんと 竹井千代のこと捜すんやで。
捜したけど見つかれへんかったって言わな当郎さんかて 納得せえへんさかいな。
はい 手抜きなんかしてません。(酒井)そら ええこっちゃ。
おかげで 見つかりました。そうか そら何より。
何ぃ… 何ぃ!?
桜庭 「何?」言うてはる。
あっ 道頓堀の知り合いやら同期のお芝居好きの連中に片っ端から聞いて回ってその中の一人からたった今 連絡があって…。
竹井千代さん 京都で見かけたて。
京都?何でも 親子で暮らしてるんやないかて。
親子?明日にでも 調べてきます。
いや… その必要はあれへん。
見つかれへんかったことにしよう。
長澤先生と当郎さんがこのまま仲たがいしてみいこの企画は吹っ飛ぶで。
せやな。 それだけは避けなあかん。
♪~
その3日後。
どないです?竹井千代の居所 分かりましたか?
すんません 見つかりませんでした。
ほんまによう捜してくれはったんかいな?
(桜庭)も… もちろんです。いや いいじゃないですか。
やっぱり ここは箕輪悦子でいきましょうよ。
当郎さん もう時間あれへんのです。
彼女のことを よう知らんままで反対するのも不公平や。
私なりに 道頓堀で竹井千代のこと聞いてきた。
先生…。
長年 連れ添うた天海天海と若い劇団員の間に子供ができて離縁したというのはほんまの話やった。
そら 逃げ出しとうもなるわな。
ほんまに死にたなってもおかしいことありません。
私も そない思たんやけどな…。
(香里)あの千代が役者辞められるはずあれへんわな。
(長澤)彼女を知る人は 皆口そろえて こない言うてた。そないなことで死ぬねやったら彼女は もう とっくに10回は死んでるて。
どないな人生やったんや…。
私も 竹井千代に会うてみたなった。
そういうことやから 酒井さんもうちょっとだけ彼女を捜してみてもらわれへんやろか?
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お母ちゃん 行ってきます。行っといで。 こけなや。
おはようさんでございます。おはようさん。
せかな遅刻しますで。(春子)待って。
♪~(三味線)
忘れ物あれへんな。(春子)うん。
ほな 栗子さん 行ってきます。
(春子)行ってきます。
(栗子)行っといで。 気ぃ付けてな。
千代おばちゃん はよう。は~い。
春ちゃん こけるで 気ぃ付けや。
(春子)だんない。おはようさん。
おはようさんでございます。おはようさん。
おはようさん。おはようさんでございます。
はよう。ちょっと待ってえな。