Another Trainer   作:りんごうさぎ

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ホントの ヒロインは みゅーなの!
これは 最初から 決まっていた 運命だから……


3.無知の大罪 天国地獄

 ホントにみゅーをつれて来てしまった。どうしよう。さっきは勢いで即決してしまったがいまさらながら後悔し始めていた。そんな俺の気も知らないでみゅーは楽しそうに声をあげて更衣室に入っていった。すぐにみゅーは感心したような声をあげた。

 

「わー、裸の人ばっかり。人間にしては珍しいの。こんなところ初めて見たかも」

「あんまりジロジロ見ない! 女の子になってるのに人間とか言うのもダメ。怪しまれる。騒いだりしないで大人しくしたままみゅーも早く脱いで。その服は本物だからな」

「へんしんしたらマズイから本物を貸してくれてたの?」

「そういうこと。わかってるならもうちょっと自分でも用心してくれよ……」

 

 ブルーに借りた比較的小さめの服を脱いでみゅーも裸に。さすがにこのままだとみゅーが良くても自分がイヤなので丁寧にタオルを巻いてあげた。

 

「じっとしてろ。今きれいに巻いてあげるから。ばんざいして?」

「んー。これだとまた服着てるみたいだけど意味あるの? んみゅ、これ何?」

「細かいことは気にしなくていい……ちょっと! ばんざいしろって言っただろ! だいたいみゅーどこ触ってるんだよ!」

「だって、気になったんだもん。みんなついてるけど、これ何?」

「帰ったら教えてやるから、今は頭をそれから離してくれ。早く温泉入りたいんだろ。よしできた。ほら俺についてこい。最初はお湯をかけて体きれいにしてから入れよ」

「ふーん。はいはーい。ん、熱ッ! みゅぐ、レイン……」

 

 みゅーのタオルを巻き終えて風呂に入り、最初にかけ湯。タオル巻いたままだけどそれは目をつむることにした。ただ、みゅーにはお湯が熱過ぎたようでウルウルして俺の方を振り返った。

 

「あ、ごめんごめん、体温低いみゅーには熱かったか。大丈夫? 今度は俺がかけてあげるから、辛かったら言って」

「んみゅ、わかった。ゆっくりしてね」

 

 ゆっくりかけ湯して奥に進んだ。屋内屋外両方あるのか。フエンみたいに屋外だけだと思ってた。色々あるみたいだけどとりあえず普通のやつから。

 

「みゅー、隣においで」

「みゅふーっ! あったかぁーい。温度に慣れてきたの。すっごく気持ちいい。体がポカポカして癒されるの。あったかいのみゅー好き!」

「だろ。温泉いいよな。しばらくゆっくりしたら違うやつにもいこう。温泉毎になんか効能が違ったりするらしいし、寝転がるやつとか、電気風呂とかもあるみたい」

「電気電気! みゅー電気がいい! あ、そうだ! レインにはみゅーが10まんボルトしてあげよっか」

 

 なんでそんなに電気好きなんだ。なんか勘違いしてそうな発言も出て来てるし怖い。釘をさしておかないと何もわかってないみゅーに殺される可能性が出て来たんだけど。

 

「それはここでしたら俺が死んじゃうから絶対にしないでね」

「えー、つまんないのー。レインなら大丈夫だと思うのになぁ。じゃあ……あっち! これ入りたい。……レイン、ここ何?」

「まだ大してあったまってないだろ! 落ち着きないなぁ、もう! 勝手に1人で離れないで」

「入ろーっと。みゅみゅっ!? あついー、溶けちゃうー」

 

 人の話全く聞いてないな。みゅーは俺を置いて小走りで別のところへ向かった。しかも電気風呂はもう頭にないらしい。気分屋だな。エスパーだしこけたりはしないだろうが危なっかしい。みゅーが選んだのはなぜかサウナ。絶対どういうところかわかってない。暑いの苦手なのに自分から入るとは。案の定中に入ったら先に入っていたみゅーはしかめっ面をしていた。

 

「ここはサウナ。汗を流すところだから、暑くていいの。子供にはしんどいかな?」

「もうダメ、あがりたい」

「根性ないな。数秒しか入ってないじゃん。じゃあ水風呂に入るか」

「だって暑過ぎなんだもん。こんなの何がいいの? あ、ここ冷たくて涼しい。しかもここ深ーい。レイン、潜るから見てて!」

「あー! タオル脱げてるし! あんまりはしゃぐなよ!」

「大丈夫、このお風呂誰もいないもん」

 

 そりゃ水風呂にずっと浸かっている奴なんかいないだろうよ。その上ずっと潜っている奴となれば変人間違いなしだ。……まぁ全く見たことがないかと言えばオーラが乱れるけど。みゅーは体温低いからずっと潜っていても平気みたいだが、俺には無理だな。

 

「レインもおいで、ヒンヤリするから」

「は!? バカッ、ひっぱるなっ! ぶぱっ!?」

 

 みゅーは仮にもA100族。力は強い。引っ張られたら逆らうこともできず、水風呂に“ダイビング”をする羽目になった。俺はポケモンじゃねぇから! しかも水中でも引っ張られて出られない上しゃべれない極悪コンボ。なんで温泉に来てこんな寒い目に遭うんだ!

 

「さぶぅ!!」

「ねぇねぇ、今度はあのお外にあるお風呂に行きたい。あっちも広そうだしなんか楽しそう」

「今このタイミングで?! みゅーって俺になんか恨みでもあるのかな?」

 

 心当たりは……いっぱいあるな。楽し気なみゅーに押し切られ本当に露天風呂に来た。当然死ぬほど寒い。俺なんかより自覚がない分みゅーの方が鬼畜だ。無知ってやっぱり1番の罪なんだって改めて思った。寒くて凍え死ぬので当然すぐに風呂に入った。

 

「さっぶぅぅぅ! あーあったかぁ、生き返った」

「みゅー、そんなに寒かったの? 別にそんなに冷たくなかったのに。みゅ、さっきは最初に熱かった時助けてもらったから、今度はみゅーが助けてあげる。はい、これであったかいでしょ?」

「みゅーちゃん?! それはあったかいけど、さすがに大胆過ぎっ!」

 

 巻き直したタオル1枚越しで抱き着かれ、完全に密着状態。しかもみゅーは嬉しそうな顔でがっちり抱き着いて動かない。こんなに押し付けて、ホントにこれわざとじゃないの? だいたいここ周りに人いるからな! ……無知って本当に罪深いなぁ。……これこそ最高の祝福!!

 

「みゅー、あったかぁい」

「そのあったかいはどんな意味? みゅー、のぼせるからもうあがって。あー、今なら俺が髪を洗って、体もきれいにしてあげるから。早くしないとやってあげないけどいい?」

「えっ! あがるあがる! はやくして!」

「たんじゅ……素直でいい子だな。今日はゆっくりきれいにしてあげような」

「うん。ホントにゆっくりしてね」

 

 場所を移してタオルを外し、椅子にちょこんと座らせた。間近で見ても恥ずかしがるそぶりはない。本当に全く気にならないんだな。

 

「お湯を出すから、丁度いい温度になったらいって。ぬるめがいいか」

「んー。あ、これがいい」

「じゃあ、先に体から洗っていこう。何かあったらいって」

「うん。あー、すごい。ものすごく優しい感じ。とってもいいの~」

「きもちいい?」

「みゅー。レインにしてもらったら上手いし楽なの」

「最初だけだからな。みゅーも自分でやるようになったらちゃんとしっかりやれよ」

「みゅー。わかった」

 

 どうでもいいけどみゅーの体はぷにぷにでかつもっちりとしていてすばらしい感触だな。日々のけづくろいの効果だろうか。……これがさっき抱き着いて……いや、これ以上考えるのはやめておこう。

 

 極めて冷静な状態で何も考えないように洗っていった。考えたらオーラを読まれそうだし。背中を流して髪の毛を洗おうと言うと水しぶきが飛び散る程はしゃいでブンブン頷いた。

 

「みゅーはね、この髪触ってもらうとものすごく嬉しいの。前と比べてものすごくきれいでサラサラになって、それにいっつもいいねって褒めてくれるから」

「そんなに? じゃあしっかり洗ってあげような」

 

 髪を洗っている間は終始笑顔で、ふと見れば鏡越しにずっと俺の顔を眺めていた。俺の方は心臓が跳ね上がりそうになるが、対するみゅーは目があっても気にするそぶりもなくそのままニコニコこっちを見ている。おどかすなよ……。さすがに鏡越しだと読めないのかな?

 

「なぁ、鏡越しでもオーラってわかるのか?」

「ううん、みゅーはわかんないけど」

「じゃ、なんでずっと俺の方見てるんだ? みゅーは単に顔眺めるの好きなのか?」

「うえっ、んみゅー。……みゅーずっと見てた? そんなつもりはなかったの。イヤだった?」

「別に見たいなら見てもいいよ。なんでかなーと思って聞いてみただけ。みゅーの顔はかわいいからイヤなことないし」

「みゅー」

 

 顔を赤くしてややうつむき加減になるがそれでも嬉しそうなまま目は離さない。みゅーの反応に疑問を持つがそういえば以前ジロジロ見るなと釘をさしていたことを思い出した。だからかも。

 

 恐らく、みゅーはそれから顔を見ないように努力はしていたのだろう。だが実際には意思に反して吸い寄せられるように俺の方ばかり見ていたわけだ。俺を見るのはオーラを観察してウソがつけないようにしているのだと思っていたが、単にクセになっているのかもしれない。

 

 いい加減髪もよく洗ったし水で流そう。

 

「じゃあ目つぶって、お湯流すから」

「みゅー、ゆっくりして」

 

 ゆっくり? 普通に考えるとゆっくりすればするほどお湯に耐える時間が長くなるが、それでいいのか? 俺なら早く終わらせてほしい。

 

 案の定途中で我慢できずみゅーが目を開けて大変なことになった。目を開けたらダメだってわからないのか。そういえば今まではギアナだったし水浴びぐらいしかしたことなかったのかも。けづくろいの時は横になって顔にはかからないようにしていたし。

 

 さすがにシャンプーハット出せとは言わなかったが、まだ頭を流すのは怖いみたい。普段強力な技の応酬をしていることを思えば、意外な一面だった。

 

「よし、これでいいだろう。今度は俺が体洗ってるから、ちょっと待っていて。先にお風呂に入ってきていいから」

「うーん。みゅーはここで待っていることにするの。レインがいないとヤだもん」

「みゅー……。そうか、本当にみゅーは優しいなぁ。じゃ、ちょっと待ってて」

 

 自分の体を洗っていると、みゅーが背中を流すと言ってくれた。ブルーならこんな気遣いは絶対にない。そもそも待つこともしないだろう。みゅーの優しさが嬉しかったので、せっかくなのでお願いした。

 

「みゅー、それじゃお言葉に甘えて頼もうかな」

「みゅみゅー、任せてっ。お礼にしっかり洗ってきれいにするから。いくの、みゅぎゅぎゅっ!」

「みぎゃああぁぁぁ!」

 

 渾身の力でおもいっきりこすられ、背中が腫れ上がる程の重傷を負った。鏡で見ると赤くなってなんか痛々しい有様に。グロい……。

 

「ご、ごべんなざい」

「やばっ! いいからいいから、みゅーの気持ちはわかるから。お礼をしようとしてくれたことが1番嬉しかったから、今は泣かないでね。また今度も頼みたいなー」

「でも、ものすごく痛そう」

「大丈夫、この程度今までの苦労を思えば……うん、全然痛くない。だから気にするな」

「あ、ホントだ。痛くないんだ。なーんだ、良かった。大きな声出したから心配したの。みゅみゅ。今度は優しくするから次は任せて」

 

 相対的に考えてそれらよりは痛くないわけだから、ウソにはならないし、自分で本当だと納得できればそう思いこむことはできる。なんかポケモンよりも“じこあんじ”が上手く使えるようになりそう。“じこあんじ”スイクンとか面白くて強かったなー。(現実逃避)

 

「そうか。じゃあ今度に期待しよう。それじゃ、最後どこかで温まってからお風呂から出ような。どこがいい?」

「露天風呂。空気がヒンヤリしてるもん」

「最後に冷えるところはどうかと思うが、みゅーがそういうならいいか。最後は肩までしっかり浸かって、一緒に100数えたら上がろうな」

「100も数えるの? 長いからイヤ」

「ダメだろ。ちゃんと温まっておかないと。……ちゃんと数えたらあとでモーモーミルクあげるから」

「みゅふー! ホント!? それすっごくおいしいやつなの! やった! じゃあ数えるの。いーち、にーい、さーん……」

 

 嬉しそうに数を数えるみゅーの声に、周りの人達も微笑ましそうにしている。子供がこういうことしていると和むのはわかる。ただ、自分はのんきに和む余裕はなかった。背中の腫れはタオル越しでも容赦なくこうかはばつぐん。かなり湯がしみていた。とはいえ自分だけ肩まで浸からずにすぐ出ては示しがつかないし、痛くないといった手前これを言い訳にすることもできない。ひたすら根性で耐えた。やっぱり無知は大罪。

 

 あがった後は約束通りモーモーミルクをあげた。これは特注だ。生産地はジョウトでもカントーまで出荷していることは知っていた。だから取り寄せておいたのだ。パソコンは何でもできるから便利だな。

 

「ぷはぁっ! おいしーーのっ!」

「そこらの牛乳とはわけが違うし、風呂あがりの一杯はまた格別だからな。温泉っていいもんだろ? また一緒に来ような」

「みゅ。絶対ね」

 

 水風呂攻めやらひっかき攻めやらあったがなんとか風呂から解放された。逆にミルクが格別に感じられる。こっちは内心もうこりごりだが、みゅーは終始楽しそうにしていたのでそれだけでまた来ようと言ってしまった。

 

「ちーっす、シショー。待ったぁ? いやー、温泉っていいわねー。ついゆーっくりしちゃってさー。あ、何よそれ、モーモーミルクじゃない! どこに売ってるの!?」

「ここのじゃない。俺が持ってきたんだ。お前の分もあるから心配しなさんな」

「さっすが、わかってるわね。これホントにヤバイわよね。くーっ、キター! 生き返るー!」

「お前はおっさんか」

「みゅーっ、ぷはーっ! 生き返っちゃうのー!……あれ、レインはやらないの? ねぇ、やってよ。おいしいでしょ? おいしくないの?」

「ホントにそうよ。シショーはノリ悪いわねー」

 

 ノリの問題なのか、これは。別にいまさらブルーやみゅー相手に恥ずかしくもないしいいけれどさ。なんか言わされてる気がする。

 

「わかったよ、やればいいんだろ、やればっ。……カーッ、うめーっ! 五臓六腑に染み渡るー!」

「みゅはははっ! おっさんおっさん! カーッだって!」

「いやー、本物のおっさんはやっぱり違うわねー! さっすが!」

「お前らが言わせたんだろ! いい加減にしろ! 怒っていい?」

 

 こっちが黙ってると思ったら大間違いだからな! 今日はハッキリとわからせてあげないとなぁ。みゅーはそれを察してか、いちはやく逃げる体勢をとった。

 

「みゅー、逃げろー。ブルーあとはよろしくなのー」

「あ! みゅーちゃんわたしを生贄にする気?!」

「まずはブルーからきっちりお話しようか。肉体言語で」

「あは、それはちょっと勘弁……」

「問答無用!」

 

 逃げるブルーとみゅーを回収して、くすぐりの刑に処した。たとえみゅーでもおびき寄せるぐらい造作もない。トレーナーとしてのレベルが常人とは違うのだよ。処刑執行後、温泉の話で盛り上がったり、ツヤツヤのみゅーをブルーが羨ましがって今度は自分にもけづくろいしろとか言い出したり、散々騒いですぐに夜になった。

 

 みゅーにとってはいい思い出にもなったはず。ふざけすぎた気もしないこともないが、いい気分転換になったらいいな。もうバトルで負けたことなんて忘れてしまっただろう。

 




これで わかったでしょ?
けっきょく みゅーが いちばん つよくて かわいいんだよね!

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