1.いつも見ているけど見えないものなーんだ
ポケモン屋敷を出れば懐かしきグレン島の街並み。ようやく帰ってきたことを実感した。時間にすればひと月ほどの期間だが、向こうでの経験は充実していて長い間離れていたような気分になる。それは言葉にも表れた。
「帰ってきたな」
「そうね。なんだか懐かしくって新鮮な感じ。いよいよポケモンリーグへむけてラストスパートね」
「みゅー! 頑張るのっ」
肌寒さを感じ季節の移ろいを実感しつつ、ひとまず宿のためにポケモンセンターへ向かうと見知った顔がある。またマサキに会った。この人はよくここにいるな。むこうも同じことを思ったようで、俺達を見て驚いていた。
「あれ、あんさんらまだこんなところにおったんかいな。どないしたんや、ここで会うの何回目や?」
「いや、ちょっと色々あって。マサキさんはなんでまたここに?」
「ワイはちょっとここのパソコンの預かりシステムが故障しとるっちゅうからメンテにきとるんや。こういうのも一応仕事やからな。ついでにナナシマで頼んでた仕事も終わって、ちょっとカントーの預かりシステムをバージョンアップさせとこーと思てな。今改良してんねん」
メンテナンスとかやってるんだな。全然そんなイメージなかった。俺はバージョンアップに興味をそそられたが、ブルーはレッド達の方が気になったらしい。
「え、じゃあレッド達は……」
「おお、もうはように用事済ませてマサラタウンの方へ先にいっとるで。レッドはんはリザードン、グリーンはんはピジョットに乗って海越えてったわ。2人にもあんさんらのこと聞かれてな。もう先にいっとると思てたからハッパかけてもうたわ。あの2人やったら今頃8つ全部のバッジ集めとるやろ。ははは、すまんな」
なぜとりあえず煽ろうと思うのか。コガネ人らしいというべき? 言いたくなる気持ちはわからんでもないけどさぁ。
「いや、別にいいの。あいつらにはそれぐらいしてもらわないと追いかけ甲斐がないもの。でも、焦りはしないわ。時間はあるし、わたし達すっごく強くなったから」
「おっ、こりゃまたおっきく出たな。もしかして今まで秘密の特訓でもしとったんか?」
「えへ、まぁそんなところね」
若干苦笑いしながらブルーが答えると、マサキの目線が俺の後ろに隠れていたみゅーに移った。人見知りなのか、俺達がしゃべっている間は俺の服をつかんだままずっと陰に隠れていた。
「それはそうと、あんさんら気づいたらまためんこい嬢ちゃん連れとるけど、その子はどないしたんや? トレーナーさんにしては年が足りとらん気がするで」
「え、あ、それはその、つまりね……」
ブルーが言い淀んでいるとみゅーは警戒心を隠そうともせずにぶっきらぼうに問い返した。
「みゅーはみゅーって言うの。レインの友達。あなた誰」
「なんかえろうきらわれてもうたな。ワイはマサキゆうねん。レインはんとは同じく友達でな。一応預かりシステム作ったのはワイなんやで。ポケモンマニアでもあるな。よろしゅうな」
「ふーん」
自分で聞いておいて心底興味なさそうにそっぽを向いてしまった。さすがにマサキも戸惑いを隠せず、怒られそうなので俺がフォローしとくことにした。
「この子は人前に出てしゃべったりすることが今までほとんどなくて、見てのとおり人見知りだし多めに見てやってくれ。身内がいなくてずっと1人だったんだが、俺に懐いてしまったから一緒に旅をして色々見せてあげようと思って連れてきたんだ。みゅーっていうのは愛称で、こいつもみゅーって呼ばれるのが好きだからマサキさんもそうしてやってほしい」
「そうなんか。なんかあんさんも大変やな。ええでええで、子供はこれくらいの方がええわ。できたらあんまりワイのこときらわんといてほしいけどな。じゃ、ワイは仕事に戻るわ。レインはん、ブルーはん、リーグがんばりや、期待しとるで」
何とか怒られずに済んだな。マサキが優しくて助かった。それに上手くオーラを乱さなかったのも良かった。俺はウソは言ってない。ウソを言うとすぐにみゅーはオーラが乱れたって指摘して、またそれにつっこまれたら説明が面倒だからな。
「みゅー、お前けっこう人見知りするんだな」
「みゅっ、だってみゅーは人間キライだもん。特にさっきみたいな研究者っぽいのとか、マニアとかはキライ。ポケモンのこと道具かなんかだと思ってるの。みゅーがついていったら本当の姿に戻るところを見るために色々されて、毎日気を休める暇もなかったの。自分の事ばっかりでみゅーのことは何にも考えてないジコチューって奴なの」
「そうか、大変だったんだな。気持ちはわからんでもない。昔色々されたことを思えばな。でも、全員が悪い奴とは限らない。少なくともマサキは良い奴だ。肩書だけで判断してやるな」
「みゅー……レインがそう言うなら、わかったの」
素直でよろしい。みゅーの頭を撫でてあげてから受付にむかった。そういえばそれなりに一緒にいるが、みゅーは決して元の状態に戻ろうとはしない。見られたくないのだろうか。いつも一緒なのにトレーナーすら真の姿を見られないなんて、やっぱみゅーは幻なんだな。一応俺はどんな感じかは知っているが、それをみゅーが知ればどう思うのだろう。あんまりそのことは触れないようにしよう。
ふとみゅーの方を見ると、周りの視線を避けるようにして俺の後ろに隠れていた。だが外を歩くのがキライなわけではないようで、キョロキョロと辺りを見渡していた。通行人がみゅーの方を向くと服を引っ張って顔を引っ込めていたし、今もそうしているが。
やっと受付に着いて、手続きを行った。
「はい、宿泊ですね。お部屋はどうしましょう。別々でシングル3つですか? あ、その子はトレーナーではないようですね」
「みゅー、レイン……」
ものすごく心配そうな顔をしている。ずっと服を引っ張っておどおどしていて、ギアナにいた頃とはうってかわって内気だな。甘えていいといったし咎めはしないが。
「この子は身寄りがなくて俺達と旅をしているんです。一緒に泊まることはできませんか?」
「子供ならお連れも大丈夫ですよ。部屋はまとめるかバラバラかどっちにしましょうか」
「2つにしてください。俺とこの子は一緒で」
「わかりました」
地味にみゅーが泊まれるか懸念していたが余裕だったな。まあダメでもメタモンになってもらえば入るのには問題はなかったんだが寝る場所がなくなるからな。俺と一緒と言ったらみゅーはものすごく嬉しそうな表情に変わった。さすがに知らないところで1人じゃ心細いだろうし、すぐにテレポートで俺のところに来てしまうだろうからな。
「あーあ、今日のお話はナシか。みゅーちゃんだけずるいなー。これだったらわたし野宿の方がいいかも」
「野宿は俺がイヤだ。そんなことより、今からジム戦に行こう。何気にゴタゴタ続きでここのジムに挑戦してないからな。ずっと前のことだがもうジムの扉のカギは手に入れているわけだし」
「あ、そういえば忘れてたわ。じゃ、成長したわたし達の肩慣らしには丁度いいわね。パパッと勝って、今日は温泉に行きましょう。観光地にもなってるのよ、ここって」
「そりゃいい。みゅーも一緒につれてってあげような。みゅーはバトルはどうする? まだへんしんは練習中だし、その恰好のまま見学でもいいと思うけど」
「みゅーバトルしたい。ダメ?」
「ホントにバトルが好きだな。じゃあどこかで使ってやるよ。ただし、メタモンの時は必ずへんしんしか使うなよ。ひんしになってもだ。これを守れなきゃ試合には出せない」
「んみゅ、それはわかってるの。安心して。みゅーも幻の端くれ、ヘマはしないの」
「それもそうだな。よし、じゃあさっそく行こうか」
ジムに入って受付に行くと、なぜか今はジムが使えないらしく、そのまま別の場所に案内された。受付の人になんでカギ取ってきたのに場所を移すのか尋ねると、カツラさんの考えることですから、と答えられた。それで納得する? トレーナーの考えることって謎が多いなぁ。
くだらんことを考えながら連れてこられたのは火山の火口にあるリング。すさまじく暑いな。いや、これはもう熱いというべきか。ポケモンなら耐えられるかもしれないが、俺達人間、トレーナーには少々きつい。
そういえば、ここって将来的に噴火したはずだしこの施設はかなり危なくないか。やめさせた方がいいのかな。
「うおおーす、よく来たチャレンジャー。わしがジムリーダーのカツラだ。2人は共にランク7か。せっかくここまで来てもらってすまないが、今日は1人しか相手はできないな」
「だったら、俺がランク8でいい。たしかこういう特例は、ランク8でもいいんだろ?」
連戦で7の空きがなければ仕方なく認めることはセキチクでわかっている。
「ほう、これはずいぶんと活きのいいトレーナーだ。最初は元気、最後しょんぼりとならなければいいが」
「ちょっと、シショーずるいわよ。わたしもランク8がいいのに。ジャンケンで決めましょ」
「最初はランク上げるのも嫌がってたのに、すっかり俺と同じで経験値稼ぎにとりつかれたな。仕方ない。ジャンケン勝負受けてやる。あらかじめ宣言しておこう。最初に俺はグーを出す」
「オッケー……じゃ、わたしはパーにしよっと。ウソついたら怒るわよ」
読める読める。ブルーの考えなんぞお見通し。
ここ最近の傾向で言えば、ブルーは意外と裏をかくようになった。なんだかんだと考えるだろうが、結局最後には俺がグーを出すことだけはないと思うだろう。予告してその通りになって俺が負けるなんてありえないからだ。それではいくら何でも単純過ぎる。俺がそんな簡単に負けることはないとブルーはわかっている。
なら、チョキかパーのどちらかと読んでくるはずだ。つまりブルーが出すのはグーかチョキ。そうなれば必然的にブルーの頭にないグーさえ出しておけば負けることはない。悪くてもあいこ。これが最初に宣言した狙い。
しかも、ブルーはチョキを出す可能性の方が高い。チョキならグー以外からは確実にあいこ以上に持ち込める。1番安全に勝ちを拾える。誰しも勝負事は安全に勝ちたいと思うもの。そこを狙い撃ちしてやる。
「もういいか?」
「ええ。いくわよ……」
「「最初はグー! じゃんけんぽんっ!」」
俺は当然グー、ブルーは……パー!?
「よっし、わたしの勝ちー!」
「はぁ!? いやなんでっ……こんなんおかしいやろっ! いやいやいやっ! 俺が、この俺がブルーごときに読まれたっていうのか?!」
「えへへ、わたしもエスパーね」
「……ウソなの。ブルーはみゅーがウソを感じてないのに気づいたのね」
「あっ……。くぅぅ! しまった! お前がいたのか……忘れてた。策士策に溺れる、か」
馬鹿にしたように口に手をあてて高笑いするブルー。オーホッホッホとか実際に言う奴漫画だけだろ。まあここもそれに近いけどさ。あーあ、仕方ない。お手並み拝見といくか。仮にもブルーにとっては初めてのランク8。これにどう対応するか見させてもらおう。
まさかこんな初歩的なミスをするとはなぁ。ショック……。うっかり選出で弱点被りまくってサンタテくらうぐらいダサい。エアスラで6連怯みぐらいありえない。……そう言われるとありそう。
「シショーもまだまだね。じゃあカツラさん、最初はわたし、ランク8ね」
「それは構わんが、積極的にランクを上げたいなんてお前さんら変わっとるな。しかも今日はグレンジム名物の特別リングだというのに。……知らないと言えるけど、知っていると言えなくなるものなーんだ?」
「え? なにそれ。なぞなぞ? そんなの聞いたことないわ」
「……カツラか」
「いかにも! 燃える炎の男、カツラとはわしのことだ! このリングを出したからには、そう簡単にはバッジは渡さん。リング、オープン!」
「え、いかにもって自分で言わせたんじゃない。って、あわわ、すごいのが出てきた。これがリング?! めっちゃ凝ってるわね。どこのジムもこういう仕掛け作るのが趣味なの?」
なんだなんだ? いきなりでかいリングが岩の中から出てきたな。こんなところでこの島の科学力の高さを使うのか。これもセキチクのカラクリ屋敷みたいに意味があるのか? ほのおのフィールド? ……なんかありそう。
「ここはグレン名物、灼熱のバトルフィールド。水系氷系は弱くなり、炎は勢いを増す。このリングを知ってしまえば、次からはランクを上げたいなどと二度と言えなくなるだろう。さぁチャレンジャー、やけどなおしの用意はいいかー?!」
でたな、名言。もっとも、試合中には使用は認められないがな。バトルの後のケアでってことだろう。俺はチーゴのみがあるから一応大丈夫だろうが、実際にはやけどになるようなおにびみたいな技は使ってこないんだよな。やけどした記憶が全くない。
「準備オッケーよ」
「使用ポケモンは4体、チャレンジャーのみ交換可能。場所を移した都合で審判はいないため、臨時でジャッジはわし自らする。ではいくぞ、まずはキュウコン!」
「こっちはピーちゃん!」
キュウコン Lv44 133-85-70-70-105-106
ピジョット Lv50 155-131-92-73-82-155
技 つばめがえし
おんがえし
とんぼがえり
でんこうせっか
エアスラッシュ
まもる
そらをとぶ
フェザーダンス
こうそくいどう
いきなり最もレベルが高いピジョットか。ジャングルでむしタイプを倒しまくって1番強化されたからな。技も最低限はそろったし、もうエース格だな。
「よく育てられている。だがそれだけで簡単には勝たせはしない。バトルは戦略が重要だ。まずはにほんばれ!」
「つばめがえしよ!」
“にほんばれ”をしているキュウコンにクリーンヒットするが、さすがに一撃とはいかず、半分ほど体力を残した。
「よし、よく耐えた。必殺のだいもんじ!」
これはヤバい! “だいもんじ”のダメージはだいたい90になるはず。ピジョットが先制できるとはいえ相手は遠距離でこっちは近距離。しかも“つばめがえし”のダメージが半分弱程度のようだから“でんこうせっか”があるとはいえ、その乱数次第では打ち合いに負ける。大丈夫か?
「ジョッ?!」
「うそっ、一撃?!」
えっ!? まさかの一撃? 計算は間違ってないはず……そうか、フィールドか。炎は勢いを増すってのは本当だったのか。1.5ではきかないから、約2倍と見るべきか。かなりのもんだな。ハナダのプールフィールドよりもさらにとんでもないインチキだ。
「うおおーす。言ったはずだ、このフィールドは灼熱。わしの攻撃はひざしの効果もあり、もはや一撃必殺。あまごいを覚えたポケモンでもいなければ突破は難しいということだ」
「フィールドの効果……そんなものもあるのね。でも、そういうことならこっちも考えがある。出てきて、ハクリュー!」
ハクリュー Lv45 123-134-70-64-77-107
「ドラゴンポケモンか。たしかにほのおタイプはこうかがいまひとつ。だが構わん。炎技で焼いて焼いて焼き尽くせ! だいもんじ!」
ダメージは一致ひざしフィールドで4.5倍になるから540。下手な不一致抜群じゃ、ほのお半減でも“だいもんじ”の火力の方が上になる。
「かわしてあまごいよ!」
いっきに天候は雨に。これで炎は合わせて三分の一になる。そういえばハクリューは……
「みゅー。天候玉なの」
「だな。ブルーが俄然有利になったな」
「ハクリューの天候を操る力か。ならもう一度にほんばれ!」
カツラの発言内容からして天候玉って有名なのか。そんなイメージ俺はなかったが。
「でんじは、あまごい」
「落ち着いているな。確実に有利な展開に持ち込んでいる」
天候の奪い合いになればダメージのないままターンを重ね、しびれる間だけアドバンテージを得る。その通りの展開になった。
「く、しびれたか」
「りゅうのまい、ドラゴンダイブ!」
「タダではやられん! にほんばれ!」
天候の取り合いになるがしびれた分ブルーがターンを取り、キュウコンを倒した。しかしやられ際にキュウコンも“にほんばれ”を使った。さすがに積んでから攻撃した分やや遅れたか。欲張ったな。だけど舞ったハクリューはホントに強い。天候か“りゅうまい”か、これがどう転ぶかだな。
「戦闘不能だ。次のポケモンを出そう。いでよ、ウインディ! いかく、だいもんじ」
ウインディ Lv44 140-100-85-90-82-102
「こっちの方が速いはず。避けてあまごいよ!」
「させん、しんそく!」
“あまごい”をしようとしたところに“しんそく”が決まってハクリューは吹っ飛んだ。なんとか起き上がり“あまごい”をするが、無防備なままウインディの攻撃を受けた形だ。ブルーは“いかく”で攻撃を下げられたので一撃で仕留めきれないと判断したのだろう。危険な晴れ状態を先に変えようとしたが、そのスキをうまくつかれたな。
「げきりん!」
「な、ドラゴンタイプの技?!」
効果は抜群、当然ダウン。天候は有利になったが「りゅうまいハクリュー」を失った。どう立て直すのか。炎一辺倒と見せかけて、端から“にほんばれ”を囮に“げきりん”を決めるのが狙いか。“いかく”で“りゅうまい”をケアしたところといい、意外としたたかだな。
しかも倒して間を置いたことで“げきりん”の効力が切れている。なんでだ? 怒りが収まったとかそんな理由か?
「まだまだトレーナーの判断が甘い。もっと先を読まなければバトルを制することはできんぞ。上は冷え冷え、下は熱々なーんだ?」
「……露天風呂」
「ピンポンピンポン。大正解。体は熱くなっても、頭は冷静でなければ足元をすくわれるぞ、お嬢ちゃん」
ブルーは正解したのに悔しそうだが、カツラの言うことは尤もだ。本当にトレーナーにとってのいい壁って感じ。なぞなぞばっかりで変わっているところはあるが、いいジムリーダーなのは間違いないな。
「くっ。ラーちゃん、お願い!」
「ラァァ!」
ラプラス Lv50 236-91-95-105-161-78
さすが535族。耐久特化だとさすがに硬さが尋常じゃないな。欠点は火力不足。相手に好き放題積まれたりすると厳しいが、ブルーは補助技を混ぜて器用にカバーしている。それにキレたときのラプラスは明らかに乱数が2.0ぐらいに上がってるから侮れない。
「みずタイプか。果たしてこのフィールドに耐えられるかな?」
うわぁ、獲物を見つけた猛禽類の目だ。多分みずタイプはキライなんだろうな。このフィールドで倒すことを楽しんでいるに違いない。ブルー、これはしんどいぞ。
「にほんばれ!」
「あやしいひかり」
「だいもんじ!」
しかしわけもわからず自分を攻撃。その隙にブルーは“あまごい”を使った。ラプラスも使えるのか。カツラは天候を諦め、そのまま“だいもんじ”を使うが40弱しか効いていない。さらにラプラスは“ハイドロポンプ”を使った。ダメージは……フィールドで仮に半減としても……
「ウインディ、戦闘不能」
ギリギリだが倒し切ったな。このラプラス本当に強い。ブルーの手持ちで最も厄介だ。
「よっし! さすがラーちゃん、ほのおタイプには滅法強いわね」
「恐ろしく鍛えられているな。これは骨が折れそうだ。ギャロップ! いけぃ!」
ギャロップ Lv48 135-115-84-92-97-123
「きたわね。いつものいくわよ!(あやしいひかりで動きを止めてほろびのうたで終わらせるわ。頼むわよ)」
「ラー(わかりました)」
“あやしいひかり”のあと“ほろびのうた”を使った。えげつないな。ブルーはかなり習練してほろびの発動タイミングをつかんだらしい。3ターンよりは長いが常に一定というわけでもなく、タイミングを計るのは難しい。最初はよく粘り過ぎて失敗していたが最近はなんとなくわかるようになってきたらしい。
「ここね、交代よ! ソーちゃんお願い!」
「にほんばれ! だいもんじ!」
「いただきっ! アンコール!」
“にほんばれ”を捉えて“アンコール”を使い、うまく補助技を縛った。
素早さは遅いが、基本的に優先度が同じなら、技の出の速さは圧倒的に補助技の方が攻撃技より早い。そのおかげでアンコールはこういう補助技→攻撃技の流れで補助技を縛って攻撃技を止める動きがしやすい。さっきブルーがした「りゅうまいダイブ」もこの流れにあてはまるし頻度は少なくない。
ソーナンスの戦術としてアンコールの使い方を教えてやったのは自分だが、まさか“ほろびのうた”と合わせて使うとは思わなかった。ゲームなら3ターンで発動するからアンコールはいらないので俺では考えもしなかった。ブルー……恐ろしい奴。
「うわぁ。ブルーさん容赦ないなぁ。こわいこわい」
「みゅ。レインみたいになってきてるの。弟子はシショーに似るってホントなのね。ま、えげつなさで言えばレインの方がぶっちぎりだけど」
「ちょっと、そこっ! 聞こえてるわよ! さすがにシショーと同類扱いはへこむからやめてちょーだい。甚だ心外よ」
ブルーは本気で言っている疑惑があるから普通に俺の方がショックなんだが。みゅーって本当に罪な存在だな! こっちは冗談半分で言っただけなのに!
「むむむ! アンコール……珍しい技だな。同じ技を出させるだけの効果、まさかこんな使い方をするとは。ただのトレーナーじゃないな」
カツラは苦悶の表情。ブルーはこっちを見て渾身のどや顔。何もさせずに完封した上、育てにくいソーナンスのレベルも上がった。ここで見事に明暗が別れたな。今のがレベル48で、おそらくエース。ブルーもそれをわかって“ほろびのうた”を使ったんだろう。最後は何が出てくるか。
「これが最後の1匹だな。さて、ここでまたまたなぞなぞだ。この世で最も熱い炎、マグマの中のマグマ。その中で動き出す熱い炎、なーんだ?」
「またぁ? んー、そんなのわかんないわよ、なんのこと?」
「時間切れ……いでよ、ブーバー!」
ブーバー Lv50 148-124-82-150-104-111
「げっ!? まだこんなのいたの!?」
「エースはブーバーだ。こいつは強いぞ。わしの主力と比べても遜色ない」
何気にCがVだ。努力値もCに集中している。けっこうヤバイのが来た。だが1番驚いたのはこいつより強いのが主力だと言ったこと。レベルいくつだ?
「こ、交代よ。ラーちゃん! いくわよ、ほろびのうた!」
「やはりそうきたか。ブーバー、まもる」
あちゃー。ブルーの奴焦ったな。“ほろびのうた”は1回見れば対策のしようはいくらでもある。これで不利になったな。
「やられた……交代よ! 耐えてソーちゃん」
「特大のだいもんじを見せてやれ!」
ダメージは約300、耐えるべくもない。
「なんて威力なの! でも諦めはしない。ラーちゃん!」
(任せてください。お師匠様の前で無様なところは見せません。私を信じてください)
「さぁ、覚悟はいいか?」
「いつでもいいわよ」
「ならば遠慮はしない。だいもんじ!」
(まもるからあやしいひかりよ)
ブルー、テレパシーを使ったな。指示なしでラプラスが技を使っている。あんまり人前で使うのは感心しないが、この状況では仕方ないか。相当追い詰められているからな。
「まもってもムダだ。ブーバーはだいもんじを連射できる」
「うそぉ?! 踏ん張って!」
「ラァァァァァ!!」
受けきった!? なんちゅう耐久力だ。威力540は“だいばくはつ”2発分を超えているんだが。
「あやしいひかりか。ブーバー、正気を保て!」
「あまごい!」
ブーバーがわけもわからず自分を攻撃しているうちに天候を変えた。これで水の半減は消える。一致雨相性フィールド全て込みで威力は270になる。
「ハイドロポンプ!」
「ブバーァァ!?」
「こらえろ! だいもんじ!」
しかし混乱中でコントロールを乱したのか、ラプラスは紙一重でこれを躱した。
「よっしゃあぁぁ! みずのはどう!」
こっちも技を外したら元も子もないから確実に当てにきたな。“なみのり”は水辺でしか使えない。技の選択もきっちりしてきた。隙が無い。
「ブーバァー……」
(やりました! 勝ちましたよブルー!)
「ありがとラーちゃん、よくがんばったわ! だいすき!」
「戦闘不能、だな。わしの負けだ。君には脱帽だ」
「やった!……あっ、はい」
接戦を制しラプラスと抱き合って喜ぶが、カツラが文字通り帽子を取ったのを見てブルーは真顔に戻って黙ったな。なぜとは言わないが。……くっ、こんなベタなボケで笑ってしまった。特にブルーの呆けた顔が不意打ち過ぎる。けっこうお茶目なジムリーダーだな。
カツラってどんなしゃべりなんやろと思ってアニメ見返した記憶があります
ゲームではセリフが少な過ぎるので
なぞなぞは全部そこで言っていたものです
ジムのなぞなぞは一応カギの時にやってますしいいですよね
タイトルもなぞなぞ
これも一般的な答えに加えてもうひとつあります
難しい問題出すのね(みゅーちゃん並感)