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歯の健康メモ
牛乳も噛んで飲む?
【平成13年05月05日号】
東京都小金井歯科医師会 / 山本 恭介

私が小学校の低学年だったころのことです。田舎のおばあちゃんは、「牛乳でも良く噛んで飲むんだよ」と、良く言っていました。しかし、これが貴重な実体験を通しての結論だったことなど知る由もない私には、ばかばかしく聞こえたものでした。

十数年前のことですが、食用に飼育されている牛や豚などは重さで取り引きされますので、早く大きくなるように、高カロリーのものを殆ど噛まなくてよい微細粉にして与えていました。すると、そうした家畜に胃潰瘍が多発したのです。

そこで、噛まなければならない餌の大きさと、早く成長するためのサイズを決めるのに、専門家たちが非常に苦労したそうです。

生体の中には様々の機能系がありますが、それらはいずれも互いに連繋しあい、協調的に働いて、健全な個体の生命を維持しています。

実は、噛む行為によってまず胃液の42%の分泌が促され、同時に、胃粘膜を胃酸から保護するための粘液も分泌されます。つまり、良く噛むことは物を粉砕するだけでなく、胃の準備をさせる働きもあったわけです。おばあちゃんの言葉は、このことを指していたのです。

また、良く噛んでいると、唾液中からはベルオキシダーゼという酵素が出てきますが、これは、発癌物質の変異原性(毒性)を抑えてくれます。さらに、パロチンという唾液腺ホルモンが唾液と一緒に口の中に分泌される途中、一部は血液中へ送り込まれ、骨や筋肉を丈夫にし、老化防止の効果もある、といわれています。

噛むことの大切さについては他にも多々ありますが、昨年の市報11月5日号でも浅野先生が触れておられましたので、重複を避け、後一つだけ例を掲げておきます。

小さい子供の時に、噛まなくても良いものを多く与えられていると、噛む事によって成長するはずの上顎が発達しないと同時に、筋肉も発達しません。

すると、眼窩(目の球が入るくぼみ)は浅くなり、屈折異常(特に軸性遠視)を起こし、そのため、目つきが悪くなり、いつもいらいらするようになったり、ひどい場合には腹痛を訴え、登校拒否に陥ったりすることがあるということです。

噛むことは、歯や顎骨の健全な発育や健常性維持に重要であるばかりでなく、他の生体機能や、精神活動の発育にも関与する重要な行為なのです。