翌日までミュウは見つからなかった。もうどこか遠くに行ったのかもしれない。ブルーからは何があったのかしつこく聞かれたが放っておけばいいと言って俺は取り合わなかった。
「ダメ! ちゃんと探してあげましょう?」
それでもブルーは食い下がり、やむを得ずミュウを探すためにこの日は空から広範囲を見て回ることにした。見つかることはないだろうと思うが、本当にしつこく言われたので仕方ない。
ジャングルをずっと見て回ると大きな湖が見えた。たくさんの水鳥がいる。あれはスワンナだな。“ほうでん”を使ってまとめてイナズマの経験値にしようかと思ったが、その前にあるものを見つけた。
「あれは……ハネ?!」
「どうしたの。その羽なんかあるの?」
「バカ、ハネだぞ?! スワンナの! 回収しなきゃ! いったん逃がさないように俺だけ近づこう。ポケじゃらし総動員だ。逃げたらマズイし、お前はそこで近づかないで待っていてくれ」
自分で直にハネを集めることにした。誰もとらないからだろう、湖のそこかしこにハネが大量にある。夢中になってとにかく片っ端からバッグに入れた。
この時、大量のハネを前に浮かれていたせいで周りへの注意が薄くなってしまった。ハネ集めに夢中になる俺に突然の攻撃。死角から強烈な“10まんボルト”を受け、しびれて動けなくなった。当然周りのスワンナは攻撃に驚いてみな逃げてしまった。後で“みねうち”してハネをとろうと思っていたのに!
「しまった、油断した……」
「みゅーちゃん!? 何してるの!」
「あ……違うの、みゅーはただ……」
ブルーの視線の先に顔を真っ青にしたミュウがいた。今のはミュウの仕業か!
ミュウ……やはりこうなったか。甘かった。さっさと封印しておけば良かった。不覚にも麻痺して体が動かない。これでは勝負にもならない。
「ミュウ、やっぱり攻撃したな。まんまと騙されたよ。……絶対許さない。今度はきっちり封印してやる」
「ひっ! みゅぅ、これはちが……あうっ!」
後ずさりしようとして、ミュウは足を木の根にとられて転んだ。ミュウが逃げようとしたのを見て何とか体を動かしてボールに手をかけると、こっちの動きを察知してミュウはすぐにテレポートしていなくなった。
……相当モンスターボールが怖いらしいな。触っただけで逃げてくれるとは思わなかった。今のは単純にポケモンを出そうとしただけなのに……助かったからいいけど。
「逃げたか。ホント、逃げ足の速い奴。今のは状況的にかなりヤバかったから助かった」
「シショー、派手にやられたわね。大丈夫?」
「ああ。クラボのみを食べればすぐ直る。だが今日はもうダメだ。当分スワンナは戻ってこないだろうし、残りのハネも全部丸焦げだ。最悪だよ。もう先に進む気も起きないし、適当にジャングルをうろついて帰ろう」
クラボを食べながら答えるとブルーは俺の顔をみながら答えた。
「……意外とあっさりしてるわね。是が非でもあの子を探し回るとか言い出すと思ったのに。みゅーちゃんはいいの?」
「いいもわるいもない。俺にあいつを見つけるのは不可能だ。それにこっちから探しに行かなくても、どうせさっきのように向こうから勝手に来る。だから今朝も言っただろ? 慌てる必要はないんだよ」
「思ったよりは冷静なのね……ねぇ、さっき言ってた封印って何なの? 前も言ってなかった?」
「気にするな。言葉の綾みたいなもんだ」
うっかり口が滑ったがごまかして押し通した。強引だったのでかなり気にされているだろうが。
ツリーに帰ると案の定ミュウがいた。さて、こいつをどうしてくれようか。
「あ、あの……」
「よく俺の前に出てこれたな」
「ひうぅ……。みゅーはさっきのこと謝りたくて。さっきのは間違えてレインに当てちゃったの。スワンナに襲われてるみたいだったから助けようと思って、“10まんボルト”がよく効くから使ったら周りにも感電しちゃって……」
どこかで聞いたような話だな。ウソを言っているようには見えない。本当に間違えただけ? ブルーの方を見ると苦笑いをした。
「よ、よくあるわよね。わたしもうっかりやっちゃったことあるからわかるわ。でも、みゅーちゃんは一生懸命だったんだから仕方ないわよね」
「俺としては一生懸命した結果があれなら、わざとやったより悪いな。無能ってことだし」
「みゅううう! 無能じゃない!」
「じゃ、わざとなの?」
「みゅぅー。いじわる言わないで……。みゅーの気持ちも少しはわかってよ。なんでこんなにしてるのにわかってくれないの! ……こうなったら、もう仕方ないの!」
俺が止める間もなく勢いよく宙に浮かんで俺の背中から抱き着いてきた。
不意のことで何もできずにされるがままに抱き着かれ、ミュウに触れた瞬間今までの比じゃないエスパー酔いが襲い掛かった。一瞬気を失いそうになり、そのまま前のめりに地面に倒れた。ものすごい力で腕ごとホールドされて全く動けないので、着地に受け身も取れず体を強打。でもその痛みが気にならない程おかしくなりそうなエスパー酔いが続いた。
「すぐにやめろ……離せっ」
「いや! レインがわかるまでやめない! 早く感じて。お願い、早く!」
「みゅーちゃん! それヤバイわよ! 離れないとシショーすごく苦しそうよ!」
「でも……みゅーはもうどうしたらいいかわかんないもん! こうしないと見捨てられる。みゅーから離れていっちゃうの! 絶対にみゅーは離さない!」
もう意識が保てない。このままでいればもう助からないかもしれない。そんな予感すらする。だが助かりたい一心でなんとかしたいと強く思うと、無意識の中、自分に眠る何かに目覚めて得体の知れない力が沸き上がった。
「いいから……とにかく俺の言う通りにしろっ!!」
体の中の何かが弾けた。すごい力が放出される感覚とともに、ミュウが吹き飛んだ。
「みゅぐっ!?」
「外れた!? くぅぅ……まるでどく状態になったみたいだ。気持ち悪い。今のはなんだったんだ?」
「みゅ……みゅぅぅぅ! なんで、なんでこんなに嫌われてるの? こんな、突き飛ばさなくてもいいでしょ? みゅーはやっぱり出来損ないなの? またずっとひとりぼっちになるの? もう戻りたくない、ひとりぼっちに戻りたくない! なのにレインは冷たい。もう誰もみゅーと遊んでくれない。みゅーはいい子にしてるのに、みんなすぐにいなくなる! みゅーは悪い子なの? なんで? なんでなんでなんでなんでっ!! みゅうううう!!!」
いきなり暴れだしたミュウは無差別に周りに“サイコキネシス”を飛ばし始めた。どれも手加減なしの本気の一撃。当たったらどうなるかは言うまでもない。それがブルーの体を掠めた。
「きゃっ!」
「ブルーッ!? 大丈夫か! ミュウ、すぐやめろ!……ええい、やめろって言ってるだろ!」
「うぐぅう!」
強く念じるように言うと、突然“かなしばり”にあったかのようにミュウの動きがピタッと止まり、俺が力を抜くとそのまま糸の切れた人形のように崩れ落ちた。顔を上げたミュウと目が合い、急にミュウが苦しみ始めた。
「ハァー、ハァー、あぐっ、あぐぅ。ぐる、じぃ……」
昨日のように急に過呼吸になり、心臓の辺りを強く掴みながら身悶えしてのたうち回り苦しみ始めた。明らかに異常な様子にさすがに戸惑ってしまった。
「シショー、何したのっ! シャレになんないっ、すぐにやめてあげて! ホントに死んじゃうわ!」
「俺じゃない! なんでもかんでも俺のせいにするな! 昨日からミュウは急にこうなるんだ。何かの病気かもしれない。さすがに病気のことまでは俺でもわからないしどうしようもない!」
「ウソでしょ!? じゃあみゅーちゃんはどうなるのっ!」
「とにかく様子を見て手当てするしかない。でも見たところ体調に悪いところはないし体力もある。原因が全くわからない」
すぐにアナライズで状態は確認しているが本当に悪いところはどこにもない。何が悪いのかわからないのでは当然手の打ちようもない。完全に手詰まりだ。
「そんな! でもこんなに苦しんでるのよ!」
「はー、はー、ああぐ、ああう、うぐぅ、ぐぐぅぅぅっっ!」
「なら、かいふくのくすり。これでダメならもうどうしようもない!」
ダメ元ではあるが、かいふくのくすりでなんとかしようと思いミュウの体に少し触れた。……瞬間、弾かれたようにミュウは飛び上がり、俺を見た後逃げるようにして離れた!
「いやーーーっっっ!! 冷たいっ! 冷たい手で触らないでっ!! もういやぁぁ!!」
「冷たい? 何言ってるんだ?」
おかしい。基本的にポケモンの体温は人間よりは低い。だから熱いならわかるが冷たいというのはどういうことだ?
「いやいや、許して! もうイヤ! ごめんなさい、わざとじゃないの。役に立って認めてほしかったの! 好きになってほしかったの! みゅーの気持ちわかってほしかっただけなの! もう絶対にしないから許して……言う通りにするから……近くには……みゅぐぅ、苦しい、もうダメ、死んじゃう、ごめんなさい、限界……みゅうぅぅ……」
始め叫ぶようにして必死に懇願していたが、次第に苦悶の表情を浮かべ、何かを言いかけたまま遠く夜のジャングルの中に消えていった。
「シショー、後を追いましょう!」
「……いや、おそらくムダだ。前に言ったが、俺の方からミュウを見つけるのは無理だ」
「やってみないとわからないじゃない!」
「試すまでもない。仮に運よく近づいてもこっちが気づく前にミュウに気づかれてテレポートで逃げられる。幻のポケモンというのは簡単には見つけられない」
「じゃあどうするのよ!」
「体調に問題はないんだ。落ち着くのを待って、それでも戻らなければ探しに行こう」
「……仕方ないわね」
ミュウを待っている間、ブルーがミュウのことで話したいことがあると言ってきた。この前の夜、寝る前にミュウからいろんなことを聞かされたらしい。
話の内容はこれまでミュウがどんな日々を送ってきたか。ミュウは産まれた時のことはあまり覚えていないらしいが、気づいたらこのツリーを育てていたらしい。なぜか本能的にこのツリーを大きくしなくてはいけない気がしたとか。
そんな時、カントーから研究者が来て、この木の成長の手伝いをする代わりにミュウを実験に協力させた。ミュウは面白いと思ってついていったが、すぐに飽きて研究所を抜けて来たらしい。……その時の研究者はほぼみんな死んでしまったらしい。そして、以後人間には姿を見せないようになり、また1人になって人生に飽き飽きしていた頃、俺を見つけたらしい。
ミュウ曰く、俺は一生に一度会えるかどうかというレベルで奇跡的に波長が一緒のエスパーらしい。波長が一緒というのがどういうことかはブルーもよくわからなかったそうだが、とにかくミュウには大事なことのようで、それ故に俺についてきたがるそうだ。
どうもミュウは自分と仲良くなれるのはエスパーの力があって波長が同じ俺しかいないと思ってる節があるようだ。だから俺に嫌われたことを殊更悲しんでいたのかもしれない。
「わかんないけど、波長が近いと仲良くなりやすいんじゃないかな。だからシショーはきっと特別なのよ。きっとエスパーって孤独なんだと思う。シショーが例外なだけで」
「でも、お前とミュウは仲良くなかったか?」
「あ、シショー程じゃないけどみゅーちゃんはわたしともかなり波長が近いらしいわ。最初は気づいてなかったらしいけど」
「……じゃあ、俺とお前も波長が近いのか」
「えっ! あ、それは……そうかもね」
別に深い意味はなく、気づいたことをそのまま言ったのだが、ブルーは顔を赤くして黙ってしまった。
「まぁとにかく、ミュウのことはだいたいわかった。でも、あの発作や冷たいってのは結局なんだったのか……」
「あ、それはたぶん……」
聞くと、ミュウの感情を見る方法はもうひとつあるらしい。目を見るだけでなく、直接触れることでもオーラがわかるらしい。エスパーなら誰でもできるらしく、俺がポケモンに好かれるのはそのためじゃないかとブルーは言った。
「いっつもイナズマちゃんをだっこしたりするでしょ? あれって触れてる部分が撫でるだけよりも広いから、その分だけ感情がよく伝わって嬉しいんじゃないかなって思うの。特にシショーは感情が伝わりやすいのよ。エスパーとしてかなりレベルが高いんじゃないかってみゅーちゃんは言ってた。未熟だけど素質十分みたいね」
確かに、特別な能力はミュウと同じく2つあるし、今思えばさっきミュウが吹き飛んだのはサイコパワーのせいだったとわかる。自分の力であのミュウを吹っ飛ばしたとすると、酔ってばかりのへっぽこエスパーは卒業したらしいな。あるいは、酔っていたのはエスパーの自覚がなかったり精神が最初歪だったせいなのかもしれない。
思えば触れることでエスパー酔いしていたこともあった。ナツメに肩を掴まれた時なんかがそうだ。結局オーラは見たり触れたりすることで伝わるもので間違いなさそうだ。
今までのことも全て説明がつく。イナズマだけでなく、ブルーも抱きしめるとよく喜んでいたし、思えば弟子入りされたあの時、ブルーの目から尊敬や信頼の感情が流れ込んできたように感じたのもエスパーの力だったのだろう。あの時はエスパーでもないのにそんなことできるわけないと思ったが、本当にエスパーだったなら出来て当然か。結局知らず知らずのうちに自分のエスパーの力に振り回されていたのか。
俺が納得したのを感じたのか、ブルーは話を続けた。
「それでね、シショーがみゅーちゃんを拒絶すると、オーラを冷たく感じるらしいの。それが触れたときに伝わって、推測だけど、みゅーちゃんが嫌われてることを突き付けられたように感じて耐えられなくなったんじゃないかしら。さっきいきなり抱き着いたのも、目よりも触れる方が自分の気持ち、つまりオーラを直接伝えられるからそうしようとしたのよ」
なるほど。冷たいとかもそういうことか。だっこにやたら拘っていたのは甘えていたわけではなく、オーラを伝えて自分の気持ちが本気だって教えたかったのか。だったらそう先に説明すればいいのに。
「ということは、あの発作は心の問題だった可能性が高いな。エスパーってのは情緒不安定過ぎるよな。一々精神に引っ張られて、他人から嫌われたぐらいで呼吸困難になるほど苦しむなんて」
「ちょっと、シショーも他人事じゃないでしょ! ミュウだミュウだって言ってた頃はすっごく荒れてたじゃない! 今だからわかるけど、あれは絶対エスパーのせいよ!」
俺も気づかないうちにエスパーのせいで苦しんでたのか。この力も本当に考え物だな。
「それに、シショーはやっぱりわかってないのよ。みゅーちゃんにとってはきっとシショーは最後の頼みの綱なのよ。だから必死なの。もしシショーに嫌われたら、一生孤独になる覚悟をしている。もう後がないのよ。たくさん聞いたわ。仲良くなりそうになっても、いっつも気づいた時にはいなくなっているんですって。そのせいか波長が近くない人はそれだけで好きになれないみたい。だからどんなにひどいことされても、どんなに嫌われても、シショーにだけは健気についてくるのよ!」
それを聞いてハッとした。思えばいつもそうだ。ブルーも、シショーしかいないといって地の果てまでストーカーするとまで言った。ナツメも、天涯孤独を破れるのは俺だけと言っていた。ミュウも同じだったってことか。
わかってしまった。それでも、それを認めたくなくてつい言い訳がましい言葉を並べてしまった。
「だからといって何をしてもいいということにはならないし、相手の都合なんて俺は知ったことじゃない」
「それはそうだけど、みゅーちゃんってきっとまだ幼いのよ。人生経験はあんまりないから、なんにもわかんないんだと思う。両親もあんまり覚えてないみたいだし。わたし達だって、わからないことはどうしようもないじゃない。なのに、みゅーちゃんにはそれをわかれというのは酷よ」
「……」
「それにね、わたし思うの。きっと、みゅーちゃんみたいな子をちゃんと育ててあげるのはシショーの、いや、トレーナーの役割だと思うの」
「トレーナーの?」
「そう。わたしなりにいつも考えていたの。シショーの育て方とか、考え方とかを見て、ずっと。それで気づいたのよ。トレーナーはただレベルを上げるだけじゃダメ。ポケモンのために何ができるか考えて、1番いい育て方をしてあげないとダメだって。ただ戦わせるだけじゃない。本当の意味でトレーナーになるのってこういうことなんだってわたし感動したんだ。それってさ、ポケモンを導いてあげるってことでしょ? なんか、シショーが神様みたいに思えて……それに、いつも愛情を持って接してる。きっとポケモンにとっての幸せってこういうことなんだって思ったの。もちろん、わたしもそうできるように努力したわ。だからね、みゅーちゃんもシショーのやり方で導いてあげるべきだと思うの。みゅーちゃんを導いてあげられるのは世界でシショーだけなんだから。トレーナーである以上、それは果たすべき役割なんだと思う。シショーの言葉でいえばトレーナーの責任ってやつよ」
「……俺が導く、か」
「そうよ。シショーは元々誰かを導くのが上手いもん。ポケモンだけでなく、わたしもそうだし。わたしのこと、弟子にして後悔してないでしょ? シショーが導いてくれたおかげでわたしはここまで来れた。みゅーちゃんもきっと同じように仲良くなって導いてあげられるわよ。だから、みゅーちゃんも助けてあげて。手のかかるポケモンほど、トレーナーの腕の見せどころでしょ? ここで諦めちゃったら、わたしのシショー失格にするわよ?」
その時、目が覚めるような思いがした。そして悟った。俺がここに来たのは誰のせいだとか、そんなことは問題ではなかったんだ。導くべき者がいるから、果たすべき役割があるから、来るべくしてここに行き着き、俺は旅に出ることになったんだ。もしかしたら、ミュウの言うように最初から決まっていた運命だったのかもしれない。
そしてもうブルーは俺の手を離れた。すでに自分の道を歩き始めている。俺なんかよりもトレーナーとして本当の意味で大切なことがわかっている。知識がどうとか戦術がどうとかはあくまで枝葉に過ぎない。最も大切なことはポケモンとどう向き合うか。どう導いてあげるか。いまさらそんな大事なことを弟子に諭されているようでは、シショー面できる時間はもう長くないかもしれない。
「ブルー」
「何?」
弟子は卒業だ、と言おうとしてやっぱりやめた。リーグが終わるまでぐらいはシショーでいたい。……ブルーの越えるべき壁として。せめてそこまでは見届けてあげよう。
「……いや、何でもない。お前の言う通りだ。やっとわかった。なんで俺がここにいるのか、そして何をすべきか。ずっと悩んでいた大事なことがやっとわかった気がする。感謝するよ。本当にありがとう」
ブルーの目をしっかり見てお礼を言った。
「え、いや、別にたいしたことじゃ……」
照れるブルーに、ぽつりとつぶやいた。
「なぁ知ってるか。トレーナーには2種類の人間がいるんだ」
「え、なんの話?」
「ひとつは、トレーナーがポケモンを引っ張るタイプ。俺みたいなタイプだ。トレーナーの力で多少の壁は簡単に乗り越えていけるから最初は苦労しない。でも、始めからある程度完成しているし、1人だけで成長するから伸びしろには限界があるだろう。もうひとつは、トレーナーがポケモンにも引っ張られて強くなるタイプ。トレーナーが未完成だから最初はかなり苦労するが、周りに支えられて一緒に強くなれる分、きっかけを掴めば互いに補い合ってどこまででも強くなれる可能性がある」
「それって、もしかしてわたしのこと?」
「……お前はさ、どっちが最終的に強くなれると思う?」
「えっ……それは……」
驚いたというよりまだわけがわかっていないような表情のブルー。いくらなんでも過大評価過ぎたかな。
「なーんてな。そろそろ落ち着いただろうし、お姫様を助けに行くか。お前はゆっくりここで待っていてくれ」
「みゅーちゃんのところにいくの? でも大丈夫? 1人だと見つけられないんじゃ……」
「お前の話を聞いてどこにいるか見当はついた。絶対にミュウはそこにいる。それに上手くやれば逃げもしないだろう」
「ホントに?……あっ、今の話だけど、わたしから聞いたことは言わないでちょうだい。実はみゅーちゃんにはシショーに言わないでって口止めされていたの。でも、話した方がいいと思ったから……」
「わかった。上手くする。ヒリュー」
ヒリューに乗ってミュウがいるであろう場所へ飛び立った。予測は簡単だ。ミュウにとって1番大事なのは俺から嫌われないことなのはもう疑いの余地がない。ならばさっきのことを深く後悔しているはず。去り際にも謝ろうとしていた。なら、悔いのある者はその過ちを犯した場所へ戻ろうと思うだろう。
……罪の意識に導かれるように。
今回大事だったのがわかりますか?
ここが主人公にとっての分水嶺になっていました
ここから(基本判明した範囲で)怒涛のネタバレ解説(ネタバレというか伏線?)
イヤならスキップしてください、スペース空けときます
あらすじで役割がどうとか触れてるのはこの話のことです
この世界に来た理由について度々モノローグが入っていましたが、それに対して今回主人公に答えを出してもらいました
根本的な話なので完全に宙ぶらりんにしとくのは気持ち悪いですからね
あくまで主人公の答えであって、真実は判明してません
それについてこれ以上触れる気はないですので、言及することは以後ないかも
ついでに今更ですがあらすじの未知の波動はミュウの波動ですね。一応未知の(新種の)ポケモンからの波動の影響なので
適当に言ったんとちゃいますよ
また、レインのブルーに対する思いや考えもここではっきりして、大きな分岐点になりました
この弟子は結局シショーにも今回大事な言葉を残してくれたのでレインにとっても大事な役割を果たしてくれたわけですね
とっても気になるみゅーちゃんに関しては、今回ほぼ自発的に探しに向かったことでもうわかるでしょうが仲直りに行きます
ずっと言いたかったんですがみゅーちゃんはもうあらすじの時点で決まってたんですよ
あらすじで「エスパーとかストーカーとかに絡まれながら冒険する話」とあるのは「時には絡まれて」とかじゃなくて「ながら」にしてるのは恒常的な並列行動、みたいな意味のつもりで「ながら」を選んでいました
つまり一緒に……ということですね
雑な文なのでナツメになんかされたりしたことを指しているとか色々解釈はまあ、できますが、一応作者の意図としてはエスパーとストーカーはミュウとブルーを登場順に並べたつもりでした
一章三話のエスパーもナツメだけでなくみゅーちゃんも指しているダブルミーニングでした
誰かは気づいてますよね、誰かは……
あと本編ふつうに補足すると、ポケモンは人間より体温が低いという新説がありますが、これは水の都の映画で言ってた発言を参考にしています
もちろんグレンとかは人間よりも体温高いですので大まかな傾向としての話と思ってください