2018年、デビュー35周年を迎えた杉山清貴。
5月5日、“杉山清貴&オメガトライブ”として行った日比谷野外音楽堂でのライブには、入りきれないファンが場外に溢れかえる状況で、2年8ヵ月という短い期間しか活動していないにも関わらず、今なお彼らの音楽を愛し続けているファンが多いことを証明した。
その野音ライブから間もなく、35周年記念となる新作「MY SONG MY SOUL」がリリースされた。そのアルバムは、AOR、R&Bをベースとしたエモーショナルでグルーブ感のあるナンバーが並んだ出色の出来栄えだ。
今回は、直近リリースされたアルバムについて、また杉山清貴&オメガトライブのライブを振り返っての想いを訊けた貴重なインタビューをお届けする。
取材・文 / 山田邦子 撮影 / 荻原大志
ライブ写真提供 / KING RECORDS
今回は「楽しくやりゃいいんじゃない!?」ぐらいな感じでした
杉山清貴&オメガトライブが「SUMMER SUSPICION」でデビューしたのが1983年。35周年となる今年5月5日、日比谷野外音楽堂で久しぶりに杉山清貴&オメガトライブとしてライブを行なわれたわけですが、本当に楽しそうでしたね。
楽しかった。あんなに楽しいライブは滅多にないです(笑)。
語弊の無いようにお願いします(笑)。
何の責任もなく…あ、これも語弊が(笑)。昔の悪ガキが集まって昔と同じことをやってるっていう感覚だったけど、でも責任感っていうか、昔やってた時の方がもうちょっと神経質だったなと思いました。当たり前だけど、リアルタイムでやってたわけだから真剣さは強かった。でも今回は「楽しくやりゃいいんじゃない!?」ぐらいな感じでしたよね。
SUGIYAMA KIYOTAKA
The open air live “High & High” 2018@ 5月5日 日比谷野外音楽堂
この日は全てのシングル曲と1stアルバム「AQUA CITY」の全曲が披露されました。当時の感覚との違いや変わらない部分などはありました?
昔より上手いだろって感じはありました(笑)。演奏も歌もコーラスもね。だけど20代からアラ還になっても、やっぱりあいつらと音を出すと当時の感覚がドーン!と来るというか。ドラムのグルーヴ感とか、ギターのカッティングとか、当たり前ですけど”ここ”がオリジナルじゃないですか。オメガの曲は今もいろんなミュージシャンとやったりしてますけど、それはあの音をみんながコピーしているわけで。オリジナルとの違いは大きいです。たとえばミック・ジャガーが素晴らしいミュージシャン達とストーンズの曲をやったらそれはそれでかっこいいけど、やっぱりストーンズのメンバーで出すあの音にはかなわない。バンドってこういうことだよなって思いましたね。
なるほど。
あとは歌詞。当時は、歌詞からいろんなこと知ったんだよなあってことも思ったりしました。(秋元康さんが作詞した「MIDNIGHT DOWN TOWN」という曲で)「あなたが忘れていった銀色のアンクレット」って歌詞があるんだけど、当時アンクレットなんて知りませんでしたからね(笑)。僕らもそうだったけど、当時小学生とか中学生だった女子達も「あの曲で、こういう言葉を初めて知りました」っていう人が結構いたりして。やる側も聴く側も、あの頃は音楽の中で大人になっていってたんですよね。みんなが歌を聴いて、早くああいう風になってみたいなとか、こういう恋をしてみたいなとか、憧れを抱きながら大人になっていた時代の楽曲だなってあらためて感じました。
来年2月からは、杉山清貴&オメガトライブとしての全国ツアーが行われることも発表されました。どんな曲が聴けるのか、楽しみです。
今回は本数も結構あるので、日によってセットリストを少し変えるのもアリかなと考えてます。せっかくの35周年ツアーなんだし、全部同じだったらやる方も飽きちゃいますからね。ファイナルはデビュー日である4月21日(日)、地元の神奈川県民ホール大ホール。思い切り楽しみたいです。
SUGIYAMA KIYOTAKA
The open air live “High & High” 2018@ 5月5日 日比谷野外音楽堂
「MY SONG MY SOUL」は、何の迷いも非の打ちどころもない、非常に完成度の高いアルバム
そしてもうひとつ、杉山清貴ソロとしてのニューアルバム「MY SONG MY SOUL」がリリースされました。
ソロデビュー30周年の2016年に「OCEAN」というアルバムを作ったんですが、そこで、セルフプロデュースで杉山清貴というアーティスト像を作り上げるのはひとつやり遂げたかなと思ったんです。で、じゃあそこから新たな世界へというタイミングでMartin Naganoさんというプロデューサーに出会い、去年「Driving Music」というアルバムが出来た。今思えばお互いに「何をどこまでやれるんだろう?」って手探りの部分もあったと思うんだけど、今回の「MY SONG MY SOUL」は、何の迷いも非の打ちどころもない、非常に完成度の高いアルバムになりました。
「MY SONG MY SOUL」、このタイトルがまたシンプルだけど深くて。
レコーディングを始めてすぐくらいの時点で、ふとこの言葉が浮かんできたんです。ソウルと言ってもソウル・ミュージックっていう音楽のジャンルだけを指しているわけではなく、いわゆる僕の中にある、音楽に対する思いみたいなものが表れたような言葉かなと思います。
アルバムは、ご自身もシンガーソングライターである澤田かおりさんが手がけたバラード「月に口づけ」で幕を開けます。
「今回は違うよ」っていうムードをはっきりと伝えるためにも、1曲目はこれだよねというのが最初からプロデューサーとも一致してました。彼女がピアノも弾いてくれて、ベース、ドラム、フリューゲルホルンと歌。クリックも外して、みんなで「せーの」で録ったんです。イントロもなくスッと始まる感じがすごくいいんですよね。
杉山さんが作詞された「My sweet lady」は、年の離れた恋人とのラブソングにも聴こえますが、実は…。
娘の成長を心から喜んでいる父親の歌です(笑)。久しぶりに娘と会ったんですよ。親子とはいえ、離れているとちょっとぎこちない部分もあるのかな、なんて思うじゃないですか。父親と娘だし。だけどそんなことは全くなくて、大人にはなっているんだけど中身は小さい頃のままだったんです。それがとても心地よくて。その気持ちが、スーッと歌詞になっていったのがこの曲です。
作詞はこれまでもたくさんされてますが、ちょっとなかったタイプの歌詞ですよね。
昔の仲間たちに聴かせたら、「歌詞がガチでいいね」と(笑)。確かにそうなんですよ。この年になって、ただの絵空事はもうね。もちろん美しい絵空事も素敵ですけど、どこかにガチさがあるとグッと引き込まれる感じになる。今回「Yokohama north dock」という曲でも歌詞を書いてるんですけど、この曲もそういう意味ではガチですね。この曲の音から、本牧とか、Bar「スターダスト」がある瑞穂埠頭エリアとか、あの頃の時代の景色が見えてきたんですよ。それで、これは自分で歌詞を書かなきゃって思って。
今回のアルバムのジャケットなどは、そのBar「スターダスト」で撮影されてるんですよね。
はい。20代の頃、みんなカッコつけて遊びに行ってたんですよ。本牧のD突堤のあたり、「アロハカフェ」とかね。「スターダスト」にはマスターと一緒に撮った30年前の写真があって、それも今回ジャケットの中面で使わせてもらいました。
そういう場所には、独特のカルチャーがあったんでしょうね。
ありました、ありました。「スターダスト」の目と鼻の先はもうアメリカの施設だし、そもそも50年代からある店なので、もうその場所に根付いているものがあるっていうか。いわゆるこういう仕事してる人たちも当時はいっぱい来てたけど、みんな粋だったよね。いろいろあったと思うけど(笑)、誰も不粋なことは言わずに楽しんでました。
先ほどの話じゃないですけど、そういう時代やカルチャーを体験していない立場からすると、歌の中に憧れを抱くってこういうことなんだなと思いました。
あぁ、そうですね。なんかこう、そういう自分の歩んできた道っていうのかな。ずっと「海!」とか「ハワイ!」ってやってきたけど、やっぱり横浜だぜっていう。ちょっとここで1回腰を下ろすみたいな感覚でもありました。
しかし同じ「海」でも、ビーチと港じゃ全然違いますね。
違う違う。僕が生まれて育った実家は、自転車でちょっと走れば港なんですよ。そこそこ大きくなってからは湘南だなんだってビーチカルチャーになったけど、基本的には港っていうのが自分の中にあって、子供の頃はいつも釣りをしたりしてたんです。冬の朝は、海面に立ち込める霧がずっと沖まで続いていてすごく幻想的だったんですよ。「あの向こうにアメリカがあるのかな」なんて、ガキの頃から考えてた(笑)。
その頃の景色が目の前に広がる気がします。今回の楽曲、いろんな世代の方にお聴きいただきたいですね。
今回のアルバムは、今みたいにキラキラした感じじゃない、そういうちょっとくすんだ街の景色みたいなものが描かれてます。余談ですけど、この前ラジオから流れてくるこのアルバムの曲を聴いてたら、全然違って聴こえたんですよ。電波に乗るとこういう聴こえ方をするんだって、それがすごくいい感じで感動したんですよね(笑)。どの曲もかなり個性的で、攻めてるものばかり。あらためて「いいアルバムだなあ」って思ってますよ。
ライブ情報
35th Anniversary 杉山清貴 scoustic solo tour 2018
2018/6/9(土) 鹿児島市民文化ホール(鹿児島県)
2018/6/10(日) 日奈久ゆめ倉庫(熊本県)
2018/6/16(土) レソラホール(福岡県)
2018/6/17(日) NBCビデオホール(長崎県)
2018/6/30(土) 大阪市中央公会堂 大集会室(大阪府)
2018/7/13(金) 仙台Rensa(宮城県)
2018/7/15(日) 青森Quarter(青森県)
2018/7/16(月) 秋田Club SWINDLE(秋田県)
2018/7/22(日) 新潟LOTS(新潟県)
2018/8/11(土) 京都府立府民ホール“アルティ”(京都府)
2018/8/18(土) 沼津市民文化センター 小ホール(静岡県)
2018/8/19(日) クリエート浜松2Fホール(静岡県)
2018/8/26(日) ハーモニーホール座間 小ホール(神奈川県)
2018/9/2(日) 焼津文化会館 小ホール(静岡県)
2018/9/8(土) 北野文芸座(長野市)(長野県)
2018/9/16(日) よみうり大手町ホール(東京都)
2018/9/17(月) よみうり大手町ホール(東京都)
2018/9/22(土) ランドマークホール(神奈川県横浜市)
2018/10/20(土) サンシティ越谷市民ホール・小ホール(埼玉県)
And more…
杉山清貴&オメガトライブ ツアー2019
2019/2/2(土) 三島市民文化会館(静岡)
2019/2/8(金) 中野サンプラザホール(東京)
2019/2/9(土) 中野サンプラザホール(東京)
2019/2/23(土) サンポートホール高松大ホール(香川)
2019/2/24(日) オリックス劇場(大阪)
2019/3/10(日) 新潟県民会館大ホール(新潟)
2019/3/16(土) 日本特殊陶業市民会館フォレストホール(名古屋)
2019/3/30(土) 上野学園ホール(広島)
2019/3/31(日) 福岡サンパレスホテル&ホール(福岡)
2019/4/13(土) サンシティホール大ホール(埼玉)
2019/4/14(日) 仙台サンプラザホール(宮城)
2019/4/21(日) 神奈川県民ホール大ホール(神奈川)
杉山清貴
1983年4月、杉山清貴&オメガトライブとして「SUMMER SUSPICION」でデビュー。1986年5月、「さよならのオーシャン」で、ソロ・デビュー。 80年代のミュージックシーンを疾風のごとく駆け抜けたJ-POP/J-AORのカリスマ的存在。独自の世界を確立し、ソロ・アーティストとして一時代を築いた杉山清貴。ソロでの活動のひとつとして全国ファンへ向けた、ギターでの弾き語りの「アコースティックLIVE」から大規模ホールでのコンサートツアー(フルバンド)、そしてライブハウスへの出演など幅広い演奏活動を年間通じて展開している。2013年デビュー30周年を迎え、記念シングル&アルバムのリリース、日比谷野音2DAYS等を行った。2018年、デビュー35周年を迎え、恒例の野音に杉山清貴&オメガトライブが再集結し、大成功を収める。
オフィシャルサイト
http://islandafternoon.com/