Another Trainer   作:りんごうさぎ

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信頼のドラゴン編
1.行きはよいよい 帰りはこわい


 ブルーと一時的に行動を別にして、久々の一人旅。今まではブルーと歩幅を合わせる意味で封印してきたあのアイテムがようやく日の目を見るときが来た。“じてんしゃ”だ!

 

「ヒューーー、はええ!」

 

 ハナダの東の道は段差が多く距離も長い過酷なところだが、じてんしゃがあれば楽なものでスイスイ進めている。しかもこれにはもうひとつメリットがあって、一気にトレーナーの横を駆け抜けられるので簡単には勝負を挑むために捕まったりしない。

 

 ゲームなら“おろかにも”一時停止するのでバトルは強制だが、さっさと通り過ぎてしまえばそんなことにはならないのだよ。

 

 このペースは予想以上に速いので、このままだと何日も待つことになるかもしれない。少しのんびりと休憩するか。人が減ってくる中腹辺りで一度休むことにした。いつものようにけづくろいをしながらのんびり景色を見ていると、突然異変が起きた。ドドド、と遠くから地面を揺るがすような音が聞こえ始め、それは段々大きくなってきた。グレンに乗って様子を見に音源の方へ向かうと、とんでもない光景が見えた。

 

「トレーナーがこっちに向かってくる!」

 

 ポケモン勝負からは逃げられない!

 

 狂気を感じて次のポケセンのあるところまで急いで逃げた。多分建物の中までは追ってこない。その予想は当たり、なんとか事なきを得た。やっぱりトレーナーを撒くこと自体は難しくないな。楽ちん楽ちん。明日もこの調子で行こう。

 

 しかしそれも甘かった。なんと翌日も外にかなりの数のトレーナーがスタンバイしていた。一度効力は切れて無効、とはいかないらしい。さすがにここまでするのはリアルの常識に当てはめればおかしいと思うが、ここは現実だがゲームでもあるということか。結局全員と戦うことになった。

 

 しかし、やっぱりここは現実でもある。トレーナーは転んでもただでは起きない。わざとボールに戻さずに連戦する、というゲームでは不可能な戦術により、アカサビさんが大暴れして一気に全員倒した。さらに連戦をハンディに見せながら賞金を釣り上げていき、とんでもない荒稼ぎした。もちろん両者合意の上の事、何の問題もないのだった。結果的には効率的に賞金と経験値を稼げた。多数のトレーナーを相手にする時はこれからもこの方法で乗り切れそうだ。

 

 ◆

 

 回復した後“むじんはつでんしょ”に向かった。水路は“なみのり”要員不在で通れないので山道をスプレーを使って進んだ。ゲームには本来ないルートだ。距離は近いのですぐに着いた。

 

 建物の中は無人のはずなのにかなり明るく電気が通っている。電力が十万、いや充満している。スパークとか使ったら大変なことになるんじゃないか。めっちゃショートしそう。

 

 施設の中を進んでいると、お決まりのマルマイントラップもあった。もちろん、遠目にポケモンとわかったので、遠距離攻撃でおいしく経験値にさせてもらった。いい道具もたくさんあり、特に“かみなりのいし”や“エレキブースター”などがいくつもあった。

 

 ゲームではイメージ通りの道具で不思議じゃなかったが、冷静に考えるとなぜライチュウやエレキブルを見かけないのか、謎が深い。

 

 そして最奥。すさまじいプレッシャーは特性のせいだけではないだろう。伝説と呼ばれたポケモン、サンダーがそこにいた。出かけていて留守、なんて展開も予想してただけに、あっさり見つかってラッキーだったな。期待を込めて久々のアナライズをした。

 

 サンダー Lv50 なまいき 

 個 20-17-12-22-13-11 

 実 160-92-96-141-111-99

 

 えー。これはハズレか。能力がおいしかったら頑張って育てようと思ったが、素早さが性格補正で下がるんじゃさすがにきついよな。よく考えればでんきタイプはイナズマもいるし諦めるか。だがせっかくだし、経験値にはなってもらう。

 

「ギャリギャリギャリ!」

 

 挨拶代わりの“ほうでん”か。だが対策は万全だ。

 

「シャア!」

 

 出番が来た、とばかりに俺の前に躍り出て、全ての攻撃を吸収した。このイナズマの“ちくでん”こそ最大の盾。これでサンダーの8割方の攻撃手段を封じた。

 

 イナズマ 

 技 110まんボルト

   2めざめるパワー

   3あくび

   4バトンタッチ

   5まもる 

   6みがわり

   7こうそくいどう

   8シャドーボール

   9でんこうせっか

 

「ギャリギャアア!」

「3!」

 

 電撃がダメなら直接来るしかない。“ドリルくちばし”をしてきたその瞬間に“あくび”を決めた。後は簡単。時間を稼いだ後“10まんボルト”を連打。なぜかいつもより威力が高い。この場所のせいかもしれないな。おかげであっさり勝ててしまった。万全の状態で挑めば、野生のポケモンに後れを取るなどありえないからな。

 

 聞いた話では伝説のポケモンは秘境にいて、「会うは幸運、勝てれば奇跡、捕獲できれば伝説級」ってのが常識だったが、なぜ勝つのにハードルがあるのか謎だな、これでは。いや、むしろ捕獲に難易度が上がる方が謎か、普通に考えれば。

 

「ダーッス!」

 

 そんなことを思案してるとイナズマが飛びついてきた。

 

「おっと、よしよし。ああ、もちろんよくやった。伝説のポケモンを倒したんだからな」

 

 ポケモンにとっても大金星だという認識なのかな。イナズマは嬉しそうに喜んだが俺を呼んだのは別の意図もあったらしい。イナズマに引っ張られてついていくと、なんと“ふしぎなアメ”が落ちていた。

 

 まずお前道具として存在したのか、という驚きと、元の在処と全然違うところにある驚き、そして今まで一度も話を聞かなかった驚き、そしてその理由を考えて頭を悩ませた。話を聞かないから存在しないものだと思っていたが、こうして出てくるなら色々活用もできそうだな。

 

「ギャリギャリ!」

「なにっ!? イナズマ!」

 

 考えている最中突然背後から“10まんボルト”がきた。とっさにイナズマを盾にしてダメージはないがどういうことだ? こいつはたった今倒したばかり。なのにアナライズすればHPが半分近く回復している。おかしいぞ。

 

「理由はわからないが仕方ない、もう一度やるぞ!」

 

 もう1回戦って新たに気づいたことがある。1つはふしぎなアメの出どころ。今度はハッキリ見た。倒した瞬間、サンダーが落としていた。そして、サンダーは戦闘中も含め、常に超回復し続けていた。

 

 伝説を倒すのが困難なのがなぜかようやくわかった。おそらくこの場所は電撃の威力を高める効果があるから、ここに限らず伝説は皆地の利で能力を増すものなんだろう。そして回復し続けるので不死身であり、ひんしにして捕まえるというこの世界の捕まえ方は通用しないので捕獲も困難。なるほど苦戦するわけだ。道中の疲労なども重なればなおさら簡単にはいかなさそうだ。だが、俺にとってはどうか。倒せばアメ。すぐ回復。レベルは格上なので補正もつく。

 

「絶好の稼ぎ場じゃねえか!!!」

 

 当然だが、俺は1日中サンダーを倒し続けた。なんかソウルに火がついてしまったらしい。しまいにはサンダーの方が勘弁してくれと頭を下げてきた。通訳はイナズマだ。

 

「仕方ないか。アメもどういうわけか途中から出なくなったしレベルも十分上げられた。もう潮時か。よく考えたら野生のポケモンを無意味にいたぶり続けているようにも見えなくはないからな。この辺にしとこう」

「ギャリー……」

「……さて、俺にはなんと言っているのかわからない。が、レベル上げに協力してもらった礼ぐらいは渡そうかな」

 

 なんとなくその視線が俺を責めているように感じられたので、一応努力値下げのきのみを渡すことにした。気持ち視線の強さが和らいだ……気がした。

 

「これでもう用はない。さっさと外に出るぞ」

 

 そういって帰り用の出口へ進もうとするが、なぜかあるはずの扉がない。まさか、いや……そんなはずはっ。

 

「ダーッス」

 

 無情にもイナズマの指し示す方向は元来た道。これはもしかしなくても元来た道を戻るパターンですか。

 

 いや、最初からよく考えればすぐわかったはずだ。扉が出口にあったら、それはもうただの入り口だってことが。帰り用の出口なんてあれば最初からそこを使って入っている。つまり、そんなものあるわけないのだ。出入り口の真ん前に伝説がスタンバっているというゲームのあの仕様がおかしいのだ。じゃあ出口がなければ結果どうなるか。

 

「スプレーが、足りない!」

 

 帰り道で無人発電所の本当の恐ろしさを味わった。行きはよくても帰りがキツイ

 

 相手の電気技はフィールド効果のようなもので威力が文字通り倍増。しかも定期的にどこからかビリリダマが転がってきて、“じばく”を繰り返す。HPが1自然回復したらそれでまた“じばく”するのでとにかくビリリダマを見たらすぐに離れないといけないことを覚えた。

 

 さらにでんきにでんきタイプが引かれてくるので、ポケモンがポケモンを呼び、結局中のほとんどのポケモンを倒して外に出た。行きのスプレーは無駄だった気がする。今度からはスプレーは大量にストックしておくことにした。発電所を抜けた後、そのまま南へ下って、イワヤマトンネルを無視する形でシオンタウンへ向かった。これ以上戦闘したら死ぬ。

 

 ◆

 

 まだ数日しか経っていないが、もうシオンタウンに着いてしまった。とりあえず念のためにロケット団の足取りやレッドたちの足取りを聞き込みしてみることにした。

 

 曰く、ポケモンタワーの幽霊事件はレッドという少年が少し前に解決。

 

 曰く、ロケット団はさっさと逃げて行った。今の消息は不明。

 

 曰く、フジ老人は無事。カラカラも今は元気。あんたもポケモンハウスに寄っていけ。

 

 曰く、タワーの2階以降にはゴーストポケモンを持ってないなら上がるな。

 

 曰く、ゴーストポケモンは同じゴーストポケモンを持ってないと捕まえられない。

 

 色々わかった。そして考えた。まず、ロケット団はタイムリーでタマムシにいる可能性が高い。やっぱりブルーと鉢合わせたな。そしてもうひとつ。最後の1つはウソだ。なぜなら最初の1匹を捕まえた人間はどうやって捕まえたんだ? 矛盾している。

 

 だから俺はタワーに登ることにした。無理と言われればやってやりたくなる。ついでに伝説をとり損ねたからゴーストポケモンの1匹でも捕まえたいな。ブルーといるとそういうことに気が回らないし。

 

 俺は昔番人のゴーストを倒しているし、余裕だろうと思っていたがそれは甘かったことをすぐに悟った。タワーの内部はまさに魔窟。ゴーストタイプの厄介さをすぐに理解した。

 

 まず、神出鬼没なところ。ゲームみたいに馬鹿正直に目の前に現れたりしない。背後ならまだマシで、最悪床下からも襲ってくる。これでは常に神経が張り詰めたままだ。

 

 次に奴らは絶対に倒せない。弱ってくると壁抜けですぐに下の階へ逃げる。すり抜けだから追えないしすぐ抜けるので止めるのも不可能。

 

 最後は地の利。迷路のようになっている上に、ところどころ毒ガスが濃くなっていて通れない。肝心なところをピンポイントで通れなくして迷宮化に一役買っている上、霧と紛らわしいので間違えて通りやすい。この毒霧がなければ設計したときはこんな入り組んではなかっただろう。内部のトレーナーが全員ゴースト使いで、町の奴がああいっていたのもこういう理由からだろう。ゴーストなしじゃ、どう考えても詰み。そう考えるのが当然。

 

「普通のトレーナー、だったらの話だがな」

「ゴ~ッス!」

「サイッ!」

 

 “つばめがえし”で一撃。俺はこの目のサーチでどこから来てもすぐわかるし、毒霧もモモンで問題なし。敵は一撃で倒すので討ち漏らしもない。タネがわかって慣れてくればちょいめんどくさい程度のものでしかなかった。

 

 ひんしになると壁抜けはしないようなので最初のゴーストタイプを捕まえるだけなら簡単だが、どうせならもっといい奴を探すことにした。

 

 あっけなく最上階。だが、そこで面白いものを見つけた。辺りは全くポケモンの気配がしない。霧もなく、見通しはいい。何もない。だが、俺はサーチではっきりと感じ取っていた。“そいつ”の存在を。

 

 バシッバシッ!

 

 突然何かが飛んできた。避けるとその先で水が落ちてくる。さらに躱した先にはマネキンが2体飛来。襲いかかって来たそれらを蹴り飛ばし、最後に飛び出してきた“そいつ”に向かってアカサビに“つばめがえし”を打たせた。

 

「ゲンガッ?!」

 

 ゲンガー♂ Lv30 うっかりや イタズラがすき

 個 26-24-24-31-5-31

 

「これで俺の勝ちだな。イタズラがすきみたいだが、やる相手を間違えたな」

「ゲエエエ!」

 

 言いたい気持ちはわかるがその声はややこしいからやめろ

 

「サイ!」

 

 ふむ。こいつは初めていたずらが失敗してえらく悔しいらしい。まあいきなりあんなことされたら普通は驚くわな。何もないと思っていればなおさら。その辺りは、こいつもさすがというところだな。

 

「なあ、お前、そんなに悔しいなら、俺と一緒に来るか? そうすればもっといろんな奴に会えるし、俺を驚かせることもできるんじゃない?」

「ゲエエエン?……ガーガッガッガ!」

「サイクッ!」

「あ、あれが承諾なのか? 笑ってるだけに見えてそういう感じしないが……あっさりしてるな」

 

 本人曰く「勝ち逃げはさせない。そしておれは面白いとこへならどこへでも行く」ということらしい。もう俺は面白い人間という認識なんだな。

 

「それなら、心置きなく仲間にしようか。よろしくな」

 

 こうして4番目の仲間は意外な奴になり、今までとは異色な感じのメンバーとなった。ニックネームはどうしようか。

 

「じゃあ、ゴーストタイプだしユーレイ(幽霊)でいっかー」

「ガガガ! ゲンガー!」

「サイッ?!」

 

 いつものノリで懲りずに冗談を言ったら、なんと快諾しているらしい。アカサビは「またこいつやってるよ……」という驚きかと思ったら快諾したことへの驚きだったらしい。

 

 ええ……逆にこういうときどうすればいいんだ?

 

「マジで言ってんのかよ! お前何考えてんの?」

「ガッガッガ!」

 

 するとゲンガーは威勢よく笑い出した。話を聞くと、俺の反応を見越してあえてボケを真に受けてみたらしい。こいつどこまでもそれにこだわるな。芸人か。

 

 しかも、気を取り直して、別のニックネームを考えようとしたら、ほんとにこれでいいと言い出した。俺やアカサビの驚く顔が見られたからむしろこの名前の方が嬉しいらしい。嬉しい基準が謎過ぎる。だがほんとにこのノリで決定されてしまった。

 

 こういうこともあるならこれはやっぱり毎回続けようと言ったらアカサビからどつかれた。このポケモンだいぶ攻撃力高くなってきているからけっこう痛い。

 

 アカサビをボールに戻してここを出る準備を始めた。

 

「じゃ、これで晴れてユーレイが正式に仲間になったし、ここからおさらばするか。またゴーストいっぱい出てくるが帰りはもうポケモン探しはしないからスプレーで……」

「ガーガッガ」

「……? えーと、この先に行けばすぐにここを出られる抜け穴がある? おい、それ本当かっ! ユーレイ、さすがに罠やらなんやらいっぱい作っているだけあって、ここの地理にも詳しいんだな。さっそく案内してくれ」

「ガッガッガッガッ!」

 

 やたら高笑いするがなんなんだ。妙にテンション高いな……ユーレイはあった時から笑ってばっかだが、どうも胸騒ぎがするな。なんか企んでるような……

 

「ゲンガッ」

「え? 着いた? ここなんにもないただの行き止まりだけど」

 

 ユーレイの方に向き直るとなぜか“シャドーボール”を構えて俺の方を向いている。おいおい、まさかそれを……どうするつもりだ……もうこれ以上経験値はいらんぞ……。

 

「ゲ~ン」

 

 撃ち出した攻撃は俺でなくその足元に当たって不発。はは、さすがにいきなり主人に攻撃してくるわけないよな。いやーすまんすまん、別に疑ってたわけじゃなくて……

 

 バキッ

 

「ん? 何の音……」

 

 バキバキメシッ、バリッ!!

 

 なんということかっ! 今ユーレイに連れられて立っていたのはかなり薄い板の上だったようで、さっきの衝撃に耐え切れず崩れ去り、俺は真っ逆さまに落下した!

 

「ユゥゥーレェェェイッッ!!! これは抜け穴じゃなくて落とし穴だバカッ!!!」

「ゲエエエ?!」

 

 そんな声出してもわざとやったことぐらいバレバレじゃアホユーレイ!!

 

「アカサビ、地面に着地する前に俺に向かってみねうち!」

「サイッ」

 

 先に下にアカサビを出して、地面に衝突する前にみねうちで衝撃を抑える策に出た。とっさだからどうなるかわからん!

 

「グヘッ!? め、めっちゃ効く……」

「サイ?」

「大丈夫、絶対に1は体力残るから……」

 

 は、吐きそう……。まさか「俺に向かって“10まんボルト”」モドキをすることになるなんて。一応、なんとか軟着陸……することに成功して事なきを得た。いきなり最上階から直通で1階までまでいけるとは思わなかった。ユーレイには感謝しないとなっ!

 

 よく考えたらこいつ罠作ることしか考えてないんだからせいぜい落とし穴がいいとこだとなぜ気づかなかった。そもそも抜け道なんてないってことはこの前のむじんはつでんしょで散々思い知らされたところだったのに。行きは楽々、帰りは死にそう

 

「ガーガッガッ!」

「……自分がついていくからにはこれぐらいはできないと話にならないって? ユーレイさん、もう二度としないでね。次したら一生壁にめりこんだまま動けなくするぞ?」

「ガガガ!」

「サイ……」

 

 全然聞いてねぇ。アカサビ曰く、どうやらユーレイはさっそく俺を驚かせられて大満足らしい。こいつ驚かすためなら手段選ぶ気ないな、本当に。その後二度とこんなことをしないように厳重注意した。もうないと信じたい。

 

 タワーを後にして、今度はポケモンハウスに行くことにした。聞き込み中に勧められたのもあるが、目的は別。あのカツラとフジの関係の謎や、フジマッドサイエンティスト説を確かめに行くためだ。

 

 しかし、気づけばカラカラの不幸な生い立ち話などを聞かされ、しんみりした気持ちでハウスを出ることになっただけで、なんの手がかりも得られなかった。結局わかったのはただ1つ、フジ老人はマジ博愛、ということだ。

 

 ……何の成果も得られず落ち込んでいるとユーレイが出て来て俺を笑い始めた。こいつ、いい性格しているな。

 

「礼儀のなってない新入りクンには洗礼を与えないとな。イナズマ、出動だ!」

 

 イナズマさんをけしかけて場が混沌とし始めた。さりげなくその場を離れて巻き添えを回避し、周りをうかがうと気になる話が聞こえてきた。

 

 2人の男の会話で、1人はシルフへの問い合わせができなくて困っているという話で、もう1人のピジョットを連れたトレーナーがヤマブキに行ってみようかなという会話だ。

 

「全く、お前の野次馬根性はすごいよなぁ」

「……ああっ!」

 

 その言葉、聞いたぞ! ゲームに出てきた野次馬を思い出し、おもわず大声を上げてしまった。

 

「なんだ?」

「……あ、コラ、お前ら何してんだ。喧嘩しちゃいけないだろー、はい、仲直りしようねー」

 

 とっさにユーレイとイナズマをなだめる芝居をしてごまかし、その場を離れた。もちろんイナズマには思いっきり顔をひっぱたかれた。

 

 だが、イヤな予感がしてきて、俺は予定より早めにシオンを出てヤマブキへ向かうことにした。最初から可能性としてはドンピシャでブルーが事件に巻き込まれることも想定していた。実際に話を聞いて心配になるなんておかしなことだとは思うが、それでもどうにも気になって仕方なくなってしまった。なってしまったものはしょうがない。

 

 あのお助け袋に従えば最速で事件を解決することもあり得る。今俺はかなり速いペースではあるが、ブルーが最短でヤマブキへ向かっていれば俺よりも一歩早く到着する。先に待っていてくれとは一応書いておいたが、ドジなところもあるし、早く会って無事を確かめておきたい。

 

 ……待ってろよ、俺もすぐに行くからな! 

 




軟着陸()

お待たせしました
ようやくシショーが動きます
次がシルフ決戦、その後また二人旅です
ブルーがあんなに長かったのにシショーはその間の話が一話で終わるという……

設定的にはふしぎなアメだけ謎ですね
あれはどうやってレベルを上げているのかなーと思って考えた結果、伝説とかが蓄えた経験値の結晶、ということにしました。
Lv50になったあと獲得した経験値は全て体内に蓄えられて、倒されるたびにアメとして放出するということです
逆にアメとして経験値を蓄えるのでキレイにレベルが50で止まっているということです
ふしぎなアメの効果自体はゲームと全く同じです

フィールドやら回復やらは伝説があまりに弱すぎるから強化しました。四天王クラスで持っているトレーナーがいないのは不自然なので捕獲は困難ということに
尤も、レインにはその設定全部逆手に取られてますが

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