日本のコロナ対応で今、不安視されているのがワクチン接種の遅れだ。「対策の切り札」となるはずが、先進各国の接種ペースに比べ明らかに差がついた。
オクスフォード大学などが運営するデータベース「Our World in Data」によれば、少なくとも1回接種をした人の割合を示す「ワクチン接種率」(4月20日時点)は、主要先進37ヵ国が加盟するOECD(経済協力開発機構)の中で、日本は最下位の1.1%にとどまる。
首位のイスラエルの61%や英国の47%にははるかに及ばず、アジアでもトルコ(12%)や韓国(2%)よりも低い水準。国内で12日から始まったばかりの高齢者向けの接種もスムーズに進むのか。
医療従事者などマンパワーの不足から高齢者接種が来年春までずれ込む可能性を与党幹部が指摘すると、翌日、担当する河野太郎規制改革担当大臣が慌てて否定した。一事が万事、ワクチンをめぐる政府・与党の発信は二転三転を繰り返している。
「そもそもワクチンについては、国産に成功している状況ではない。手持ちのカードがない状態では、バーゲニングパワーを発揮することはできません。
国産ワクチンの開発が遅れている理由も、日本の医薬品の研究・開発・認可・生産などの構造が原因と言っていいと思います。
日本のワクチンは不活性化ワクチンが主体で、今回のような新しいタイプのワクチンの基盤がなかった。それは単純化して言えば、感染症研究は儲からない、ということで研究開発におカネが回らなかったということもあるでしょう。
治験についても、欧米では緊急使用許可という早期承認制度がありますが、日本では今まで想定されていませんでした。
また、接種体制についても、イスラエルのように常時準戦時体制に近い国家とわが国とは同列に比較できないところがあります。
徴兵制を採用していたり、その経験のある国家では、国民も『平時』から『緊急時』への切り替えができるでしょうし、医療体制と安全保障とを同時に考える基盤があって、感染症対策は安全保障の一環だという意識があるところも多い。
平時に私たちが享受してきた自由や権利は、裏返しとして危機管理の上での脆弱性につながっている面もあるのではないでしょうか」
(文中一部敬称略)
(明日公開の後編につづく)