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20~30年前の胸部レントゲンは、上半身裸で撮影するのが普通でした。今では考えられないことだと思いますが、当時は当然というかTシャツなどを着たまま撮影して怪しい影が出たときなど技師長に怒られていました。
まだ20代前半で照れもあり「Tシャツくらい大丈夫かな?」っというのもあり着たまま撮影することもありましたが、プリントや蛍光塗料が偽像をつくってしまったようです。
(低電圧での撮影が多かったためでしょうかね)
胸部と腹部の撮影以外は、骨を診るのが目的なのでシャツの蛍光塗料などをあまり気にせずに撮影されていたため検査着や薄着での撮影が多かったと思います。
検診車での胸部撮影のアルバイトに行ったときは、その会社の方針で女性には撮影専用の無地で透過性の良い検査着が用意されていました。
(営業的にはよかったのではないでしょうか)
私は毎週救急病院に当直のアルバイトに行っていたのですが、脳卒中・交通事故などの重症以外は熱発・腹痛などが多かったと思います。救急病院なので検査着などは用意されていません。胸部撮影のときで普通に撮影できる人の場合は、撮影体位を確認した後に上半身の服を脱いでもらい撮影台に胸をつけてもらいます。結果的に技師が患者さんの胸をみなくても撮影できます。
こういう掲示板でもあまり話題になっていないようですが、当時私が一番緊張した撮影は、腹部でした。腹痛の場所は、みぞおち・臍周辺・下腹部などいろいろあるでしょうが、解剖学では肺より下で子宮や膀胱のある骨盤腔までです。
ある祝日のことを書いてみたいと思います。この日は日直・当直セットで約24時間の勤務でした。午後になって腹部2方向撮影の指示で伝票がきました。氏名・年齢・性別を見ると16歳の女性でした。受付の窓から患者さんの足元だけ見えたのですが、普通に椅子に座っているようで急患といっても、他の病院が休みだから救急病院に来たという感じです。
私が患者さんを撮影室に呼び入れると普通に歩いてきたので、私の想像通り急患というほどではないようでした。患者さんは緊張しているようでしたが、すごく苦しいといった様子ではなく私からの指示を待っている感じでした。
彼女はちょっとポッチャリ系のかわいらしい子でモーニング娘の辻ちゃん似でした。私も若い子を前にして緊張していましたが、速やかな撮影だけを考えるようにしていました。上半身はトレーナー、下半身は膝上までのパンツスタイルでした。
私は彼女に「お腹のレントゲンを撮りますから上半身は、トレーナー一枚だけになって中のブラジャーなどは外してください」と指示をだしました。彼女はびっくりした様子もなく素直に脱衣籠のある撮影室の隅で準備をしました。私は見ているわけにもいかないので操作室で待っていました。
準備が済んだようなので私も撮影室にもどり立位の撮影台に案内しました。まずフィルムの上部を彼女の脇の下くらいにあわせて服を着たままでお腹をフィルムに密着させて位置を合わせ、確認が済んだところで私は彼女の背部に回って次の指示を出しました。
「私は、もう前側には回らないのでトレーナーを胸まで上げてお腹と背中を出すようにしてください」と告げました。彼女は黙って指示に従いましたが捲くり方が少し足りなかったので、私が背中側を少し捲くり上げて背中の上部で止めました。
その後、私は彼女に
「下は、ズボンと下着を太ももくらいまで下げてね」と、優しい口調で軽く言いました。軽く言っても内容は彼女にとってかなりきつい言葉です。彼女は前のボタンは外しチャックを少し下げたもののズボンはほとんど下げていません。
「うん、すぐ終わるから・・・ね、もうちょっと・・・」
私の言葉に促されズボンのチャックを下げたものの、ズボンと下着はなかなか下げられないで立っています。
このような子の場合、こちらで手を貸してあげるしかありません。
「そのままフィルムにお腹と胸つけててね、手はフィルムを抱えて、そうそう、そのままね」と最終体位を決めた後、
「ちょっと、ごめんね、撮るときだけ我慢して」と告げ、下着ごとズボンを太ももまで下げると私はすぐに、
「息を吸ってー・・・」と撮影を開始します。動いたり隠したりする間もなく終わらせるためです。
からだの前側は見えませんが、お尻は丸出しの状態です。しかし、私にズボンと下着を下げられてから動くことはなく私の指示通り呼吸停止して撮影に協力しました。彼女の場合、自分で下着などを下げるのは無理でも、きちんと最小限の時間だけであることを説明すれば理解し、恥ずかしくても素直に下着を下ろさせ、お尻を完全に露出した状態で一枚目の撮影を終了しました。
「息を普通にしてください、あと一枚で終わりですからね」と、私が告げると彼女は大きく息を吸いましたが、お尻を出したまま動かずそのまま撮影台にくっついていました。
「次はこちらのベッドに仰向けになってください」と、私が告げると普通は下着を自分で戻してしまうのですが彼女の場合、下着を下げたまま指示に従いベッドに仰向けになると、下半身を隠そうとせず両手は横に置いていました。
彼女の顔を見ると少し紅みをおびていて恥ずかしさが伝わってきますが、検査をスムーズにするため私に委ねているようでした。
「あと一枚で終わりだかね、もう少しがんばってね」と言って、私は少し下りかけた彼女のトレーナーを胸の上まで捲くり上げました。
「はい」っと返事をした後、彼女は顔を少し横にそむけ私から目線をそらしました。さっきの立位での撮影のときはお尻だけでしたが、今度は胸も下半身もすべて出ている状態では恥ずかしくて私と顔を合わせられなかったのだと思います。
私は、恥骨を確認するためアンダーヘアーの上を軽く触り、位置を確認してすぐに「息を吸って・・・」と撮影にはいりました。
彼女も恥ずかしいでしょうが、私も冷静を装ってもかなり緊張しています。なにせDカップくらいはある胸と少し薄めのアンダーヘアーからは性器も見え隠れしているのですから。
「息を楽にしてください、終わりです」と私が告げると彼女はゆっくり下着をもどし、捲くり上がったトレーナーも下げるとベッドから置きあがりました。服を整えレントゲン室から出て行くときに「お疲れさまでした。待合室でお待ちください」と私の言葉に対し、「ありがとうございました。」と、目線を合わせ笑顔で返して、頭を下げてくれました。
僅か5分ほどの患者さんとのコミュニケーションですが、当時の私は腹部レントゲンのようにかなりの羞恥心を伴う検査の難しさを感じていました。今回の彼女の場合はとてもよく理解してくれて、最後は笑顔でお礼まで言ってくれて、本当に良い子でした。
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