台風19号から1年 相次ぐ風水害「被害想像し備えを」

東日本を中心に甚大な被害をもたらした2019年の台風19号の上陸から12日で1年となった。記録的な豪雨により各地で河川が氾濫し、100人以上が犠牲となったほか、経済にも大きな打撃を与えた。豪雨や台風による被害が繰り返されるなか、専門家は「暴風雨に襲われたらどう行動するかを常に想像しておくことが、危険の回避につながる」と指摘する。(藤田このり、朝倉侑平)
■上陸前に竜巻被害、死傷者も
千葉県市原市では19年10月12日午前8時すぎ、竜巻とみられる突風が吹いた。当時、台風の中心は400~500キロ離れた本州の南海上にあったが、市によると1人が死亡、9人が負傷、住宅など計35棟が全半壊した。
気象庁気象研究所は今年9月、解析の結果、台風による竜巻と判明したと発表した。風速は約65メートル、突風の強さを示す「日本版改良藤田スケール」で6段階中4番目に強い2と判定。木造住宅が変形し、自動車は横転、鉄筋コンクリート製の電柱も折れ曲がるほどの風の強さとされる。
■上陸、東日本を縦断
台風19号は12日午後7時ごろ、静岡県の伊豆半島に上陸し、関東を縦断した。71河川、142カ所で堤防が決壊。北陸新幹線は車両全体の3分の1の10編成120両が浸水し、廃車になった。
■「泥の海」一面に
千曲川の堤防が決壊し、大規模な浸水が発生した長野市では多くの民家が流失。水が引いた場所には泥が積もり、田んぼのような状態になった。
■「水 食料」地面にSOS
宮城県丸森町は土砂崩れで道路があちこちで寸断され、孤立する集落が相次いだ。
■農林水産、被害3400億円
農林水産省の推計(20年4月10日現在)によると、台風19号とその後の大雨による農林水産分野の被害額は3446億円。うち、農地の損壊や農業施設への被害額が2100億円を占める。土砂の流入などにより修復が進まず、作付け自体が難しい地域もある。
■復旧道半ば
線路付近の斜面が崩落し、運休していた箱根登山鉄道は7月、箱根湯本―強羅間が再開し、約9カ月ぶりに全線復旧。阿武隈急行(福島県伊達市)は不通区間の富野(伊達市)―丸森(宮城県丸森町)間を31日に再開させる。
国土交通省によると、現在も福島県郡山市と水戸市を結ぶJR水郡線、長野県の上田電鉄のそれぞれ一部区間が運休している。いずれも損傷した鉄橋の復旧工事に時間がかかっており、工事完了は来年になる見通しだ。

河川氾濫が相次いだほか、武蔵小杉駅(川崎市)の周辺で多摩川の水が下水管に逆流する「内水氾濫」が起き、一部のタワーマンションが浸水被害にあった。被害の内容や発生場所など、どれをとっても従来想定してこなかったことが起きている。都心部に大量の雨が降れば、東京都心でも水没する可能性はある。
国や自治体はその変化を考慮した対策を急がなければならない。ただ、堤防建設などのハード整備にはお金も時間もかかる。人間は経験したことのないことや起きてほしくないことは考えないようにするものだが、暴風雨に襲われたらどうなるかを日ごろから想像し、いざという時に適切な行動をとることが大切だ。
例えば、浸水に備えて大切なものを1階から2階に移す。暴風に伴う飛来物に備え、窓ガラスにフィルムや雨戸を取り付ける。それだけで被害の大きさはずいぶんと変わる。災害後の修理代は抑えられ、何よりも危険の回避につながる。