by Purdue University/Jared Pike

光の98.1%を反射する「史上最も真っ白な塗料」が、アメリカ・パデュー大学の技術者によって開発されました。光の最大99.9%を吸収する「地上で最も黒い物質」ことベンタブラックと対を成すこの塗料は、可視光だけでなく熱を伝える赤外線をも反射し、物体が日光で温められるのを防ぐため、冷房や地球温暖化対策に役立てることが可能です。

The whitest paint is here - and it’s the coolest. Literally. - Purdue University News

https://www.purdue.edu/newsroom/releases/2021/Q2/the-whitest-paint-is-here-and-its-the-coolest.-literally..html

World’s Whitest Paint: How Can It Fight Global Warming? | Science Times

https://www.sciencetimes.com/articles/30695/20210415/world-s-whitest-paint-science-invention-help-fight-global-warming.htm

白い屋根で日光を反射すると、太陽光による地表の加熱を防ぎ冷房の稼働率も抑えることができることから、ノーベル物理学賞受賞者のスティーブン・チュー氏は「温暖化をくいとめるには世界中の屋根を白く塗りつぶすべき」と唱えています。

そこで、パデュー大学の機械工学教授であるシウリン・ルアン氏らの研究チームは、100種類以上の素材を研究してその中から10種類を選び出し、各素材を50通りの方法でテストして「光の95.5%を反射する白さの塗料」を開発しました。以下の記事から、実際に塗料を使って冷却効果を確認する実験の様子をムービーで見ることができます。

光の95.5%を反射する「究極の白いペンキ」が開発される - GIGAZINE

塗料の改良を目指してさらなる試行錯誤を重ねた研究チームは、化粧品や医薬品、顔料などとして広く用いられている硫酸バリウムに着目。フランス語で「永久の白(blanc fixe)」と呼ばれることもある硫酸バリウムを塗料にすることで、炭酸カルシウムで作った前回の塗料を上回る反射率が実現できることを突き止めました。

今回開発された塗料を塗った板を日光にさらしている様子を、通常のカメラ(左)と赤外線カメラ(右)で撮影したのが以下。右の写真を見ると、白い塗料が塗られている部分や、塗料が塗られた板の色が暗くなっていることから、塗料自体だけでなく塗られた物体に対する冷却効果もあることが分かります。

by Purdue University/Joseph Peoples

この塗料がこれほど白いのは、硫酸バリウムの粒子が不均一なのが理由です。硫酸バリウムの粒子が光を散乱する量は粒子のサイズに依存するため、粒子の大きさの差が大きいほど、太陽光に含まれる光のスペクトルをより多く散乱させることができるそうです。

研究チームが塗料の反射率を計測したところ、今回開発された塗料は98.1%の太陽光を反射できることが分かりました。これは、1.9%しか熱が吸収されないことを意味しており、冷却効果は前回の塗料の2倍だったとのこと。この冷却効果のおかげで、塗料が塗られた物体は日光の下でも周囲より4.4度温度が低く、夜には10.5度も温度が低くくなりました。ルアン氏は、「1000平方フィート(約93平方メートル)の屋根にこの塗料を塗ると、10キロワット相当の冷却効果が得られると推定されます。これは、ほとんどの一般家庭で使用されているエアコンより強力です」と話しました。ルアン氏らが今回の塗料を開発するために使った技術は、市販の塗料を製造するプロセスと互換性があるため、実用化も容易だとのことです。