最初はぼ、じゃありません。念の為。
ぼ、で浮かんだ人はペロロンチーノさんとアルベドと同じ思考回路です。
「これさー、絶対アレですよね!!」
背中の羽根を派手にばたつかせて、ペロロンチーノがそう言った。ウルベルトは、厨二病患者御用達の羽根ペンを優雅に動かして、何やら書き留めている。
「えー?俺は寧ろ、ソレじゃないと思うんですよね。だって、それじゃあんまりにも……。……あー、駄目だ、マジ、ペロロンさんがそんな事言うから、そっち方面でしか考えられなくなったじゃないですか……!勘弁して下さいよ、俺、ペロロンさんと違って上品な悪魔なんですから」
二人してそう騒いでいると、モモンガがその声を聞きつけたのか傍に寄ってくる。場所は、九階層にある談話室だ。円卓だとどうしても会議のイメージが強いため、適当に話したいとき等にギルメンがよく使用する場所だった。
「どうしたんですか?二人して。楽しそうですけど」
「あ!モモンガさん。見て下さいよ、コレ!俺、絶対コレの答え、アレだと思うんですけど、ウルベルトさんが……」
そう言うペロロンチーノが見せてきたのは、クロスワードパズルの本だった。大昔に流行したというそれは、古代図書館にあった物だ。時折ギルメンが楽しむらしく、この本を借りるヒト用に解答記入欄を複写した物が用意されているのだとか。
「えーっと、どれどれ。●起不●……?四文字熟語ですかね?」
小首を傾げながらそう言うモモンガに、ペロロンチーノは笑顔で答える。
「はい!俺はモモンガさんには無関係なのだと思ってるんですけど!」
「バッ……!おま、ソレ、駄目だろ!!えっと、モモンガさん。馬鹿鳥の発言は忘れて考えて下さい。そもそも、ペロロンチーノさんが指してる言葉は四文字熟語ではないですから!馬鹿が焼肉定食を四文字熟語だって言い張るのと同レベルです!!……なので、変な先入観無しで考えてみて下さいね」
ほんの少しだけ引き攣ったような笑顔を浮かべそう言うウルベルトに、モモンガは小さく頷く。
「はい、分かりました。……でも、俺、ペロロンチーノさんが言ってたのも分からないので何とも……って、焼肉定食的な四文字?で、ペロロンチーノさんが即答するって……その……えっと」
何やら、正しくない答えの方が浮かんでしまったのか、モモンガは言葉を濁す。
すると、三人の騒ぐ声を聞きつけたのか、アルベドとデミウルゴスまでやって来た。
(良し!賢いコイツらが来たなら方向性修正出来る筈……!)
と、内心ウルベルトは激しく安堵したのだが……。
「あ!アルベド、デミウルゴス!!コレさー、俺、アレだと思うんだけど……お前たちはどう思う?」
そうペロロンチーノが発言してしまった。忖度する悪魔、デミウルゴスは当然至高の41人の一人であるペロロンチーノの正解とは違う方の答えを想定してしまうし、女淫魔のアルベドに至っては……。
「!?モモンガ様、まさかこの事でお悩みで!?でしたら、この私が必ず治して差し上げますので……!」
と、問題発言をぶちかましてしまった。
「え!?ええっ!?ち、違うぞ!?そもそも私には無いからな!?」
テンパったモモンガは、必死にロールを回してそう答えるが、余計なことまで言ってしまっている。
「……ウルベルト様。この様な場合、私はどうしたら……」
当然のように正答も頭にあるデミウルゴスは、困惑した表情のまま創造主であるウルベルトを見た。
「静観してて良いぞ。下ネタ脳のペロロンチーノさんのせいで、皆正答に辿り着かなさそうだが……どうせ、娯楽だ。楽しい方がいいだろう?私がここで正答を言ってしまうのは簡単だが、それは野暮と言う物だろう?」
ウルベルトはそう言うと、微かに笑みを浮かべながら仲間たちの騒ぐ様を愉しげに見つめていた。
暫くして。ギルメン全員が集まったが、真っ先にペロロンチーノが間違った方向へ誘導していたため、中々正答が出なかった。その様子を愉しんでいたのはウルベルトの他にも数人居たが……やはり、頭を悩ませて一生懸命考えている仲間を見て微笑ましそうにしていた。
こうして、ナザリックの平和な日々は穏やかに過ぎてゆくのだった。
END
ペロロンチーノさんの答えは勃起不全、正答は再起不能です(笑)